SS書庫
101〜150
101:車両整備〜車社会だからこそ〜
珍しく。
全員の予定が綺麗に空いた休日。
朝。
Gleam Garden共有ルーム。
ルクレティア。
立ち上がる。
「今日は全員車を持ってきなさい」
静止。
ちょこみんと。
「洗車大会?」
「違うわ」
「ドライブ?」
「違うわ」
「撮影会?」
「違うわ」
ルクレティア。
一枚の紙を机に置く。
定期点検。
全員。
「あっ」
嫌な予感がした。
数時間後。
整備工場。
ずらり。
並ぶ九台。
NAロードスター。
S2000。
Lotus Exige。
JZX100。
LFA。
FD3S。
カプチーノ。
WRX STI。
GRヤリス。
壮観だった。
アオロビ。
「こうして並ぶと凄いな」
ローシャ。
「性格出てるわね」
ルクレティア。
工具箱を開く。
「では始めるわ」
整備開始。
最初。
アオロビ。
ロードスター。
ルクレティア。
点検簿を見る。
静止。
もう一度見る。
「アオちゃん」
「ん?」
「優秀ね」
「そう?」
「そうよ」
オイル交換。
消耗品。
空気圧。
全部管理されていた。
アオロビ。
「壊れると困るから」
ルクレティア。
「正しいわ」
次。
ティラミス。
Lotus Exige。
ルクレティア。
確認。
確認。
確認。
静止。
「ティラちゃん」
「なに」
「優秀ね」
「動画で見た」
なるほど。
ティラミスらしかった。
次。
ローシャ。
JZX100。
ルクレティア。
下回りを見る。
静止。
ローシャ。
嫌な予感。
「なに?」
「リズさん」
「なに?」
「そろそろブッシュね」
ローシャ。
天を仰ぐ。
「やっぱり……」
年式は誤魔化せなかった。
次。
みるく。
WRX STI。
問題なし。
次。
チノ。
GRヤリス。
問題なし。
次。
ぴたぽん。
カプチーノ。
「もにゅ?」
「大丈夫よ」
ぴたぽん。
安心。
次。
La lune bleue .。
FD3S。
ルクレティア。
ボンネットを開く。
静止。
さらに覗く。
静止。
La lune bleue .。
「どうにゃ?」
ルクレティア。
「にゃんちゃん」
「にゃ?」
「大丈夫じゃないわ」
全員爆笑。
La lune bleue .。
「なんでにゃ!?」
ルクレティア。
説明開始。
ホース。
配線。
オイル滲み。
経年劣化。
次々出てくる。
La lune bleue .。
「そんなにゃ……」
RX-7あるあるだった。
皆納得した。
そして。
最後。
問題児。
ちょこみんと。
S2000。
ルクレティア。
タイヤを見る。
静止。
ちょこみんと。
「どう?」
ルクレティア。
「ちょこちゃん」
「はい」
「このタイヤ」
「はい」
「終わってるわ」
即死。
ちょこみんと。
「えっ」
ルクレティア。
指差す。
スリップサイン。
全員見る。
ちょこみんと。
「本当だ」
アオロビ。
「本当だじゃない」
ローシャ。
「危ないわよ」
ちょこみんと。
縮こまる。
「ごめんなさい」
ルクレティア。
深いため息。
全員の点検終了。
工具を片付ける。
そして。
ぽつり。
「車って」
全員見る。
「乗れれば良いって思ってる人が多いけれど」
静かになる。
「部品の塊なのよ」
「定期的に診てあげないと」
「意外なところから重大事故になるわ」
誰も茶化さない。
「運転免許って」
ルクレティアは続ける。
「運転する権利だけじゃなくて」
「管理する責任込みなのだと思うのだけれどね」
沈黙。
ちょこみんと。
「ごめんなさい」
二回目。
ルクレティア。
「特にちょこちゃん」
「ごめんなさい」
三回目。
全員笑った。
夕方。
解散。
車は全車健康体。
そして。
工場の片隅。
ルクレティア。
椅子に座る。
動かない。
アオロビ。
「お疲れ」
ルクレティア。
「車九台は多いわ……」
疲労困憊。
そのまま寝落ち。
アオロビ。
苦笑する。
「整備士の休日が一番働いてる気がする」
誰も否定できなかった。
102:夏の園芸(前後編・全2話)
前編
「夏の花を育てよう」
ある日の昼。
Gleam Garden共有ルーム。
nike。
大きな箱を抱えて帰ってくる。
さらに。
もう一箱。
さらに。
もう一箱。
アオロビ。
「何買ってきたの」
nike。
「お花です」
即答。
ルクレティア。
箱を見る。
「量がお花じゃないのだけれど」
nike。
「夏のお花です」
開封。
中身。
苗。
苗。
苗。
苗。
ちょこみんと。
「おぉー!」
一番最初に食いついた。
nike。
嬉しそう。
「今日は皆さんにお願いがあります」
数分後。
全員集合。
テーブルの上。
大量の苗。
アオロビ。
「嫌な予感」
ローシャ。
「分かるわ」
nike。
小さく咳払い。
「夏の花壇を作ります」
静止。
ちょこみんと。
「やる!」
即答。
みるく。
「楽しそうです」
ルクレティア。
「なるほど」
アオロビ。
逃げられないと悟る。
nike。
花の説明を始める。
「せっかくなので皆さんのお花を植えようかなと」
全員。
納得。
アオロビ。
ブルースター。
ちょこみんと。
ひまわり。
ティラミス。
朝顔。
ローシャ。
月下美人。
ルクレティア。
蓮。
La lune bleue .。
ハイビスカス。
みるく。
マーガレット。
ぴたぽん。
紫陽花。
チノ。
勿忘草。
nike。
サルビア。
それぞれの苗が並ぶ。
ちょこみんと。
ひまわりを持ち上げる。
「私これ!」
nike。
「まだ植えてません」
「早く植えよう!」
元気だった。
数時間後。
庭。
快晴。
作業開始。
nike先生。
爆誕。
「まず穴を掘ります」
ちょこみんと。
勢いよく掘る。
掘る。
掘る。
掘る。
nike。
「深すぎます」
即修正。
アオロビ。
笑う。
「予想通り」
ちょこみんと。
「難しい!」
ローシャ。
「植える前から大騒ぎね」
その横。
みるく。
丁寧。
とても丁寧。
苗を扱う。
nike。
感心する。
「上手です」
みるく。
少し嬉しそう。
「本で読んだことがあります」
なるほど。
nike。
納得。
ルクレティア。
計画表。
持参。
アオロビ。
「出た」
ローシャ。
「出たわね」
ルクレティア。
「水やり当番表も作ったわ」
全員。
静止。
nike。
「助かります」
採用された。
ティラミス。
黙々。
植える。
終わる。
早い。
アオロビ。
「いつ終わったの」
ティラミス。
「さっき」
見てなかった。
その頃。
La lune bleue .。
ハイビスカス担当。
「これ本当に咲くにゃ?」
nike。
「咲きます」
「本当に?」
「咲きます」
「本当に?」
「咲きます」
同じやり取りが三回続いた。
夕方。
作業終了。
花壇。
綺麗に並ぶ。
まだ。
咲いていない。
でも。
確かにそこにある。
小さな命。
みるく。
しゃがみ込む。
「大きくなると良いですね」
nike。
優しく笑う。
「なりますよ」
ちょこみんと。
ひまわりを見つめる。
数秒。
振り返る。
「いつ咲く?」
全員。
「まだ咲かない」
即答だった。
ちょこみんと。
「えぇー!」
nike。
苦笑する。
「お花は待つのも大事なんです」
夏の空。
小さな苗。
そして。
賑やかな花壇。
Gleam Gardenの夏が。
ゆっくり始まった。
後編
「咲いた日」
数週間後。
夏。
快晴。
朝。
Gleam Garden共有ルーム。
勢いよく扉が開く。
ちょこみんと。
飛び込んでくる。
「咲いたーーー!!」
全員。
起床直後。
静止。
アオロビ。
「何が」
「咲いたーーー!!」
「何が」
「咲いたーーー!!」
「会話しろ」
ようやく。
ちょこみんと。
息を整える。
「ひまわり!」
全員。
理解した。
数分後。
花壇。
集合。
そして。
確かに。
咲いていた。
大きなひまわり。
夏の太陽に向かって。
真っ直ぐ。
ちょこみんと。
「咲いた!」
嬉しそうだった。
誰よりも。
nike。
微笑む。
「元気ですね」
「私みたい!」
アオロビ。
「否定できない」
全員納得だった。
その周囲。
他の花達も成長していた。
ブルースター。
マーガレット。
ハイビスカス。
サルビア。
朝顔。
それぞれ。
少しずつ。
色を見せ始めている。
みるく。
しゃがみ込む。
「本当に大きくなりましたね」
嬉しそう。
毎朝水やりをしていた。
成果だった。
nike。
「みるくさんのおかげですよ」
みるく。
少し照れる。
その横。
ルクレティア。
当番表。
確認。
アオロビ。
「まだ持ってた」
ローシャ。
「まだ持ってたのね」
ルクレティア。
「大事よ」
真顔だった。
そして。
花壇の奥。
La lune bleue .。
ハイビスカスの前。
静止。
「咲いてるにゃ」
三秒後。
「咲いてるにゃ!!」
気付くのが遅かった。
nike。
苦笑する。
「だから咲くって言ったじゃないですか」
「本当に咲いたにゃ」
疑っていたらしい。
その頃。
ぴたぽん。
紫陽花の前。
「うにゅ〜」
嬉しそう。
チノ。
勿忘草を見つめる。
「小さいですね」
「でも綺麗です」
nike。
優しく頷く。
それぞれ。
自分の花を見る。
少し不思議な時間だった。
ライブでもない。
仕事でもない。
勝負でもない。
ただ。
花を見るだけ。
それなのに。
悪くない。
アオロビ。
ブルースターを見る。
「ちゃんと咲くんだな」
nike。
隣に来る。
「咲きますよ」
「時間はかかりますけど」
アオロビ。
頷く。
確かに。
最初は小さな苗だった。
毎日見ても。
ほとんど変化は無かった。
でも。
気付けば。
ちゃんと育っていた。
その時。
ちょこみんと。
ひまわりの前。
腕組み。
真剣。
アオロビ。
嫌な予感。
「何考えてるの」
「来年もっと大きくしようと思って」
全員。
笑う。
nike。
少し驚く。
そして。
嬉しそうに笑った。
夕方。
帰る時間。
花壇には。
色とりどりの花。
夏の風。
小さく揺れる葉。
nike。
最後に花壇を見る。
「成功ですね」
ルクレティア。
頷く。
「そうね」
みるく。
微笑む。
「また来年もやりたいです」
ちょこみんと。
即答。
「やろう!」
アオロビ。
「決定早いな」
ローシャ。
「でも反対する人居ないでしょう?」
全員。
頷く。
誰も反対しなかった。
夏の花壇。
短い時間だったけれど。
確かに。
Gleam Gardenの夏の思い出になった。
103:幼稚園レクリエーション
(前後編・全2話)
前編
「子供達との一日」
ある日の朝。
Gleam Garden事務所。
ルクレティア。
一枚の紙を机に置く。
「地域交流イベント?」
アオロビが読む。
ちょこみんと。
横から覗き込む。
「幼稚園?」
「幼稚園ね」
ローシャも確認する。
そこには。
市立幼稚園。
夏のレクリエーションイベント。
特別ゲスト。
Gleam Garden。
と書かれていた。
静止。
数秒。
ぴたぽん。
「おー!」
一番最初に反応した。
nike。
微笑む。
「楽しそうですね」
対照的に。
アオロビ。
「子供?」
チノ。
「子供……」
二人とも若干不安そうだった。
ルクレティア。
説明を続ける。
「歌ではなく交流が中心」
「ゲームや工作のお手伝い」
「最後に簡単なミニライブ」
ちょこみんと。
元気よく挙手。
「遊べばいいのね!」
「概ねそうよ」
即答だった。
数日後。
市立幼稚園。
到着。
元気な声。
走り回る子供達。
先生達。
保護者達。
そして。
Gleam Garden。
園長先生。
「今日はよろしくお願いします」
全員。
挨拶。
その直後だった。
子供達。
一斉接近。
「おねーさんだ!」
「いっぱいきた!」
「かわいい!」
大混乱。
ちょこみんと。
「おぉーー!」
むしろ喜ぶ。
ぴたぽん。
既に囲まれていた。
「ぴーちゃんせんせー!」
「んちゃ〜」
開始三分。
懐かれていた。
アオロビ。
少し離れた場所。
様子を見る。
どう接したら良いのか。
分からない。
その時。
小さな男の子。
近付いてくる。
じー。
見つめる。
アオロビ。
「こんにちは」
男の子。
走り去る。
アオロビ。
「難しい」
開始五分だった。
その頃。
La lune bleue .。
完全包囲。
「ねこ!」
「ねこだ!」
「みみ!」
子供達。
大興奮。
La lune bleue .。
「にゃ?」
猫耳。
圧倒的だった。
ローシャ。
その光景を見ながら。
「強いわね」
誰も否定しなかった。
さらに。
チノ。
園児達と並ぶ。
先生。
一瞬困る。
「えっと……」
チノ。
「違います」
まだ何も言われていない。
全員笑った。
工作コーナー。
ティラミス。
折り紙担当。
黙々。
教える。
子供達。
真剣。
意外な人気だった。
一方。
外遊びエリア。
ちょこみんと。
全力疾走。
鬼ごっこ。
開始。
園児達。
「まてー!」
「きゃー!」
大騒ぎ。
そして。
十分後。
ちょこみんと。
汗だく。
園児達。
元気。
ちょこみんと。
「なんで!?」
園児のスタミナを甘く見ていた。
その横。
nike。
花壇コーナー。
小さな鉢植え体験。
子供達に囲まれる。
「おはな!」
「かわいい!」
「これなに?」
質問攻め。
nike。
一つずつ答える。
自然だった。
先生達。
少し驚く。
初めてとは思えない。
そんな中。
ルクレティア。
全体管理。
子供が転ばないか。
危険がないか。
先生達の補助。
見回る。
見回る。
見回る。
そして。
開始一時間。
少し疲れていた。
アオロビ。
気付く。
「大丈夫?」
ルクレティア。
「大丈夫よ」
少し間。
「たぶん」
「不安になった」
いつもの流れだった。
昼前。
レクリエーションはまだ続く。
そして。
アオロビはまだ知らない。
午後。
自分が一番子供達に囲まれることになるのを。
後編
「また来てね」
昼食後。
市立幼稚園。
午後の部。
園児達の元気は。
全く減っていなかった。
ちょこみんと。
ベンチ。
ぐったり。
「なんで……」
ぴたぽん。
「もにゅ?」
「なんであの子達まだ元気なの……」
園児達。
全力疾走中。
ちょこみんと。
敗北。
その頃。
ホール。
午後のイベント準備。
先生達。
机を並べる。
子供達を集める。
そして。
一人の先生が言った。
「それじゃあ最後に絵本を読んでもらいましょう」
アオロビ。
嫌な予感。
先生。
微笑む。
「アオロビさんお願いします」
確定だった。
数分後。
ホール。
園児達。
整列。
アオロビ。
絵本。
手に持つ。
緊張。
ライブより緊張していた。
ルクレティア。
後方。
見守る。
ローシャ。
「大丈夫かしら」
ティラミス。
「たぶん」
たぶんだった。
アオロビ。
深呼吸。
そして。
読み始める。
最初。
少し硬い。
しかし。
数ページ。
読んだ頃。
空気が変わる。
声。
抑揚。
間。
自然に乗り始める。
園児達。
静か。
驚くほど静か。
聞いている。
真剣に。
アオロビ。
気付く。
読みやすい。
自然と読める。
少し前。
声優の仕事で学んだ事。
感情。
間。
届け方。
全部ではない。
でも。
確かに残っていた。
物語は進む。
最後のページ。
読み終わる。
静止。
そして。
拍手。
園児達。
「おもしろかったー!」
「もういっかい!」
「つぎ!」
アオロビ。
呆然。
ローシャ。
小さく笑う。
「人気じゃない」
ルクレティア。
頷く。
「向いているのかもしれないわね」
アオロビ。
「初耳なんだけど」
その後。
自由時間。
気付けば。
アオロビの周囲。
子供達。
包囲網完成。
「おねーさん!」
「これみて!」
「これかいた!」
「これつくった!」
アオロビ。
両手いっぱい。
作品を見る。
感想を言う。
褒める。
質問される。
終わらない。
そして。
少し楽しかった。
夕方。
イベント終了。
園児達。
集合。
先生達。
挨拶。
Gleam Gardenも並ぶ。
園長先生。
「今日は本当にありがとうございました」
拍手。
その時。
一人の女の子。
前へ出る。
小さな封筒。
両手で持っている。
「どうぞ」
ルクレティア。
受け取る。
中を見る。
手紙だった。
そこから。
次々。
手紙。
絵。
折り紙。
プレゼント。
子供達からの贈り物。
ちょこみんと。
既に泣きそう。
「だめだってこういうの」
早い。
みるく。
優しく微笑む。
nike。
少し目を細める。
ぴたぽん。
「うにゅ〜」
嬉しそう。
La lune bleue .。
猫の絵を受け取る。
「にゃんこ描いてくれたにゃ」
本人も嬉しそうだった。
チノ。
園児達に囲まれる。
「またあそぼ!」
「先生じゃないけどね」
最後まで言っていた。
そして。
帰る時間。
園児達。
大きく手を振る。
「またきてねー!」
「ばいばーい!」
「ありがとー!」
Gleam Gardenも手を振る。
車へ向かう。
夕暮れ。
少し静かになる。
アオロビ。
手紙を見る。
小さな字。
一生懸命書いた文字。
ありがとう。
またきてね。
それだけだった。
でも。
十分だった。
ルクレティア。
隣で微笑む。
「良いイベントだったわね」
アオロビ。
頷く。
「うん」
少し考える。
そして。
「また来てもいいかも」
ルクレティア。
笑う。
「きっと喜ぶわ」
夕焼けの空。
賑やかな一日。
ライブでも。
大会でもない。
けれど。
忘れられない思い出になった。
104:文化祭、乱入LIVE!
(前後編・全2話)
前編
「最後のサプライズ」
十月。
某高校。
文化祭初日。
校内。
大賑わい。
模擬店。
演劇。
軽音部ライブ。
吹奏楽部演奏。
ダンス発表。
展示企画。
どこも盛況だった。
文化祭実行委員室。
生徒会長。
椅子にもたれる。
「初日終わったぁ……」
副会長。
「まだ一日あります」
「知ってる」
机には資料の山。
教師達も集まっていた。
文化祭は成功。
問題も少ない。
来場者も多い。
本来なら。
十分だった。
しかし。
ある教師がぽつりと言う。
「せっかくなら最後に何か欲しいな」
静かになる。
文化祭最終日。
閉会式。
例年。
そこで終わる。
悪くはない。
だが。
今年は盛り上がっている。
だからこそ。
何か欲しい。
生徒会長。
「何かって言われても……」
副会長。
「今から呼べる人なんて居ませんよ」
正論だった。
その時。
別の教師。
ふと思い出したように言う。
「そういえば」
全員。
視線を向ける。
教師。
「以前、地域イベントで来てくれたバンドがあったな」
静止。
数秒。
生徒会長。
「まさか」
教師。
少し笑う。
「駄目元だけどね」
夕方。
Gleam Garden事務所。
ルクレティア。
書類整理中。
電話が鳴る。
「はい」
数分後。
沈黙。
ルクレティア。
少し驚く。
「文化祭?」
共有ルーム。
アオロビ。
「文化祭?」
ちょこみんと。
「文化祭!?」
一番反応が大きい。
ルクレティア。
説明する。
「某高校の文化祭」
「最終日の閉会式前」
「サプライズライブをお願いしたいそうよ」
静止。
アオロビ。
「急だな」
ローシャ。
「急ね」
ティラミス。
「急」
全員一致だった。
ルクレティア。
続ける。
「持ち時間十五分」
「二曲」
「文化祭の主役は生徒達」
「だから最後に少しだけ盛り上げて欲しいそうよ」
ちょこみんと。
即座に挙手。
「やりたい!」
即決だった。
アオロビ。
「早い」
「文化祭だよ!?」
理由になっていない。
nike。
少し微笑む。
「楽しそうですね」
みるく。
「学生さん達喜びそうです」
ぴたぽん。
「んゅ」
賛成らしい。
La lune bleue .。
「サプライズなら面白そうにゃ」
チノ。
「文化祭かぁ……」
少し興味あり。
ローシャ。
ルクレティアを見る。
「どうするの?」
ルクレティア。
少し考える。
そして。
頷いた。
「受けましょう」
ちょこみんと。
「やったー!」
大歓声。
アオロビ。
苦笑する。
「曲は?」
ルクレティア。
答える。
「Cherry Blossom」
全員頷く。
そして。
「Sunflower Party」
今度は。
ちょこみんとが満面の笑みになった。
「完璧!」
翌日。
文化祭最終日。
放課後。
閉会式まであと一時間。
高校の裏門。
一台。
また一台。
車が入ってくる。
関係者搬入口。
誰にも気付かれないように。
静かに。
Gleam Garden到着。
アオロビ。
校舎を見る。
窓の向こう。
楽しそうな声。
笑顔。
文化祭。
独特の空気。
「いいな」
ぽつりと漏れる。
ルクレティア。
隣で微笑む。
「そうね」
体育館。
閉会式準備中。
生徒達はまだ知らない。
あと数十分後。
自分達の文化祭が。
もっと忘れられない一日になることを。
後編
「サプライズLIVE」
文化祭最終日。
閉会式。
体育館。
満席。
二日間の文化祭を終えた生徒達。
疲れている。
でも。
どこか満足そうだった。
ステージ。
生徒会長。
マイクを握る。
「以上で文化祭の全日程を――」
言いかけて。
止まる。
会場。
ざわつく。
生徒会長。
少し笑う。
「と言いたいところですが」
さらにざわつく。
「最後に」
「サプライズがあります」
体育館。
一気に騒がしくなる。
「え?」
「なに?」
「先生また何かやるの?」
照明が落ちる。
暗転。
ステージ袖。
アオロビ。
深呼吸。
ルクレティア。
「緊張してる?」
「少し」
「珍しいわね」
「高校生の前だから」
ちょこみんと。
既に元気。
「いこー!」
照明点灯。
歓声。
そして。
ステージ中央。
Gleam Garden。
出現。
静止。
体育館。
数秒。
完全停止。
そして。
爆発した。
「えええええええええ!?」
「はぁ!?」
「本物!?」
「なんでいるの!?」
「マジで!?」
先生達。
苦笑い。
大成功だった。
アオロビ。
マイクを握る。
歓声が少し落ち着く。
「文化祭」
「お疲れ様でした」
拍手。
歓声。
アオロビ。
少し笑う。
「最後まで楽しんでいこう」
ギター。
静かに流れる。
Cherry Blossom。
春の風。
旅立ち。
未来。
歌詞が体育館に響く。
文化祭。
準備期間。
友達。
失敗。
成功。
二日間の思い出。
その全てに重なる。
会場。
静かだった。
誰も騒がない。
ただ。
歌を聞いている。
そして。
サビ。
Cherry Blossom
空に舞って
新しい季節が
始まるよ
三年生達。
少し俯く。
文化祭は終わる。
でも。
未来は続く。
曲が終わる。
大きな拍手。
アオロビ。
マイクを持つ。
「文化祭って」
少し考える。
「終わる時は寂しいよね」
静かになる。
「でも」
「終わりじゃなくて」
「次の始まりだから」
拍手。
歓声。
そして。
隣。
ちょこみんと。
前へ出る。
満面の笑み。
「しんみり終わると思った!?」
体育館。
爆笑。
「まだ終わらないよー!」
歓声。
ギター。
ドラム。
そして。
イントロ。
(Sun!Sun!Sunflower!)
(HEY!HEY!)
(Sun!Sun!Sunflower!)
(にゃん!にゃん!)
体育館。
一瞬で空気が変わる。
ちょこみんと。
全力で煽る。
La lune bleue .。
マイクを握る。
「にゃーん!」
大歓声。
(HEY!HEY!)
(にゃん!にゃん!)
最初は戸惑っていた生徒達も。
すぐに理解した。
参加型だ。
(HEY!HEY!)
「HEY!!」
(にゃん!にゃん!)
「にゃん!!」
体育館。
完全に巻き込まれる。
先生達まで笑っていた。
サビ。
咲け!Sunflower!(HEY!HEY!)
咲け!Sunflower!(HEY!HEY!)
太陽みたいに 輝いて
(にゃん!にゃん!にゃん!)
生徒達。
大合唱。
止まらないで Jump!Jump!(HEY!)
この夏を焼きつけて
みんなで叫ぼう
Sunflower Party!(WOW!)
体育館。
ライブ会場そのものだった。
ぴたぽん。
手拍子。
みるく。
笑顔でコール。
チノ。
「HEY!」
nike。
「HEY!」
演奏には参加していない。
それでも。
全力で盛り上げていた。
中盤。
Come on!もっといこう!
(HEY!HEY!HEY!)
手を上げて!
(HEY!HEY!HEY!)
体育館。
全員手を上げる。
まだまだいけるでしょ!?
(HEY!)
Jump!Jump!
(Jump!Jump!)
ちょこみんと。
誰よりも楽しそうだった。
そして。
最後。
(Sun!Sun!Sunflower!)
(HEY!HEY!)
(Sun!Sun!Sunflower!)
(にゃん!にゃん!)
アオロビ。
マイクを掲げる。
せーのっ!
体育館全員。
Sunflower Party!!
(WOW!WOWー!!)
演奏終了。
一瞬の静寂。
そして。
割れんばかりの歓声。
拍手。
拍手。
拍手。
生徒会長。
再びステージへ。
目を輝かせながら。
マイクを握る。
「今年最高の文化祭でした!!」
体育館。
大歓声。
閉会式終了。
その後。
関係者搬入口。
撤収作業。
生徒達の声が聞こえる。
「やばかった」
「本物だった」
「Sunflower Party生で聞いた」
「文化祭伝説だろ」
「一生忘れない」
アオロビ。
少し笑う。
ルクレティア。
機材ケースを閉じる。
「成功ね」
「そうだね」
ちょこみんと。
まだ元気。
「楽しかった!」
アオロビ。
「知ってる」
即答だった。
夕暮れ。
校舎の向こう。
文化祭は終わった。
でも。
今日のことは。
きっと何年経っても忘れない。
そんな一日になった。
105:Gleam Garden
ある日の夜。
共有ルーム。
特に仕事もない。
特に企画もない。
珍しく平和だった。
アオロビ。
ソファに座る。
そして。
ふと思った。
「そういえばさ」
全員。
反応する。
「ん?」
「どうしたの?」
「うにゅ?」
アオロビ。
少し考える。
「みんな」
「Gleam Gardenの事どう思ってる?」
静止。
数秒。
ちょこみんと。
「急だね?」
「急だよ」
ルクレティア。
紅茶を飲く。
「面白い話題ね」
ローシャ。
「確かに」
ぴたぽん。
「ウチは好きぽん」
最速だった。
アオロビ。
「早いな」
ぴたぽん。
笑う。
「だって楽しいぽん」
シンプルだった。
みるく。
小さく頷く。
「私も好きです」
「居心地が良いので」
アオロビ。
納得する。
確かに。
みるくらしい答えだった。
ちょこみんと。
元気よく手を挙げる。
「私はね!」
全員。
嫌な予感。
「毎日文化祭みたい!」
静止。
そして。
全員納得。
「それだ」
「それね」
「それです」
満場一致だった。
ちょこみんと。
得意顔。
ローシャ。
少し考える。
「私は……」
言葉を探す。
「帰ってくる場所かしら」
静かになる。
ローシャ。
続ける。
「仕事もあるし」
「個人活動もあるし」
「色々あるけれど」
「結局ここに戻ってくる気がするの」
アオロビ。
頷く。
分かる。
そんな感じだった。
ティラミス。
少し考える。
「家族ではない」
全員。
聞く。
「でも」
「他人でもない」
静止。
ティラミス。
それ以上言わない。
でも。
何となく伝わった。
ルクレティア。
優しく笑う。
「ティラちゃんらしいわね」
La lune bleue .。
尻尾を揺らす。
「にゃんころは」
少し考える。
「安心して馬鹿やれる場所かにゃ」
全員。
爆笑。
アオロビ。
「分かる」
ローシャ。
「分かるわ」
ぴたぽん。
「もにゅ〜」
ルクレティア。
笑っている。
チノ。
静かに聞いていた。
そして。
ぽつり。
「不思議な場所」
全員。
視線を向ける。
チノ。
続ける。
「普通は」
「ここまでバラバラな人達」
「まとまらないと思う」
正論だった。
アオロビ。
苦笑する。
確かに。
かなりバラバラだ。
チノ。
「でも」
「まとまってる」
「不思議」
それがチノの結論だった。
nike。
少し微笑む。
「私は」
考える。
「未来を見る場所ですね」
静かになる。
nike。
続ける。
「まだやってない事がいっぱいあるんです」
「だから面白いです」
アオロビ。
「ニケさんらしいな」
nike。
嬉しそうに笑う。
そして。
最後。
全員。
ルクレティアを見る。
ルクレティア。
少し困る。
「私?」
「ルクさん最後」
「最後」
「最後ぽん」
逃げ道は無かった。
ルクレティア。
少しだけ考える。
そして。
微笑む。
「居場所かしら」
静かになる。
「皆のね」
その一言だった。
長い説明は無い。
でも。
十分だった。
アオロビ。
少し笑う。
なるほど。
と思った。
文化祭も。
幼稚園も。
麻雀も。
園芸も。
深夜のグルメも。
全部違う。
でも。
全部Gleam Gardenだった。
アオロビ。
最後に言う。
「結局」
「よく分からない集団だな」
静止。
そして。
ちょこみんと。
「褒め言葉!」
「そうかも」
誰も否定しなかった。
今日もまた。
Gleam Gardenは平和だった。
106:コンセプトカフェ(全3話)
第1話
「恥ずかしいのよ」
ある日の昼。
Gleam Garden共有ルーム。
ルクレティア。
一冊の資料を持って入ってくる。
アオロビ。
見るなり察した。
「面倒な仕事?」
「ええ」
即答だった。
全員。
嫌な予感。
ルクレティア。
資料を机に置く。
表紙。
猫。
猫。
猫。
猫。
そして。
猫。
ちょこみんと。
「猫だ」
La lune bleue .。
「にゃ?」
ルクレティア。
ため息。
「秋葉原の猫コンセプトカフェとのコラボ企画よ」
静止。
数秒。
アオロビ。
「コンカフェか」
ローシャ。
「面白そうね」
みるく。
「可愛いです」
ぴたぽん。
「もじゃ〜」
チノ。
猫を見る。
nike。
猫を見る。
ティラミス。
猫を見る。
La lune bleue .。
猫を見る。
「仲間にゃ」
アオロビ。
「違うと思う」
ルクレティア。
説明を続ける。
「一日限定」
「私達が店員として接客するそうよ」
ちょこみんと。
即反応。
「やりたい!」
早かった。
アオロビ。
「まだ説明終わってない」
「楽しそうじゃん!」
理屈は無かった。
ルクレティア。
資料を一枚めくる。
「なお」
嫌な予感。
全員一致。
「店長役はLa lune bleue .さんを希望します」
静止。
全員。
La lune bleue .を見る。
La lune bleue .。
自分を指差す。
「にゃんころ?」
「にゃんころ」
満場一致だった。
La lune bleue .。
ちょっと嬉しそう。
「店長にゃ」
もう受ける気満々だった。
そして。
問題のページ。
ルクレティア。
読み上げる。
「営業中は猫耳着用」
静止。
「及び」
さらに続く。
「猫コンセプトに合わせた接客」
共有ルーム。
数秒。
沈黙。
そして。
ルクレティア。
「嫌よ」
即答だった。
全員。
「出た」
予想通りだった。
ルクレティア。
腕を組む。
「嫌よ」
二回目。
ちょこみんと。
「なんでー?」
ルクレティア。
真顔。
「恥ずかしいじゃない」
全員。
納得。
ローシャ。
「理由そこなのね」
「そこよ」
アオロビ。
「もっと別の理由かと思った」
「恥ずかしい以外に何があるの」
正論だった。
La lune bleue .。
「店長は猫耳にゃ」
「そうね」
「副店長も猫耳にゃ」
「嫌よ」
即答。
ぴたぽん。
「ほむ〜」
面白そうに見ている。
みるく。
少し笑っている。
ルクレティア。
指差す。
「みるちゃんも笑ってるじゃない」
「少しだけです」
少しだった。
たぶん。
その後。
衣装合わせ当日。
会場。
猫コンセプトカフェ。
スタッフ達。
大歓迎。
そして。
猫耳配布。
アオロビ。
受け取る。
「懐かしいな」
ちょこみんと。
即装備。
「久しぶりー!」
チノ。
普通に装着。
「前にも付けました」
経験者組。
余裕だった。
ローシャ。
少し照れながら装着。
みるく。
驚くほど似合う。
ぴたぽん。
違和感ゼロ。
ティラミス。
無表情猫完成。
nike。
鏡を見る。
「思ったより悪くないですね」
そして。
最後。
机の上。
猫耳。
一つ。
ルクレティア。
見つめる。
猫耳。
見つめる。
また見つめる。
静止。
長い。
非常に長い。
アオロビ。
「ルクさん」
「嫌よ」
ちょこみんと。
「まだ何も言ってない」
「分かるもの」
ローシャ。
「観念したら?」
「嫌よ」
La lune bleue .。
店長衣装完成済み。
「副店長にゃ」
「嫌よ」
「お揃いにゃ」
「嫌よ」
「一緒にやるにゃ」
「嫌よ」
数秒。
沈黙。
そして。
ちょこみんと。
ぽつり。
「でもさ」
ルクレティア。
見る。
ちょこみんと。
笑う。
「せっかくなら皆でやろうよ」
静かになる。
アオロビ。
頷く。
ローシャ。
頷く。
みるく。
頷く。
ぴたぽん。
「うにゅ」
La lune bleue .。
「にゃ」
ルクレティア。
周囲を見る。
全員。
楽しそうだった。
ため息。
長いため息。
そして。
ぽつり。
「本当に恥ずかしいのよ」
誰も否定しない。
数分後。
ルクレティア。
猫耳装備。
静止。
全員。
拍手。
大歓声。
写真撮影。
止まらない。
ルクレティア。
顔を隠す。
「やめなさい」
ちょこみんと。
「可愛い!」
アオロビ。
「似合う」
ローシャ。
「意外と違和感ないわね」
ルクレティア。
さらに顔を隠した。
その姿を見て。
La lune bleue .。
満足そうに頷く。
「完璧にゃ」
ルクレティア。
机に突っ伏した。
「帰りたい……」
そんな副店長と。
楽しそうな店長を中心に。
猫コンセプトカフェは。
開店前から大騒ぎだった。
第2話
「いらっしゃいませにゃ」
当日。
午前九時。
秋葉原。
猫コンセプトカフェ。
開店一時間前。
スタッフルーム。
La lune bleue .。
店長衣装。
完全装備。
ご満悦。
「店長にゃ」
アオロビ。
「楽しそうだなぁ」
「楽しいにゃ」
即答だった。
一方。
隣。
ルクレティア。
猫耳。
装備中。
沈んでいた。
「帰りたい……」
まだ言っている。
ちょこみんと。
爆笑。
「まだ言ってる!」
「恥ずかしいのよ!」
本音だった。
ローシャ。
「もう諦めたら?」
「諦めてるから付けてるのよ」
正論だった。
そして。
開店五分前。
店側スタッフ。
最終確認。
「本日はよろしくお願いします」
全員。
挨拶。
そして。
扉の向こう。
既に行列。
静止。
アオロビ。
「多くない?」
店長スタッフ。
「かなり多いです」
ルクレティア。
嫌な予感。
「まさか」
店長スタッフ。
「整理券終了しました」
全員。
静止。
La lune bleue .。
「にゃ?」
開店。
扉。
オープン。
歓声。
拍手。
客。
大量流入。
開始三十秒。
既に大忙しだった。
La lune bleue .
店長。
「いらっしゃいませにゃ!」
歓声。
客。
即死。
「本物だ!」
「店長だ!」
「可愛い!」
La lune bleue .。
完全適応。
問題なし。
アオロビ。
ホール担当。
「こちらのお席へどうぞ」
数秒。
静止。
客。
待っている。
アオロビ。
理解する。
「あ」
「こちらのお席へどうぞ……にゃ」
客。
拍手。
アオロビ。
「なんで拍手なの」
困惑。
ちょこみんと。
絶好調。
「今日は楽しんでいくにゃー!」
「限定メニューもあるにゃー!」
客。
大歓声。
元々こういうイベントに強い。
適応速度が異常だった。
ローシャ。
ドリンク担当。
「お待たせしましたにゃ」
自然。
丁寧。
そして美しい。
客。
「似合う……」
ローシャ。
聞こえていない。
ティラミス。
ケーキ担当。
「チーズケーキですにゃ」
無表情。
客。
「温度差が凄い」
しかし人気。
みるく。
「ごゆっくりどうぞ……にゃ」
少し照れている。
だが。
可愛い。
客。
癒やされる。
ぴたぽん。
「んちゃ〜」
「いらっしゃいませにゃ〜」
気付けば。
常連客と会話していた。
何故か仲良くなる。
いつも通りだった。
チノ。
子供客担当。
「ジュースですにゃ」
小学生。
「おねーちゃんだ!」
チノ。
少し嬉しそう。
nike。
限定メニュー担当。
「こちらはサルビアをイメージしたドリンクですにゃ」
客。
頷く。
「綺麗ですね」
nike。
嬉しそう。
説明が止まらなくなる。
そして。
問題。
ルクレティア。
副店長。
客。
入店。
ルクレティア。
接客モード。
笑顔。
完璧。
しかし。
数秒。
固まる。
アオロビ。
察する。
来た。
ルクレティア。
数秒悩む。
そして。
観念した。
「いらっしゃいませ……」
静止。
客。
待つ。
ルクレティア。
恥ずかしそうに。
少し視線を逸らす。
そして。
小さな声。
「……にゃん」
客。
静止。
周囲。
静止。
ちょこみんと。
吹き出す。
ローシャ。
肩が震える。
アオロビ。
顔を逸らす。
ルクレティア。
真っ赤だった。
「笑わない」
誰も耐えられなかった。
昼。
ピークタイム。
店内満席。
限定メニュー完売。
グッズ完売。
追加発注。
店側スタッフ。
大慌て。
La lune bleue .。
店長席。
忙しい。
「店長って大変にゃ……」
ようやく理解した。
夕方。
営業終了。
閉店。
拍手。
歓声。
そして。
全員。
椅子へ倒れ込む。
疲労。
凄い。
ちょこみんと。
「楽しかった!」
元気。
アオロビ。
「それは知ってる」
ルクレティア。
猫耳を外す。
即座に。
迷いなく。
最速だった。
La lune bleue .。
笑う。
「副店長お疲れ様にゃ」
ルクレティア。
深いため息。
「もう二度とやらないわ」
全員。
顔を見合わせる。
そして。
誰からともなく。
笑った。
第3話
「猫耳副店長」
翌日。
Gleam Garden共有ルーム。
平和だった。
昨日の疲労はまだ残っている。
ちょこみんと。
ソファでごろごろ。
「楽しかったなー」
アオロビ。
コーヒーを飲む。
「人多かったね」
ローシャ。
「予想以上だったわ」
ティラミス。
静かに頷く。
みるく。
「皆さん凄く楽しそうでした」
ぴたぽん。
「うにゅ〜」
La lune bleue .。
満足そう。
「店長だったにゃ」
まだ言っている。
ルクレティア。
紅茶を飲む。
「終わったのだからもう店長じゃないわ」
「そうかにゃ?」
「そうよ」
平和だった。
本当に平和だった。
その時。
アオロビ。
スマホを見る。
静止。
数秒。
ちょこみんと。
察する。
「あ」
ローシャ。
察する。
「あ」
ルクレティア。
嫌な予感。
「……」
アオロビ。
スマホを掲げる。
「見る?」
全員。
理解した。
恒例だった。
エゴサである。
数分後。
共有ルーム。
全員集合。
スマホ。
タブレット。
準備完了。
La lune bleue .。
やる気満々。
「見るにゃ」
アオロビ。
検索開始。
猫コンセプトカフェ
↓
Gleam Garden
↓
コラボ
大量。
とんでもない量。
ちょこみんと。
「凄っ」
ローシャ。
「予想以上ね」
最初の感想。
『店長可愛かった』
La lune bleue .。
満足。
「当然にゃ」
『本物だった』
「何が本物なの」
アオロビ。
突っ込む。
『猫耳が自然すぎる』
「店長だからにゃ」
ここまでは順調だった。
問題は。
次だった。
『副店長が可愛かった』
静止。
ルクレティア。
嫌な顔。
『猫耳副店長』
静止。
『副店長写真撮りすぎた』
静止。
『猫耳似合いすぎ』
静止。
『副店長目当てで行った』
共有ルーム。
爆発。
ちょこみんと。
笑い転げる。
「るくるく大人気!」
ローシャ。
肩が震えている。
みるく。
笑いを堪えている。
ぴたぽん。
大笑い。
チノ。
「凄いです」
nike。
素直に感心している。
ルクレティア。
頭を抱える。
「何故なの」
本気だった。
La lune bleue .。
スマホを見る。
もう一度見る。
さらに見る。
静止。
「おかしいにゃ」
「何が?」
「店長はにゃんころにゃ」
正論だった。
アオロビ。
吹き出す。
「確かに」
「確かにじゃないにゃ」
さらに検索。
『副店長照れてたの可愛かった』
ルクレティア。
撃沈。
『最後まで猫耳慣れてなかった』
撃沈。
『恥ずかしそうだった』
撃沈。
『そこが良かった』
完全撃沈。
ルクレティア。
机に突っ伏す。
「帰りたい」
アオロビ。
「昨日から言ってる」
ちょこみんと。
「可愛かったよ!」
「言わなくていいのよ」
即答だった。
その時。
La lune bleue .。
新しい感想を見つける。
静止。
そして。
読み上げる。
『店長、本物の猫説』
共有ルーム。
静止。
数秒。
アオロビ。
「来た」
ローシャ。
「来たわね」
ちょこみんと。
笑いを堪える。
La lune bleue .。
堂々と胸を張る。
「説じゃないにゃ」
アオロビ。
「否定しないんだ」
「本物にゃ」
ルクレティア。
ため息。
「そういう事にしておきましょう」
みるく。
笑う。
nike。
笑う。
チノ。
頷く。
ぴたぽん。
頷く。
そして。
最後。
アオロビ。
スマホを閉じる。
「結論」
全員。
見る。
アオロビ。
一言。
「大成功だったね」
静かになる。
確かに。
そうだった。
La lune bleue .。
店長。
ルクレティア。
副店長。
みんな。
頑張った。
少し恥ずかしくて。
かなり騒がしくて。
でも。
楽しかった。
ルクレティア。
紅茶を飲む。
そして。
ぽつり。
「……まぁ」
全員。
注目。
ルクレティア。
少しだけ笑う。
「悪くはなかったわ」
静止。
そして。
大歓声。
「おぉー!」
「珍しい!」
「言った!」
ルクレティア。
後悔した。
だが。
その日の共有ルームは。
いつもより少しだけ。
賑やかだった。
107:次は何カフェ?
ある日の夜。
Gleam Garden共有ルーム。
猫コンセプトカフェ終了から数日。
平和だった。
ルクレティア。
紅茶を飲む。
アオロビ。
コーヒーを飲む。
ちょこみんと。
アイスを食べている。
いつも通りだった。
その時。
La lune bleue .。
ぽつり。
「次は何カフェにゃ?」
静止。
アオロビ。
顔を上げる。
「次?」
「次にゃ」
嫌な予感。
ルクレティア。
「次は無いわ」
即答だった。
ちょこみんと。
「あるかもしれないじゃん!」
「無いわ」
二回目だった。
ローシャ。
少し笑う。
「でも面白そうね」
みるく。
頷く。
「もし次があるなら気になります」
ぴたぽん。
「もじゃ〜」
賛成らしい。
アオロビ。
考える。
「何ならやりたい?」
静止。
そして。
会議開始。
最初。
アオロビ。
「音楽喫茶かな」
全員。
納得。
ローシャ。
「らしいわね」
アオロビ。
頷く。
「レコードとか」
「楽器とか」
「静かに音楽流れてる感じ」
ティラミス。
「分かる」
珍しく即賛成だった。
ちょこみんと。
「アイドルカフェ!」
予想通りだった。
アオロビ。
「予想通り」
「だって楽しそうじゃん!」
理屈は無かった。
ちょこみんと。
続ける。
「ライブやる!」
「特典会やる!」
「みんなで盛り上がる!」
ローシャ。
「仕事が増えてるわよ」
ローシャ。
少し考える。
「夜カフェかしら」
静かになる。
「夜?」
「落ち着いた雰囲気の」
「バーみたいな」
アオロビ。
納得。
「確かに似合う」
La lune bleue .。
「リズさんの店は常連が多そうにゃ」
「たぶんそうね」
ティラミス。
静かに答える。
「本」
全員。
見る。
「本?」
「本」
ティラミス。
続ける。
「静か」
「コーヒー」
「本」
以上だった。
ローシャ。
「ティラちゃんらしいわ」
みるく。
少し考える。
「絵本カフェとか」
ぴたぽん。
「似合うぽん」
みるく。
少し照れる。
「子供向けのお話とか」
「優しい雰囲気で」
全員。
納得。
ぴたぽん。
「お菓子屋しゃん!」
即答。
「ケーキいっぱい!」
「クッキーいっぱい!」
「もにゅ〜」
幸せそうだった。
チノ。
少し考える。
「雑貨カフェです」
全員。
見る。
アオロビ。
「雑貨?」
チノ。
頷く。
「可愛い雑貨がいっぱいあります」
「アクセサリーとか」
「小物とか」
「見てるだけで楽しいです」
みるく。
「似合います」
ローシャ。
「確かにチノさんらしいわ」
チノ。
少し嬉しそう。
そして続ける。
「店員もやります」
静止。
アオロビ。
「店長じゃないんだ」
「店員です」
即答。
「ラッピングします」
「プレゼント相談も聞きます」
「棚も整理します」
「包装もします」
アオロビ。
笑う。
「完全にスタッフ側だ」
チノ。
頷く。
「好きなので」
その一言だった。
全員。
妙に納得した。
nike。
少し考える。
「花カフェですね」
全員。
納得。
これは納得だった。
「季節ごとに花を変えて」
「育て方も紹介して」
「お茶も出して」
楽しそうに話す。
完全に趣味だった。
そして。
最後。
全員。
ルクレティアを見る。
静止。
ルクレティア。
嫌な予感。
「私?」
「ルクさん最後」
「最後にゃ」
逃げ道は無かった。
ルクレティア。
少し考える。
そして。
答える。
「普通の喫茶店」
静止。
ちょこみんと。
「地味!」
即答。
ルクレティア。
「何故よ」
アオロビ。
笑う。
「普通だ」
「普通よ」
「特徴無い」
「普通が良いの」
本気だった。
ルクレティア。
続ける。
「猫耳も無い」
「にゃんも言わない」
「静か」
「平和」
La lune bleue .。
ぽつり。
「つまらないにゃ」
ルクレティア。
「最高じゃない」
価値観の違いだった。
共有ルーム。
笑いに包まれる。
その時。
La lune bleue .。
何か思い付く。
嫌な予感。
全員一致。
「何?」
La lune bleue .。
堂々と宣言する。
「猫カフェ二号店にゃ」
静止。
そして。
ルクレティア。
「嫌よ」
即答だった。
全員。
大爆笑。
今日もまた。
Gleam Gardenは平和だった。
108:にゃんこカフェ
休日。
珍しく。
本当に珍しく。
Gleam Garden全員オフだった。
共有ルーム。
アオロビ。
ソファでだらだら。
ちょこみんと。
アイスを食べている。
ローシャ。
コーヒー。
ティラミス。
本。
平和だった。
その時。
みるく。
スマホを見る。
「あ」
全員。
見る。
「どうしたの?」
みるく。
画面を見せる。
そこには。
猫。
猫。
猫。
猫。
猫。
ちょこみんと。
「猫だ」
La lune bleue .。
「猫にゃ」
アオロビ。
「猫だね」
みるく。
少し笑う。
「猫カフェです」
静止。
数秒。
そして。
ルクレティア。
「行きましょう」
即答だった。
全員。
静止。
アオロビ。
「早い」
ローシャ。
「早いわね」
ルクレティア。
真顔。
「猫よ?」
理由になっていなかった。
しかし。
全員理解した。
数十分後。
秋葉原。
にゃんこカフェ。
入店。
店内。
静か。
穏やか。
そして。
猫。
猫。
猫。
猫。
猫。
ルクレティア。
入店三秒。
停止。
目の前。
茶トラ。
のんびり歩く。
ルクレティア。
しゃがむ。
そして。
いつもより三段階くらい柔らかい声。
「ん〜どうしたのかなぁ〜?」
静止。
全員。
静止。
アオロビ。
「誰?」
ローシャ。
「誰かしら」
La lune bleue .。
「誰にゃ」
本人だけ気付いていなかった。
猫。
近付く。
ルクレティア。
さらに柔らかくなる。
「いい子ね〜」
アオロビ。
写真撮影。
即座だった。
「消しなさい」
早かった。
その頃。
ローシャ。
既に猫に囲まれていた。
店員。
少し驚く。
「猫ちゃん好きなんですか?」
ローシャ。
頷く。
「家で三匹飼っているので」
店員。
納得。
ローシャ。
猫を撫でる。
慣れている。
猫も警戒しない。
店員。
「その子抱っこ苦手なんですよ」
ローシャ。
「そうでしょうね」
即答。
流石だった。
一方。
ちょこみんと。
「かわいいーーー!」
猫へ接近。
猫。
逃走。
「なんでー!?」
猫。
さらに逃走。
アオロビ。
「声が大きいから」
ちょこみんと。
「そんなぁ!」
何度やっても逃げられる。
いつも通りだった。
みるく。
窓際。
座る。
猫。
来る。
膝に乗る。
みるく。
固まる。
さらに。
もう一匹。
来る。
座る。
アオロビ。
「なんで?」
ローシャ。
「相性ね」
みるく。
嬉しそうだった。
ぴたぽん。
気付いたら。
猫を抱えていた。
「もにゅ〜」
猫。
喉を鳴らす。
店員。
「凄いですね」
ぴたぽん。
「うにゅ?」
本人も分かっていない。
チノ。
猫じゃらし担当。
真剣。
左右。
上下。
絶妙。
猫。
大興奮。
アオロビ。
「上手い」
チノ。
少し得意そう。
「可愛いです」
本音だった。
nike。
窓際。
昼寝する猫を見る。
静かだった。
「幸せそうですね」
微笑む。
見ているだけで満足そうだった。
そして。
La lune bleue .。
満を持して。
猫の群れへ。
「来るにゃ」
自信満々だった。
数秒後。
猫。
通過。
数秒後。
猫。
通過。
さらに。
通過。
La lune bleue .。
静止。
「何故にゃ」
アオロビ。
吹き出す。
ローシャ。
肩が震える。
ルクレティア。
笑っている。
La lune bleue .。
再挑戦。
失敗。
再挑戦。
失敗。
再挑戦。
成功。
ようやく一匹。
膝へ。
La lune bleue .。
満足そう。
「勝ったにゃ」
何と戦っていたのかは不明だった。
数時間後。
帰り道。
夕方。
全員。
満足。
ちょこみんと。
「癒やされた〜」
みるく。
頷く。
「また行きたいです」
ローシャ。
「悪くなかったわね」
La lune bleue .。
「店長より難しかったにゃ」
アオロビ。
「何と戦ってたの」
答えは無かった。
その時。
アオロビ。
スマホを見る。
静止。
写真。
そこには。
猫を抱っこして。
完全に表情が緩みきった。
ルクレティア。
「ん〜どうしたのかなぁ〜?」
の瞬間。
完璧に撮れていた。
アオロビ。
見せる。
ルクレティア。
静止。
数秒。
そして。
「消しなさい」
即答だった。
全員。
大爆笑。
平和な休日だった。
109:ゲストコメンテーター
(前後編・全2話)
前編
「保護者不在」
ある日の朝。
Gleam Garden事務所。
珍しく。
本当に珍しく。
静かだった。
出張組。
ルクレティア。
ローシャ。
La lune bleue .
三人とも地方イベントで不在。
事務所。
残留組。
アオロビ。
ちょこみんと。
ティラミス。
みるく。
ぴたぽん。
チノ。
nike。
何事もなく。
平和な午前中。
その時。
事務所スタッフ。
「皆さん」
「オファーです」
静止。
ちょこみんと。
「ライブ?」
「違います」
「雑誌?」
「違います」
「ゲーム?」
「違います」
全滅だった。
スタッフ。
資料を置く。
昼の情報番組
生放送出演依頼
全員。
「テレビ?」
予想外だった。
スタッフ。
説明を続ける。
「昼の情報番組です」
「ゲストコメンテーター枠」
「二名出演希望」
静止。
アオロビ。
「コメンテーター?」
ちょこみんと。
「なにそれ」
ぴたぽん。
「もにゅ?」
スタッフ。
「司会者さんと一緒に」
「ニュースや特集について感想を話したり」
「コメントしたり」
「そういう仕事です」
静止。
全員。
アオロビを見る。
アオロビ。
「なんで?」
全員。
「出来そう」
即答だった。
ティラミス。
「出来る」
みるく。
「出来ます」
チノ。
「出来ます」
nike。
頷く。
「出来ると思います」
完全包囲。
アオロビ。
「勝手に決めないで」
しかし。
否定しきれない。
スタッフ。
「実は」
「番組側から」
資料をめくる。
出演希望
アオロビ
静止。
アオロビ。
「指名?」
「はい」
予想外だった。
ちょこみんと。
「人気者ー!」
「やめて」
即答。
そして。
問題。
二人目。
静止。
全員考える。
ちょこみんと。
「私!」
アオロビ。
「絶対駄目」
「なんで!?」
「生放送だから」
終わった。
ティラミス。
「私は無理」
即辞退。
みるく。
「私も無理です……」
辞退。
チノ。
首を振る。
「サポートなら出来ます」
辞退。
ぴたぽん。
「テレビ緊張するぽん」
辞退。
残る。
nike。
全員。
見る。
nike。
「私ですか?」
アオロビ。
見る。
落ち着いている。
話も聞ける。
丁寧。
暴走しない。
静止。
ちょこみんと。
「良いと思う!」
みるく。
「私もです」
チノ。
「賛成です」
ぴたぽん。
「うにゅ」
多数決。
決まった。
nike。
少し驚く。
「私で大丈夫でしょうか」
アオロビ。
少し考える。
そして。
「大丈夫だと思う」
nike。
少し笑う。
「では頑張ります」
出演者。
決定。
アオロビ。
nike。
昼の情報番組。
生放送。
保護者組不在。
完全に自力。
その頃。
地方出張先。
ルクレティア。
スマホ。
通知。
『昼の情報番組出演決定』
『出演者』
『アオロビ』
『nike』
静止。
ローシャ。
「どうしたの?」
ルクレティア。
資料を見る。
再確認。
もう一度見る。
そして。
ぽつり。
「私達が居ない時に限って」
ローシャ。
吹き出す。
La lune bleue .。
笑う。
「心配にゃ?」
ルクレティア。
少し考える。
そして。
「……少しだけ」
嘘だった。
かなり心配だった。
一方。
事務所。
アオロビ。
台本。
nike。
台本。
二人。
同時に思う。
「生放送かぁ……」
後編
「意外と出来る」
当日。
朝。
テレビ局。
アオロビ。
緊張。
nike。
緊張。
二人とも。
平静を装っているだけだった。
控室。
台本。
飲み物。
スタッフ。
慌ただしい。
テレビ局独特の空気。
nike。
「緊張しますね」
アオロビ。
「するね」
珍しく素直だった。
その時。
スマホ。
通知。
グループチャット。
ちょこみんと。
『がんばれー!』
チノ。
『録画予約しました』
みるく。
『応援してます』
ぴたぽん。
『お昼ご飯準備完了ぽん』
ティラミス。
『生放送』
『頑張れ』
短い。
しかし珍しい。
アオロビ。
少し笑う。
「なんか」
nike。
「はい」
「頑張るしかないね」
「そうですね」
そして。
本番。
生放送開始。
昼の情報番組。
司会者。
「本日のゲストです」
「Gleam Gardenから」
「アオロビさん」
「nikeさん」
拍手。
二人。
挨拶。
最初。
少し硬い。
当然だった。
しかし。
特集開始。
春の観光特集。
司会者。
「お二人はどう思いますか?」
アオロビ。
考える。
整理する。
そして。
「人が集まる場所って」
「景色だけじゃなくて」
「思い出も含めて残ると思うんです」
司会者。
頷く。
自然だった。
スタッフ。
小さく頷く。
上手い。
一方。
nike。
少し考える。
「私は」
「季節の花が見られる場所が好きです」
「同じ場所でも」
「季節で全然違う表情になりますから」
司会者。
「なるほど」
こちらも自然。
暴走しない。
緊張しながらも。
ちゃんと話せている。
時間経過。
番組中盤。
食レポ。
アオロビ。
普通に上手い。
nike。
想像以上に上手い。
スタッフ。
驚く。
司会者。
驚く。
本人。
一番驚いている。
そして。
番組終了。
拍手。
無事終了。
アオロビ。
椅子へ沈む。
「終わった……」
nike。
同じ。
「終わりました……」
燃え尽きた。
その頃。
Gleam Garden共有ルーム。
テレビ前。
ちょこみんと。
「上手かった!」
みるく。
「凄かったです」
チノ。
「普通に出演してました」
ぴたぽん。
「うにゅ」
ティラミス。
静かに頷く。
「問題なかった」
高評価だった。
さらに。
地方出張先。
ルクレティア。
視聴終了。
静止。
ローシャ。
「どうだった?」
ルクレティア。
少し考える。
そして。
「普通に出来ていたわね」
ローシャ。
笑う。
「意外?」
「少しだけ」
正直だった。
La lune bleue .。
「保護者失格にゃ」
ルクレティア。
「失礼ね」
しかし。
少し安心していた。
その日の夜。
全員集合。
出張組帰還。
共有ルーム。
アオロビ。
「終わったよ」
nike。
「何とか」
ルクレティア。
見る。
二人を見る。
怪我なし。
問題なし。
トラブルなし。
そして。
ぽつり。
「お疲れ様」
アオロビ。
少し笑う。
「珍しい」
「何が?」
「素直」
静止。
ルクレティア。
少しだけ視線を逸らす。
「頑張ったのでしょう?」
その一言だった。
ちょこみんと。
ニヤニヤしている。
ローシャ。
笑っている。
La lune bleue .。
頷く。
そして。
アオロビ。
ふと思う。
保護者組が居なくても。
出来る。
でも。
帰ってくると。
少し安心する。
それはきっと。
皆同じだった。
平和な夜だった。
110:帰ってきた闇鍋パーティ
(全4話)
第1話
「またやるの?」
夜。
共有ルーム。
外は寒い。
冬だった。
その頃。
nike。
紅茶を飲みながら。
皆の雑談を聞いていた。
加入してしばらく。
色々な企画に参加した。
大食い。
文化祭。
幼稚園。
コンカフェ。
だが。
まだ未経験のものがある。
その時。
ローシャ。
ぽつり。
「そういえば」
嫌な予感。
アオロビ。
即反応。
「やめよう」
「まだ何も言ってないよ?」
「闇鍋でしょ」
数秒。
ローシャ。
笑う。
「正解」
共有ルーム。
■ 嫌な空気
nike。
首を傾げる。
「闇鍋ですか?」
静止。
全員。
nikeを見る。
「知らないの?」
ちょこみんと。
「楽しいよ!!」
アオロビ。
「嘘」
即答。
La lune bleue .。
「楽しいけど地獄にゃ」
「どっちなんですか」
正論だった。
その頃。
ルクレティア。
静かに立ち上がる。
棚。
ファイル。
取り出す。
「見なさい」
数秒後。
テーブル中央。
第1回闇鍋写真。
nike。
見る。
静止。
「……?」
さらに見る。
「…………?」
写真。
赤
茶色い。
黄色い。
説明不能。
「これ」
「うん」
「食べ物ですか?」
数秒。
全員。
「たぶん」
即答だった。
「たぶん!?」
nike困惑。
その横。
アオロビ。
遠い目。
「第1回」
「伝説」
ルクレティア。
「悪夢」
La lune bleue .。
「祭り」
ローシャ。
「傑作」
評価が割れていた。
その頃。
ちょこみんと。
ニヤニヤ。
「プリン入れたんだよ!
静止
nike。
「プリン?」
「プリン」
「鍋に?」
「鍋に
数秒。
nike。
「なんで?」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「闇鍋だから!」
アオロビ。
「その理論で全部壊れた」
爆笑。
さらに。
ルクレティア。
次の写真。
見せる。
しいたけ。
黄色い。
何かに浸かっている。
「これは?」
「プリンしいたけ」
nike。
「なんで?」
「私も知りたいわ」
ルクレティア即答。
共有ルーム。
爆笑。
その時。
アオロビ。
説明を続ける。
「あと」
「麻婆豆腐」
「チョコバナナ」
「大量わさび」
nike。
「待ってください」
「はい」
「全部同じ鍋ですか?」
「同じ」
「なんで?」
「私も知りたい」
ルクレティア二度目。
その横。
ティラミス。
「……美味しかった」
「嘘つけ」
全員一致。
爆笑。
そして。
第2回写真。
こちらは少し違う。
「普通ですね」
nike。
安心。
ローシャ。
頷く。
「第2回はまともだったの」
「最初は」
アオロビ。
訂正。
La lune bleue .。
「途中まではにゃ」
ちょこみんと。
「楽しかった!」
嫌な予感。
写真。
チーズ。
餅。
キムチ。
赤い。
伸びる。
重い。
「……これも途中で何かありました?」
全員。
「うん」
即答。
その頃。
ティラミス。
小さく言う。
「ラー油」
「犯人」
アオロビ即答。
「山椒」
「共犯」
La lune bleue .追撃。
「追いチーズにゃ」
「お前もだ」
爆笑。
そして。
静かに聞いていたnike。
ぽつり。
「つまり」
数秒。
「皆さん」
「反省したんですよね?」
共有ルーム。
静止。
全員。
目を逸らす。
ルクレティア。
紅茶を飲む。
ローシャ。
笑っている。
La lune bleue .。
天井を見る。
ティラミス。
無言。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「たぶん!」
数秒。
nike。
「不安になってきました」
その瞬間。
ローシャ。
楽しそうに言う。
「じゃあ」
「第3回やりましょうか」
共有ルーム。
歓声。
悲鳴。
期待。
不安。
全部混ざる。
そして。
nikeはまだ知らない。
自分がこれから。
Gleam Garden最大級の恒例行事へ。
足を踏み入れる事を。
第2話
「健康と映えと不安」
夜。
共有ルーム。
第3回闇鍋。
開幕。
ルクレティア。
鍋を準備。
「まず確認するわ」
数秒。
「プリンは禁止」
ちょこみんと。
「まだ言う!?」
「永久追放よ」
即答。
共有ルーム。
爆笑。
そして。
食材公開。
まず。
アオロビ。
■ 鶏肉団子
■ 水餃子
■ 豆苗
「保険担当」
「助かるにゃ」
安定。
次。
みるく。
■ マロニー
拍手。
「帰ってきた」
「安心する」
もはや伝統だった。
次。
ぴたぽん。
■ はんぺん
■ ちくわ
■ つみれ
「冬の民ぽん〜」
平和。
次。
チノ。
袋を置く。
■ 星形はんぺん
■ 花形にんじん
■ 飾り麩
静止。
「可愛い」
「可愛い」
「可愛いにゃ」
チノ。
少し得意そう。
「鍋も見た目が大事です」
正論だった。
次。
ローシャ。
■ 昆布
■ 鶏ガラスープ
■ 柚子胡椒
「出汁班」
「今回こそ成功させる」
切実だった。
次。
ルクレティア。
■ 白菜
■ 春菊
■ しいたけ
■ 鶏団子
共有ルーム。
安堵。
「鍋だ」
「ちゃんと鍋だ」
「鍋が存在している」
その時。
全員。
ティラミスを見る。
保冷バッグ。
開封。
中身。
■ 薬膳鍋の素
静止。
「えっ」
「赤くない」
「成長したにゃ」
ティラミス。
「身体に良い」
全員。
少し安心。
した。
その時。
La lune bleue .。
袋を置く。
■ 燻製たまご
■ 燻製チーズ
静止。
「何故燻製」
「美味しいにゃ」
否定できない。
ギリ合法だった。
そして。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「今回は普通!」
袋オープン。
■ トウモロコシ
静止。
「普通だ」
「普通だな」
「普通に見えるにゃ」
しかし。
アオロビ。
「後で全部トウモロコシ味になりそう」
嫌な予感。
そして。
最後。
nike。
全員注目。
静かに袋を開く。
中身。
■ ロマネスコ
静止。
「何それ」
「野菜です」
さらに。
■ ビーツ
静止。
「何それ」
「野菜です」
さらに。
■ エディブルフラワー
静止。
「お花です」
「見れば分かる」
爆笑。
さらに。
■ ハーブ少量
「香り付けです」
共有ルーム。
完全停止。
ローシャ。
笑い始める。
「初参加で方向性違うわね」
アオロビ。
「健康番組の鍋みたい」
ルクレティア。
「身体には良さそうね」
そして。
投入開始。
出汁。
野菜。
肉。
マロニー。
燻製。
薬膳。
トウモロコシ。
ロマネスコ。
花。
ハーブ。
鍋。
完成。
数秒。
全員。
静止。
「綺麗」
「映える」
「闇鍋に見えないにゃ」
「SNS向きもじゃ」
第1回。
地獄。
第2回。
チーズ戦争。
第3回。
映え鍋。
方向性がおかしかった。
その時。
ティラミス。
鍋を見る。
数秒。
「……少し刺激が足りない」
静止。
全員。
「待て」
即答。
La lune bleue .。
「嫌な予感にゃ」
ちょこみんと。
「始まった」
ルクレティア。
頭を抱える。
nike。
まだ知らない。
Gleam Gardenにおける
「少し刺激が足りない」
が。
災害警報レベルの言葉である事を。
そして。
運命の実食が始まる。
第3話
「結局こうなる」
夜。
共有ルーム。
テーブル中央。
第3回闇鍋。
完成。
見た目。
綺麗。
かなり綺麗。
花。
ロマネスコ。
ハーブ。
薬膳。
SNS映え。
そのものだった。
アオロビ。
「今回優勝じゃない?」
ルクレティア。
「見た目はね」
見た目は。
その時。
ティラミス。
静かに保冷バッグを開く。
全員。
「待て」
即座。
ティラミス。
「刺激」
アオロビ。
「その単語禁止」
La lune bleue .。
「災害警報にゃ」
爆笑。
しかし。
今回は違った。
取り出した物。
■ 唐辛子
共有ルーム。
「あっ」
「まだマシ」
「感覚壊れてるにゃ」
数本だけ投入。
鍋。
ほんのり辛そうになる。
ギリセーフ。
そして。
実食開始。
最初。
ちょこみんと。
「いただきまーーーす!!」
勢い良くすくう。
数秒。
■ 鶏団子
■ 白菜
■ トウモロコシ
一口。
静止。
「美味しい!!」
共有ルーム。
感動。
「食べられる」
「感動の基準がおかしいぽん〜」
第1回経験者達。
ちょっと泣きそうだった。
その頃。
ぴたぽん。
一口。
■ はんぺん
■ 薬膳スープ
「優しいぽん〜」
成功。
みるく。
一口。
■ マロニー
■ 鶏団子
「落ち着きます」
安心。
安定。
マロニー。
今日も仕事していた。
その時。
La lune bleue .。
すくう。
数秒。
■ 燻製たまご
■ ハーブ
一口。
静止。
さらに。
静止。
「……オシャレにゃ」
共有ルーム。
爆笑。
「感想がカフェ」
「鍋じゃない」
その頃。
nike。
少し安心していた。
「良かったです」
「今回は平和そうですね」
数秒。
全員。
目を逸らす。
嫌な予感。
その瞬間。
ちょこみんと。
鍋の奥を見る。
「あっ」
嫌な声。
アオロビ。
「何」
「トウモロコシ多い」
共有ルーム。
静止。
一口。
二口。
三口。
「トウモロコシだ」
「トウモロコシぽん〜」
「トウモロコシにゃ」
鍋。
少しずつ。
トウモロコシに支配され始める。
ちょこみんと。
「やった!」
「何が!?」
爆笑。
さらに。
La lune bleue .。
ぽつり。
「燻製増やしたらどうなるにゃ」
アオロビ。
「やめて」
しかし。
投入。
■ 追い燻製
共有ルーム。
「あっ」
「始まった」
ローシャ。
頭を抱える。
数分後。
鍋。
燻製香。
薬膳。
トウモロコシ。
花。
情報量が増える。
その頃。
ティラミス。
静かに鍋を見る。
数秒。
「……赤くない」
全員。
「だから待て」
爆笑。
しかし。
今回はルクレティアが早かった。
「ティラちゃん」
「ん?」
「座りなさい」
即制圧。
共有ルーム。
爆笑。
ティラミス。
不満そう。
「刺激」
「今日は我慢」
ルクレティア即答。
その頃。
チノ。
鍋を見ながら。
ぽつり。
「これ」
「ん?」
「闇鍋なんでしょうか」
静止。
全員。
考える。
確かに。
不味くない。
危険でもない。
ただ。
方向性が迷子。
その時。
nike。
少し笑う。
「健康鍋ですね」
共有ルーム。
静止。
ローシャ。
吹き出す。
アオロビ。
笑う。
La lune bleue .。
笑う。
ちょこみんと。
爆笑。
ルクレティア。
苦笑。
ティラミス。
頷く。
「健康」
「違う」
全員一致。
そして。
鍋。
ほぼ完食。
第1回。
地獄。
第2回。
リベンジ。
第3回。
健康と映え。
全く別方向だった。
その頃。
ローシャ。
静かに笑う。
「結局」
数秒。
「今回もGleam Gardenらしかったわね」
全員。
頷く。
そして。
nike。
ようやく理解する。
闇鍋とは。
料理ではない。
イベントである。
という事を。
第4話
「今回、一番おかしかったの誰?」
深夜。
共有ルーム。
第3回闇鍋。
終了。
鍋。
完食。
しかし。
部屋。
燻製。
薬膳。
ハーブ。
謎の良い香り。
残っていた。
アオロビ。
ソファへ沈む。
「なんか」
数秒。
「鍋食べた気がしない」
共有ルーム。
爆笑。
La lune bleue .。
「分かるにゃ」
ローシャ。
「薬膳と燻製とトウモロコシの記憶しかないわ」
ぴたぽん。
「トウモロコシ強かったぽん〜」
ちょこみんと。
ドヤ顔。
「やった!」
「褒めてない」
アオロビ即答。
爆笑。
その頃。
nike。
少し笑う。
「皆さん楽しそうでしたね」
ルクレティア。
頷く。
「楽しそうではあったわね」
少なくとも。
第1回みたいな地獄ではなかった。
第2回みたいなチーズ戦争でもなかった。
方向性は迷子だったが。
平和だった。
その時。
アオロビ。
ぽつり。
「で」
静止。
「今回の戦犯誰?」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「えっ」
La lune bleue .。
「えっ」
ティラミス。
「?」
全員。
容疑者だった。
まず。
ちょこみんと。
■ トウモロコシ
アオロビ。
「途中から全部トウモロコシ味」
ローシャ。
「支配力高すぎるのよ」
La lune bleue .。
「薬膳にも勝ったにゃ」
共有ルーム。
爆笑。
ちょこみんと。
「美味しかったじゃん!」
数秒。
全員。
「それはそう」
否定できなかった。
次。
La lune bleue .。
■ 燻製
アオロビ。
「途中からキャンプ飯」
ぴたぽん。
「燻製祭りぽん〜」
ローシャ。
「鍋の匂いじゃなかったわね」
La lune bleue .。
少し考える。
「……確かにゃ」
本人認めた。
共有ルーム。
爆笑。
次。
ティラミス。
静止。
全員見る。
ティラミス。
「?」
アオロビ。
「刺激」
La lune bleue .。
「刺激」
ローシャ。
「刺激」
ルクレティア。
「刺激」
共有ルーム。
爆笑。
ティラミス。
少し考える。
「足りなかった」
全員。
「足りてた」
即答。
その時。
nike。
おずおずと手を上げる。
「私は?」
静止。
共有ルーム。
数秒。
アオロビ。
「ロマネスコ」
ローシャ。
「ロマネスコね」
La lune bleue .。
「ロマネスコにゃ」
ルクレティア。
「ロマネスコだったわね」
満場一致。
nike。
困惑。
「野菜ですよ?」
アオロビ。
「知ってる」
ローシャ。
「ちゃんと知ってる」
La lune bleue .。
「でもロマネスコにゃ」
説明になっていなかった。
共有ルーム。
爆笑。
その頃。
チノ。
ぽつり。
「MVPですね」
静止。
数秒。
アオロビ。
「確かに」
ローシャ。
「今回一番印象に残ってる」
ルクレティア。
「異論なし」
こうして。
第3回MVP。
■ ロマネスコ
正式決定。
nike。
まだ納得していない。
次。
敢闘賞。
■ トウモロコシ
ちょこみんと。
ガッツポーズ。
「やった!」
「だから褒めてない」
本日二回目。
爆笑。
そして。
功労賞。
静止。
全員。
みるくを見る。
みるく。
「……?」
アオロビ。
「マロニー」
ローシャ。
「マロニーね」
ルクレティア。
「マロニーだわ」
La lune bleue .。
「マロニーにゃ」
満場一致。
みるく。
少し笑う。
「またですか」
ぴたぽん。
「またぽん〜」
もはや伝統だった。
その後。
紅茶。
お茶。
雑談。
穏やかな時間。
その時。
ルクレティア。
紅茶を飲みながら。
ぽつり。
「まぁ」
数秒。
「第1回みたいに」
「しいたけへ謝らなくて済んだだけ進歩ね」
共有ルーム。
静止。
そして。
大爆笑。
アオロビ。
「まだ覚えてるんだ」
「忘れられる訳ないでしょう」
即答。
ちょこみんと。
「ごめんなさい」
珍しく謝る。
しかし。
数秒後。
「でも楽しかったよね!」
共有ルーム。
再び爆笑。
こうして。
第3回闇鍋パーティ。
健康。
映え。
薬膳。
燻製。
トウモロコシ。
ロマネスコ。
色々あったが。
今回もまた。
とてもGleam Gardenらしい夜だったのである。
111:どこぞの3分クッキング
(全4話)
第1話
「誰が出るの?」
昼。
共有ルーム。
平和だった。
珍しく。
本当に平和だった。
その頃。
アオロビ。
スマホを見ていた。
数秒。
「……ん?」
静止。
メール。
確認。
もう一回。
確認。
さらに。
確認。
その横。
ちょこみんと。
「どうしたの?」
アオロビ。
少し考える。
そして。
「仕事のオファー」
共有ルーム。
反応。
ぴたぽん。
「お仕事もじゃ?」
みるく。
「ライブですか?」
ローシャ。
「雑誌?」
La lune bleue .。
「テレビ?」
その時。
アオロビ。
ぽつり。
「料理番組」
数秒。
静止。
共有ルーム。
完全停止。
「料理番組?」
ルクレティア。
聞き返す。
「料理番組」
「私達が?」
「私達が」
静止。
数秒後。
共有ルーム。
爆笑。
「なんで!?」
ちょこみんと。
即反応。
アオロビ。
メールを読む。
「昼の料理番組」
「特別企画」
「家庭菜園やハーブを活用した料理特集」
数秒。
全員。
ある人物を見る。
nike。
「……?」
自覚なし。
さらに。
メール。
「出演者二名希望」
「料理担当一名」
「補助兼トーク担当一名」
静止。
共有ルーム。
全員。
またnikeを見る。
nike。
「……私ですか?」
ローシャ。
「多分」
アオロビ。
「かなり」
みるく。
「ほぼ」
ぴたぽん。
「確定ぽん〜」
その頃。
nike。
少し困る。
「でも」
「料理人ではありませんよ?」
ルクレティア。
頷く。
「確かに」
しかし。
アオロビ。
メールをスクロール。
数秒。
「家庭菜園」
「ハーブ」
「季節野菜」
「初心者向け」
静止。
「nikeさんだ」
満場一致。
爆笑。
その時。
ちょこみんと。
勢いよく立つ。
「私も料理できるよ!!」
静止。
数秒。
共有ルーム。
全員。
同じ事を思う。
アオロビ。
ぽつり。
「闇鍋」
La lune bleue .。
「トウモロコシ」
ティラミス。
「楽しそう」
ルクレティア。
「却下」
即答。
ちょこみんと。
「なんでぇぇぇ!!」
爆笑。
その頃。
ティラミス。
手を上げる。
「辛い料理」
「却下」
即答。
二秒だった。
共有ルーム。
爆笑。
そして。
問題。
補助担当。
誰が行くか。
静止。
数秒。
ローシャ。
「ルクさんじゃない?」
共有ルーム。
納得。
アオロビ。
「説明できる」
みるく。
「落ち着いてます」
ぴたぽん。
「進行向いてるぽん〜」
La lune bleue .。
「暴走止められるにゃ」
ティラミス。
頷く。
ルクレティア。
「最後の理由が気になるのだけれど」
爆笑。
その時。
nike。
少し安心した顔。
「ルクさんが居るなら」
「少し安心です」
ルクレティア。
少し笑う。
「それなら引き受けましょうか」
こうして。
昼の料理番組。
出演者。
nike。
ルクレティア。
正式決定。
その頃。
アオロビ。
メールの最後を見る。
数秒。
静止。
「……あ」
全員。
見る。
「どうしたの?」
ちょこみんと。
アオロビ。
メールを読む。
「事前打ち合わせ」
「テレビ局来訪」
「試作あり」
静止。
共有ルーム。
ざわつく。
ローシャ。
笑う。
La lune bleue .。
ニヤリ。
ちょこみんと。
「面白そう!!」
その時。
nike。
少しだけ緊張し始める。
ルクレティア。
少しだけ不安になる。
まだ二人は知らない。
テレビ局スタッフ達が。
思った以上に。
ロマネスコへ興味津々である事を。
第2話
「打ち合わせ」
昼。
テレビ局。
その頃。
nike。
緊張。
ルクレティア。
少し緊張。
二人とも。
表には出さない。
しかし。
初めての料理番組。
さすがに緊張する。
テレビ局入口。
スタッフ。
「本日はよろしくお願いします!」
元気。
明るい。
その瞬間。
nike。
少し頭を下げる。
「よろしくお願いします」
ルクレティア。
「よろしくお願いいたします」
そして。
会議室。
打ち合わせ開始。
スタッフ。
資料を広げる。
「今回のテーマは」
数秒。
「家庭菜園で楽しむお手軽レシピです」
nike。
頷く。
得意分野だった。
その時。
スタッフ。
少し笑う。
「Gleam Gardenさんを調べていたら」
「園芸が趣味の方が居ると知りまして」
nike。
少し困った顔。
「私ですね」
「ぜひお願いしたいです!」
かなり嬉しそうだった。
その頃。
ルクレティア。
資料を見る。
家庭菜園。
ハーブ。
季節野菜。
初心者向け。
完全にnike向け。
「なるほど」
「これは確かに」
「ニケちゃん向きね」
そして。
質問タイム。
スタッフ。
「育てている野菜とかありますか?」
nike。
少し考える。
「ハーブ類」
「ミニトマト」
「花も育てています」
スタッフ。
メモ。
メモ。
メモ。
質問。
止まらない。
「初心者向けは?」
「失敗しにくいのは?」
「ベランダでも育ちますか?」
「虫対策は?」
nike。
普通に答える。
答える。
答える。
答える。
その頃。
ルクレティア。
静かに思う。
(詳しいわね)
当たり前だった。
趣味なのだから。
しかし。
テレビ局で聞くと。
妙に専門家っぽかった。
その時。
スタッフ。
ふと思い出したように聞く。
「好きな野菜とかありますか?」
nike。
即答。
「ロマネスコです」
静止。
スタッフ。
「ロマネ……?」
nike。
「ロマネスコです」
スタッフ。
「初めて聞きました」
ルクレティア。
静かに紅茶を置く。
嫌な予感。
そして。
十分後。
まだロマネスコの話をしていた。
スタッフ。
「へぇぇぇ……」
「面白い形ですね!」
「カリフラワーの仲間なんですか!?」
「栄養もあるんですね!」
nike。
楽しそう。
説明している。
その頃。
ルクレティア。
窓の外を見る。
(始まったわね)
完全に始まっていた。
さらに。
スタッフ。
「写真あります?」
nike。
スマホを出す。
ロマネスコ。
ロマネスコ。
ロマネスコ。
ロマネスコ。
スタッフ。
「凄い……」
感動している。
ルクレティア。
少しだけ笑う。
(全国放送で紹介されそうね)
そして。
本題。
料理。
今回作るもの。
■ ハーブチキンの温野菜プレート
■ 季節野菜の簡単スープ
初心者向け。
家庭でも再現可能。
スタッフ。
「難しい事はやりません」
「見た方が作れる内容にしたいので」
nike。
安心。
ルクレティア。
安心。
そして。
試作。
切る。
混ぜる。
盛り付ける。
完成。
数秒。
スタッフ。
静止。
「綺麗」
nike。
「ありがとうございます」
スタッフ。
「お店みたいです」
ルクレティア。
見る。
確かに。
綺麗だった。
ハーブ。
野菜。
色合い。
盛り付け。
全部まとまっている。
その時。
スタッフ。
ぽつり。
「エディブルフラワーも使います?」
静止。
nike。
「使えます」
スタッフ。
目が輝く。
ルクレティア。
また嫌な予感。
数分後。
試作品。
さらに綺麗になる。
スタッフ。
大喜び。
「映えますね!!」
「凄く映えます!!」
その頃。
ルクレティア。
静かに思う。
(料理番組よね?)
(園芸雑誌ではないわよね?)
しかし。
綺麗だった。
悔しいが綺麗だった。
そして。
打ち合わせ終了。
帰り道。
廊下。
nike。
少し緊張した顔。
「大丈夫でしょうか」
ルクレティア。
少し笑う。
「大丈夫よ」
「今日と同じように話せばいいわ」
「本番も」
nike。
少し安心する。
その時。
ルクレティア。
ぽつり。
「ただ」
「?」
「全国放送で」
「ロマネスコが紹介される未来は」
「私も予想していなかったわ」
数秒。
nike。
笑う。
ルクレティア。
少し笑う。
こうして。
本番前日。
準備は整った。
そして。
翌日。
生放送が始まる。
第3話
「本番」
昼。
テレビ局。
生放送当日。
控室。
nike。
少し緊張。
手元の台本を見る。
もう一回見る。
さらに見る。
その横。
ルクレティア。
紅茶。
平常運転。
nike。
「……緊張しませんか?」
ルクレティア。
「少しは」
数秒。
「でも本番が始まったら考える暇は無いわ」
nike。
少し笑う。
確かにそうだった。
その時。
スタッフ。
「本番五分前です!」
いよいよだった。
そして。
スタジオ。
照明。
カメラ。
料理台。
観覧席。
いつもの昼の料理コーナー。
司会者。
「本日のゲストはこちら!」
「Gleam Gardenのnikeさん」
「ルクレティアさんです!」
拍手。
二人。
挨拶。
少し緊張。
でも。
落ち着いていた。
その頃。
共有ルーム。
テレビ前。
アオロビ。
「始まった」
ちょこみんと。
「映った!」
La lune bleue .。
「頑張れにゃー」
ぴたぽん。
「テレビぽん〜」
観戦開始。
そして。
本日の料理。
■ ハーブチキンの温野菜プレート
■ 季節野菜の簡単スープ
家庭でも作れる。
簡単レシピ。
司会者。
「では早速お願いします!」
調理開始。
鶏肉。
ハーブ。
野菜。
切る。
混ぜる。
盛り付ける。
手順はシンプル。
その分。
手際が見える。
司会者。
「nikeさんは普段から料理を?」
nike。
「趣味の延長ですね」
「育てた野菜を使う事が多いです」
司会者。
「素敵ですね」
自然な会話。
その横。
ルクレティア。
補助。
盛り付け。
段取り。
片付け。
異様に上手い。
司会者。
少し笑う。
「ルクレティアさん慣れてますね」
ルクレティア。
「料理は段取りが大事ですから」
その頃。
共有ルーム。
アオロビ。
「先生だ」
ローシャ。
「先生ね」
La lune bleue .。
「料理教室にゃ」
爆笑。
そして。
中盤。
司会者。
「こちらのお野菜は?」
テーブル。
ロマネスコ。
登場。
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「出た」
アオロビ。
「出たな」
La lune bleue .。
「出たにゃ」
その頃。
nike。
説明。
「カリフラワーの仲間です」
「見た目は特徴的ですが食べやすいですよ」
司会者。
「面白い形ですね!」
数十秒。
それだけだった。
料理番組だから。
ロマネスコ特番ではない。
その後。
順調。
順調。
順調。
そして。
完成。
ハーブ。
温野菜。
スープ。
エディブルフラワー。
彩り。
綺麗。
司会者。
思わず声が出る。
「美味しそう!」
拍手。
試食。
一口。
静止。
その後。
笑顔。
「美味しい!」
「優しい味ですね!」
nike。
少し安心。
ルクレティア。
少し安心。
そして。
司会者。
「本日はありがとうございました!」
拍手。
生放送終了。
数秒。
静止。
nike。
大きく息を吐く。
「終わりました……」
ルクレティア。
少し笑う。
「大成功だったわ」
スタッフ達。
拍手。
「ありがとうございました!」
「とても分かりやすかったです!」
「料理も綺麗でした!」
nike。
少し照れる。
その頃。
共有ルーム。
番組終了。
ちょこみんと。
「良かったー!!」
ぴたぽん。
「成功ぽん〜!」
みるく。
「綺麗でした」
ローシャ。
「安心して見ていられたわね」
アオロビ。
頷く。
「普通に料理番組だった」
その瞬間。
La lune bleue .。
「何だと思ってたにゃ?」
共有ルーム。
爆笑。
そして。
数時間後。
SNS。
検索欄。
じわじわと。
反応が集まり始めていた。
第4話
「エゴサ回」
夜。
共有ルーム。
料理番組出演。
無事終了。
その頃。
アオロビ。
スマホを見る。
数秒。
「そろそろかな」
ちょこみんと。
即反応。
「エゴサ!?」
La lune bleue .。
「始まったにゃ」
恒例だった。
テレビ出演後。
大体こうなる。
その頃。
nike。
少し困った顔。
「そんなに反応ありますか?」
共有ルーム。
静止。
数秒。
ルクレティア。
「あるわよ」
ローシャ。
「かなり」
ぴたぽん。
「あるもじゃ」
満場一致。
そして。
検索。
検索。
検索。
数分後。
アオロビ。
「あった」
ちょこみんと。
覗き込む。
最初の投稿。
『またGleam Garden出てる』
共有ルーム。
頷く。
自然だった。
次。
『今度は料理番組なんだ』
『ライブ以外も色々やるな』
『最近テレビでよく見る』
ローシャ。
笑う。
「なんだかんだ増えたわね」
ルクレティア。
苦笑。
否定できなかった。
その時。
みるく。
「あっ」
画面を見る。
『nikeさんって新メンバー?』
静止。
共有ルーム。
反応。
La lune bleue .。
「来たにゃ」
ぴたぽん。
「初めて見る人多いぽん〜」
確かに。
nikeは。
ラジオ。
温泉同好会。
出演経験はある。
しかし。
今回みたいに。
単独で目立つ立場は初めてだった。
続く投稿。
『落ち着いた話し方で良かった』
『料理上手だった』
『園芸好きなの意外』
『優しそうな人だった』
nike。
静止。
少し照れる。
「そんな風に見えるんですね」
ルクレティア。
「そのまま見えていると思うわよ」
その頃。
アオロビ。
別の投稿発見。
『ロマネスコ好きなの面白い』
共有ルーム。
爆笑。
nike。
「やっぱりそこですか」
ローシャ。
「そこね」
La lune bleue .。
「そこにゃ」
アオロビ。
「そこだな」
満場一致だった。
さらに。
『ロマネスコ初めて知った』
『調べた』
『食べてみたい』
『近所に売ってない』
ぴたぽん。
「ロマネスコ人気ぽん〜」
ちょこみんと。
笑い始める。
「全国ロマネスコ化計画!」
「何それ」
即ツッコミ。
その時。
チノ。
画面を見せる。
『温泉同好会の時の子達だ』
静止。
共有ルーム。
反応。
ルクレティア。
嫌な予感。
次。
『今回は平和だった』
『温泉回との温度差すごい』
『ちゃんと料理番組だった』
共有ルーム。
爆笑。
アオロビ。
「比較対象が温泉」
ローシャ。
「仕方ないわね」
La lune bleue .。
「伝説だったにゃ」
ルクレティア。
「忘れてください……」
即答。
さらに。
『ルクレティアさん進行上手だった』
『安心して見られた』
『補助役完璧だった』
ルクレティア。
少し照れる。
しかし。
その横。
ちょこみんと。
ニヤニヤ。
La lune bleue .。
ニヤニヤ。
アオロビ。
ニヤニヤ。
ルクレティア。
「何かしら」
全員。
目を逸らす。
爆笑。
その後。
一時間。
エゴサ終了。
結果。
料理。
好評。
nike。
好評。
ロマネスコ。
予想以上に好評。
そして。
Gleam Garden。
相変わらず色んな方向で認知されていた。
その頃。
nike。
少し笑う。
「安心しました」
ルクレティア。
頷く。
「良い仕事だったわ」
その時。
ちょこみんと。
勢いよく立ち上がる。
「次は私も出たい!」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「闇鍋」
ローシャ。
「トウモロコシ」
La lune bleue .。
「却下にゃ」
ルクレティア。
「却下」
満場一致。
ちょこみんと。
「なんでぇぇぇ!!」
共有ルーム。
大爆笑。
こうして。
お料理番組出演企画は。
平和に。
そして少しだけ。
ロマネスコと共に。
幕を閉じたのである。
112:みんなを動物に例えると?
夜。
共有ルーム。
平和だった。
珍しく。
本当に平和だった。
その頃。
La lune bleue .。
ソファで猫動画を見ていた。
数秒。
ぽつり。
「そういえば」
「ん?」
アオロビ。
「みんな動物に例えると何になるにゃ?」
静止。
共有ルーム。
少し考える。
ちょこみんと。
「面白そう!!」
ぴたぽん。
「やるぽん〜!」
即決だった。
そして。
最初。
La lune bleue .。
数秒。
全員。
「猫」
即答。
La lune bleue .。
「知ってたにゃ」
終了。
最速だった。
爆笑。
次。
アオロビ。
静止。
ローシャ。
「フクロウ」
ルクレティア。
頷く。
「フクロウね」
チノ。
「フクロウです」
満場一致。
アオロビ。
「なんで?」
ローシャ。
「観察してるから」
ルクレティア。
「考えてるから」
La lune bleue .。
「高い所から見てるにゃ」
アオロビ。
少し考える。
「まぁ分かる」
納得した。
次。
ちょこみんと。
静止。
数秒。
アオロビ。
「犬」
ローシャ。
「犬ね」
La lune bleue .。
「大型犬にゃ」
チノ。
「大型犬です」
満場一致。
ちょこみんと。
「なんでぇぇぇ!?」
爆笑。
ルクレティア。
「人懐っこい」
ぴたぽん。
「元気ぽん〜」
みるく。
「誰とでも仲良くなります」
ちょこみんと。
静止。
「否定できない……」
共有ルーム。
爆笑。
次。
ローシャ。
静止。
少し悩む。
その時。
La lune bleue .。
ぽつり。
「狐」
共有ルーム。
静止。
ルクレティア。
「分かるわね」
アオロビ。
「分かる」
チノ。
「分かります」
満場一致。
ローシャ。
「どういう意味?」
アオロビ。
「賢そう」
La lune bleue .。
「夜っぽい」
ルクレティア。
「話が上手」
ローシャ。
少し笑う。
「悪くないわね」
次。
ティラミス。
静止。
数秒。
ぴたぽん。
「黒猫ぽん〜」
La lune bleue .。
「黒猫にゃ」
アオロビ。
「黒猫だな」
満場一致。
ティラミス。
「……別に」
その反応も。
黒猫だった。
爆笑。
次。
ルクレティア。
静止。
数秒。
ローシャ。
「白鳥」
アオロビ。
「白鳥だ」
La lune bleue .。
「白鳥にゃ」
満場一致。
ルクレティア。
少し困る。
「そうかしら?」
アオロビ。
ぽつり。
「白鳥って」
「水面下めっちゃ頑張ってるんだよね」
静止。
ルクレティア。
「何が言いたいのかしら」
アオロビ。
目を逸らす。
共有ルーム。
爆笑。
次。
ぴたぽん。
静止。
みるく。
「羊」
チノ。
「羊ですね」
ローシャ。
「羊だわ」
満場一致。
ぴたぽん。
「もふもふぽん〜♪」
本人も満足そうだった。
次。
みるく。
静止。
数秒。
アオロビ。
「うさぎ」
ローシャ。
「うさぎね」
La lune bleue .。
「うさぎにゃ」
満場一致。
みるく。
少し照れる。
「そうですか……?」
かなりそうだった。
次。
チノ。
静止。
少し悩む。
その時。
ルクレティア。
ぽつり。
「カワウソ」
共有ルーム。
静止。
数秒。
アオロビ。
「あー」
ローシャ。
「あー」
La lune bleue .。
「あー」
満場一致。
チノ。
「どういう意味ですか」
ルクレティア。
「働き者」
ローシャ。
「ずっと動いてる」
アオロビ。
「可愛い」
チノ。
静止。
少し複雑そう。
共有ルーム。
爆笑。
そして。
最後。
nike。
静止。
数秒。
ぴたぽん。
「鹿ぽん〜」
ルクレティア。
「鹿ね」
ローシャ。
「鹿だわ」
満場一致。
nike。
「鹿ですか?」
La lune bleue .。
「花畑に居そうにゃ」
アオロビ。
「自然とセット」
チノ。
「違和感ありません」
nike。
少し考える。
そして。
笑う。
「確かに」
納得した。
その後。
全員。
自分以外の動物像について語り始める。
犬。
狐。
白鳥。
羊。
うさぎ。
カワウソ。
鹿。
フクロウ。
黒猫。
猫。
その頃。
La lune bleue .。
満足そうに言う。
「結論」
「ん?」
アオロビ。
La lune bleue .。
胸を張る。
「にゃんころは猫」
静止。
数秒。
全員。
「知ってる」
即答。
共有ルーム。
大爆笑。
こうして。
Gleam Garden動物会議は。
何の結論も出ないまま。
平和に終わったのである。
113:日課
夜。
共有ルーム。
平和だった。
珍しく。
本当に平和だった。
その頃。
アオロビ。
スマホを見ながら。
ふと思う。
「そういえば」
「ん?」
ちょこみんと。
アオロビ。
「みんなの日課って何?」
静止。
共有ルーム。
少し考える。
ローシャ。
「急ね」
アオロビ。
「いや」
「毎日やってる事ってあるのかなって」
その時。
ルクレティア。
少し笑う。
「面白そうね」
採用。
決定。
そして。
最初。
アオロビ。
「私は」
数秒。
「ニュース確認」
「SNS確認」
「機材確認」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「仕事人間だ」
ローシャ。
「想像通りね」
アオロビ。
少し困る。
否定できなかった。
次。
ちょこみんと。
胸を張る。
「アイス!」
静止。
「アイス」
「アイス」
「アイスにゃ」
満場一致。
ちょこみんと。
「あとお菓子!」
アオロビ。
「予想通り」
爆笑。
次。
ローシャ。
少し考える。
「猫の世話」
「コーヒー」
「読書」
共有ルーム。
頷く。
La lune bleue .。
「猫好き仲間にゃ」
ローシャ。
少し笑う。
確かに。
次。
ティラミス。
静止。
数秒。
「ドール確認」
静止。
アオロビ。
「確認?」
ティラミス。
「配置」
「調整」
「掃除」
共有ルーム。
静止。
ローシャ。
「本当に好きなのね」
ティラミス。
頷く。
当然だった。
次。
ルクレティア。
「予定確認」
「仕事整理」
「連絡確認」
静止。
ちょこみんと。
「プロデューサーだ」
アオロビ。
「プロデューサーだな」
本人は否定しなかった。
次。
La lune bleue .。
胸を張る。
「猫動画」
静止。
「猫画像」
「猫巡回」
「猫」
共有ルーム。
爆笑。
アオロビ。
「知ってた」
ローシャ。
「知ってたわ」
ルクレティア。
「予想通りね」
満場一致だった。
次。
ぴたぽん。
「お茶ぽん〜」
「散歩ぽん〜」
「みんなの様子見るぽん〜」
静止。
アオロビ。
「保護者」
ローシャ。
「保護者ね」
ぴたぽん。
「なんでぽん〜?」
爆笑。
次。
みるく。
少し考える。
「読書です」
「コーヒーです」
「あと」
静止。
「ぼーっとします」
共有ルーム。
少し静かになる。
アオロビ。
「分かる」
ローシャ。
「分かるわ」
意外と共感された。
次。
チノ。
「掃除」
「整理整頓」
「お手伝い探し」
静止。
ルクレティア。
少し笑う。
「ちーちゃんらしいわね」
チノ。
「落ち着きませんので」
本音だった。
そして。
最後。
nike。
少し考える。
「コーヒーです」
頷く。
知っていた。
「あと」
「水やり」
「植物確認」
「花の様子を見る事ですね」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「自然だ」
アオロビ。
「自然だな」
La lune bleue .。
「鹿にゃ」
nike。
少し笑う。
以前の動物会議を思い出した。
その後。
雑談。
誰の日課が一番普通か。
誰の日課が一番変か。
話は広がる。
その時。
アオロビ。
ふと思う。
「意外と普通だな」
ルクレティア。
頷く。
「日課なんてそんなものよ」
確かに。
みんな違う。
でも。
それぞれらしい。
その時。
La lune bleue .。
胸を張る。
「にゃんころは毎日猫動画見るにゃ」
静止。
数秒。
全員。
「知ってる」
即答。
共有ルーム。
大爆笑。
こうして。
Gleam Gardenの日課会議は。
特に結論も出ないまま。
平和に終わったのである。
114:料理当番『ローシャ編』
(全2話)
第1話 ― “何食べたい?” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
ローシャ。
共有カレンダーを見る。
数秒。
静止。
「……あら」
今日。
料理当番。
自分だった。
その時。
ローシャ。
少し考える。
冷蔵庫。
確認。
食材。
確認。
しかし。
何を作るか。
決まらない。
その時。
アオロビ。
飲み物を取りに来る。
「ローシャさん?」
ローシャ。
振り向く。
「今日の夕飯担当なのだけれど」
「何を作ろうか悩んでいて」
アオロビ。
少し考える。
「皆に聞いてみたら?」
ローシャ。
静止。
数秒。
「……それね」
採用。
数分後。
共有ルーム。
全員集合。
ちょこみんと。
「なになにー?」
ぴたぽん。
「会議ぽん?」
La lune bleue .。
「にゃ?」
その時。
ローシャ。
説明。
「今日の夕飯」
「皆は何が食べたい?」
静止。
数秒。
ちょこみんと。
即答。
「ハンバーグ!」
速い。
アオロビ。
「私はカレーかな」
速い。
ぴたぽん。
「煮魚ぽん〜」
方向性が違う。
みるく。
「……オムライス」
さらに違う。
チノ。
「肉じゃがです」
もう違う。
ローシャ。
メモ。
メモ。
メモ。
その時。
La lune bleue .。
「魚にゃ」
ローシャ。
「魚料理希望、と」
La lune bleue .。
「にゃ」
納得。
その時。
ローシャ。
ティラミスを見る。
「ティラさんは?」
ティラミス。
少し考える。
数秒。
「……何でも」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「一番困るやつだ」
爆笑。
ローシャ。
苦笑。
「参考にならないわね」
ティラミス。
「……ローシャに任せる」
ローシャ。
少し笑う。
「それは信頼として受け取っておくわ」
その頃。
nike。
少し考える。
「野菜は欲しいですね」
ローシャ。
頷く。
「ありがとう」
数秒。
「ようやく献立の話になったわ」
共有ルーム。
爆笑。
その横。
ルクレティア。
「栄養バランスも考えましょう」
ローシャ。
さらに頷く。
「ありがとう」
「本当にありがとう」
かなり切実だった。
その頃。
ちょこみんと。
不服。
「ハンバーグも献立だよ!?」
アオロビ。
「カレーも献立だよ?」
ぴたぽん。
「煮魚もぽん〜」
確かに。
全員。
言っている事は正しい。
しかし。
全部違う。
ローシャ。
メモを見る。
ハンバーグ。
カレー。
煮魚。
オムライス。
肉じゃが。
魚料理。
何でも。
野菜。
栄養バランス。
静止。
数秒。
ローシャ。
ぽつり。
「統一性が無い」
共有ルーム。
大爆笑。
La lune bleue .。
「見事にバラバラにゃ」
チノ。
「全員違いますね」
みるく。
「ここまで違うんですね……」
その時。
ルクレティア。
少し笑う。
「リズさんが一番大変そうね」
ローシャ。
遠い目。
「今さら気付いたわ」
爆笑。
しかし。
ローシャ。
改めてメモを見る。
皆の希望。
皆の好み。
そして。
少し考える。
数秒。
さらに考える。
そして。
小さく笑った。
「……何とかなるかしら」
アオロビ。
「決まったの?」
ローシャ。
頷く。
「ええ」
「全員の希望を少しずつ反映してみるわ」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「できるの!?」
ローシャ。
少し笑う。
「できるかどうかは」
数秒。
「夕飯までのお楽しみね」
その笑顔。
どこか自信があった。
こうして。
ローシャの料理当番は。
予想以上に難易度の高いものになったのである。
第2話 ― “いただきます” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
ちょこみんと。
そわそわ。
そわそわ。
落ち着かない。
アオロビ。
見ている。
「ちょこ姉」
「なに?」
「うるさい」
共有ルーム。
爆笑。
その時。
キッチン。
ローシャ。
最後の仕上げ。
盛り付け。
確認。
スープ。
確認。
そして。
数分後。
ローシャ。
食卓へ現れる。
「できたわよ」
その瞬間。
全員。
立ち上がる。
速い。
そして。
食卓。
並んだ料理。
数秒。
静止。
ちょこみんと。
「おおー!」
ぴたぽん。
「豪華ぽん〜!」
アオロビ。
少し驚く。
確かに。
予想以上だった。
メイン。
■ 煮込みハンバーグ
付け合わせ。
■ 温野菜サラダ
副菜。
■ 肉じゃが
汁物。
■ 野菜たっぷりスープ
さらに。
小鉢。
■ 焼き魚
共有ルーム。
静止。
数秒。
アオロビ。
「全部入ってる」
ローシャ。
「頑張ったもの」
その横。
ルクレティア。
少し笑う。
「本当に全部入れたのね」
ローシャ。
頷く。
「ハンバーグ」
「魚」
「肉じゃが」
「野菜」
「栄養バランス」
「全部回収したわ」
その時。
ティラミス。
料理を見る。
数秒。
「……凄い」
ローシャ。
少し笑う。
珍しく褒められた。
その頃。
ちょこみんと。
待てない。
「いただきます!!」
フライング気味。
アオロビ。
「早いよ」
しかし。
全員。
既に箸を持っていた。
そして。
いただきます。
実食開始。
最初。
ちょこみんと。
ハンバーグ。
一口。
静止。
その後。
笑顔。
「美味しい!」
満面。
ローシャ。
少し安心。
次。
ぴたぽん。
焼き魚。
一口。
「おいしいぽん〜」
ほわほわ。
幸せそう。
その頃。
みるく。
肉じゃが。
一口。
静かに頷く。
「好きです」
かなり高評価。
その横。
チノ。
同じく肉じゃが。
「美味しいです」
即答。
ローシャ。
少し笑う。
その時。
nike。
温野菜。
一口。
「野菜が甘いですね」
ローシャ。
頷く。
「旬だから」
nike。
嬉しそう。
その頃。
ルクレティア。
スープ。
一口。
静止。
数秒。
「落ち着く味ね」
ローシャ。
少し照れる。
珍しかった。
そして。
アオロビ。
全体を見る。
ハンバーグ。
肉じゃが。
魚。
野菜。
スープ。
数秒。
「ローシャさん」
「なに?」
「これよく纏めたね」
共有ルーム。
頷く。
満場一致。
ローシャ。
苦笑。
「私もそう思うわ」
爆笑。
その時。
La lune bleue .。
焼き魚。
幸せそう。
「魚にゃ〜」
満足。
その横。
ティラミス。
ハンバーグ。
もぐもぐ。
静か。
平和。
その時。
アオロビ。
ふと思う。
「ティラさん」
「?」
「今日は何も足さないの?」
共有ルーム。
静止。
数秒。
全員。
ティラミスを見る。
ティラミス。
静止。
そして。
ぽつり。
「……そのままで美味しい」
共有ルーム。
静止。
数秒後。
ローシャ。
少し笑う。
「それが一番嬉しい感想かもしれないわね」
ティラミス。
頷く。
その頃。
ちょこみんと。
ハンバーグ。
おかわり。
二個目。
アオロビ。
「早くない?」
ぴたぽん。
「みんとしゃん絶好調ぽん〜」
爆笑。
こうして。
ローシャの料理当番は。
全員満足。
大成功で終わったのである。
115:料理当番『アオロビ編』
(全2話)
第1話 ― “無理” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
アオロビ。
共有カレンダーを見る。
数秒。
静止。
「……あ」
今日。
料理当番。
自分だった。
その時。
アオロビ。
冷蔵庫を開く。
食材確認。
数秒。
「何作ろうかな……」
少し悩む。
その時。
ちょこみんと。
ひょこっと現れる。
「おっ?」
「あおちー料理当番?」
アオロビ。
頷く。
「そうなんだよ」
「何作るか考えてて」
ちょこみんと。
即答。
「グラタン!」
アオロビ。
「まだ聞いてない」
爆笑。
数分後。
共有ルーム。
全員集合。
アオロビ。
説明。
「今日の夕飯なんだけど」
「一応参考までに聞くね」
「皆、何食べたい?」
その瞬間。
ちょこみんと。
「グラタン!」
速い。
ぴたぽん。
「炊き込みご飯ぽん〜」
みるく。
「……シチュー」
チノ。
「生姜焼きです」
La lune bleue .。
「唐揚げにゃ」
nike。
「スープがあると嬉しいですね」
ルクレティア。
「温かい物が良いわね」
アオロビ。
メモ。
メモ。
メモ。
その時。
アオロビ。
「ティラさんは?」
ティラミス。
少し考える。
数秒。
「……肉」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「一番具体的かもしれない」
爆笑。
ティラミス。
「?」
本人。
無自覚。
その頃。
アオロビ。
メモを見る。
グラタン。
炊き込みご飯。
シチュー。
生姜焼き。
唐揚げ。
スープ。
温かい物。
肉。
静止。
数秒。
さらに。
静止。
その後。
アオロビ。
ぽつり。
「無理」
共有ルーム。
静止。
数秒後。
大爆笑。
ちょこみんと。
「早いよあおちー!?」
La lune bleue .。
「諦めるの早いにゃ!」
ぴたぽん。
「アオしゃん、まだ考えるぽん〜!」
アオロビ。
首を振る。
「いやいや」
「ろしゃろしゃじゃないんだから」
「全部は無理だって」
その瞬間。
ローシャ。
吹き出す。
「ろしゃろしゃって何よ」
ちょこみんと。
得意げ。
「ろしゃろしゃはろしゃろしゃだよ!」
意味不明だった。
共有ルーム。
爆笑。
その頃。
アオロビ。
再びメモを見る。
数秒。
考える。
考える。
考える。
そして。
顔を上げる。
「決めた」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「何!?」
アオロビ。
即答。
「カレー」
数秒。
静止。
ぴたぽん。
「カレーぽん?」
アオロビ。
頷く。
「私が作れる」
「失敗しない」
「肉入れられる」
「野菜も入れられる」
さらに。
「スープ代わりにもなる」
nike。
頷く。
「確かに」
アオロビ。
続ける。
「唐揚げはトッピング」
「温かい」
「以上」
共有ルーム。
静止。
数秒。
ルクレティア。
少し笑う。
「アオちゃんらしいわね」
ローシャ。
頷く。
「凄く合理的」
アオロビ。
「でしょ?」
少し得意げ。
その時。
ちょこみんと。
手を挙げる。
「グラタンは?」
アオロビ。
即答。
「無い」
共有ルーム。
大爆笑。
ちょこみんと。
「えぇぇぇぇ!?」
「グラタン食べたかったのにー!」
その横。
ティラミス。
ぽつり。
「……肉ある」
ちょこみんと。
静止。
反論できない。
共有ルーム。
再び大爆笑。
こうして。
アオロビの料理当番は。
ローシャ方式ではなく。
アオロビ方式で進む事になったのである。
第2話 ― “だからカレー” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
ちょこみんと。
そわそわ。
そわそわ。
落ち着かない。
アオロビ。
鍋をかき混ぜながら。
「ちょこ姉」
「なにー?」
「まだだから」
共有ルーム。
爆笑。
ちょこみんと。
「だって良い匂いなんだもん!」
その頃。
キッチン。
アオロビ。
最後の確認。
鍋。
確認。
唐揚げ。
確認。
数秒。
頷く。
「よし」
そして。
数分後。
アオロビ。
料理を運ぶ。
「できたよー」
その瞬間。
全員。
集合。
速い。
そして。
食卓。
並んだ料理。
数秒。
静止。
ちょこみんと。
「えっ」
ぴたぽん。
「おぉ〜」
その中央。
■ 野菜ゴロゴロ特製カレー
その横。
■ 唐揚げ
以上。
共有ルーム。
静止。
数秒。
ちょこみんと。
「潔い!!」
共有ルーム。
爆笑。
アオロビ。
「言ったじゃん」
「だからカレーって」
その時。
ローシャ。
少し笑う。
「確かに言っていたわね」
ルクレティア。
頷く。
「一切ぶれていないわ」
アオロビ。
少し得意げ。
「でしょ?」
その頃。
nike。
カレーを見る。
数秒。
「野菜凄いですね」
アオロビ。
頷く。
「ニケさん対策」
nike。
少し笑う。
納得。
その横。
ティラミス。
鍋を見る。
数秒。
「……肉」
アオロビ。
「入ってる」
ティラミス。
頷く。
納得。
その時。
La lune bleue .。
唐揚げを見る。
「唐揚げにゃ」
幸せそう。
アオロビ。
「ネコさん対策」
La lune bleue .。
「良い対策にゃ」
満足。
その頃。
ルクレティア。
カレーを見る。
「温かいわね」
アオロビ。
「ルクさん対策」
ルクレティア。
少し笑う。
「そういう事なのね」
その時。
ぴたぽん。
首を傾げる。
「炊き込みご飯は〜?」
アオロビ。
即答。
「無理」
共有ルーム。
大爆笑。
ぴたぽん。
「即答ぽん〜!?」
アオロビ。
「ローシャさんじゃないんだから」
「全部は作れないって」
ローシャ。
吹き出す。
「便利な言葉になってきたわね、それ」
そして。
全員。
「いただきます」
実食開始。
最初。
ちょこみんと。
カレー。
一口。
静止。
数秒。
笑顔。
「美味しい!」
満面。
アオロビ。
少し安心。
その頃。
nike。
野菜。
もぐもぐ。
「ちゃんと煮込まれてますね」
アオロビ。
「野菜残すと怒られそうだから」
ルクレティア。
「誰に?」
アオロビ。
「ニケさんに」
nike。
「怒りませんよ?」
共有ルーム。
爆笑。
その横。
La lune bleue .。
唐揚げ。
もぐもぐ。
幸せそう。
「唐揚げにゃ〜」
アオロビ。
「カレーより唐揚げ食べてない?」
La lune bleue .。
「気のせいにゃ」
気のせいではなかった。
その頃。
ティラミス。
黙々。
カレー。
もぐもぐ。
静か。
平和。
その時。
アオロビ。
「ティラさん」
「?」
「どう?」
ティラミス。
少し考える。
数秒。
「……美味しい」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「やった」
少し嬉しそう。
その時。
ちょこみんと。
ぽつり。
「でもさ」
アオロビ。
嫌な予感。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「今度グラタン作ろ?」
共有ルーム。
爆笑。
アオロビ。
即答。
「ちょこ姉が作って」
静止。
ちょこみんと。
「えっ」
ローシャ。
「次の料理当番かしら?」
ルクレティア。
「頑張ってちょこちゃん」
La lune bleue .。
「楽しみにしてるにゃ」
共有ルーム。
ちょこみんと。
固まる。
数秒。
「……ろしゃろしゃ助けて」
ローシャ。
「嫌よ」
共有ルーム。
大爆笑。
こうして。
アオロビの料理当番は。
ローシャのような器用さではなく。
アオロビらしい合理性で。
大成功に終わったのである。
116:料理当番『ティラミス編』
(全2話)
第1話 ― “秘密” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
アオロビ。
共有カレンダーを見る。
数秒。
静止。
「そういえば」
「今日ティラさん料理当番だよね?」
ルクレティア。
頷く。
「そのはずだけれど」
その時。
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
周囲を見る。
数秒。
「ティラさん居ない」
チノ。
時計を見る。
「一時間ほど前にキッチンへ行きました」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
「えっ」
「そんな前から!?」
みるく。
少し驚く。
「本気ですね……」
その頃。
キッチン。
ティラミス。
既に作業中。
野菜。
下処理。
肉。
下処理。
鍋。
火にかかっている。
さらに。
別の鍋。
こちらも稼働中。
かなり本格的だった。
共有ルーム。
ローシャ。
少し考える。
「完成図があるのかしら」
ルクレティア。
微笑む。
「たぶんそうね」
「ティラちゃん、そういう所あるもの」
アオロビ。
「どういう所?」
ルクレティア。
少し考える。
数秒。
「途中を見せるより」
「完成した物を見せたいタイプ」
ローシャ。
納得。
「なるほど」
アオロビ。
「なるほどじゃないよ」
共有ルーム。
爆笑。
その頃。
ちょこみんと。
立ち上がる。
「見てこよう!」
アオロビ。
「あっ」
遅い。
キッチン。
ちょこみんと。
勢いよく入る。
「てぃらみー!」
ティラミス。
振り向く。
「?」
ちょこみんと。
笑顔。
「何作ってるのー?」
ティラミス。
数秒。
静止。
そして。
「……秘密」
ちょこみんと。
「まだ秘密なの!?」
数分後。
共有ルーム。
帰還。
ちょこみんと。
「秘密だった!」
アオロビ。
「知ってる」
爆笑。
その後。
アオロビ。
挑戦。
キッチンへ。
「ティラさん」
ティラミス。
「?」
アオロビ。
「ヒントだけ」
ティラミス。
数秒。
静止。
そして。
「……秘密」
アオロビ。
「鉄壁だ」
さらに。
La lune bleue .。
挑戦。
「にゃんころ特権にゃ」
ティラミス。
「……秘密」
La lune bleue .。
「通らないにゃ」
ぴたぽん。
挑戦。
「一口味見ならいいもじゃ?」
ティラミス。
「……まだ」
ぴたぽん。
「負けたぽん〜」
共有ルーム。
爆笑。
そして。
一時間後。
共有ルーム。
静かになる。
その代わり。
香り。
凄かった。
アオロビ。
鼻が反応する。
「待って」
「絶対美味しいやつだ」
La lune bleue .。
「凄いにゃ」
ぴたぽん。
「お腹空いてきたぽん〜」
その瞬間。
ぴたぽんのお腹。
ぐぅ。
共有ルーム。
静止。
数秒後。
大爆笑。
ぴたぽん。
「聞かなかった事にするぽん〜!」
その頃。
キッチン。
ティラミス。
最後の仕上げ。
確認。
確認。
確認。
一切妥協無し。
まるで。
作品を完成させるように。
静かに。
丁寧に。
作業を続ける。
その様子を見た。
ローシャ。
ぽつり。
「やっぱり芸術家ね」
ルクレティア。
微笑む。
「ええ」
「とてもティラちゃんらしいわ」
そして。
数分後。
キッチンの扉が開く。
全員。
反応する。
ティラミス。
静かに言う。
「……できた」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
勢いよく立ち上がる。
「やったーーー!!」
アオロビ。
「だから何作ったの?」
ティラミス。
少し考える。
数秒。
そして。
「……見れば分かる」
共有ルーム。
爆笑。
最後まで秘密だった。
そして。
誰も予想していなかった。
ティラミスの完成形が。
ついに姿を現そうとしていた。
第2話 ― “完成形” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
ティラミス。
静かに言う。
「……できた」
その瞬間。
ちょこみんと。
立ち上がる。
「やったーーー!!」
ぴたぽん。
「ご飯ぽん〜!」
La lune bleue .。
「待ってたにゃ」
全員。
食卓へ向かう。
そして。
数秒後。
共有ルーム。
静止。
全員。
止まる。
その理由。
食卓。
並んだ料理。
そこにあったのは。
■ ビーフシチュー
■ ローストビーフ
■ ポテトグラタン
■ 彩りサラダ
■ 焼きたてパン
だった。
共有ルーム。
静止。
数秒。
アオロビ。
「えっ」
ちょこみんと。
「えっ」
ぴたぽん。
「お店ぽん〜!?」
みるく。
「凄い……」
チノ。
静かに頷く。
「本格的です」
その頃。
ティラミス。
椅子へ座る。
いつも通り。
平然としている。
しかし。
食卓。
完全に洋食店だった。
その時。
ルクレティア。
少し笑う。
「なるほど」
ローシャ。
頷く。
「だから見せなかったのね」
ティラミス。
数秒。
そして。
「……最初からこれだった」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「完成図あったんだ」
ティラミス。
頷く。
「……うん」
ローシャ。
少し笑う。
「やっぱり芸術家ね」
そして。
全員。
席に着く。
ルクレティア。
「いただきましょうか」
全員。
「いただきます」
実食開始。
最初。
ちょこみんと。
ビーフシチュー。
一口。
静止。
数秒。
目が輝く。
「美味しい!!」
満面の笑み。
その瞬間。
ティラミス。
少しだけ。
嬉しそう。
本当に少しだけ。
その横。
ぴたぽん。
ローストビーフ。
もぐもぐ。
数秒。
「柔らかいぽん〜」
幸せそう。
La lune bleue .。
パン。
ビーフシチュー。
パン。
ビーフシチュー。
無限ループ。
アオロビ。
「ネコさん凄い勢いだね」
La lune bleue .。
「止まらないにゃ」
その頃。
nike。
サラダ。
一口。
静かに頷く。
「ちゃんと野菜もありますね」
ティラミス。
「……必要」
nike。
少し笑う。
「そうですね」
その横。
ルクレティア。
ビーフシチュー。
一口。
静止。
数秒。
微笑む。
「美味しいわ」
ティラミス。
少しだけ頷く。
その反応で十分だった。
その頃。
アオロビ。
ローストビーフ。
一口。
静止。
さらに。
ビーフシチュー。
一口。
静止。
その後。
「ティラさん」
ティラミス。
「?」
アオロビ。
「なんでこんなの作れるの?」
共有ルーム。
静止。
全員。
少し気になっていた。
ティラミス。
考える。
数秒。
さらに。
考える。
そして。
ぽつり。
「……作りたかったから」
共有ルーム。
静止。
ローシャ。
吹き出す。
「それだけ?」
ティラミス。
頷く。
「……うん」
ルクレティア。
少し笑う。
「ティラちゃんらしいわね」
アオロビ。
苦笑。
「ローシャさんなら皆の希望聞くし」
「私はカレーにするし」
「ティラさんは自分の作りたい物作るんだ」
ティラミス。
少し考える。
数秒。
「……そうかも」
本人。
自覚は薄かった。
その時。
ちょこみんと。
ポテトグラタン。
もぐもぐ。
幸せそう。
「てぃらみ!」
ティラミス。
「?」
ちょこみんと。
満面の笑み。
「また作って!」
共有ルーム。
笑う。
ティラミス。
数秒。
考える。
そして。
ぽつり。
「……気が向いたら」
ちょこみんと。
「やったー!」
まだ決まっていなかった。
その頃。
ローシャ。
食卓を見渡す。
笑顔。
楽しそうな皆。
空になっていく皿。
そして。
満足そうなティラミス。
その光景を見ながら。
ぽつり。
「料理も作品なのね」
ルクレティア。
微笑む。
「ええ」
「きっとそうなのよ」
こうして。
ティラミスの料理当番は。
誰の希望も聞かず。
誰にも途中を見せず。
自分だけの完成形を作り上げた。
それは。
ティラミスらしい。
少し不器用で。
とても綺麗な。
一つの作品だったのである。
117:料理当番『ちょこみんと編』
(全2話)
第1話 ― “みんなで食べたい!” ―
夜。
共有ルーム。
その頃。
ちょこみんと。
共有カレンダーを見る。
数秒。
静止。
「おっ」
今日。
料理当番。
自分だった。
その瞬間。
ちょこみんと。
笑顔。
「よーし!」
共有ルーム。
嫌な予感。
アオロビ。
「その”よーし”怖いんだけど」
爆笑。
数分後。
共有ルーム。
全員集合。
ルクレティア。
「今回は何を作るのかしら?」
ちょこみんと。
腕組み。
数秒。
そして。
「まだ決めてない!」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「えっ」
チノ。
「当番ですよね?」
ちょこみんと。
「うん!」
即答。
ルクレティア。
「当番なのよね?」
ちょこみんと。
「うん!」
即答。
共有ルーム。
爆笑。
その時。
ちょこみんと。
笑顔で言う。
「だから皆に聞こうと思って!」
ローシャ。
少し笑う。
「なるほどね」
ちょこみんと。
メモ帳を取り出す。
準備万端。
「何食べたいー?」
その瞬間。
ぴたぽん。
「お肉ぽん〜!」
即答。
ティラミス。
数秒。
「……肉」
チノ。
「肉です」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「肉率高いな」
爆笑。
みるく。
少し考える。
「……野菜も欲しいです」
nike。
頷く。
「野菜は欲しいですね」
アオロビ。
「そっちは一致した」
ルクレティア。
少し考える。
「魚介もあると嬉しいわね」
ちょこみんと。
メモ。
メモ。
La lune bleue .。
ぽつり。
「焼きおにぎり食べたいにゃ」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「急に具体的」
爆笑。
その頃。
ローシャ。
皆を見ながら。
少し考える。
そして。
ぽつり。
「皆でわいわい食べられる物が良いかもね」
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと。
メモ。
メモ。
メモ。
肉。
野菜。
魚介。
焼きおにぎり。
皆でわいわい。
静止。
数秒。
さらに。
静止。
その後。
ぱぁっ。
ちょこみんとの顔が輝く。
「決めた!!」
共有ルーム。
注目。
アオロビ。
「嫌な予感」
ちょこみんと。
満面の笑み。
「バーベキューしよう!!」
共有ルーム。
静止。
数秒。
アオロビ。
「なんでそうなったの?」
ちょこみんと。
指を折りながら説明する。
「お肉ある!」
「野菜ある!」
「魚介も焼ける!」
「焼きおにぎりも出来る!」
そして。
最後。
両手を広げる。
「みんなで食べられる!!」
共有ルーム。
静止。
数秒。
ルクレティア。
少し笑う。
「なるほど」
ローシャ。
頷く。
「理屈は通ってるわね」
チノ。
「確かに」
nike。
「合理的ではあります」
アオロビ。
「合理的……?」
若干納得していない。
その時。
ティラミス。
ぽつり。
「……肉ある」
共有ルーム。
爆笑。
ぴたぽん。
「ティラしゃんそれしか見てないぽん〜!」
La lune bleue .。
少し嬉しそう。
「焼きおにぎりにゃ」
こちらも満足。
みるく。
小さく笑う。
「楽しそうですね」
その瞬間。
ちょこみんと。
ガッツポーズ。
「決定!!」
「今から買い出し行こう!!」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「今から!?」
ちょこみんと。
「今から!」
即答。
ルクレティア。
時計を見る。
数秒。
「まだ夕方ね」
ローシャ。
苦笑。
「準備は間に合いそうね」
ぴたぽん。
「買い出しぽん〜!」
La lune bleue .。
「焼きおにぎり確保にゃ」
チノ。
「炭を準備します」
nike。
「野菜担当します」
みるく。
「お手伝いします……」
アオロビ。
周囲を見る。
数秒。
「なんで皆もうやる前提なの」
共有ルーム。
大爆笑。
その頃。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「絶対楽しいよ!!」
ローシャ。
少し笑う。
「ええ」
ルクレティア。
頷く。
「ちょこちゃんらしいわ」
アオロビ。
頭を抱える。
ぽつり。
「料理当番とは……」
誰も答えなかった。
こうして。
ちょこみんとの料理当番は。
普通の夕飯から。
Gleam Garden総出のバーベキュー大会へと進化したのである。
第2話 ― “ちょこみんとバーベキュー” ―
夕方。
Gleam Garden寮・庭。
その頃。
準備完了。
テーブル。
炭火。
食材。
大量。
かなり大量。
アオロビ。
食材を見る。
数秒。
静止。
「多くない?」
テーブル上。
■ 牛肉
■ 豚肉
■ 鶏肉
■ ソーセージ
■ 海老
■ ホタテ
■ イカ
■ 玉ねぎ
■ ピーマン
■ とうもろこし
■ かぼちゃ
■ 焼きおにぎり
さらに。
■ マシュマロ
アオロビ。
「多い」
即答。
共有庭。
爆笑。
その頃。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「だって皆の希望全部入れたかったんだもん!」
ローシャ。
苦笑。
「予想通りだったわ」
ルクレティア。
飲み物担当。
人数分を並べる。
「準備は良いかしら?」
ぴたぽん。
炭を見る。
「火も大丈夫ぽん〜!」
チノ。
焼き網確認。
「問題ありません」
ティラミス。
既に肉を焼いていた。
アオロビ。
「早い」
ティラミス。
「……肉」
チノ。
「肉ですね」
共有庭。
静止。
数秒後。
大爆笑。
そして。
ルクレティア。
微笑む。
「それでは」
全員。
注目。
「いただきましょうか」
全員。
「いただきます!」
バーベキュー開始。
最初。
ちょこみんと。
肉。
焼く。
焼く。
焼く。
アオロビ。
「ちょこ姉」
「ん?」
「食べなよ」
ちょこみんと。
静止。
数秒。
「あっ」
共有庭。
爆笑。
その頃。
La lune bleue .。
焼きおにぎり。
確保。
「勝ったにゃ」
アオロビ。
「何と戦ってるの」
La lune bleue .。
「焼きおにぎり争奪戦にゃ」
まだ始まっていなかった。
その横。
nike。
野菜を焼く。
玉ねぎ。
とうもろこし。
ピーマン。
綺麗。
みるく。
少し嬉しそう。
「美味しそう……」
その時。
ぴたぽん。
とうもろこし。
発見。
「とうもろこしぽん〜!」
数分後。
全員。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
平和。
かなり平和。
ローシャ。
ホタテ。
一口。
数秒。
「美味しい」
ルクレティア。
海老。
一口。
微笑む。
「良いわね」
アオロビ。
肉。
野菜。
肉。
野菜。
焼く。
焼く。
焼く。
ちょこみんと。
見ていた。
数秒。
「ありがとう!」
アオロビ。
「働いてるだけ」
共有庭。
笑う。
その頃。
ティラミス。
肉。
肉。
肉。
肉。
チノ。
肉。
肉。
肉。
肉。
共有庭。
静止。
アオロビ。
「ティラさんとチノさん」
「野菜食べてる?」
ティラミス。
数秒。
「……少し」
チノ。
「少しです」
共有庭。
大爆笑。
その時。
La lune bleue .。
焼きおにぎり。
二個目。
「幸せにゃ」
ぴたぽん。
「ネコしゃん本当に好きぽん〜」
その横。
みるく。
野菜。
もぐもぐ。
少し笑う。
「楽しいですね」
nike。
頷く。
「皆で食べると違いますね」
その言葉に。
ちょこみんと。
少し嬉しそう。
数秒。
庭を見る。
笑ってる皆。
肉を焼く人。
食べる人。
飲み物配るルクレティア。
火を見るぴたぽん。
静かに食べるティラミス。
楽しそうなネコちゃん。
その光景を見て。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「やって良かった!」
アオロビ。
苦笑。
「料理当番なのに?」
ちょこみんと。
即答。
「料理当番だからだよ!」
共有庭。
静止。
ルクレティア。
少し笑う。
「なるほど」
ローシャ。
頷く。
「みんとさんらしいわね」
アオロビ。
数秒。
そして。
少し笑う。
「まぁ」
「これはこれでアリか」
その瞬間。
ちょこみんと。
ガッツポーズ。
「やったー!!」
夕暮れ。
庭。
笑い声。
炭火。
美味しい匂い。
そして。
今日の料理当番は。
料理ではなく。
“楽しい夕飯の時間”を作った。
それが。
ちょこみんとらしい料理当番だったのである。
118:アークス戦技大会
(戦技内容は旧国ver)(全6話)
第1話 ― “戦技大会やるってよ” ―
セントラルシティ。
大型掲示板。
新着告知。
■ 第12回 アークス内戦技大会
■ ペアタイムアタック部門
■ 参加者募集中
その頃。
共有ルーム。
ちょこみんと。
端末を見る。
数秒。
静止。
そして。
「おっ」
アオロビ。
嫌な予感。
「その”おっ”はろくな事じゃない」
共有ルーム。
爆笑。
ちょこみんと。
端末を掲げる。
「戦技大会だって!」
ぴたぽん。
「大会ぽん?」
nike。
興味津々。
「どんな内容なんですか?」
その時。
ルクレティア。
端末を見る。
数秒。
頷く。
「ペアタイムアタックね」
大型モニター。
大会概要。
■ DOLLS殲滅
■ ギミック解除
■ スイッチ操作
■ ボス討伐
■ ゴール到達
総合タイムを競う。
nike。
少し驚く。
「かなり本格的ですね」
ルクレティア。
頷く。
「ええ」
「実戦形式の訓練に近いわ」
その瞬間。
ちょこみんと。
目が輝く。
「面白そう!!」
アオロビ。
嫌な予感。
La lune bleue .。
画面を見る。
「確かに楽しそうにゃ」
ローシャ。
少し笑う。
「たまにはこういうのも良いかもしれないわね」
ティラミス。
端末を見る。
数秒。
「……面白そう」
ぴたぽん。
「お祭りみたいぽん〜」
みるく。
少し考える。
「応援も楽しそうです」
チノ。
端末を見る。
「参加賞ありますか」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「そこ?」
爆笑。
その時。
ちょこみんと。
立ち上がる。
「出ようよ!」
共有ルーム。
静止。
アオロビ。
「軽いな!?」
ちょこみんと。
「だって面白そうだもん!」
La lune bleue .。
「それは否定出来ないにゃ」
ローシャ。
頷く。
「確かに」
ティラミス。
「……出ても良い」
ぴたぽん。
「見てみたいぽん〜」
アオロビ。
周囲を見る。
数秒。
静止。
「えっ」
「みんな乗り気なの?」
ルクレティア。
少し笑う。
「楽しそうだからじゃないかしら」
アオロビ。
頭を抱える。
「そういう理由で出る大会なの?」
チノ。
即答。
「そういう理由で出る大会です」
共有ルーム。
爆笑。
数日後。
セントラルシティ。
中央演習場。
大会当日。
人。
人。
人。
多数のアークス達。
モブアークスA。
「今年も結構集まったな」
モブアークスB。
「24チームらしいぞ」
モブアークスC。
周囲を見る。
「優勝候補どこだろうな」
その時。
遠く。
見覚えのある集団。
モブアークスD。
「あれ?」
モブアークスE。
「あっ」
「Gleam Gardenだ」
モブアークスB。
振り返る。
「あー」
「出るんだ」
モブアークスA。
少し笑う。
「なんか好きそうだもんな」
モブアークスC。
頷く。
「楽しそうだから参加しました感ある」
その頃。
Gleam Garden一同。
会場到着。
ちょこみんと。
会場を見る。
「広ーーーい!!」
ぴたぽん。
「人いっぱいぽん〜」
nike。
少し緊張。
みるく。
周囲を見回す。
「本当に大会なんですね……」
アオロビ。
周囲を見る。
「思ったより本格的だな」
その時。
大会アナウンス。
『まもなく競技説明を開始します』
参加アークス達。
一斉に集合。
ルクレティア。
静かに腕を組む。
ローシャ。
周囲を観察。
La lune bleue .。
少し笑う。
チノ。
既に競技モード。
ちょこみんと。
わくわく。
そして。
まだ誰も知らない。
Gleam Garden内で。
誰と誰が組む事になるのかを。
第2話 ― “何故このペア?” ―
セントラルシティ。
中央演習場。
大会会場。
受付エリア。
その頃。
大会規約。
大型モニター。
■ 1チーム最大3ペアまで
表示。
ちょこみんと。
静止。
数秒。
「少なっ!」
共有メンバー。
爆笑。
ぴたぽん。
「全員出られないぽん〜?」
チノ。
規約を見る。
「無理ですね」
La lune bleue .。
「10人居るにゃ」
ローシャ。
苦笑。
「さすがに多いものね」
その頃。
ルクレティア。
少し考える。
「では」
「出たい人だけで良いのではないかしら」
立候補。
ちょこみんと。
即座に挙手。
「出る!」
La lune bleue .。
「出るにゃ」
ローシャ。
「せっかくだし」
チノ。
「出ます」
その頃。
ルクレティア。
紅茶。
一口。
「私は観戦で良いわ」
共有メンバー。
静止。
アオロビ。
「えっ」
ルクレティア。
首を傾げる。
「?」
アオロビ。
数秒。
考える。
「じゃあ私も観戦かな」
共有メンバー。
静止。
ちょこみんと。
「ええっ!?」
La lune bleue .。
「出ないのにゃ?」
アオロビ。
肩をすくめる。
「ルクさん出ないなら別にいいかなって」
共有メンバー。
静止。
ぴたぽん。
「条件付きぽん〜!?」
ローシャ。
笑う。
「師弟ね」
ルクレティア。
ため息。
数秒。
そして。
「……分かったわよ」
アオロビ。
即答。
「じゃあ出る」
共有メンバー。
大爆笑。
チノ。
「早すぎません?」
みるく。
くすくす笑う。
こうして。
最初のペア。
■ ルクレティア × アオロビ
成立。
その後。
ぴたぽん。
「何でそんなに相性良いぽん〜?」
アオロビ。
少し考える。
「ルクさんが」
「右」
って言ったら。
私。
右行くし。
ルクレティア。
「そうね」
アオロビ。
「理由聞かないし」
ルクレティア。
「説明もしないわね」
共有メンバー。
静止。
nike。
「怖いですね」
ぴたぽん。
「怖いぽん〜」
共有メンバー。
爆笑。
続いて。
ローシャ。
「じゃあ私は」
La lune bleue .。
同時。
「ロマンさんにゃ」
共有メンバー。
静止。
ちょこみんと。
「早っ!」
ローシャ。
少し笑う。
「今さら他の人と組む理由も無いもの」
La lune bleue .。
頷く。
「大体分かるにゃ」
ローシャ。
「にゃんこさんもね」
長い付き合い。
長い信頼。
第二ペア決定。
■ La lune bleue . × ローシャ
そして。
残った二人。
ちょこみんと。
にこにこ。
チノ。
嫌な予感。
静止。
数秒。
ちょこみんと。
「よろしくね!」
チノ。
「は?」
共有メンバー。
爆笑。
チノ。
「なんで私なんですか」
ちょこみんと。
「なんでだろ?」
チノ。
「聞く相手違うでしょ」
大爆笑。
その時。
ルクレティア。
少し笑う。
「一番相性が良いからよ」
共有メンバー。
静止。
チノ。
「は?」
ちょこみんと。
「やったー!」
ルクレティア。
説明する。
「ちょこちゃんは前へ出る」
「考える前に動く」
ちょこみんと。
「うん!」
ルクレティア。
「ちーちゃんは周囲を見る」
「止めるべき時に止める」
チノ。
少し考える。
「まぁ」
「それはそうですけど」
第三ペア決定。
■ ちょこみんと × チノ
その頃。
ティラミス。
静かに拍手。
みるく。
拍手。
ぴたぽん。
拍手。
nike。
拍手。
こうして。
Gleam Gardenの出場3ペアが決定した。
師弟ペア。
長年コンビ。
そして。
問題児と監督役。
その頃。
大会登録モニター。
参加者一覧更新。
モブアークスA。
「あっ」
「ルクレティアとアオロビ組んだ」
モブアークスB。
「強そうだな」
モブアークスC。
「ネコとローシャも居るぞ」
モブアークスD。
登録表を見る。
「ちょこみんと」
「チノ」
静止。
「可愛いペアだな」
遠く。
チノ。
何故か嫌な予感。
まだ誰も知らない。
競技開始後。
その評価が。
盛大に覆る事を。
第3話 ― “可愛いペア?” ―
セントラルシティ。
中央演習場。
ペアタイムアタック。
競技開始。
実況。
『スタートしました!!』
24チーム。
一斉発進。
観戦席。
ぴたぽん。
「始まったぽん〜!」
みるく。
少し緊張。
nike。
真剣。
ティラミス。
静かにモニターを見る。
その頃。
第一ルート。
ルクレティア × アオロビ
最初の戦闘区画。
DOLLS出現。
ルクレティア。
周囲を確認。
一瞬。
「前方三体」
「奥の大型から」
アオロビ。
「了解」
スナイパーライフル。
発砲。
Weak Bullet。
大型DOLLS命中。
ルクレティア。
風属性ライフル。
追撃。
大型DOLLS撃破。
残り。
アオロビ。
連続射撃。
実況。
『速い!』
『会話がほとんどありません!』
nike。
「本当に少ないですね」
ティラミス。
「……いつも通り」
第二ルート。
La lune bleue . × ローシャ
DOLLS集団。
接近。
ローシャ。
短杖を構える。
魔法陣展開。
敵集団の足元。
「ネコさん」
「左側お願い」
La lune bleue .。
「了解にゃ」
大型グレートソード。
一閃。
そのまま。
回転。
連撃。
DOLLS。
まとめて吹き飛ぶ。
ローシャ。
追加魔法。
拘束。
弱体。
実況。
『こちらは安定しています!』
『まるで事前に打ち合わせ済みのような連携です!』
ローシャ。
「いつも通りよ」
La lune bleue .。
「いつも通りにゃ」
第三ルート。
ちょこみんと × チノ
モブ観客A。
モニターを見る。
「可愛いペアだな」
モブ観客B。
頷く。
「癒し枠か」
その瞬間。
ちょこみんと。
召喚。
ヴォルファー。
出現。
フレドラン。
上空展開。
モブ観客A。
「えっ」
実況。
『ちょこみんと選手!』
『開幕から召喚獣二体同時展開です!!』
ヴォルファー。
前線突撃。
DOLLS。
吹き飛ぶ。
フレドラン。
上空からブレス。
敵集団崩壊。
ちょこみんと。
「いけいけー!」
そのまま。
全力前進。
チノ。
マップ確認。
静止。
数秒。
「おい」
観客席。
静止。
チノ。
「右だ」
ちょこみんと。
「えっ?」
チノ。
「右だっつってんだろ」
観客席。
静止。
モブ観客B。
「今の誰?」
モブ観客C。
「チノだよな?」
モブ観客D。
「声違くね?」
その頃。
ちょこみんと。
マップ確認。
「あっ」
行き止まり。
チノ。
ため息。
「マップ見ろ」
「そこ袋小路だ」
ちょこみんと。
「ごめーん!」
チノ。
「ワビは後にしろ、行くぞ」
観戦席。
ぴたぽん。
「ちーちゃん怖いぽん〜」
みるく。
「戦闘モードですね……」
その直後。
大型DOLLS出現。
ちょこみんと。
気付いていない。
チノ。
即反応。
居合。
抜刀。
一閃。
大型DOLLS。
真っ二つ。
実況。
『速い!!』
『チノ選手の抜刀が見えませんでした!!』
ちょこみんと。
「ちのちのありがとー!」
チノ。
即答。
「だから周囲見ろって言ってんだ」
観客席。
爆笑。
モブ観客A。
「可愛いペアじゃない」
モブ観客B。
「保護者付きだ」
モブ観客C。
「むしろチノが怖い」
しかし。
タイム表示。
現在順位。
ルクレティア × アオロビ
1位
La lune bleue . × ローシャ
3位
ちょこみんと × チノ
4位
観戦席。
nike。
驚く。
「速い……」
ティラミス。
モニターを見る。
「……相性良い」
確かに。
召喚獣で押し込むちょこみんと。
後方から全体を見るチノ。
暴走役。
監督役。
思った以上に。
噛み合っていた。
そして。
三ペア全員。
第一戦闘区画突破。
だが。
次の区画は。
戦闘ではない。
スイッチ解除区画。
ギミックエリア。
ここから。
純粋な戦闘力では勝てない。
本当の戦技大会が始まる。
第4話 ― “ギミック区画” ―
第一戦闘区画突破。
24チーム。
次の区画へ到達。
実況。
『ここからギミックエリアです!』
『毎年順位が大きく動く難関区画!!』
大型モニター。
現在順位。
1位 モブAチーム
2位 ルクレティア × アオロビ
3位 モブBチーム
4位 La lune bleue . × ローシャ
5位 モブCチーム
6位 ちょこみんと × チノ
nike。
「まだ上位に他チームが居るんですね」
ティラミス。
頷く。
「……大会だから」
ぴたぽん。
「当たり前ぽん〜」
第一ルート。
ルクレティア × アオロビ
ギミック部屋。
スイッチ三つ。
赤。
青。
黄。
アオロビ。
「またかぁ」
壁面。
小さな文字。
ルクレティア。
一瞬見る。
「青」
アオロビ。
押す。
正解。
続いて。
黄。
赤。
ゲート解除。
実況。
『速い!!』
だが。
別ルート。
モブAチーム。
赤。
押す。
警報。
ブザー。
『失敗』
増援出現。
実況。
『順位変動!!』
『首位チームがペナルティです!!』
観客席。
ざわつく。
アオロビ。
「皆引っ掛かってるんだ」
ルクレティア。
「焦るからよ」
第二ルート。
La lune bleue . × ローシャ
部屋中央。
敵三体。
表示。
■ 撃破順を見極めろ
ローシャ。
周囲確認。
敵ではなく。
壁を見る。
床を見る。
天井を見る。
La lune bleue .。
待機。
ローシャ。
数秒。
「風」
「雷」
「火」
La lune bleue .。
既に動いている。
一体目。
撃破。
二体目。
撃破。
三体目。
撃破。
ゲート解除。
ローシャ。
苦笑。
「言い終わる前に動くのやめて下さい」
La lune bleue .。
笑う。
「弟子が何考えてるか分かるからにゃ」
ローシャ。
静止。
「ずるくないです?」
La lune bleue .。
「今さらにゃ」
観戦席。
nike。
「息ぴったりですね」
みるく。
頷く。
ティラミス。
モニターを見る。
「……師匠と弟子」
ぴたぽん。
「あー」
納得。
実況。
『こちらもノーミス突破!!』
順位更新。
1位 ルクレティア × アオロビ
2位 モブBチーム
3位 La lune bleue . × ローシャ
4位 モブCチーム
5位 ちょこみんと × チノ
第三ルート。
ちょこみんと × チノ
表示。
■ 正しい順番を押せ
スイッチ五個。
ちょこみんと。
「なるほど!」
チノ。
少し安心。
その瞬間。
全部押す。
チノ。
静止。
警報。
ブザー。
増援出現。
チノ。
額を押さえる。
「何してんだ」
ちょこみんと。
「総当たり!」
チノ。
「力技じゃねぇんだよ!」
観客席。
大爆笑。
モブ観客。
「またあそこか」
実況。
『ペナルティ発生です!!』
しかし。
増援。
出現。
ヴォルファー。
突撃。
フレドラン。
上空制圧。
敵集団。
崩壊。
チノ。
居合。
一閃。
最後の敵。
撃破。
その瞬間。
全スイッチ起動。
ちょこみんと。
「開いた!」
チノ。
静止。
数秒。
「結果だけ見れば正解か……」
実況。
『突破ぁぁぁ!!』
観客席。
爆笑。
だが。
ここで。
最後の部屋。
到達。
三ペア。
ほぼ同時。
モブ上位チーム達も到達。
大型モニター。
表示。
■ 条件を満たせ
説明なし。
会場。
ざわつく。
モブBチーム。
「何だこれ?」
モブCチーム。
「説明無いぞ!?」
ルクレティア。
静止。
ローシャ。
静止。
チノ。
静止。
三人同時。
「面倒なの来たな」
そして。
戦技大会最大の難関。
最終ギミック。
全チーム同時挑戦が始まる。
第5話 ― “最後の扉” ―
最終ギミック区画。
到達チーム。
現在。
7チーム。
実況。
『最終区画です!!』
大型モニター。
表示。
■ 条件を満たせ
以上。
モブアークスA。
「説明しろよ!」
モブアークスB。
「毎年これ嫌いなんだよ!」
観客席。
爆笑。
ぴたぽん。
「気持ちは分かるもじゃ」
みるく。
頷く。
第一ルート。
ルクレティア × アオロビ
部屋確認。
敵。
四体。
スイッチ。
四個。
中央装置。
アオロビ。
「ヒントある?」
ルクレティア。
観察。
敵配置。
床模様。
スイッチ位置。
数秒。
「全部使うわ」
アオロビ。
「全部?」
ルクレティア。
頷く。
敵撃破。
スイッチ起動。
順番解除。
中央装置起動。
ゲート開放。
実況。
『突破!!』
解説。
『全部のギミックを踏むのが正解でしたね』
第二ルート。
La lune bleue . × ローシャ
ローシャ。
静止。
部屋観察。
La lune bleue .。
待機。
ローシャ。
数秒。
「たぶんこれです」
La lune bleue .。
即答。
「ならそれで正解にゃ」
ローシャ。
苦笑。
「確認しないの?」
La lune bleue .。
笑う。
「弟子を信じるのも師匠の仕事にゃ」
観客席。
みるく。
少し笑う。
nike。
「格好良いですね」
ローシャ。
照れる。
その後。
ローシャの推理通り。
解除成功。
実況。
『こちらも突破!!』
順位維持。
第三ルート。
ちょこみんと × チノ
部屋到達。
表示。
■ 条件を満たせ
ちょこみんと。
「分かんない!」
チノ。
「知ってる」
観客席。
爆笑。
周囲確認。
敵。
二体。
スイッチ。
三個。
さらに。
別部屋への通路。
チノ。
考える。
ちょこみんと。
考えない。
「行くよ!」
チノ。
「待ちやがれ!」
間に合わない。
ヴォルファー。
突撃。
敵撃破。
フレドラン。
上空制圧。
スイッチ起動。
ちょこみんと。
押す。
反応。
あり。
二個目。
押す。
反応。
あり。
チノ。
静止。
数秒。
「まさか」
三個目。
押す。
中央装置起動。
ゲート開放。
ちょこみんと。
「開いたー!」
チノ。
静止。
実況。
『突破ぁぁぁ!!』
解説。
『全条件達成ですね』
実況。
『また全部やったんですか!?』
解説。
『また全部やりました』
観客席。
大爆笑。
ぴたぽん。
「ちょこしゃん強いぽん〜」
ティラミス。
ぽつり。
「……脳筋」
みるく。
笑いを堪える。
その頃。
別ルート。
モブBチーム。
条件誤認。
警報。
ペナルティ。
モブCチーム。
敵撃破順ミス。
ゲート封鎖。
実況。
『順位変動!!』
『上位チーム脱落です!!』
会場。
大歓声。
大型モニター。
順位更新。
1位 ルクレティア × アオロビ
2位 La lune bleue . × ローシャ
3位 ちょこみんと × チノ
実況。
『ゴールエリア目前!!』
三ペア。
全力疾走。
ルクレティア。
「左」
アオロビ。
「了解」
最短ルート。
La lune bleue .。
「行くにゃ!」
ローシャ。
「ええ!」
ちょこみんと。
「ラストスパートー!!」
チノ。
「転ぶなよ!」
実況。
『見えてきた!!』
『ゴールです!!』
第一ゴール。
ルクレティア × アオロビ
会場。
歓声。
第二ゴール。
La lune bleue . × ローシャ
第三ゴール。
ちょこみんと × チノ
観客席。
ぴたぽん。
「やったぽん〜!」
みるく。
拍手。
nike。
拍手。
ティラミス。
静かに拍手。
その頃。
ゴール地点。
ちょこみんと。
満面の笑み。
「楽しかったー!!」
チノ。
疲労困憊。
数秒。
「まぁ」
「勝てたなら良いです」
ちょこみんと。
「また組もうね!」
チノ。
静止。
数秒。
「考えときます」
観客席。
大爆笑。
そして。
24チームによる戦技大会。
ペアタイムアタック部門。
全競技終了。
残るは。
表彰式。
そして。
順位発表のみ。
第6話 ― “戦技大会の終わり” ―
セントラルシティ。
中央演習場。
全競技終了。
会場中央。
表彰ステージ。
実況。
『第12回アークス内戦技大会!!』
『ペアタイムアタック部門!!』
『結果発表です!!』
会場。
拍手。
歓声。
大型モニター。
順位表示。
第3位
ちょこみんと × チノ
会場。
拍手。
ちょこみんと。
「やったー!!」
チノ。
拍手。
ちょこみんと。
「ちのちの!」
チノ。
「何ですか」
ちょこみんと。
「3位だよ!」
チノ。
数秒。
「知ってます」
会場。
笑い。
実況。
『大健闘です!!』
『召喚獣と居合の異色コンビ!!』
モブ観客A。
「可愛いペアだったな」
モブ観客B。
頷く。
「チノ怖かったけど」
爆笑。
第2位
La lune bleue . × ローシャ
拍手。
歓声。
ローシャ。
軽く会釈。
La lune bleue .。
手を振る。
実況。
『安定感抜群!!』
『ほぼノーミスの完璧な走りでした!!』
モブアークス。
「やっぱり強いな」
別のモブ。
「息が合いすぎてる」
その頃。
ローシャ。
少し笑う。
「ありがとうございました」
La lune bleue .。
「何がにゃ?」
ローシャ。
「最後」
「信じてくれたので」
La lune bleue .。
静止。
数秒。
「当たり前にゃ」
ローシャ。
少し照れる。
観客席。
みるく。
微笑む。
nike。
「良い関係ですね」
そして。
第1位
ルクレティア × アオロビ
会場。
大歓声。
実況。
『優勝です!!』
『今大会最速タイム!!』
アオロビ。
静止。
「本当に優勝した」
ルクレティア。
少し笑う。
「そうね」
実況。
『圧倒的な判断力!!』
『そして驚異的な連携!!』
モブアークス。
「納得だな」
別のモブ。
「見てて無駄が無かった」
表彰。
トロフィー授与。
アオロビ。
トロフィーを見る。
「ルクさん」
ルクレティア。
「何かしら?」
アオロビ。
少し笑う。
「出てくれてありがと」
ルクレティア。
静止。
数秒。
「私の台詞よ」
アオロビ。
「え?」
ルクレティア。
微笑む。
「アオちゃんが居たから優勝出来たのだから」
アオロビ。
静止。
数秒。
「ずるい」
ルクレティア。
「何が?」
アオロビ。
「そういう所」
会場。
拍手。
歓声。
その後。
大会終了。
帰り道。
セントラルシティ。
夕暮れ。
ぴたぽん。
「楽しかったぽん」
みるく。
「応援も楽しかったです」
nike。
「来年は出てみたいですね」
ティラミス。
ぽつり。
「……出ても良い」
共有メンバー。
静止。
アオロビ。
「ティラさん出るの?」
ティラミス。
数秒。
「面白かった」
ちょこみんと。
「やったー!」
La lune bleue .。
「来年はもっと大変になりそうにゃ」
ローシャ。
苦笑。
「確実にね」
チノ。
ぽつり。
「私は出ません」
ちょこみんと。
即答。
「また組もうね!」
チノ。
静止。
数秒。
「聞いてました?」
Gleam Garden一同。
大爆笑。
夕暮れのセントラルシティ。
笑い声。
賑わうアークス達。
行き交う人々。
そして。
今日もまた。
惑星ハルファのどこかで。
新しい冒険が始まっている。
119:チノ誘拐事件
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「可愛い子みーつけた」
休日。
セントラルシティ。
チノは一人で買い物を終えた帰りだった。
紙袋。
一つ。
中身。
お菓子。
飲み物。
雑貨。
チノ。
「ふふ」
少し機嫌が良い。
今日は特に予定も無い。
ゆっくり帰るだけ。
そんな日だった。
広場。
ベンチ。
チノ。
「少しだけ……」
腰を下ろす。
暖かい日差し。
心地良い風。
静かな午後。
結果。
数分後。
すぅ……
寝ていた。
完全に。
熟睡。
その頃。
少し離れた場所。
男達。
三人。
見るからに怪しい。
「おい」
「見ろよ」
一人が指差す。
ベンチ。
チノ。
熟睡。
男達。
静止。
数秒。
「可愛くね?」
「可愛いな」
「めちゃくちゃ可愛いな」
全員一致。
「一人だぞ」
「周り誰もいねぇぞ」
「寝てるぞ」
再確認。
チノ。
すぅ……
熟睡。
男達。
「……」
「……」
「いけるんじゃね?」
最悪の会議。
開始。
数分後。
結果。
誘拐。
成功。
チノ。
起きない。
男達。
「軽っ」
「すげぇ軽い」
「全然起きねぇ」
チノ。
すぅ……
熟睡。
男達。
「大物だな」
「違ぇよ」
「寝坊助だよ」
数十分後。
市外。
古い倉庫。
男達。
「よし」
「成功」
「余裕だったな」
「警察も来ねぇし」
「今日はツイてる」
誰も気付いていない。
この日。
一番運が悪かったのは。
チノではなく。
自分達だった事に。
倉庫の奥。
椅子。
ロープ。
チノ。
座らされている。
相変わらず。
すぅ……
熟睡。
男達。
「起きねぇな」
「起きたらどうする?」
「まぁガキだろ」
「泣くだけだろ」
全員。
笑う。
その時。
チノ。
ぴくっ。
男達。
「お?」
「起きるか?」
チノ。
ゆっくり目を開く。
ぼんやり。
天井を見る。
静止。
数秒。
周囲を見る。
男達を見る。
ロープを見る。
倉庫を見る。
そして。
再び静止。
数秒。
男達。
「おはよう」
ニヤニヤ。
チノ。
「……」
静か。
男達。
「状況分かるか?」
チノ。
「分かります」
男達。
「おー」
「話が早い」
チノ。
小さく頷く。
そして。
一言。
「誘拐ですね」
男達。
「正解」
笑う。
チノ。
再び周囲を見る。
静かに。
状況確認。
男達。
まだ気付かない。
チノの顔から。
焦りが。
一切消えている事に。
そして。
チノ。
ぽつり。
「なるほど」
男達。
「ん?」
チノ。
静かに微笑む。
「皆さん」
「思ったより馬鹿なんですね」
男達。
「は?」
第二話「誘拐犯の皆さんへ」
倉庫。
誘拐犯。
三人。
チノ。
一人。
空気。
微妙。
男A。
「今なんつった?」
チノ。
「馬鹿ですね」
即答。
男達。
静止。
数秒。
男B。
「お前なぁ」
男C。
「状況分かってる?」
チノ。
「分かってますよ」
頷く。
「誘拐されました」
男達。
「そうだよ!」
チノ。
「だから馬鹿なんです」
男A。
「なんでだよ!」
チノ。
ロープを見る。
手首を見る。
男達を見る。
そして。
ため息。
「拘束確認くらいした方が良いですよ」
男達。
「は?」
次の瞬間。
チノ。
手首をひねる。
するり。
ロープ。
抜ける。
男達。
「え?」
チノ。
反対側も外す。
「こういうの」
「ちゃんと締めないと」
「意味無いです」
男達。
静止。
数秒。
男B。
「おいおいおい!」
男C。
「捕まえろ!」
男A。
突進。
チノ。
立ち上がる。
ひょい。
回避。
男A。
転倒。
床。
激突。
男A。
「いてぇ!!」
チノ。
「ほら」
「そうなる」
男B。
鉄パイプを持つ。
「ガキが!」
振り下ろす。
チノ。
半歩。
避ける。
鉄パイプ。
床。
激突。
チノ。
「遅い」
男B。
「っ!?」
チノ。
倉庫の棚を見る。
工具箱。
視線移動。
男達。
気付かない。
男A。
「囲め!」
男達。
三方向。
チノ。
静止。
数秒。
そして。
笑う。
男達。
初めて気付く。
違和感。
誘拐された子供の顔じゃない。
追い詰められた人間の顔じゃない。
どちらかと言うと。
狩人。
男C。
「お、おい」
男A。
「なんだよ」
男C。
「なんか変じゃね?」
チノ。
棚へ移動。
工具箱。
開く。
中身。
ペンチ。
ドライバー。
カッター。
作業用ナイフ。
チノ。
ナイフを持つ。
男達。
「おい!」
「武器持ったぞ!」
チノ。
くるくる。
手の中で回す。
慣れている。
明らかに。
男達。
嫌な予感。
チノ。
「さて」
静か。
男達。
後退。
無意識に。
チノ。
首を傾げる。
「どうしました?」
男A。
「近付くな!」
チノ。
「近付いたの」
静止。
数秒。
「そっちですよね?」
男達。
言葉が詰まる。
チノ。
微笑む。
その笑顔。
可愛い。
とても。
可愛い。
ただし。
今この場で。
誰一人。
そう思えなかった。
チノ。
「じゃあ」
ナイフを握る。
「遊びましょうか」
男達。
背筋。
寒気。
第三話「誘拐犯が可哀想」
倉庫。
誘拐犯。
三人。
チノ。
一人。
普通なら。
三対一。
圧倒的有利。
のはずだった。
男A。
「やれ!」
男B。
鉄パイプ。
男C。
木材。
二人同時。
突撃。
チノ。
静止。
数秒。
そして。
笑う。
男B。
「っ!」
嫌な予感。
次の瞬間。
チノ。
消えた。
男C。
「は!?」
後ろ。
チノ。
「遅ぇ」
男C。
振り向く。
間に合わない。
足払い。
転倒。
顔面着地。
男C。
「いっでぇ!」
男A。
「囲め!」
男B。
「どこだ!」
チノ。
居ない。
男達。
静止。
数秒。
倉庫。
静か。
男B。
「おい」
「どこ行った」
男A。
「知らねぇよ!」
男C。
起き上がる。
その時。
カン。
何か落ちる音。
全員。
振り向く。
誰も居ない。
男B。
「ビビらせんな!」
男A。
「探せ!」
三人。
別方向へ。
散る。
そして。
五分後。
男C。
一人。
倉庫奥。
「おーい!」
返事無し。
「おい!」
返事無し。
静か。
男C。
冷や汗。
その時。
背後。
「探し物かい?」
男C。
飛び上がる。
振り返る。
チノ。
居る。
男C。
悲鳴。
「うわぁぁ!?」
チノ。
「うるせぇな」
男C。
硬直。
チノ。
笑顔。
可愛い。
ただし怖い。
チノ。
「そんな大声出すな」
「居場所バレるだろ」
男C。
「だ、誰に!?」
チノ。
静止。
数秒。
「俺に」
男C。
「意味分かんねぇ!!」
逃走。
全力。
チノ。
追わない。
男C。
全力疾走。
角を曲がる。
安心。
そして。
正面。
チノ。
男C。
「なんで!?」
チノ。
「近道」
男C。
悲鳴。
再び逃走。
その頃。
男A。
男B。
合流。
「見つかったか!?」
「いや!」
「お前は!?」
「見てねぇ!」
二人。
少し安心。
仲間が居る。
その瞬間。
天井。
ガタッ。
男達。
見上げる。
誰も居ない。
男A。
「なんだ今の」
男B。
「ネズミじゃねぇか」
次の瞬間。
後ろ。
チノ。
椅子。
座ってる。
男達。
硬直。
チノ。
「お前ら」
男達。
「うわぁぁぁ!!」
チノ。
「人の話聞けよ」
男達。
逃走。
全力。
チノ。
ため息。
「なんなんだよ」
数十分後。
倉庫。
男達。
全員。
ロープで縛られる。
男A。
泣いてる。
男B。
泣いてる。
男C。
本気で泣いてる。
チノ。
椅子。
座る。
ナイフ。
くるくる回す。
男A。
「来るな!」
チノ。
「行かねぇよ」
男B。
「絶対嘘だ!」
チノ。
「失礼だな」
静止。
数秒。
「俺そんな怖ぇか?」
男達。
全員。
即答。
「怖ぇよ!!」
チノ。
少し傷付く。
「そうかよ」
その時。
倉庫外。
車の音。
複数。
チノ。
振り向く。
男達。
涙目。
男A。
「助かった……」
男B。
「やっと終わる……」
男C。
「警察だ……」
チノ。
静かに立ち上がる。
「違ぇ」
男達。
「え?」
チノ。
窓の外を見る。
そして。
少しだけ。
嫌そうな顔。
「保護者共だ」
第四話「遅ぇんだよ」
倉庫。
誘拐犯。
三人。
全員拘束済み。
泣いている。
チノ。
椅子。
座っている。
誘拐犯達。
「警察だ……」
「やっと助かる……」
「終わった……」
チノ。
窓を見る。
「違ぇ」
誘拐犯達。
「え?」
チノ。
ため息。
「保護者共だ」
数秒後。
倉庫の扉。
ドォン!!
豪快に開く。
先頭。
ちょこみんと。
「ちのちのーーー!!」
全力突撃。
チノ。
「うるせぇ」
ちょこみんと。
「無事だったぁぁぁ!!」
抱きつく。
チノ。
潰れる。
「ぐぇ」
続いて。
La lune bleue .
「ちのさん!」
ローシャ。
「大丈夫ですか!?」
アオロビ。
「怪我は!?」
ぴたぽん。
「ちのしゃーん!」
みるく。
「よかった……」
ティラミス。
「生きてた」
チノ。
「勝手に殺すな」
そして最後。
ルクレティア。
静かに入ってくる。
周囲を見る。
拘束された誘拐犯。
ロープ。
工具。
チノ。
ルクレティア。
静止。
数秒。
「……何があったの?」
チノ。
「暇だった」
全員。
「暇だった?」
チノ。
「暇だった」
ローシャ。
「説明になってないわ」
チノ。
肩をすくめる。
「起きた」
「拘束甘かった」
「抜けた」
「捕まえた」
ローシャ。
「省略しすぎだわ」
アオロビ。
誘拐犯を見る。
誘拐犯達。
顔面蒼白。
涙目。
完全敗北。
アオロビ。
「……」
「ちょっと犯人に同情した」
チノ。
「失礼だな」
男A。
「同情してくれ!」
全員。
振り向く。
男A。
涙。
男B。
涙。
男C。
大号泣。
男A。
「こいつ怖ぇんだよ!」
チノ。
「誰がだ」
男達。
「お前だよ!!」
全員一致。
ちょこみんと。
吹き出す。
「ぷっ」
La lune bleue .
「だめだにゃん」
「面白すぎるにゃ」
ローシャ。
肩を震わせる。
「ふっ……」
ルクレティア。
口元を隠す。
「……失礼」
笑ってる。
チノ。
「なんでだよ」
男B。
「笑い事じゃねぇ!」
男C。
「後ろに何回出てきたと思ってんだ!」
男A。
「瞬間移動してた!」
チノ。
「してねぇよ」
男達。
「してた!!」
アオロビ。
「してないと思う」
男達。
「どっちの味方だ!!」
その後。
警察到着。
誘拐犯達。
連行。
男A。
「助かった……」
男B。
「やっと終わった……」
男C。
「二度と誘拐なんかしねぇ……」
チノ。
見送る。
静かに。
「最初からするな」
正論。
全員。
「それはそう」
帰り道。
ちょこみんと。
「でも本当に心配したんだからね!」
チノ。
「悪かった」
ちょこみんと。
「次からは気を付けて!」
チノ。
「寝る場所考える」
La lune bleue .
「そこなのにゃん!?」
アオロビ。
「反省点そこ?」
チノ。
真顔。
「誘拐されるとは思わなかった」
全員。
「普通はそうだよ!」
夕暮れ。
賑やかな帰り道。
こうして。
チノ誘拐事件は。
誘拐された本人より。
誘拐犯の方が精神的ダメージを負うという。
誰も予想しなかった結末で幕を閉じた。
120:ファンレター
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「開いてる」
Gleam Garden事務所。
昼過ぎ。
アオロビは買い出しで外出中。
事務所には、
ちょこみんと、
ローシャ、
ティラミス、
ルクレティア、
La lune bleue .、
みるく。
が残っていた。
コンコン。
宅配便が届く。
ちょこみんと
「はーい♪」
受け取ったのは一通の封筒。
表には。
『アオロビ様』
と書かれていた。
ちょこみんと
「あおちー宛だ!」
La lune bleue .
「ファンレターかにゃ?」
ローシャ
「また届いたんですね」
ティラミス
「人気者」
みるく
「すごい……」
ルクレティア
「良いことね」
ちょこみんとは封筒を眺める。
裏を見る。
表を見る。
また裏を見る。
La lune bleue .
「気になるにゃん」
ちょこみんと
「気になるね」
ローシャ
「駄目です」
即答。
La lune bleue .
「まだ何も言ってないにゃん」
ローシャ
「顔に書いてあります」
ティラミス
「気になる」
みるく
「ちょっとだけ……」
ローシャ
「みるくさんまで……」
ルクレティア
「人宛のお手紙よ」
「勝手に見たら駄目よ?」
全員
「はーい」
五秒後。
La lune bleue .
「でもさ」
ローシャ
「駄目です」
La lune bleue .
「まだ何も」
ローシャ
「分かります」
ちょこみんと
「一行だけ!」
ローシャ
「駄目です」
ティラミス
「差出人だけ」
ローシャ
「駄目です」
みるく
「封筒の厚さだけ……」
ローシャ
「何を確認するんですか」
ルクレティア
「ふふっ」
その時。
ちょこみんと
「あれ?」
全員
「?」
ちょこみんと
「これ」
封筒を持ち上げる。
ちょこみんと
「開いてる」
全員
「え?」
確認。
確かに封が少しだけ浮いている。
ローシャ
「本当ですね」
ティラミス
「開いてる」
みるく
「開いてる……」
La lune bleue .
目が輝く。
La lune bleue .
「つまり」
ローシャ
「駄目です」
La lune bleue .
「まだ何も」
ローシャ
「言おうとしてました」
ルクレティア
「嫌な予感しかしないわね……」
数秒。
全員。
封筒を見る。
誰も動かない。
でも。
誰も目を離さない。
La lune bleue .
「……ちょっとだけ」
ローシャ
「駄目です」
ちょこみんと
「一行だけ!」
ローシャ
「駄目です」
ティラミス
「名前だけ」
ローシャ
「駄目です」
みるく
「……少しだけ」
ローシャ
「みるくさんまで……」
そして。
封筒。
全員。
じーっ。
ローシャ
「皆さん」
全員
「……」
ローシャ
「やめましょうね?」
全員
「……」
ローシャ
「返事してください」
その頃。
アオロビ。
買い出し終了。
事務所へ帰還中。
まだ知らない。
自分宛のファンレターを巡って。
事務所内で。
過去最大級にしょうもない攻防戦が始まろうとしていることを。
第二話「思ったより重症」
Gleam Garden事務所。
机の上。
アオロビ宛のファンレター。
全員。
見ている。
ローシャだけが。
まだ抵抗していた。
ローシャ
「だから駄目ですって」
La lune bleue .
「でも封開いてるにゃん」
ローシャ
「それは理由になりません」
ちょこみんと
「ちょっとだけ!」
ローシャ
「駄目です」
ティラミス
「少し」
ローシャ
「駄目です」
みるく
「ほんの少し……」
ローシャ
「みるくさんまで……」
数秒。
沈黙。
ルクレティア
「……」
全員。
ルクレティアを見る。
ルクレティア
「私を見ても駄目よ?」
La lune bleue .
「代表お願いにゃん」
ルクレティア
「嫌よ」
即答。
しかし。
封筒を見る。
数秒。
ルクレティア
「……」
ローシャ
「ルクさん?」
ルクレティア
「いえ?」
ローシャ
「今ちょっと気になりましたよね?」
ルクレティア
「気のせいじゃないかしら」
ローシャ
「気のせいじゃありません」
その時。
ティラミス。
手紙を取り出す。
ローシャ
「ティラミスさん!?」
ティラミス
「出てきた」
ローシャ
「出してどうするんですか!」
La lune bleue .
「読んでるにゃん」
ローシャ
「だから駄目ですって!」
しかし。
もう遅かった。
全員。
読んでいる。
ローシャ
「もう……」
諦めた。
手紙。
内容。
『アオロビさんへ』
『突然のお手紙失礼します。』
『僕は男性ですが、アオロビさんの歌が大好きです。』
全員。
静かになる。
『仕事で辛い事が続いていた時、Cherry Blossomを聴きました。』
『正直、その時は何もかも嫌になっていました。』
『でも、あの曲を聴いてもう少しだけ頑張ろうと思えました。』
みるく
「……」
『ライブ配信もいつも見ています。』
『アオロビさんが笑っていると、こちらまで元気になります。』
La lune bleue .
「当たってるにゃん」
ちょこみんと
「うん」
ローシャ
「そうですね」
『本当は優しい人なんだろうなと思っています。』
ルクレティア
小さく笑う。
『いつか直接ありがとうと言える日が来たら嬉しいです。』
『これからも応援しています。』
全員。
しばらく無言。
ちょこみんと
「良い手紙だね」
みるく
「うん……」
La lune bleue .
「本気のファンだにゃん」
ローシャ
「素敵なお手紙ですね」
ティラミス
「重い」
全員。
ティラミスを見る。
ティラミス
「良い意味で」
補足。
その時。
La lune bleue .
「あ」
全員。
振り向く。
La lune bleue .
「引き出し」
アオロビの机。
一番下。
少しだけ開いている。
ローシャ
「やめましょう」
La lune bleue .
「気になるにゃん」
ちょこみんと
「気になるね」
みるく
「ちょっとだけ……」
ローシャ
「さっきも聞きました」
ティラミス。
開ける。
ローシャ
「ティラミスさん!?」
引き出し。
中。
全員。
固まる。
大量。
手紙。
手紙。
手紙。
綺麗に整理された。
大量のファンレター。
La lune bleue .
「うわ」
ちょこみんと
「保管してる」
みるく
「全部……?」
ローシャ
驚く。
ルクレティア
少し微笑む。
ティラミス
「重症」
La lune bleue .
「重症だにゃん」
ちょこみんと
「重症だね」
ローシャ
「違います」
でも。
少し嬉しそうだった。
その時。
ガチャ。
事務所の外。
扉が開く音。
全員。
静止。
数秒。
アオロビの声。
「ただいまー」
全員。
「やばい」
第三話「帰宅」
ガチャ。
アオロビ
「ただいまー」
全員。
硬直。
完全硬直。
机の上。
開封済みファンレター。
開いた引き出し。
大量の過去ファンレター。
証拠隠滅。
間に合わない。
アオロビ
「ん?」
違和感。
全員。
妙に静か。
アオロビ
「なに?」
誰も答えない。
アオロビ
「なに?」
二回目。
ちょこみんと
「おかえり!」
アオロビ
「遅い」
La lune bleue .
「おかえりにゃん!」
アオロビ
「もっと遅い」
ティラミス
「おかえり」
アオロビ
「怪しい」
ローシャ
「お帰りなさい」
アオロビ
「一番怪しくない」
ルクレティア
「お帰りなさい、アオちゃん」
アオロビ
「ルクさん笑ってる」
ルクレティア
「気のせいじゃないかしら」
アオロビ
「気のせいじゃない」
みるく
「お、おかえりなさい……」
アオロビ
「みるさんまで怪しい」
数秒。
アオロビ。
机を見る。
ファンレター。
開いてる。
引き出し。
開いてる。
アオロビ。
静止。
全員。
静止。
沈黙。
数秒。
アオロビ
「……」
全員。
「……」
アオロビ
「なんで?」
第一声。
全員。
目を逸らす。
アオロビ
「なんで?」
二回目。
ちょこみんと
「ごめんなさい」
即落ち。
アオロビ
「早い」
La lune bleue .
「みんとさんが開けたにゃん」
ちょこみんと
「裏切った!?」
La lune bleue .
「共犯にゃん」
ちょこみんと
「そうだった!」
アオロビ
「全員かよ」
ローシャ
「はい」
アオロビ
「ローシャさんまで!?」
ローシャ
「途中からです」
アオロビ
「途中からでも駄目だよ!」
ティラミス
「引き出し開けた」
アオロビ
「ティラさん!」
ティラミス
「私」
アオロビ
「堂々と名乗るな!」
ルクレティア
「私は止めたのよ?」
アオロビ
「止まってないじゃん!」
ルクレティア
「結果としてはそうね」
アオロビ
「結果しか見てない!」
みるく
「ご、ごめんなさい……」
アオロビ
「みるさんまでぇ……」
完全敗北。
その時。
La lune bleue .
ニヤニヤ。
La lune bleue .
「でもさ」
アオロビ
「嫌な予感」
La lune bleue .
「男性ファンだったにゃん」
アオロビ
停止。
ちょこみんと
「歌に救われたんだって!」
アオロビ
「やめろ」
ティラミス
「笑顔が好きらしい」
アオロビ
「やめろ」
みるく
「優しい人って……」
アオロビ
「やめろって!」
耳。
真っ赤。
ローシャ。
笑いを堪えている。
アオロビ
「ローシャさんも笑ってる!」
ローシャ
「ふふっ……」
アオロビ
「笑ってる!」
La lune bleue .
「あおさん照れてるにゃん」
アオロビ
「照れてない!」
ちょこみんと
「照れてる!」
アオロビ
「照れてない!」
ティラミス
「耳」
アオロビ
「見るな!」
ルクレティア。
微笑む。
ルクレティア
「でも良かったじゃない」
「ちゃんと届いていたのね」
アオロビ。
少し黙る。
数秒。
アオロビ
「……それは」
「まぁ」
「嬉しいけど」
全員。
反応。
La lune bleue .
「認めたにゃん」
ちょこみんと
「認めた!」
アオロビ
「うるさい!」
そして。
La lune bleue .
引き出しを見る。
La lune bleue .
「でももっと驚いたのは」
アオロビ
「やめろ」
La lune bleue .
「全部保管してる事だにゃん」
アオロビ
「やめろ!!」
ちょこみんと
「うわー!」
ティラミス
「重症」
アオロビ
「重症じゃない!」
ローシャ
「大事にしてるんですね」
アオロビ
「普通でしょ!」
ルクレティア
「そうね」
アオロビ
「ルクさん!」
ルクレティア
「貰った想いを大切にするのは素敵な事よ」
アオロビ。
数秒。
言い返せない。
La lune bleue .
「顔赤いにゃん」
アオロビ
「黙れ!」
ちょこみんと
「可愛い」
アオロビ
「黙れ!」
ティラミス
「乙女」
アオロビ
「黙れ!!」
事務所。
大爆笑。
そして。
アオロビだけが。
真っ赤だった。
第四話「ありがとう」
夜。
Gleam Garden事務所。
静か。
数時間前までの騒ぎが嘘みたいだった。
メンバー達は帰宅。
あるいは自室。
事務所には。
アオロビ一人。
机。
椅子。
そして。
今日の元凶。
ファンレター。
アオロビ
「……」
手に取る。
昼間。
散々だった。
ネコさん。
煽る。
ちょこ姉。
煽る。
ティラさん。
追撃する。
ローシャさん。
笑う。
ルクさん。
見守る。
みるさん。
巻き込まれる。
アオロビ
「最悪だ……」
小さく呟く。
でも。
少しだけ。
笑う。
そして。
改めて。
手紙を読む。
『僕は男性ですが、アオロビさんの歌が大好きです。』
アオロビ
「別に男性とか関係ないけど」
ページをめくる。
『仕事で辛い事が続いていました。』
『でもCherry Blossomを聴いてもう少しだけ頑張ろうと思えました。』
アオロビ。
黙る。
視線だけが文字を追う。
『アオロビさんが笑っていると元気になります。』
『これからも応援しています。』
最後まで読む。
静か。
窓の外。
夜のセントラルシティ。
街の灯り。
アオロビ
「……」
昔。
歌なんて。
ただ好きだから始めた。
誰かを救うとか。
元気を与えるとか。
そんな大層な事。
考えた事は無かった。
それでも。
誰かが。
そう思ってくれた。
アオロビ
「……そっか」
少しだけ。
嬉しい。
少しだけ。
照れ臭い。
机の引き出しを開く。
中。
大量の封筒。
ライブの感想。
応援メッセージ。
手紙。
色々。
全部。
今まで貰った物。
La lune bleue .
『重症だにゃん』
ちょこみんと
『重症だね!』
ティラミス
『重症』
昼間の声。
思い出す。
アオロビ
「重症じゃないし」
誰も居ない。
でも。
少し笑う。
今日届いた手紙。
丁寧に整える。
そして。
いつもの場所へ。
そっと入れる。
引き出しを閉じる。
カチ。
静かな音。
アオロビ
「……ありがと」
誰に聞かせる訳でもない。
小さな声。
でも。
確かに。
届いていた。
誰かの想いも。
自分の歌も。
だから。
また明日も。
歌おうと思った。
121:鬼
(ちょこみんリクエスト)(全5話)
第一話「最近おかしい」
Gleam Garden事務所。
午後。
ちょこみんと
「むぅ……」
ソファ。
スマホを見ている。
アオロビ
「どうしたの?」
ちょこみんと
「変なコメント来てる」
アオロビ
「どれ」
スマホを覗く。
SNS。
ライブ写真。
その下。
悪意のあるコメント。
数件。
アオロビ
「あー……」
ちょこみんと
「こういうの嫌だね」
アオロビ
「まぁ人気商売だし」
ちょこみんと
「そうなんだけどさー」
アオロビ
「気にしないのが一番」
ちょこみんと
「そうする!」
いつもの調子。
そこまで深刻ではない。
少なくとも。
本人達は。
そのつもりだった。
数日後。
スタジオ帰り。
ローシャ
「……」
歩く。
その後ろ。
誰か居る。
振り返る。
誰も居ない。
ローシャ
「気のせいかしら」
少しだけ。
違和感。
しかし。
そのまま帰宅。
さらに別の日。
みるく
「え?」
ポスト。
中。
無記名の手紙。
開く。
内容。
意味不明。
気味が悪い。
みるく
「なんだろう……」
その夜。
事務所。
全員集合。
ちょこみんと
「実はさー」
アオロビ
「ん?」
ちょこみんと
「変なコメント増えてる」
みるく
「私も変なお手紙が……」
ローシャ
「私も少し」
アオロビ
「え?」
La lune bleue .
「にゃ?」
ティラミス
「私も見られてる感じした」
アオロビ
「いやいや待って」
空気。
少し変わる。
偶然。
では片付かない。
ちょこみんと
「怖いね」
みるく
「うん……」
ローシャ
「少し気を付けた方が良さそうね」
La lune bleue .
「変な人かにゃ」
アオロビ
「かもしれない」
ティラミス
「面倒」
静かになる。
その時。
ルクレティア
「そうね」
一言。
全員。
振り向く。
ルクレティア。
微笑んでいる。
いつも通り。
何も変わらない。
ただ。
アオロビだけ。
少しだけ違和感を覚えた。
アオロビ
「ルクさん?」
ルクレティア
「なあに?」
アオロビ
「いや」
気のせい。
そう思った。
でも。
本当に気のせいだったのなら。
後になって。
思い返したりはしない。
その日。
ルクレティアは。
一度も。
笑っていなかった。
第二話「知ってしまった」
それから数日。
嫌がらせは続いた。
ちょこみんと。
SNS。
誹謗中傷。
みるく。
不気味な手紙。
ローシャ。
尾行らしき気配。
ティラミス。
盗撮未遂。
どれも。
決定的ではない。
警察が動く程でもない。
しかし。
確実に。
悪意だけは存在していた。
事務所。
夜。
アオロビ
「最近変なの多いなぁ」
ちょこみんと
「ねー」
La lune bleue .
「嫌な感じにゃん」
ローシャ
「しばらく一人行動は避けた方が良いかもしれないわね」
みるく
「うん……」
ルクレティア
「そうね」
いつもの声。
いつもの笑顔。
何も変わらない。
誰の目にも。
そう見えた。
ただ一人。
ローシャだけは。
違和感を覚えていた。
数日後。
深夜。
事務所。
誰も居ない。
はずだった。
カタ。
小さな音。
ローシャ
「……?」
忘れ物。
取りに戻っただけ。
だった。
しかし。
事務所の奥。
明かり。
こんな時間に。
誰か居る。
静かに近付く。
扉の隙間。
見えた。
ルクレティア。
一人。
パソコン。
画面。
大量の資料。
SNS。
投稿履歴。
写真。
地図。
アカウント。
ローシャ
「……何してるの?」
ルクレティア
「っ」
珍しく。
反応が遅れた。
振り向く。
数秒。
沈黙。
ルクレティア
「リズ?」
ローシャ
「私の台詞よ」
ルクレティア
少し笑う。
「眠れなくて」
ローシャ
「嘘ね」
即答。
ルクレティア
「酷いわ」
ローシャ
「もっと上手な嘘をついて」
静か。
数秒。
ルクレティア。
ため息。
観念した。
ルクレティア
「少し調べ物をしていただけよ」
ローシャ
「嫌がらせの件?」
ルクレティア
「ええ」
ローシャ
「皆には?」
ルクレティア
「言ってないわ」
ローシャ
「何故?」
ルクレティア
画面を見る。
そこには。
複数のアカウント。
投稿時間。
行動記録。
位置情報。
整理されている。
ローシャ
「……」
嫌な予感。
ルクレティア
「心配させたくないもの」
ローシャ
「それだけ?」
ルクレティア
「それだけよ」
嘘。
ローシャには分かった。
長い付き合い。
ルクレティアが。
何かを隠している時の顔。
知っている。
ローシャ
「ルクレティア」
ルクレティア
「なあに?」
ローシャ
「無茶しないでね」
ルクレティア。
少しだけ。
目を細める。
そして。
微笑む。
「大丈夫よ」
ローシャ
「その言葉が一番信用出来ないのだけれど」
ルクレティア
「酷いわね」
笑う。
いつものように。
でも。
ローシャは見ていた。
その机の上。
並んでいる情報。
既に。
調査。
というレベルを超えている。
誰が。
何をしたか。
どこに居るのか。
どんな人間なのか。
そこまで。
辿り着き始めている。
ローシャ
「……」
何も言わない。
言えない。
ただ。
一つだけ。
確信した。
この件で。
一番怒っているのは。
被害を受けたメンバーではない。
ルクレティアだ。
そして。
それは。
あまり良い事ではない。
第三話「鬼の常識」
深夜。
Gleam Garden事務所。
静か。
誰も居ない。
一人を除いて。
ルクレティア。
パソコンの画面。
SNS。
投稿履歴。
匿名アカウント。
写真。
位置情報。
全てが並んでいる。
カチ。
また一つ。
情報が繋がる。
ルクレティア
「……見つけた」
小さな声。
静か。
感情は無い。
ただ。
冷たい。
画面の向こう。
そこに居たのは。
複数人。
一人ではない。
盗撮。
誹謗中傷。
待ち伏せ。
匿名投稿。
全て。
同じ集団。
ルクレティア
「そう」
納得。
まるで。
難しいパズルが完成した程度。
それだけ。
数分後。
椅子から立つ。
窓の外。
夜の街。
ルクレティア
「……」
静か。
そして。
ふと思う。
何故。
生かしておくのか。
沈黙。
数秒。
人間なら。
おかしい考え。
けれど。
鬼族にとっては。
別におかしくない。
害。
排除。
終わり。
それだけの話。
ルクレティア
「……」
窓に映る。
自分の姿。
とがった耳。
真紅の瞳。
人間ではない。
昔から。
ずっと。
そうだった。
だから。
本音だけなら。
簡単。
二度と。
手を出せないようにする。
それで終わる。
誰も困らない。
誰も傷付かない。
そう。
自分以外は。
ルクレティア
「……駄目ね」
ため息。
知っている。
アオちゃんは嫌がる。
ちょこちゃんも嫌がる。
リズさんも。
にゃんちゃんも。
みるちゃんも。
ティラさんも。
皆。
悲しむ。
だから。
やらない。
やれない。
ではない。
やらない。
選ぶ。
それだけ。
翌日。
事務所。
ちょこみんと
「おはよー!」
元気。
いつも通り。
アオロビ
「朝から元気だなぁ」
ちょこみんと
「元気しか取り柄が無いから!」
アオロビ
「そこまで言ってない」
La lune bleue .
「おはにゃん」
みるく
「おはようございます……」
ローシャ
「おはよう」
ティラミス
「眠い」
いつもの光景。
ルクレティア
「おはよう」
誰も気付かない。
昨日の夜。
何を見つけたのか。
何を考えたのか。
ただ一人。
ローシャだけは。
見ていた。
ルクレティア。
朝。
紅茶を淹れている。
いつも通り。
完璧に。
いつも通り。
でも。
長い付き合いになり
分かる。
ローシャ
「……」
ルクレティア
「どうかしたの?」
ローシャ
「別に」
ルクレティア
「そう」
ローシャ
「ただ」
数秒。
ローシャ
「ほどほどにしてね」
ルクレティア
一瞬だけ。
止まる。
本当に。
一瞬だけ。
そして。
微笑む。
ルクレティア
「何のことかしら」
ローシャ
「そういう所よ」
ルクレティア
「ふふっ」
笑う。
優しく。
穏やかに。
けれど。
ローシャは知っていた。
今のルクレティアは。
怒っている。
今まで見た中でも。
かなり。
第四話「我慢」
夜。
雨。
静かな雨だった。
車内。
ルクレティア一人。
エンジン音だけが響く。
フロントガラス。
雨粒。
流れていく。
助手席。
封筒。
資料。
写真。
SNSログ。
投稿履歴。
住所。
勤務先。
全て揃っていた。
ルクレティア
「……」
静か。
感情は見えない。
ただ。
視線だけが冷たい。
数日。
調べた。
誰が。
何をしたのか。
どういう人間なのか。
全部。
分かった。
車の外。
住宅街。
その先。
目的の家。
ルクレティア
「……」
ハンドルを握る。
考える。
もし。
昔なら。
どうしていたか。
答えは簡単。
迷わない。
悩まない。
終わらせる。
それだけ。
鬼の理屈。
害。
排除。
終了。
簡単。
とても。
簡単。
ルクレティア
「本当に」
小さく呟く。
「人間というのは面倒ね」
ため息。
窓の外。
静かな住宅街。
誰も知らない。
ここに居る事も。
何を考えているかも。
ルクレティア
「……」
ふと。
スマホが光る。
画面。
待受。
集合写真。
Gleam Garden。
ちょこちゃん。
アオちゃん。
リズさん。
にゃんちゃん。
ティラちゃん。
みるちゃん。
ぴーちゃん。
ちーちゃん。
ニケちゃん。
皆。
笑っている。
ルクレティア
「……」
沈黙。
長い。
長い沈黙。
そして。
目を閉じる。
もし。
ここで。
自分の本音を優先したら。
皆はどう思うだろう。
アオちゃんは。
悲しむ。
ちょこちゃんも。
きっと泣く。
リズさんは。
怒る。
にゃんちゃんは。
困った顔をする。
ルクレティア
「……駄目ね」
小さく笑う。
敗北。
完全敗北。
鬼としては。
人間達に。
負けた。
エンジン始動。
車。
動き出す。
住宅街から離れる。
戻る。
向かう先は。
別。
翌日。
警察。
運営。
弁護士。
証拠提出。
ログ提出。
写真提出。
通報。
相談。
手続き。
全て。
完了。
誰にも知られず。
静かに。
確実に。
数日後。
嫌がらせアカウント。
消滅。
盗撮。
止まる。
待ち伏せ。
消える。
誹謗中傷。
終わる。
事務所。
ちょこみんと
「あれ?」
アオロビ
「ん?」
ちょこみんと
「最近静かじゃない?」
アオロビ
「そういえば」
みるく
「手紙も来なくなった……」
La lune bleue .
「平和にゃん」
ティラミス
「快適」
誰も知らない。
何があったのか。
どう終わったのか。
ただ一人。
ローシャだけは。
ルクレティアを見る。
ルクレティア。
紅茶。
いつも通り。
穏やか。
優雅。
何も無かったように。
ローシャ
「……」
そして。
確信する。
やっぱり。
この人だ。
第五話「保護者」
事件が終わってから。
数日。
Gleam Garden事務所。
平和。
とても平和。
ちょこみんと
「平和だー!」
ソファへ飛び込む。
アオロビ
「壊すなよ」
ちょこみんと
「壊さない!」
La lune bleue .
「今のは怪しいにゃん」
ティラミス
「壊すやつ」
ちょこみんと
「信頼が無い!」
いつもの光景。
みるく
「最近本当に静かだね……」
アオロビ
「ね」
La lune bleue .
「平和が一番にゃん」
ティラミス
頷く。
ローシャ
「そうね」
静かに笑う。
そして。
視線だけ。
ルクレティアを見る。
ルクレティア。
紅茶。
いつも通り。
優雅。
穏やか。
完璧に。
いつも通り。
ローシャ
「……」
その日の夜。
事務所。
遅い時間。
残っていたのは二人だけ。
ローシャ。
ルクレティア。
静か。
仕事も終わっている。
紅茶。
二人分。
ローシャ
「ねぇ」
ルクレティア
「なあに?」
ローシャ
「聞いても良い?」
ルクレティア
「内容によるわね」
ローシャ
少し笑う。
ローシャ。
「何をしたの?」
ルクレティア
「何のことかしら」
即答。
ローシャ
「そういう所よ」
ルクレティア
「ふふっ」
笑う。
ローシャ
「全部終わった後に聞くのもずるいけれど」
ルクレティア
「そうね」
ローシャ
「でも」
数秒。
ローシャ
「本当は何をするつもりだったの?」
沈黙。
長い。
ルクレティア。
紅茶を見る。
静か。
ローシャ
「……」
待つ。
急かさない。
やがて。
ルクレティア
「聞かない方が良いわ」
ローシャ
「やっぱり」
納得。
むしろ。
その答えで十分だった。
ルクレティア
「私はね」
静か。
ルクレティア
「人間ではないもの」
ローシャ
「知ってるわ」
ルクレティア
「人間の常識も」
「法律も」
「倫理も」
「全部後から覚えたものなの」
ローシャ
黙って聞く。
ルクレティア
「だから時々分からなくなるのよ」
「何故そうするのか」
「何故そうしないのか」
ローシャ
「……」
ルクレティア
「今回もそうだったわ」
窓の外を見る。
夜の街。
ルクレティア
「私にはもっと簡単な方法があったもの」
ローシャ
「でしょうね」
否定しない。
出来る人だから。
知っている。
ルクレティア
少し笑う。
ルクレティア
「でも」
そこで。
言葉が止まる。
数秒。
ルクレティア
「アオちゃんが悲しむもの」
ローシャ
「うん」
ルクレティア
「ちょこちゃんも」
「にゃんちゃんも」
「みるちゃんも」
「ティラちゃんも」
「皆」
静か。
ルクレティア。
「だから我慢したわ」
ローシャ
笑う。
優しく。
ローシャ
「偉いわね」
ルクレティア
「子供扱いしてる?」
ローシャ
「少しだけ」
ルクレティア
「酷いわね」
二人。
笑う。
静かな夜。
ローシャ
「でも」
ルクレティア
「なあに?」
ローシャ
「ありがとう」
ルクレティア
少し驚く。
ローシャ
「皆を守ってくれて」
ルクレティア
沈黙。
そして。
小さく笑う。
ルクレティア
「保護者だもの」
当然のように。
そう言った。
ローシャ
「そうね」
知っている。
誰よりも。
この人が。
どれだけ皆を大切にしているか。
どれだけ我慢したか。
どれだけ怒っていたか。
全部。
知っている。
だから。
それ以上は聞かなかった。
夜。
事務所。
二つのティーカップ。
静かな談笑。
そして。
誰も知らないまま。
ルクレティアがキレた日は終わった。
122:ローシャンテリーゼ
(ちょこみんリクエスト)(全5話)
第一話「無くなったもの」
休日。
Gleam Garden事務所。
珍しく。
全員揃っていた。
ちょこみんと
「見て見て!」
La lune bleue .
「にゃ?」
ちょこみんと
「新作アイス!」
La lune bleue .
「買ってきたのにゃ!?」
ちょこみんと
「二個買った!」
La lune bleue .
「天才にゃん!」
アオロビ
「ちょろいなぁ」
みるく
「ふふ……」
平和だった。
とても平和だった。
その時。
La lune bleue .
「あれ?」
全員。
視線を向ける。
La lune bleue .は棚の前で首を傾げていた。
アオロビ
「どうした?」
La lune bleue .
「おかしいにゃん」
ちょこみんと
「何が?」
La lune bleue .
「無いにゃん」
アオロビ
「何が?」
La lune bleue .
「ネコネコ三世にゃん」
全員。
「誰?」
La lune bleue .
「誰じゃないにゃん!」
La lune bleue .
「ネコネコ三世にゃん!」
説明になっていない。
ルクレティア
「にゃんちゃん、落ち着いて」
La lune bleue .
「落ち着いてるにゃん!」
全然落ち着いていない。
アオロビ
「つまり?」
La lune bleue .
「ぬいぐるみにゃん!」
ローシャ
「例の?」
La lune bleue .
「そうにゃん!」
ローシャ。
少しだけ表情が変わる。
知っている。
そのぬいぐるみを。
小さな黒猫のぬいぐるみ。
少し古い。
少し傷んでいる。
けれど。
La lune bleue .がずっと大切にしている物だった。
チノ
「そんなに大切なんですか?」
La lune bleue .
静かになる。
数秒。
La lune bleue .
「大切にゃん」
短い言葉。
だが。
その場の全員に伝わった。
本当に大切なのだと。
ちょこみんと
「探そう!」
即答。
アオロビ
「だな」
みるく
「うん」
ルクレティア
「皆で探しましょう」
ティラミス
「探す」
La lune bleue .
「皆……」
少しだけ。
表情が和らぐ。
その時。
ローシャ
「最後に見たのはいつ?」
アオロビ
「早いな」
ローシャ
「こういう時は状況整理が大事よ」
La lune bleue .
「昨日の夜にゃん」
ローシャ
「事務所で?」
La lune bleue .
「そうにゃん」
ローシャ
頷く。
ローシャ
「なるほどね」
アオロビ
「探偵モード?」
ローシャ
「違うわ」
数秒。
ローシャ
「名探偵モードよ」
全員。
「自分で言う?」
ローシャ
少し笑う。
ローシャ
「一回言ってみたかったの」
ちょこみんと
「ろしゃろしゃノリノリだ!」
ローシャ
「こういうのは雰囲気も大事なのよ?」
アオロビ
「どこで覚えた」
ローシャ
「推理小説」
即答。
La lune bleue .
少しだけ笑う。
けれど。
やはり元気は無い。
ローシャはその様子を見る。
ほんの少しだけ。
表情が曇る。
そして。
いつもの優しい笑顔を向けた。
ローシャ
「大丈夫よ」
La lune bleue .
「にゃ?」
ローシャ
「にゃんこさんの大事な物なんでしょう?」
La lune bleue .
「うん」
ローシャ
「じゃあ見つけるわ」
静かな声。
優しい声。
けれど。
アオロビは少しだけ違和感を覚えた。
ローシャは普段から優しい。
だけど今の言葉は。
少し違った。
まるで。
絶対に見つけると決めているような。
そんな響きだった。
第二話「捜索開始」
Gleam Garden事務所。
ネコネコ三世失踪事件。
捜索開始から三十分。
成果。
ゼロ。
アオロビ
「無いなぁ……」
ちょこみんと
「こっちも無いー!」
みるく
「棚の裏も見たよ」
ティラミス
「無かった」
チノ
「ロッカーも確認しました」
ぴたぽん
「机の下も見たぽん」
La lune bleue .
「うにゅ……」
元気が無い。
かなり。
元気が無い。
それを見て。
ちょこみんと
「大丈夫だよネコちゃん!」
La lune bleue .
「大丈夫にゃん」
大丈夫じゃない。
全員分かる。
アオロビ
「絶対大丈夫じゃないやつ」
La lune bleue .
「大丈夫にゃん」
二回目。
より信用出来ない。
その時。
ローシャ。
何やらノートを広げている。
アオロビ
「何してるの?」
ローシャ
「捜査よ」
アオロビ
「本格的だな」
ローシャ
「こういう時は情報整理が大事なの」
ノート。
そこには。
最後に確認された時間。
場所。
目撃者。
行動記録。
綺麗にまとめられている。
チノ
「本当に捜査になってますね」
ローシャ
「名探偵だもの」
アオロビ
「まだ言う」
ローシャ
「こういうのは気分も大事よ?」
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ楽しんでない?」
ローシャ
「失礼ね」
数秒。
ローシャ
「ちょっとしか楽しんでないわ」
全員。
「楽しんでる」
ローシャ
少し笑う。
久しぶりに。
La lune bleue .も少しだけ笑った。
そして。
ローシャ。
その瞬間だけ。
少し安心したような顔をした。
アオロビだけが気付く。
あれ。
今。
笑わせようとした?
でも。
聞かない。
聞いたら否定されそうだから。
その後。
再び捜索。
しかし。
やはり見つからない。
事務所中。
全部探した。
それでも無い。
みるく
「ここまで無いと変だね」
チノ
「誰かが持ち出した可能性もあります」
静かになる。
その可能性。
全員。
考えていた。
けれど。
口にはしなかった。
La lune bleue .
俯く。
ローシャ
「まだ決まった訳じゃないわ」
優しい声。
La lune bleue .
「うんにゃん」
ローシャ
「必ず見つけるから」
短い言葉。
でも。
妙な確信があった。
その時。
ルクレティア
「そういえば」
全員。
振り向く。
ルクレティア
「事務所の入口にカメラがあったわね」
沈黙。
数秒。
アオロビ
「……あ」
ちょこみんと
「……あっ」
チノ
「ありましたね」
ティラミス
「ある」
みるく
「忘れてた……」
ぴたぽん
「完全に忘れてたぽん」
ローシャ
ゆっくり顔を上げる。
ローシャ
「なるほど」
その笑顔。
少しだけ。
怖かった。
アオロビ
「ローシャさん?」
ローシャ
「映像を確認しましょう」
穏やかな声。
いつも通り。
でも。
アオロビは思った。
あれは。
犯人を見つけた時の顔だ。
まだ見つかっていないのに。
第三話「映っていたもの」
事務所。
会議室。
全員集合。
机の上。
ノートパソコン。
そして。
問題の防犯カメラ映像。
アオロビ
「映ってるかな」
チノ
「映っていて欲しいですね」
ぴたぽん
「頼むぽん……」
La lune bleue .
静か。
膝の上で手を握っている。
ローシャはその様子を横目で見る。
そして。
再生。
昨日。
午後。
夕方。
夜。
映像が流れていく。
何も無い。
何も起きない。
ちょこみんと
「ハズレかなー」
アオロビ
「かもなぁ」
その時。
ティラミス
「止めて」
チノ
即座に停止。
画面。
一人の男。
知らない顔。
全員。
静かになる。
チノ
「関係者ではありませんね」
ルクレティア
「見覚えは無いわ」
アオロビ
「誰だこれ」
映像再開。
男。
事務所前。
立ち止まる。
周囲確認。
数秒。
そして。
建物へ入っていく。
アオロビ
「おいおい」
みるく
「入ってる……」
ぴたぽん
「普通に入ったぽん」
ちょこみんと
「えぇ……」
La lune bleue .
顔色が変わる。
ローシャ
「大丈夫よ」
すぐ。
声を掛ける。
La lune bleue .
小さく頷く。
映像。
さらに進む。
十数分後。
男。
建物から出てくる。
その手。
何か持っている。
チノ
「止めます」
停止。
拡大。
画像補正。
全員。
画面を見る。
沈黙。
長い沈黙。
アオロビ
「……マジか」
そこに映っていた。
黒猫のぬいぐるみ。
ネコネコ三世。
La lune bleue .
「……」
言葉が出ない。
ちょこみんと
「犯人じゃん!」
アオロビ
「犯人だな!」
ぴたぽん
「犯人ぽん!」
ティラミス
「犯人」
全員一致。
チノ
「分かりやすいですね」
ローシャ
珍しく。
ため息。
ローシャ
「ここまで分かりやすいと逆に驚くわ」
アオロビ
「分かる」
みるく
「うん……」
ルクレティア
小さく笑う。
しかし。
ローシャだけ。
画面を見ている。
ずっと。
男を見ている。
チノ
「警察へ提出しましょうか」
ルクレティア
「それが良いわね」
アオロビ
「だな」
話は終わった。
そう思った。
その時。
ローシャ
「少し待って」
全員。
振り向く。
ローシャ。
画面を指差す。
ローシャ
「この人」
アオロビ
「ん?」
ローシャ
「転売アカウント持ってるかもしれないわ」
沈黙。
数秒。
ちょこみんと
「なんで?」
ローシャ
「顔がそう言ってるもの」
全員。
「分からない」
ローシャ
「分からない?」
アオロビ
「分からない」
ティラミス
「分からない」
みるく
「分からない……」
ぴたぽん
「全然分からんぽん」
ローシャ
少し笑う。
ローシャ
「そうかしら」
そして。
再び画面を見る。
今度は。
笑っていない。
ローシャ
「でも」
静か。
ローシャ
「まだ返ってきてないのよね」
La lune bleue .
顔を上げる。
ローシャ
「だったら」
「探しましょう」
アオロビ
「どこを?」
ローシャ
微笑む。
ローシャ
「インターネットよ」
その笑顔。
優しい。
いつも通り。
でも。
何故だろう。
アオロビは思った。
犯人の方を心配したくなった。
第四話「見つけたわ」
夜。
Gleam Garden事務所。
静かだった。
珍しく。
皆早めに帰宅していた。
ただし。
二人を除いて。
ローシャ。
そして。
La lune bleue .
ソファ。
La lune bleue .は元気が無い。
無理に笑っている。
でも。
長い付き合いのメンバーなら分かる。
かなり落ち込んでいる。
ルクレティア
「にゃんちゃん」
La lune bleue .
「みゃ?」
ルクレティア
「少しお茶でも飲みましょうか」
La lune bleue .
「飲むにゃん」
ルクレティアは優しく微笑む。
その横。
ローシャは既にパソコンを開いていた。
アオロビ
「ローシャさん、帰らない気でしょ?」
ローシャ
「帰るわよ?」
アオロビ
「絶対嘘」
ローシャ
「酷いわね」
アオロビ
「だってその画面開いてる時点で説得力無いもん」
画面。
転売サイト。
SNS。
フリマアプリ。
検索履歴。
完全に捜査中だった。
ローシャ
「もう少しだけよ」
アオロビ
「だと思った」
その時。
ルクレティア
「アオちゃん」
アオロビ
「ん?」
ルクレティアは紅茶を置く。
穏やか。
いつも通り。
ルクレティア
「にゃんちゃんについててあげるのは私がやるから」
アオロビ
「うん」
ルクレティア
「アオちゃんはリズさんを手伝ってあげて」
アオロビ。
ローシャを見る。
ローシャ。
既に画面と睨めっこ。
完全に聞いていない。
アオロビ
「はいはい」
ルクレティア
少し笑う。
ルクレティア
「お願いね」
そして。
La lune bleue .を連れて別室へ向かった。
部屋。
静かになる。
ローシャ
「何か飲む?」
アオロビ
「コーヒー」
ローシャ
「セルフサービスよ」
アオロビ
「知ってた」
席に座る。
画面を見る。
アオロビ
「どう?」
ローシャ
「まだね」
短い返事。
アオロビは少し違和感を覚える。
ローシャは本来。
もっと話す。
もっと笑う。
アオロビ
「ローシャさん」
ローシャ
「なあに?」
アオロビ
「本気なんだね」
ローシャ。
少しだけ手を止める。
数秒。
ローシャ
「そうね」
否定しない。
アオロビは少し驚く。
ローシャなら。
いつもは笑って誤魔化す。
でも今回は違った。
ローシャ
「にゃんこさん」
静かに呟く。
ローシャ
「すごく落ち込んでいたもの」
アオロビ
「うん」
ローシャ
「だから」
言葉が止まる。
そして。
ローシャ
「見つけたいの」
アオロビ
「そうなんだ」
それ以上は聞かない。
聞く必要も無かった。
数十分後。
カチ。
カチ。
検索。
検索。
検索。
そして。
ローシャの手が止まる。
ローシャ
「……あら」
アオロビ
「ん?」
ローシャは画面を見る。
数秒。
そして。
小さく笑った。
ローシャ
「見つけたわ」
アオロビ
「え?」
ローシャ
「これ」
アオロビは椅子を寄せる。
画面を見る。
そこにあった。
フリマサイト。
出品画像。
黒猫のぬいぐるみ。
少し古い。
少し傷んでいる。
でも。
間違いない。
ネコネコ三世だった。
アオロビ
「うわ、本当にあった」
ローシャ
「ええ」
アオロビ
「本当に見つけるんだ……」
ローシャ
「見つけるって言ったもの」
出品者情報。
アカウント。
販売履歴。
地域。
全て表示されている。
アオロビ
「これ同じ人?」
ローシャ
「同じ人ね」
即答。
アオロビ
「分かるの?」
ローシャ
「分かるわ」
アオロビ
「怖……」
ローシャ
「褒め言葉かしら?」
アオロビ
「たぶん違う」
ローシャは少し笑う。
でも。
目は笑っていなかった。
ローシャ
「さて」
静か。
ローシャ
「返してもらいましょうか」
穏やかな声。
優しい声。
だけど。
アオロビは思った。
犯人さん。
ご愁傷様。
第五話「良かった」
翌日。
午後。
Gleam Garden事務所。
全員集合。
ただし。
La lune bleue .だけは少し元気が無い。
ちょこみんと
「ネコちゃん元気出してー!」
La lune bleue .
「出してるにゃん」
アオロビ
「それ昨日も聞いた」
ティラミス
「出てない」
みるく
「出てないね……」
チノ
「全然出てませんね」
ぴたぽん
「しょんぼりぽん」
La lune bleue .
「うにゅ……」
その時。
ガチャ。
事務所の扉が開く。
ローシャ。
紙袋を持っている。
アオロビ
「お」
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ帰ってきた!」
ローシャ
「ただいま」
いつも通り。
穏やか。
優しい。
何も変わらない。
そう見えた。
ローシャ
「にゃんこさん」
La lune bleue .
「にゃ?」
ローシャ
紙袋を差し出す。
ローシャ
「はい」
La lune bleue .
「?」
受け取る。
開ける。
数秒。
沈黙。
そして。
La lune bleue .
「にゃ」
もう一度。
La lune bleue .
「にゃ?」
全員。
覗き込む。
そこに居た。
ネコネコ三世。
La lune bleue .
完全停止。
ちょこみんと
「うわああああ!」
アオロビ
「マジで返ってきた!」
みるく
「本当に!?」
ぴたぽん
「おおおぽん!」
チノ
「凄いですね」
ティラミス
「見つかった」
La lune bleue .
両手で抱える。
確かめる。
何度も。
何度も。
そして。
La lune bleue .
「ネコネコ三世にゃ……」
小さい声。
少し震えている。
ローシャ。
静かに微笑む。
ローシャ
「無事だったわ」
La lune bleue .
「……」
数秒。
La lune bleue .
「ありがとにゃん」
ローシャ
「いいのよ」
短い返事。
でも。
その瞬間。
アオロビ。
気付く。
ローシャ。
少しだけ疲れている。
アオロビ
「ローシャさん」
ローシャ
「なあに?」
アオロビ
「何したの?」
ローシャ
「何も?」
即答。
アオロビ
「嘘だ」
ちょこみんと
「絶対嘘!」
ぴたぽん
「怪しいぽん!」
チノ
「非常に怪しいですね」
みるく
「怪しい……」
ティラミス
「怪しい」
全員一致。
ローシャ
少し笑う。
ローシャ
「酷いわね」
アオロビ
「だって返ってくるの早すぎるでしょ」
ローシャ
「運が良かったのよ」
アオロビ
「絶対違う」
ルクレティア。
紅茶を飲む。
静か。
そして。
小さく笑う。
ルクレティア
「そういう事にしておきましょう」
アオロビ
「ルクさん絶対知ってる」
ルクレティア
「何の事かしら」
アオロビ
「その顔!」
ちょこみんと
「共犯だー!」
ルクレティア
「失礼ね」
笑う。
穏やかに。
その横。
La lune bleue .
ネコネコ三世を抱えたまま。
離さない。
本当に。
離さない。
ちょこみんと
「ネコちゃん戻ってきてる?」
La lune bleue .
「戻ってるにゃん」
アオロビ
「いやそっちじゃなくて」
La lune bleue .
「戻ってるにゃん」
二回目。
完全復活。
全員。
笑う。
その様子を見ながら。
ローシャも笑った。
静かに。
優しく。
そして。
誰にも聞こえないくらい小さな声で。
ローシャ
「良かった」
それだけだった。
何をしたのか。
どうやって取り戻したのか。
最後まで語られる事は無かった。
けれど。
一つだけ。
全員が知っていた。
ローシャは。
大切な人が悲しんでいるのを放っておけない。
そういう人なのだと。
123:お姉さん
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「迷子」
休日。
大型ショッピングモール。
人。
人。
人。
そして。
ちょこみんと。
■ 完全休日モード
「ふふふ〜ん♪」
上機嫌だった。
理由。
限定スイーツフェア。
期間限定雑貨。
新作コスメ。
好きな物だらけ。
ちょこみんと
「今日は誰にも邪魔されない!」
「最高!」
一人でガッツポーズ。
数秒後。
通行人に見られる。
ちょこみんと
「えへへ」
誤魔化した。
全然誤魔化せていない。
そして。
スイーツエリア。
ちょこみんと
「うわぁぁぁ!」
「美味しそう!」
目が輝く。
ショーケース。
ケーキ。
クレープ。
パフェ。
全部美味しそう。
全部食べたい。
しかし。
財布には限界がある。
ちょこみんと
「くっ……!」
「大人って大変……!」
そんな葛藤の末。
限定クレープ購入。
大勝利。
ちょこみんと
「いただきまーす!」
一口。
幸せ。
完全に幸せ。
その時だった。
遠く。
小さな泣き声。
「うぇぇぇぇ……」
ちょこみんと
「ん?」
振り向く。
人混みの隅。
小さな女の子。
四歳か五歳くらい。
一人。
泣いていた。
ちょこみんと
「えっ!?」
思わず立ち止まる。
周囲を見る。
親らしい人。
居ない。
女の子。
泣いている。
かなり泣いている。
ちょこみんと
「えええ!?」
「どうしたの!?」
慌てて駆け寄る。
女の子。
びくっ。
ちょこみんと
「あっ」
ここで気付く。
知らない大人が。
急に近付いてきた。
怖い。
当たり前。
ちょこみんと。
一度深呼吸。
そして。
しゃがむ。
目線を合わせる。
声も少し落とす。
ちょこみんと
「大丈夫」
女の子。
泣きながら見る。
ちょこみんと
「びっくりしたね」
「怖かったね」
優しい声。
女の子。
少しだけ泣き声が小さくなる。
ちょこみんと
「お母さんとはぐれたの?」
女の子。
こくり。
頷いた。
ちょこみんと
「そっか」
数秒。
ちょこみんと。
クレープを見る。
女の子を見る。
クレープを見る。
女の子を見る。
そして。
迷わず。
クレープを閉じた。
今は。
こっちが先。
ちょこみんと
「よし!」
女の子。
きょとん。
ちょこみんと
にっこり笑う。
ちょこみんと
「お姉ちゃんに任せなさい!」
女の子。
まだ不安そう。
当然。
知らない人。
知らない場所。
見知らぬ大人。
怖い。
でも。
ちょこみんとは焦らない。
急がない。
手も引っ張らない。
まず。
安心させる。
それが先。
ちょこみんと
「名前は言える?」
女の子。
首を振る。
まだ無理。
ちょこみんと
「そっか」
「じゃあ今は言わなくていいよ」
女の子。
少し驚く。
普通なら聞かれる。
でも。
無理に聞かない。
ちょこみんと
「泣きたいなら泣いてもいいし」
「落ち着いてからでいいからね」
女の子。
少しだけ。
ちょこみんとの服を掴む。
本当に少しだけ。
でも。
確かに掴んだ。
ちょこみんと。
笑う。
ちょこみんと
「よし」
「じゃあ一緒にお母さん探そうか」
女の子。
小さく頷く。
その瞬間。
ちょこみんと。
頭の中。
完全切替。
買い物。
後回し。
スイーツ。
後回し。
限定品。
後回し。
今。
一番大事なのは。
目の前の女の子。
それだけだった。
第二話「一緒に探そう」
大型ショッピングモール。
休日。
人混み。
かなり多い。
その中。
ちょこみんと。
そして。
迷子の女の子。
二人で歩いていた。
ちょこみんと
「歩けそう?」
女の子。
こくり。
小さく頷く。
でも。
表情は不安そう。
まだ泣きそう。
当然だった。
知らない場所。
知らない人。
お母さんは居ない。
怖くない訳がない。
ちょこみんと
「よし」
「まずは座ろっか」
女の子
「……?」
近くの休憩スペース。
ベンチ。
そこへ向かう。
女の子。
大人しくついて来る。
ちょこみんと。
自販機を見る。
財布。
見る。
数秒。
ちょこみんと
「まぁいっか!」
ジュース購入。
女の子へ差し出す。
ちょこみんと
「飲める?」
女の子。
少し迷う。
そして。
こくり。
ちょこみんと
「えらい!」
女の子。
ストロー。
ちゅー。
少し飲む。
そして。
また少し飲む。
ちょこみんと。
何も聞かない。
今は。
落ち着く方が先。
数分後。
女の子。
ようやく呼吸が落ち着く。
泣き声も止まる。
ちょこみんと
「よかった」
女の子
「……」
ちょこみんと
「お姉ちゃんね」
女の子。
見る。
ちょこみんと
「昔ね」
少し笑う。
ちょこみんと
「迷子になった事あるんだ」
女の子
「ほんと?」
初めて返事が返る。
ちょこみんと
「ほんとほんと」
「しかも何回も」
女の子。
少し驚く。
ちょこみんと
「三回くらい」
女の子
「そんなに?」
ちょこみんと
「そんなに」
真顔。
女の子。
少し笑った。
ちょこみんと
「だから大丈夫!」
「迷子は卒業済みです!」
女の子
「……?」
意味は分からない。
でも。
ちょっと面白かった。
その頃。
ちょこみんと。
心の中。
よし。
少し笑った。
ここから。
少しずつ。
少しずつ。
信頼を作る。
焦らない。
急がない。
その後。
ちょこみんと
「名前言える?」
今度は聞く。
女の子。
少し考える。
そして。
「ひな」
ちょこみんと
「ひなちゃん!」
女の子。
少し照れる。
ちょこみんと
「よし!」
「ひなちゃん偉い!」
頭を撫でる。
優しく。
本当に優しく。
ひな。
少しだけ笑う。
そして。
立ち上がる時。
ちょこみんと。
気付く。
靴紐。
解けている。
ちょこみんと
「あっ」
ひな
「?」
ちょこみんと
「止まってね」
しゃがむ。
靴紐。
結ぶ。
慣れている。
綺麗。
あっという間。
ひな。
じっと見ている。
ちょこみんと
「これで転ばない!」
ひな
「すごい」
ちょこみんと
「でしょ!」
ドヤ顔。
数秒。
ひな。
くすっ。
笑う。
ちょこみんと。
その笑顔を見て。
少し安心した。
もう。
最初ほど怖がっていない。
そして。
二人。
再び歩き出す。
迷子センターへ向かって。
その途中。
ひな。
ちょこみんとの服を掴む。
少しだけ。
ちょこみんと
「ん?」
ひな
「……」
小さい声。
ひな
「こわい」
ちょこみんと。
立ち止まる。
そして。
笑った。
ちょこみんと
「うん」
「怖いよね」
否定しない。
大丈夫とも言わない。
まず。
認める。
ちょこみんと
「でも」
ひな。
見上げる。
ちょこみんと
「今は一人じゃないよ」
「お姉ちゃんいるから」
ひな。
少しだけ。
ちょこみんとの手を握る。
今度は。
服じゃない。
手だった。
ちょこみんと。
優しく握り返す。
その瞬間。
ひなの表情から。
少しだけ。
不安が消えた。
第三話「お姉ちゃん」
大型ショッピングモール。
迷子センター。
ひな。
そして。
ちょこみんと。
二人は受付前に居た。
受付スタッフ。
事情を聞く。
ひなの名前。
特徴。
服装。
覚えている事。
ひな。
頑張って答える。
ちょこみんと。
その隣。
何も急かさない。
答えられない事は。
無理に聞かない。
ただ。
見守る。
スタッフ
「館内放送を流しますね」
ひな
「うん……」
少し不安そう。
スタッフは優しい。
でも。
知らない大人。
やっぱり怖い。
その時。
ちょこみんと
「ひなちゃん」
ひな
「?」
ちょこみんと
「お姉ちゃんここに居るから」
ひな。
少しだけ安心した顔。
そして。
館内放送。
流れる。
『迷子のお知らせをいたします――』
数分。
待つ。
しかし。
誰も来ない。
十分。
来ない。
十五分。
まだ来ない。
ひな。
俯く。
また。
不安が戻ってくる。
ちょこみんと。
それを見て。
隣へ座る。
ちょこみんと
「ひなちゃん」
ひな
「……」
ちょこみんと
「好きな食べ物なに?」
ひな
「ぷりん」
即答。
ちょこみんと
「おっ」
「強い」
ひな
「つよい?」
ちょこみんと
「プリンは強い」
真顔。
ひな。
数秒考える。
そして。
少し笑う。
ちょこみんと
「お姉ちゃんはクレープ派だけどね!」
ひな
「どっちがつよいの?」
ちょこみんと
「難しい問題だねぇ……」
真剣に悩み始める。
ひな。
また笑った。
その頃。
ちょこみんとのクレープ。
既に食べるタイミングを失っていた。
でも。
気にしない。
今は。
ひなの方が大事。
そして。
さらに十分後。
館内放送。
二回目。
まだ。
来ない。
ひな。
今度は。
本当に不安そうだった。
ひな
「おかあさん……」
涙。
また少し。
溢れ始める。
ちょこみんと。
一瞬だけ。
胸が痛くなる。
もし。
自分だったら。
もし。
小さい頃の自分だったら。
絶対。
泣いていた。
だから。
ちょこみんとは。
ひなの前では笑う。
ちょこみんと
「大丈夫」
ひな
「……」
ちょこみんと
「絶対見つかる」
ひな
「ほんと?」
ちょこみんと
「うん」
即答。
迷い無し。
ひな。
少しだけ安心する。
その時。
ひな
「お姉ちゃん」
ちょこみんと
「ん?」
ひな
「おかあさん?」
ちょこみんと
「違うよ?」
即答。
ひな
「じゃあ」
「なんでやさしいの?」
静か。
迷子センター。
少しだけ。
時間が止まった気がした。
ちょこみんと。
少し考える。
数秒。
そして。
笑った。
ちょこみんと
「なんでだろうね」
ひな
「?」
ちょこみんと
「でも」
少しだけ。
遠くを見る。
ちょこみんと
「困ってる子を放っておくと」
「後で嫌な気持ちになるからかな」
ひな
「おかあさんにおこられる?」
ちょこみんと
「ううん」
首を振る。
そして。
胸に手を当てた。
ちょこみんと
「自分に」
ひな。
意味は全部分からない。
でも。
なんとなく。
伝わった。
このお姉ちゃんは。
優しい人なんだって。
その時。
迷子センター入口。
スタッフ。
慌てた様子で立ち上がる。
誰か来た。
走って来る足音。
女性。
必死な顔。
そして。
「ひな!!」
ひな。
顔を上げる。
数秒。
目を見開く。
そして。
「おかあさーーーん!!」
駆け出した。
第四話「ありがとう、お姉ちゃん」
迷子センター。
走って来た女性。
息が上がっている。
髪も少し乱れている。
周囲など見えていない。
視線は。
ただ一人。
ひなだけ。
「ひな!!」
ひな。
一瞬固まる。
そして。
「おかあさーーーん!!」
走り出した。
母親も。
駆け寄る。
次の瞬間。
ぎゅっ。
強く。
強く抱き締める。
「ごめんね……!」
「ごめんねひな……!」
ひな。
泣いている。
母親も。
泣いている。
周囲のスタッフ。
少しだけ表情が緩む。
良かった。
本当に。
良かった。
その光景を。
ちょこみんとは少し離れた場所から見ていた。
近付かない。
声も掛けない。
今。
主役は自分じゃない。
ひなと。
お母さんだ。
だから。
ただ見守る。
数分後。
母親。
ようやく落ち着く。
そして。
ちょこみんとの方へ向いた。
深く。
深く頭を下げる。
「ありがとうございました!」
「本当に……!」
声が震えていた。
ちょこみんと。
慌てる。
ちょこみんと
「えっ!?」
「いやいやいや!」
「頭上げてください!」
母親
「でも……!」
ちょこみんと
「大丈夫です!」
「見つかって良かったです!」
いつもの笑顔。
明るい。
優しい。
母親。
少しだけ笑う。
そして。
もう一度。
「ありがとうございました」
今度は。
落ち着いた声だった。
ひな。
母親の手を握っている。
もう泣いていない。
その顔を見て。
ちょこみんとも安心した。
スタッフ。
手続き終了。
迷子案件解決。
ひな。
母親と一緒に帰る。
その時。
ちょこみんとも。
反対方向へ歩き出した。
これで終わり。
そう思った。
その時。
後ろ。
「お姉ちゃーーーん!!」
大きな声。
ちょこみんと。
振り返る。
ひなだった。
母親の手を握ったまま。
こっちを見ている。
ひな
「ありがとう!!」
満面の笑顔。
ちょこみんと。
数秒。
固まる。
そして。
少し照れた。
ちょこみんと
「どーいたしまして!」
大きく手を振る。
ひなも振る。
母親も笑う。
そして。
二人は人混みの中へ消えていった。
静か。
少しだけ。
静か。
その後。
ちょこみんと。
近くのベンチへ座る。
ぽすっ。
脱力。
数秒。
完全停止。
そして。
ちょこみんと
「……はぁぁぁぁぁ」
長い息。
さらに。
ちょこみんと
「緊張したぁぁぁぁぁ!!」
誰も居ない。
だから。
今だけ。
素。
ちょこみんと
「怖かったぁ……」
「ちゃんと見つかるかなって思ったし……」
「泣かれたらどうしようって思ったし……」
「お母さん来なかったらどうしようって思ったし……」
言いたい事。
全部出る。
実は。
ずっと不安だった。
ずっと緊張していた。
でも。
ひなの前では見せなかった。
見せられなかった。
だから。
今だけ。
解放。
その時。
視線。
ふと横へ向く。
そこには。
ぐったりしたクレープ。
数時間前。
買ったやつ。
ちょこみんと
「……あ」
忘れてた。
完全に。
忘れてた。
数秒。
眺める。
そして。
ちょこみんと。
吹き出した。
ちょこみんと
「あはははは!」
「クレープごめん!!」
結局。
買い物はほとんど出来なかった。
限定品も逃した。
予定も全部崩れた。
でも。
後悔は無かった。
だって。
最後に見た。
ひなの笑顔。
あれだけで。
十分だったから。
その日。
ちょこみんとは。
誰にも知られず。
少しだけ。
お姉ちゃんになった。
124:深夜のグルメ 4th Season
〜深夜の函館塩ラーメン〜
函館。
ロケ最終日。
朝から。
忙しかった。
朝市。
赤レンガ倉庫。
八幡坂。
五稜郭。
気付けば。
一日中歩いていた。
そして。
夜。
ホテル。
全員解散。
ちょこみんと
「おやすみー!」
ぴたぽん
「おやすみぽん〜」
みるく
「もう限界です……」
ティラミス
「眠い」
ローシャ
「ちゃんと寝るのよ」
ルクレティア
「明日も移動があるわ」
解散。
静かになる。
函館の夜。
ホテルの部屋。
アオロビ。
起きていた。
理由。
分からない。
眠くない。
いや。
正確には。
別の感覚が勝っている。
窓際。
函館駅周辺の灯り。
夜景。
時計を見る。
23:34
アオロビ。
少し考える。
そして。
呟いた。
「腹が……減った」
昼。
海鮮丼。
食べた。
夜。
ジンギスカン。
食べた。
それでも。
減る。
ロケというやつは。
思った以上に体力を使う。
そして。
歩いた日は。
なぜか。
深夜に腹が減る。
不思議だ。
アオロビ。
立ち上がる。
財布。
スマホ。
上着。
装備完了。
数分後。
ホテルを出る。
函館の夜風。
少し冷たい。
昼間の観光地とは別の顔。
人も少ない。
車も少ない。
静か。
歩く。
ゆっくり。
駅方向へ。
その時。
スマホ。
震える。
ちょこみんと。
嫌な予感しかしない。
開く。
『あおちーどこ!?』
早い。
なんで起きてる。
アオロビ。
返信。
『ラーメン』
即送信。
数秒後。
『ズルい!!!』
『写真!!!』
アオロビ
「まだ食べてない」
送信。
さらに。
『塩!?』
『味噌!?』
『とんこつ!?』
元気だな。
寝ろ。
スマホを閉じる。
そして。
歩く。
数分後。
見つけた。
小さな暖簾。
駅前通りから。
一本外れた通り。
派手じゃない。
観光客向けでもない。
でも。
店内には灯り。
暖簾は出ている。
そして。
あの香り。
スープ。
出汁。
ラーメン屋特有の香り。
アオロビ。
立ち止まる。
「これは」
数秒。
暖簾を見る。
「危険だ」
深夜。
ホテル帰り。
ラーメン。
良くない。
絶対良くない。
でも。
見つけてしまった。
仕方ない。
本当に仕方ない。
入店。
カラン。
静かな店。
カウンター。
数人の客。
テレビ。
音量小さめ。
ちょうどいい。
メニュー。
見る。
塩。
塩。
塩。
潔い。
アオロビ。
「塩ラーメン」
店主。
頷く。
以上。
深夜のラーメン屋に必要な会話。
全部終了。
水を飲む。
冷たい。
胃が起きる。
厨房。
湯切り。
麺。
スープ。
音が響く。
腹が減っている時。
料理の音は。
暴力だ。
そして。
数分後。
着丼。
来た。
函館塩ラーメン。
まず。
見た目。
綺麗だ。
透明。
いや。
透明じゃない。
黄金色。
透き通っているのに。
ちゃんと色がある。
灯りを反射する。
静かなスープ。
ネギ。
メンマ。
チャーシュー。
派手じゃない。
でも。
隙がない。
そして。
香り。
ここが違う。
塩ラーメンなのに。
塩の香りはしない。
先に来るのは。
出汁。
鶏。
豚。
昆布。
優しい。
でも。
弱くない。
レンゲ。
持つ。
スープ。
一口。
熱い。
そして。
「あぁ……」
出た。
声が出た。
これは。
なるほど。
塩じゃない。
塩ラーメンだけど。
塩じゃない。
出汁だ。
最初に来るのは。
出汁。
塩は後ろ。
支えている。
主張していない。
でも。
居ないと成立しない。
良い仕事をしている。
なんだこの塩。
次。
麺。
細麺。
持ち上げる。
綺麗だ。
湯気。
そして。
すする。
一口。
二口。
三口。
止まらない。
細い。
でも。
弱くない。
スープを運ぶ。
そうか。
この麺。
主役じゃない。
運搬役だ。
スープを一番美味く食わせるための麺。
だから細い。
だから合う。
なるほど。
これは完成されてる。
チャーシュー。
箸で持つ。
柔らかい。
崩れる寸前。
口へ。
肉。
しっかり肉。
脂で誤魔化していない。
ちゃんと肉。
そして。
またスープ。
あれ。
変わった。
今度は昆布だ。
最初は鶏だった。
次は昆布。
飲むたびに。
順番が変わる。
面白い。
アオロビ。
無言。
もう喋らない。
箸。
レンゲ。
箸。
レンゲ。
繰り返す。
気付けば。
麺終了。
早い。
でも。
満足感がある。
そして。
残ったスープ。
ここが問題だ。
深夜。
ラーメン。
完飲。
良くない。
絶対良くない。
分かってる。
でも。
レンゲ。
動く。
一口。
また一口。
もう一口。
止まらない。
優しい。
染みる。
夜に合いすぎる。
そして。
気付く。
器。
空。
アオロビ
「……あ」
やってしまった。
完飲。
深夜。
塩ラーメン。
完飲。
明日の自分に怒られる。
絶対怒られる。
でも。
後悔は無い。
全く無い。
店を出る。
夜風。
少し冷たい。
でも。
身体は温かい。
胃も温かい。
函館の夜。
悪くない。
その時。
スマホ。
震える。
ルクレティア。
嫌な予感しかしない。
『アオちゃん』
『どこかしら』
アオロビ。
返信。
『ラーメン』
数秒。
即返信。
『帰ったら詳しく聞くわ』
アオロビ
「なんで」
函館の夜。
静かだった。
125:コンカフェの悪夢再来?
(全7話)
第一話「またやるの?」
大阪。
ある有名コンセプトカフェ。
その会議室。
Gleam Garden。
全員集合。
アオロビ。
ちょこみんと。
ティラミス。
ローシャ。
ルクレティア。
La lune bleue .。
ぴたぽん。
みるく。
チノ。
ニケ。
勢揃いだった。
その頃。
ちょこみんと。
机の上のお菓子を見る。
ちょこみんと
「食べていい?」
アオロビ
「会議始まってる」
ちょこみんと
「まだ始まってないじゃん!」
アオロビ
「始まる」
いつものだった。
そして。
担当者入室。
会議開始。
担当者
「本日は皆様に期間限定コラボのご相談があります」
ローシャ
「楽しそうじゃない」
La lune bleue .
「何やるにゃ?」
担当者。
資料を映す。
スクリーン。
大きな文字。
『Gleam Garden × コンセプトカフェコラボ企画』
アオロビ
「ほう」
チノ
「コラボ案件ですね」
ニケ
「こういうのもあるんですね……」
その時。
担当者。
次のページを開く。
『参考資料』
数秒。
スクリーン。
映し出された。
秋葉原。
某猫コンセプトカフェ。
期間限定イベント。
そして。
猫耳ルクレティア。
静止。
数秒。
ルクレティア
「消しなさい」
担当者
「参考資料です」
ルクレティア
「消しなさい」
早い。
異常に早い。
アオロビ
「資料が強い」
ローシャ。
覗き込む。
ローシャ
「結構可愛いじゃない」
ルクレティア
「貴女は黙っていてちょうだい」
さらに。
別写真。
猫耳。
チェキ撮影。
笑顔。
顔真っ赤。
ルクレティア
「消しなさい」
担当者
「SNSの公開投稿です」
ルクレティア
「消しなさい」
会議室。
少し笑いが漏れる。
その頃。
La lune bleue .。
資料を見る。
La lune bleue .
「ルクさん真っ赤にゃ」
ルクレティア
「にゃんちゃんも写っているでしょう」
次ページ。
猫耳La lune bleue .。
満面の営業スマイル。
La lune bleue .
「営業にゃ」
強い。
ぴたぽん
「懐かしいぽん〜」
みるく
「すごく人気でしたよね……」
ルクレティア
「その話を広げないでちょうだい」
しかし。
担当者は止まらない。
次ページ。
来場者数。
売上。
SNS反響。
イベントレポート。
どれも好成績。
担当者
「当時の反響が非常に大きく」
担当者
「業界内でも話題になっていました」
アオロビ
「調べられてる」
ローシャ
「ちゃんと結果出してたのね」
チノ
「実績としては十分ですね」
ニケ
「すごい……」
ルクレティア。
嫌な予感しかしない。
担当者。
笑顔。
そして。
最後の資料。
表示される。
『メイドカフェコラボ企画』
数秒。
沈黙。
アオロビ。
察した。
ちょこみんと。
察した。
ローシャ。
ちょっと楽しそう。
La lune bleue .。
既に営業モード。
ティラミス
「必要?」
担当者
「必要です」
ティラミス
「そう」
みるく
「えっ……メイドさんですか……?」
チノ
「別に構いません」
ニケ
「へ、へぇ〜……」
そして。
ルクレティア。
静かに目を閉じる。
数秒。
本当に数秒。
その後。
ルクレティア
「帰っていいかしら」
会議室。
大爆笑だった。
第二話「研修という名の地獄」
大阪。
コラボ開始まで。
あと数日。
Gleam Garden。
現在。
研修中。
担当講師。
笑顔。
講師
「まずは基本の挨拶からいきましょう♪」
講師
「ご主人様、お嬢様のご帰宅を歓迎します♪」
講師
「では皆さんもどうぞ♪」
ちょこみんと。
手を挙げる。
ちょこみんと
「はい!」
早い。
講師
「どうぞ♪」
ちょこみんと
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
元気。
大きい声。
笑顔。
講師。
少し驚く。
講師
「凄いですね!?」
ちょこみんと
「やるならちゃんとやる!」
早い。
理解が早い。
アオロビ
「適応した」
ローシャ
「早いわね」
その頃。
ちょこみんと。
既に楽しそう。
ちょこみんと
「これ文化祭みたいで面白い!」
完全に前向きだった。
一方。
アオロビ。
アオロビ
「お帰りなさいませ」
自然。
講師
「安定感ありますね♪」
アオロビ
「接客だと思えば」
なるほど。
そして。
ローシャ。
ローシャ
「お帰りなさいませ、ご主人様」
綺麗。
かなり綺麗。
講師
「素晴らしいです♪」
ローシャ
「ふふっ」
褒められた。
危険だった。
研究モードが始まりかけている。
一方。
ティラミス。
ティラミス
「お帰りなさいませ」
講師
「笑顔で♪」
ティラミス
「必要?」
講師
「必要です♪」
ティラミス
「そう」
いつも通りだった。
みるく。
みるく
「お、お帰りなさいませ……」
小さい。
しかし。
優しい。
講師
「凄く自然ですね♪」
みるく
「そ、そうですか……」
照れていた。
チノ。
チノ
「お帰りなさいませ」
完璧。
講師
「経験あります?」
チノ
「ありません」
怖い。
ニケ。
ニケ
「お帰りなさいませ……!」
少し噛んだ。
赤くなる。
講師
「大丈夫ですよ♪」
ニケ
「はい……」
新人感が強い。
そして。
問題。
ルクレティア。
講師
「お願いします♪」
ルクレティア
「嫌よ」
早い。
アオロビ
「まだ始まったばっかり」
ルクレティア
「だからよ」
しかし。
逃げられない。
数秒後。
ルクレティア
「……お帰りなさいませ」
綺麗。
自然。
上品。
完璧。
講師。
固まる。
講師
「凄く上手です!」
ルクレティア
「嬉しくないわ」
本音だった。
そして。
La lune bleue .。
La lune bleue .
「お帰りにゃさいませ、ご主人様にゃ♪」
講師
「完成してる!?」
アオロビ
「営業にゃ」
La lune bleue .
「営業にゃ」
強かった。
そして。
問題の次項目。
講師
「続いてオムライスです♪」
ちょこみんと
「おぉー!」
元気。
講師
「お絵描きサービスがあります♪」
ちょこみんと
「楽しそう!」
アオロビ
「順応しすぎ」
その頃。
ローシャ。
既にメニューを見ている。
ローシャ
「人気の絵柄ってあるのかしら」
危険だった。
完全に研究を始めている。
そして。
講師。
笑顔。
講師
「最後に魔法をかけます♪」
数秒。
アオロビ
「来た」
講師
「せーの♪」
講師
「萌え萌えきゅん♪」
沈黙。
みるく。
停止。
ニケ。
停止。
アオロビ。
遠い目。
そして。
ちょこみんと。
数秒考える。
ちょこみんと
「なるほど!」
講師
「はい♪」
ちょこみんと
「要は盛り上げればいいんだよね!」
講師
「そうです♪」
ちょこみんと
「了解!」
早い。
理解が早い。
適応も早い。
その横。
ルクレティア。
静かに目を閉じる。
数秒。
ルクレティア
「帰っていいかしら」
アオロビ
「駄目」
即答だった。
第三話「開店」
大阪。
コラボ初日。
朝。
開店前。
バックヤード。
Gleam Garden。
全員。
メイド服姿。
その頃。
ちょこみんと。
鏡を見る。
ちょこみんと
「おぉー!」
一回転。
ちょこみんと
「意外と可愛い!」
元気だった。
アオロビ
「楽しそう」
ちょこみんと
「だってせっかくだし!」
その横。
ニケ。
緊張。
ニケ
「だ、大丈夫ですかね……」
みるく
「私も不安です……」
新人組だった。
一方。
チノ。
既に完成。
チノ
「特に問題ありません」
強い。
その頃。
ティラミス。
鏡を見る。
数秒。
ティラミス
「動きやすい」
評価基準が違った。
そして。
ローシャ。
少し嬉しそう。
ローシャ
「思ったより可愛いわね」
アオロビ
「順応が早い」
ローシャ
「どうせやるなら楽しみたいじゃない」
既に研究対象だった。
そして。
問題。
ルクレティア。
完全武装。
メイド服。
似合う。
異常に似合う。
立ち姿も綺麗。
姿勢も綺麗。
言葉遣いも綺麗。
なのに。
本人だけ。
不機嫌。
アオロビ
「ルクさん」
ルクレティア
「何かしら」
アオロビ
「似合う」
ルクレティア
「聞いてないわ」
即終了。
その頃。
La lune bleue .。
ルクレティアを見る。
La lune bleue .
「ルクさんだけ本職みたいにゃ」
ルクレティア
「だから何故かしら」
否定はできない。
そして。
開店。
扉。
開く。
最初のお客様。
入店。
数秒。
店内。
少し緊張。
その瞬間。
ちょこみんと。
笑顔。
ちょこみんと
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
完璧。
声量。
笑顔。
勢い。
全部ある。
アオロビ
(早いなぁ)
思わず感心した。
その頃。
みるく。
小さく。
みるく
「お帰りなさいませ……」
しかし。
優しい。
柔らかい。
客。
少し笑顔になる。
自然だった。
そして。
チノ。
チノ
「お帰りなさいませ」
完璧。
機械みたいに安定していた。
一方。
ニケ。
少し緊張。
ニケ
「お、お帰りなさいませ!」
噛まなかった。
成長。
その頃。
ティラミス。
ティラミス
「お帰りなさいませ」
静か。
しかし。
妙に落ち着く。
客。
少し安心した顔。
不思議だった。
そして。
ローシャ。
ローシャ
「お帰りなさいませ、ご主人様」
綺麗。
丁寧。
そして。
会話が長い。
アオロビ
(始まった)
研究成果を発揮していた。
その頃。
La lune bleue .。
完全営業。
La lune bleue .
「お帰りにゃさいませにゃ♪」
客。
即笑顔。
強い。
慣れている。
そして。
問題。
ルクレティア。
客。
席へ案内される。
ルクレティア
「こちらへどうぞ」
綺麗。
自然。
完璧。
客。
少し固まる。
数秒。
客。
ぽつり。
「すごい……」
アオロビ
(分かる)
何が凄いのか。
説明できない。
でも。
凄い。
その頃。
別の客。
小声。
「なんか本物っぽい」
ルクレティア
「何がかしら」
客。
慌てる。
ルクレティア。
本気で分かってない。
その時。
店長。
嬉しそう。
店長
「皆さん凄く順調ですね!」
その瞬間。
アオロビ。
店内を見る。
満席。
早い。
思った以上に早い。
そして。
まだ誰も知らなかった。
この後。
ルクレティアが。
本人の意思とは関係なく。
とんでもない人気になる事を。
第四話「何故か一番人気」
コラボ初日。
昼過ぎ。
店内。
満席。
予想以上だった。
その頃。
アオロビ。
注文票を見る。
アオロビ
「多くない?」
ちょこみんと
「多いね!」
元気。
全然疲れてない。
凄い。
その横。
ローシャ。
客と会話中。
ローシャ
「それでね――」
アオロビ
「長い」
ローシャ
「えっ」
客。
楽しそう。
危険だった。
ローシャ。
接客向いている。
本人が思っている以上に。
向いている。
一方。
La lune bleue .。
完全営業モード。
La lune bleue .
「ご注文ありがとにゃ♪」
客。
笑顔。
子供。
大喜び。
強い。
猫系は強かった。
その頃。
みるく。
少し慣れてきた。
みるく
「こちらオムライスになります」
優しい。
静か。
しかし。
不思議と安心感がある。
客。
自然と笑顔になる。
一方。
ニケ。
最初より落ち着いている。
ニケ
「ご注文お伺いします」
少し緊張。
でも。
真面目。
応援したくなる。
そんな空気だった。
そして。
チノ。
相変わらず。
チノ
「こちらになります」
完璧。
客。
感心。
チノ。
特に気にしていない。
強い。
その頃。
ティラミス。
静か。
しかし。
固定客が出来始めていた。
客。
「落ち着く……」
ティラミス
「そう」
会話終了。
それでも成立する。
不思議だった。
そして。
問題。
ルクレティア。
店長。
資料を見る。
数秒。
店長
「……あれ?」
アオロビ
「何」
店長
「チェキ数」
アオロビ
「うん」
店長
「一位」
数秒。
アオロビ。
ルクレティアを見る。
ルクレティア。
紅茶を運んでいる。
いつも通り。
何もしていない。
本当に何もしていない。
アオロビ
「なんで」
店長
「分からない」
その頃。
客席。
男性客。
緊張気味。
ルクレティア。
紅茶を置く。
ルクレティア
「ごゆっくりどうぞ」
客。
固まる。
数秒。
顔真っ赤。
ルクレティア。
気付いてない。
完全に気付いてない。
その後。
チェキ希望。
さらに。
別客。
チェキ希望。
また。
チェキ希望。
アオロビ
「増えてる」
ローシャ
「増えてるわね」
La lune bleue .
「増えてるにゃ」
ルクレティアだけ。
知らない。
その時。
店長。
笑顔。
店長
「ルクレティアさん」
ルクレティア
「何かしら」
店長
「人気一位です」
数秒。
沈黙。
ルクレティア
「何故かしら」
本気だった。
その頃。
客席。
女性客。
友人に話している。
「なんか凄いのよ」
「分かる」
「メイドさんなんだけど」
「メイドさんじゃないの」
「分かる」
全く分からなかった。
しかし。
人気だった。
その後。
オムライス注文。
ルクレティア担当。
数秒。
客。
恐る恐る。
「魔法もお願いできますか……?」
沈黙。
アオロビ。
遠くから見る。
ローシャ。
遠くから見る。
La lune bleue .。
楽しそうに見る。
ルクレティア。
静かに目を閉じる。
数秒。
本当に数秒。
その後。
ルクレティア
「……萌え萌えきゅん」
小さい。
凄く小さい。
客。
崩れる。
顔真っ赤。
ルクレティア。
もっと顔真っ赤。
アオロビ
「やった」
ローシャ
「やったわね」
La lune bleue .
「やったにゃ」
ルクレティア
「後で覚えていなさい」
全員だった。
その日の閉店前。
チェキ数。
一位。
ルクレティア。
本人。
最後まで納得していなかった。
第五話「萌え文化との最終決戦」
コラボイベント。
二日目。
昼。
店内。
相変わらず満席。
店長。
嬉しそう。
店長
「皆さん大好評です!」
ちょこみんと
「やったー!」
ローシャ
「良かったじゃない」
La lune bleue .
「営業成功にゃ」
アオロビ
「営業って言うな」
その頃。
ルクレティア。
嫌な予感しかしない。
なぜなら。
昨日。
一度だけ。
本当に一度だけ。
「萌え萌えきゅん」
をやった。
そして。
客が喜んだ。
非常に喜んだ。
嫌な記憶だった。
その時。
店長。
資料を見る。
店長
「本日もルクレティアさん指名が一位です」
ルクレティア
「何故かしら」
通算三回目だった。
その頃。
客席。
オムライス注文。
多数。
そして。
追加オーダー。
『お絵描き付き』
『魔法付き』
『チェキ希望』
全部。
ルクレティア。
ルクレティア
「何故かしら」
アオロビ
「もう諦めた方がいい」
その横。
ちょこみんと。
完全順応済み。
ちょこみんと
「萌え萌えきゅーん♪」
客席。
拍手。
アオロビ
「強い」
ローシャ
「凄いわね」
ちょこみんと
「やるなら全力!」
本当にそうだった。
そして。
ローシャ。
こちらも危険。
研究成果。
発揮中。
ローシャ
「はい、ご主人様♪」
自然。
綺麗。
完成度高い。
アオロビ
「研究したでしょ」
ローシャ
「少しだけよ」
絶対嘘だった。
その頃。
みるく。
相変わらず恥ずかしそう。
しかし。
固定客が増えている。
みるく
「こちらになります……」
客。
癒やされる。
不思議だった。
ティラミス。
相変わらず。
ティラミス
「こちらです」
客
「ありがとうございます!」
ティラミス
「どういたしまして」
終了。
しかし。
人気。
静かな人気。
確実にあった。
チノ。
完璧。
ニケ。
成長中。
La lune bleue .。
営業全開。
全員。
順調。
そして。
問題。
午後。
イベント企画。
限定ステージ。
店長。
笑顔。
店長
「本日は特別企画があります!」
嫌な予感。
アオロビ。
察した。
ルクレティア。
もっと察した。
店長
「メイド対抗萌えアピール大会です!」
数秒。
沈黙。
ルクレティア
「帰っていいかしら」
アオロビ
「駄目」
即答。
そして。
イベント開始。
まず。
ちょこみんと。
元気。
全力。
盛り上げる。
拍手。
歓声。
大成功。
続いて。
La lune bleue .。
営業。
完璧。
強い。
客席。
大歓声。
ローシャ。
少し照れる。
しかし。
やる。
全力。
客席。
拍手。
ローシャ。
終わった瞬間。
顔真っ赤。
アオロビ
「後から来るタイプ」
そして。
最後。
ルクレティア。
ステージ中央。
立つ。
数秒。
静寂。
客席。
期待。
店長。
期待。
メンバー。
面白そう。
ルクレティア。
全員を見る。
数秒。
本当に数秒。
その後。
ルクレティア
「……」
沈黙。
さらに沈黙。
ルクレティア
「私は」
数秒。
ルクレティア
「こういうのは苦手なのだけれど」
客席。
静か。
ルクレティア
「楽しんでくれているなら」
少しだけ。
微笑む。
ルクレティア
「それで十分よ」
静か。
派手な演出も無い。
萌えも無い。
きゅんも無い。
しかし。
客席。
大歓声。
アオロビ
「勝った」
ローシャ
「勝ったわね」
La lune bleue .
「勝ったにゃ」
ルクレティア
「何がかしら」
本気だった。
そして。
その日。
チェキ数。
過去最高。
ルクレティア。
一位。
本人だけ。
最後まで納得していなかった。
第六話「またやるんだろうなぁ」
大阪。
コラボ最終日。
閉店後。
店内。
静か。
昼間までの賑やかさが嘘みたいだった。
その頃。
ちょこみんと。
椅子へ崩れる。
ちょこみんと
「つっっっかれたぁぁぁぁぁ!!!」
全員。
同意。
アオロビ
「疲れた」
みるく
「疲れました……」
ニケ
「思ったより凄かったです……」
本当に凄かった。
三日間。
満席。
列形成。
チェキ。
オムライス。
接客。
イベント。
想像以上だった。
その頃。
店長。
資料を持ってくる。
店長
「皆さん、本当にありがとうございました」
拍手。
自然と起こる。
そして。
店長。
笑顔。
店長
「最終結果です」
数秒。
全員。
見る。
そして。
来場者数。
過去上位。
グッズ。
完売多数。
SNS反響。
非常に好評。
ちょこみんと
「おぉー!」
ローシャ
「凄いじゃない」
La lune bleue .
「大成功にゃ」
そして。
店長。
最後の資料。
人気ランキング。
数秒。
アオロビ
「来た」
ルクレティア
「来なくていいのだけれど」
第三位。
発表。
La lune bleue .
La lune bleue .
「営業成功にゃ」
拍手。
第二位。
発表。
ちょこみんと。
ちょこみんと
「惜しい!」
拍手。
店長。
笑う。
店長
「本当に盛り上げてくださいました」
ちょこみんと
「へへへ」
満足そうだった。
そして。
第一位。
数秒。
全員。
見る。
結果。
ルクレティア。
予想通り。
完全に予想通り。
沈黙。
ルクレティア
「何故かしら」
全員。
吹き出す。
アオロビ
「まだ言う」
ローシャ
「まだ言うのね」
La lune bleue .
「まだ言うにゃ」
その頃。
店長。
少し真面目になる。
店長
「実は」
店長
「お客様アンケートも集計したんです」
嫌な予感。
ルクレティア。
もっと嫌な予感。
店長。
読み上げる。
『丁寧で上品だった』
『本当にメイドさんみたいだった』
『話していて安心した』
『紅茶を運ぶ姿が綺麗だった』
『一度見たら忘れられない』
数秒。
静か。
ルクレティア。
珍しく言葉に詰まる。
その横。
アオロビ。
少し笑う。
アオロビ
「良かったじゃん」
ルクレティア
「……そうね」
小さい声だった。
その頃。
ローシャ。
資料を見る。
ローシャ
「面白いわね」
アオロビ
「何が」
ローシャ
「萌えが人気なんじゃないのよ」
資料。
見る。
人気理由。
笑顔。
安心感。
接客。
雰囲気。
そういうものが並んでいた。
みるく。
少し笑う。
みるく
「皆さんちゃんと見てくれてたんですね」
ぴたぽん
「優しいお客さんだったぽん〜」
ニケ
「勉強になりました」
チノ
「良い経験でしたね」
そして。
帰り支度。
荷物をまとめる。
メイド服返却。
店内も静かになる。
その頃。
ちょこみんと。
伸びをする。
ちょこみんと
「またやりたいかも!」
数秒。
全員。
ルクレティアを見る。
ルクレティア
「何故私を見るのかしら」
アオロビ
「主役だったから」
ローシャ
「一番人気だったもの」
La lune bleue .
「看板娘にゃ」
ルクレティア
「違うわ」
即否定。
店長。
少し笑う。
店長
「もし第二回がありましたら」
数秒。
店長
「ぜひまたお願いします」
その瞬間。
ちょこみんと
「やろう!」
La lune bleue .
「営業するにゃ」
ローシャ
「面白そうね」
ニケ
「私は参加したいです」
みるく
「が、頑張ります……」
チノ
「問題ありません」
ティラミス
「別にいい」
ぴたぽん
「またやるぽーん」
全員。
前向き。
そして。
最後。
ルクレティア。
全員を見る。
数秒。
ため息。
深いため息。
その後。
ルクレティア
「私は二度とやらないわ」
沈黙。
アオロビ
「前回も聞いた」
ローシャ
「前回も聞いたわね」
La lune bleue .
「前回も聞いたにゃ」
ちょこみんと
「絶対またやるやつだ!」
大爆笑。
その頃。
ルクレティア。
本気だった。
少なくとも。
本人は。
本気だったのである。
第七話「お客様アンケート確認」
コラボ終了翌日。
大阪。
ホテル会議室。
Gleam Garden。
全員集合。
その頃。
ちょこみんと。
朝から元気。
ちょこみんと
「結果発表だー!」
アオロビ
「元気だなぁ」
ローシャ
「昨日あれだけ働いたのに」
ちょこみんと
「楽しかったし!」
その時。
店長。
資料を持ってくる。
店長
「本日はお客様アンケートをご覧いただきます」
数秒。
ルクレティア。
嫌な予感。
店長
「率直なご意見です」
ルクレティア
「聞きたくないわね」
アオロビ
「今更」
そして。
集計開始。
アオロビ
店長
「まずはアオロビさんです」
資料表示。
『思った以上に接客が自然だった』
『説明が分かりやすい』
『知的で話が面白い』
『落ち着いていて安心感がある』
『オムライスの説明が妙に詳しかった』
数秒。
アオロビ
「最後何」
ローシャ
「気になるわね」
店長
「料理の話をされたそうです」
アオロビ
「覚えてない」
ちょこみんと
『元気を貰えた』
『ずっと楽しそうだった』
『店の空気を明るくしていた』
『リアクションが可愛い』
『一緒にテーマパーク行きたい』
ちょこみんと
「やったー!」
アオロビ
「テーマパーク?」
ちょこみんと
「行こうよ!」
話が変わった。
ティラミス
『静かで落ち着く』
『癒やされた』
『居心地が良かった』
『気付いたら長居していた』
『空気感が好き』
数秒。
ティラミス
「そう」
終わった。
アオロビ
「感想それだけ?」
ティラミス
「十分」
確かに。
ローシャ
『会話が楽しかった』
『話題が豊富』
『もっと話したかった』
『接客が丁寧』
『気付いたら時間が経っていた』
アオロビ
「長い理由分かった」
ローシャ
「失礼ね」
店長
「滞在時間が一番長かったそうです」
ローシャ
「えっ」
本人も驚いていた。
ルクレティア
店内。
少し静かになる。
ルクレティア
「聞きたくないわね」
店長
「発表します」
資料表示。
『本当にメイドさんだった』
『紅茶を運ぶ姿が綺麗』
『品がある』
『話していて安心する』
『優雅』
『一番印象に残った』
『萌えより優雅』
数秒。
ルクレティア
「ほら」
アオロビ
「何が」
ルクレティア
「萌えではないじゃない」
そこだった。
ローシャ
「そこなのね」
さらに。
店長
「追加コメントです」
嫌な予感。
『萌え萌えきゅんが破壊力高かった』
静止。
数秒。
ルクレティア
「そのアンケートは無効にしてちょうだい」
店長
「できません」
アオロビ
「残念」
La lune bleue .
『可愛かった』
『猫だった』
『猫だった』
『猫だった』
『営業の完成度が高い』
数秒。
La lune bleue .
「営業成功にゃ」
アオロビ
「猫しか言われてない」
La lune bleue .
「猫だからにゃ」
強かった。
ぴたぽん
『癒やされた』
『優しい』
『独特の話し方が可愛い』
『ずっと話していたい』
『マスコット感が凄い』
ぴたぽん
「うにゅ?」
ぴたぽん
「何もしてないぽん〜」
それが強い。
みるく
『とにかく優しい』
『安心する』
『また会いたい』
『話しやすい』
『隠れ人気だと思う』
みるく
「隠れてたんですか……?」
アオロビ
「そこじゃない」
チノ
『完璧』
『プロみたい』
『仕事が出来る』
『安心感が凄い』
『ブレない』
数秒。
チノ
「ありがとうございます」
終わった。
アオロビ
「感情どこ」
ニケ
『初々しくて応援したくなる』
『真面目』
『一生懸命』
『また参加してほしい』
『頑張っている姿が好印象』
ニケ
「良かった……」
本気で安心していた。
そして。
最後。
店長。
総評ページを開く。
『メンバー同士の仲の良さが伝わった』
『誰が担当でも楽しかった』
『また開催してほしい』
『第二回希望』
『第三回希望』
『定期開催希望』
数秒。
全員。
ルクレティアを見る。
ルクレティア
「何故私を見るのかしら」
アオロビ
「一番人気だったから」
ローシャ
「看板娘だったもの」
La lune bleue .
「営業部長にゃ」
ルクレティア
「違うわ」
即答。
その時。
店長。
笑顔。
店長
「ちなみに開催希望率は97%です」
静止。
数秒。
ルクレティア
「聞かなかったことにするわ」
会議室。
大爆笑だった。
126:居酒屋パーティ(全5話)
第一話「たまには息抜き」
夜。
共有ルーム。
ライブ。
収録。
打ち合わせ。
最近。
全員。
少し忙しかった。
その頃。
ちょこみんと。
ソファへ倒れ込む。
ちょこみんと
「あーーーーー!!!」
大声。
アオロビ
「うるさい」
ちょこみんと
「息抜きしたい!!!」
アオロビ
「それは分かる」
珍しく同意だった。
その時。
ルクレティア。
コーヒーを置く。
ルクレティア
「なら」
全員。
見る。
ルクレティア
「たまには皆で食事でも行く?」
数秒。
静止。
その後。
ちょこみんと
「行く!!!」
即答。
早い。
ぴたぽん。
ぴたぽん
「いいぽん〜♪」
みるく
「楽しそうです……」
nike
「参加したいです」
ローシャ
「いいわね」
La lune bleue .
「ご飯にゃ」
ティラミス
「行く」
全員。
乗り気だった。
そして。
アオロビ。
少し考える。
数秒。
アオロビ
「居酒屋」
静止。
ルクレティア。
嫌な顔。
とても嫌な顔。
ルクレティア
「嫌な予感しかしないわね」
アオロビ
「何で」
ルクレティア
「貴女がいるからよ」
酷かった。
その頃。
ちょこみんと。
首を傾げる。
ちょこみんと
「居酒屋ダメ?」
ルクレティア
「ダメではないわ」
数秒。
ルクレティア
「アオちゃんが居るのが問題なの」
アオロビ
「風評被害」
ローシャ
「いや」
数秒。
ローシャ
「ちょっと分かる」
アオロビ
「なんで」
ぴたぽん。
小さく笑う。
ぴたぽん
「アオしゃん」
アオロビ
「うん」
ぴたぽん
「飲み方が大学生ぽん」
静止。
アオロビ
「否定できない」
その頃。
チノ。
冷静。
チノ
「またちゃんぽんですか」
アオロビ
「まだ飲んでない」
チノ
「過去の実績があります」
強かった。
その横。
ローシャ。
苦笑。
ローシャ
「私はそこまで飲まないわよ?」
数秒。
全員。
見る。
ローシャ
「何?」
アオロビ
「ラジオ回」
ちょこみんと
「ラジオ回」
ぴたぽん
「ラジオ回ぽん」
ローシャ
「忘れなさい」
無理だった。
その時。
nike。
おずおずと聞く。
nike
「皆さん結構飲まれるんですか?」
数秒。
ぴたぽん。
指を立てる。
ぴたぽん
「毎日もじゃ」
nike
「毎日!?」
みるく
「ぴたさんは晩酌ですから……」
ぴたぽん
「ご飯と一緒ぽん〜♪」
大人だった。
La lune bleue .。
その会話を聞く。
数秒。
La lune bleue .
「にゃんころ飲まないにゃ」
アオロビ
「知ってる」
La lune bleue .
「ジュースがいいにゃ」
平和だった。
そして。
ルクレティア。
静かに言う。
ルクレティア
「ちなみに」
数秒。
ルクレティア
「私、日本酒は飲まないわよ」
アオロビ
「そうなの?」
ルクレティア
「苦手なの」
ローシャ
「珍しいわね」
ルクレティア
「ワインで十分だもの」
妙に似合った。
その頃。
ちょこみんと。
既に別のことを考えている。
ちょこみんと
「焼き鳥!」
みるく
「唐揚げ……」
nike
「だし巻き卵……」
La lune bleue .
「ポテトにゃ」
ぴたぽん
「枝豆ぽん♪」
完全に飯の話だった。
その時。
アオロビ。
スマホを見る。
数秒。
アオロビ
「予約取れた」
ちょこみんと
「仕事早い!」
アオロビ
「個室らしい」
ルクレティア
「それは助かるわね」
そして。
当日。
居酒屋。
個室。
Gleam Garden貸切。
全員集合。
テーブル。
料理。
飲み物。
並び始める。
その瞬間。
ルクレティア。
グラスを見る。
アオロビを見る。
ローシャを見る。
数秒。
ルクレティア
「今ならまだ帰れるかしら」
アオロビ
「乾杯前」
ローシャ
「失礼ね」
しかし。
ルクレティアの嫌な予感は。
かなり当たるのである。
第二話「乾杯」
夜。
居酒屋。
個室。
Gleam Garden。
全員集合。
その頃。
ちょこみんと。
メニューを見る。
ちょこみんと
「多い!!」
アオロビ
「居酒屋だからね」
ちょこみんと
「全部食べたい!」
早い。
まだ注文前だった。
その頃。
ぴたぽん。
既に飲み物を決めている。
ぴたぽん
「今日はこれぽん〜♪」
慣れていた。
流石だった。
一方。
nike。
メニューを見続ける。
nike
「種類多いですね……」
みるく
「私も迷います……」
平和だった。
その横。
La lune bleue .。
即決。
La lune bleue .
「メロンソーダにゃ」
アオロビ
「早い」
La lune bleue .
「勝ったにゃ」
何に勝ったのかは不明だった。
そして。
店員。
入室。
注文開始。
ちょこみんと
「焼き鳥!」
みるく
「だし巻き卵……」
La lune bleue .
「ポテトにゃ」
nike
「唐揚げお願いします」
ティラミス
「軟骨」
アオロビ
「軟骨?」
ティラミス
「好き」
終わった。
その頃。
ローシャ。
メニューを読む。
ローシャ
「お刺身もいいわね」
ルクレティア
「悪くないわね」
少し大人組だった。
チノ。
静かに注文。
チノ
「サラダお願いします」
アオロビ
「健康的」
チノ
「重要です」
正論だった。
そして。
飲み物。
並ぶ。
テーブル。
華やか。
ビール。
サワー。
ハイボール。
ソフトドリンク。
色々。
その時。
ルクレティア。
グラスを見る。
数秒。
ルクレティア
「アオちゃん」
アオロビ
「うん」
ルクレティア
「今日は何杯まで?」
静止。
アオロビ
「まだ飲んでない」
ルクレティア
「質問に答えなさい」
厳しかった。
ぴたぽん。
笑う。
ぴたぽん
「ルクしゃん保護者ぽん」
アオロビ
「否定できない」
その頃。
店員。
最後の料理を置く。
準備完了。
そして。
ちょこみんと。
待ってました。
ちょこみんと
「乾杯しよう!!」
全員。
グラスを持つ。
その時。
ルクレティア。
少し考える。
数秒。
そして。
微笑む。
ルクレティア
「皆、お疲れ様」
静か。
優しい声。
ルクレティア
「たまには何も考えず楽しみましょう」
数秒。
全員。
少し笑う。
そして。
アオロビ
「じゃあ」
グラスを上げる。
ちょこみんと
「せーの!」
全員。
声を揃える。
「乾杯!!」
グラスの音。
重なる。
居酒屋パーティ。
開幕だった。
その後。
五分後。
料理。
美味しい。
会話。
盛り上がる。
平和。
とても平和。
その頃。
ルクレティア。
ワインを一口。
ローシャを見る。
ローシャ。
既に二杯目。
ルクレティア
「早くないかしら」
ローシャ
「そう?」
笑顔。
少し赤い。
嫌な予感。
さらに。
アオロビ。
一杯目終了。
二杯目到着。
ルクレティア
「待ちなさい」
アオロビ
「何」
ルクレティア
「何故種類が違うの」
アオロビ
「気分」
嫌な予感。
ぴたぽん。
その様子を見る。
ぴたぽん
「始まったもじゃ」
みるく
「始まりましたね……」
チノ
「始まりましたね」
nike
「始まったんですか……?」
まだ。
誰も。
本当の意味を知らなかった。
ローシャの頬は。
少しずつ赤くなり。
アオロビのグラスは。
少しずつ増えていた。
第三話「危険人物が増えてきた」
夜。
居酒屋。
個室。
乾杯から一時間。
料理。
かなり減った。
飲み物。
かなり増えた。
そして。
ルクレティアの嫌な予感。
順調に当たり始めていた。
その頃。
ローシャ。
少し赤い。
かなり赤い。
本人は平然としている。
ローシャ
「ねぇ聞いて?」
アオロビ
「始まった」
ルクレティア
「始まったわね」
ぴたぽん
「始まったもじゃ」
全員。
察した。
ローシャ。
まだ理性はある。
しかし。
喋る。
とても喋る。
ローシャ
「最近ね」
ローシャ
「面白いアイデア思いついたの」
アオロビ
「うん」
ローシャ
「三時間くらい説明していい?」
アオロビ
「長い」
即答だった。
その横。
ちょこみんと。
笑っている。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ顔赤い!」
ローシャ
「赤くないわよ」
赤い。
非常に赤い。
その頃。
ルクレティア。
ワイン。
一口。
変化なし。
本当に変化なし。
みるく
「ルクさん全然変わりませんね……」
ルクレティア
「そうかしら」
そうだった。
そして。
問題。
もう一人。
アオロビ。
アオロビ
「そういえば」
グラス。
三種類目。
ルクレティア
「待ちなさい」
アオロビ
「何」
ルクレティア
「何杯目?」
アオロビ
「三」
ルクレティア
「何種類目?」
アオロビ
「三」
静止。
ルクレティア
「やめなさい」
アオロビ
「まだ大丈夫」
ぴたぽん
「危険な言葉ぽん」
その頃。
チノ。
烏龍茶。
チノ
「また翌日苦しむんですね」
アオロビ
「未来の話しないで」
nike。
少し笑う。
nike
「いつもなんですか?」
数秒。
全員。
頷く。
nike
「本当なんですね……」
その時。
追加料理。
到着。
焼き鳥。
唐揚げ。
ポテト。
だし巻き卵。
そして。
大皿。
置かれる。
ちょこみんと
「きたーーー!!」
復活。
その頃。
La lune bleue .。
ポテト担当。
La lune bleue .
「ポテトは渡さないにゃ」
ちょこみんと
「えぇぇぇ!?」
戦争だった。
一方。
ローシャ。
焼き鳥を持ちながら。
ローシャ
「ねぇアオさん」
アオロビ
「うん」
ローシャ
「もしね」
アオロビ
「うん」
ローシャ
「全員で無人島に行ったら誰が最後まで生き残ると思う?」
静止。
アオロビ
「何の話?」
ローシャ
「気になったの」
始まっていた。
その頃。
みるく。
小声。
みるく
「ろ、ローシャさん酔ってますね……」
ぴたぽん
「まだ序の口もじゃ」
nike
「まだなんですか!?」
そして。
ルクレティア。
嫌な予感。
数秒。
アオロビを見る。
グラス。
変わっている。
また変わっている。
ルクレティア
「アオちゃん」
アオロビ
「何」
ルクレティア
「それ何杯目?」
アオロビ
「四」
ルクレティア
「何種類目?」
アオロビ
「四」
ルクレティア
「帰るわよ」
アオロビ
「まだいる」
ぴたぽん。
笑いながら枝豆を食べる。
ぴたぽん
「アオしゃんも始まったぽん」
みるく
「始まりましたね……」
チノ
「始まりましたね」
nike
「始まったんですね……」
その頃。
ローシャ。
かなり上機嫌。
アオロビ。
かなり楽しくなってきている。
ルクレティア。
頭を抱える。
そして。
まだ誰も。
この後さらに酷くなることを。
知らなかったのである。
第四話「深夜テンション」
夜。
居酒屋。
個室。
開始から二時間半。
料理。
かなり減った。
飲み物。
かなり増えた。
その頃。
Gleam Garden。
現在。
三つに分かれていた。
保護者組
- ルクレティア
- ぴたぽん
- チノ
平和組
- ちょこみんと
- La lune bleue .
- みるく
- ニケ
- ティラミス
危険組
- アオロビ
- ローシャ
ルクレティア
「でしょうね」
その頃。
ローシャ。
かなり上機嫌。
かなり赤い。
しかし。
本人は元気。
ローシャ
「ねぇ聞いて?」
アオロビ
「うん」
ローシャ
「今ね」
ローシャ
「凄く良い事思いついたの」
アオロビ
「嫌な予感」
数秒。
ローシャ。
真顔。
ローシャ
「Gleam Garden探偵事務所」
静止。
ちょこみんと
「何で!?」
ローシャ
「面白そうじゃない」
アオロビ
「始まった」
その頃。
ルクレティア。
頭を押さえる。
ルクレティア
「また変な企画が始まったわね」
しかし。
ローシャ。
止まらない。
ローシャ
「まずルクさんが所長」
ルクレティア
「嫌よ」
即答。
ローシャ
「アオさん助手」
アオロビ
「雑用じゃん」
ローシャ
「現場担当だから重要よ」
アオロビ
「言い方」
ローシャ
「ちょこさん潜入担当」
ちょこみんと
「楽しそう!!」
即賛成。
ローシャ
「にゃんこさん情報屋」
La lune bleue .
「裏社会みたいにゃ」
ローシャ
「ぴたさん鑑識」
ぴたぽん
「何もじゃ?」
ローシャ
「みるさん資料室」
みるく
「それは出来そうです……」
ローシャ
「チノさん実働部隊」
チノ
「探偵事務所ですよね?」
ローシャ
「たぶん」
チノ
「たぶん」
ローシャ
「ティラさん相談室」
ティラミス
「座ってるだけ?」
ローシャ
「うん」
ティラミス
「楽」
採用された。
ローシャ
「ニケさん新人探偵」
nike
「えっ」
ローシャ
「頑張って」
nike
「はい!?」
その頃。
ちょこみんと。
大爆笑。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ楽しそう!」
ローシャ
「楽しい」
完全に酔っていた。
一方。
アオロビ。
笑っている。
しかし。
問題。
グラス。
また違う。
ルクレティア
「待ちなさい」
アオロビ
「何」
ルクレティア
「何杯目?」
アオロビ
「五」
ルクレティア
「何種類目?」
アオロビ
「五」
静止。
チノ
「駄目ですね」
みるく
「駄目ですね……」
nike
「駄目ですね……」
ぴたぽん
「駄目ぽん」
満場一致。
その時。
ローシャ。
急に真面目な顔。
数秒。
ローシャ
「ルクさん」
ルクレティア
「何かしら」
ローシャ
「いつもありがと」
静止。
みるく。
固まる。
nike。
固まる。
La lune bleue .
目を丸くする。
アオロビ。
笑いを堪えている。
ルクレティア。
少し困る。
珍しく困る。
ルクレティア
「……何よ急に」
ローシャ
「言いたくなったの」
そして。
少し考える。
数秒。
ローシャ
「皆も」
静か。
ローシャ
「ありがとね」
素だった。
完全に素。
その瞬間。
ちょこみんと。
少し笑う。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ可愛い」
ローシャ
「何が?」
本気だった。
その頃。
ぴたぽん。
枝豆を食べながら。
ぴたぽん
「平和ぽん」
本当に平和だった。
少なくとも。
ローシャは。
しかし。
問題は。
もう一人。
アオロビ。
アオロビ
「探偵事務所さ」
ローシャ
「うん」
アオロビ
「意外といけるかも」
ルクレティア
「駄目よ」
即答。
アオロビ
「何で」
ルクレティア
「今決める話じゃないからよ」
正論だった。
夜。
さらに更ける。
笑い声。
会話。
止まらない。
しかし。
ルクレティアだけは知っていた。
明日。
被害者が出る。
そして。
目の前で。
五種類目の酒を飲んでいるアオロビが。
最有力候補である事も。
ほぼ確定だった。
第五話「だから言ったでしょう」
翌朝。
ホテル。
朝。
静か。
とても静か。
その頃。
ルクレティア。
起床。
普通。
いつも通り。
コーヒー。
一杯。
優雅だった。
その頃。
ぴたぽん。
起床済み。
ぴたぽん
「んちゃ〜」
元気。
昨日飲んでいたとは思えない。
ルクレティア
「流石ね」
ぴたぽん
「加減してるぽん」
大人だった。
その頃。
チノ。
既に起きている。
チノ
「おはようございます」
正常。
みるく。
少し眠そう。
みるく
「おはようございます……」
しかし。
元気。
問題なし。
nike。
普通。
nike
「おはようございます」
昨日と変わらない。
La lune bleue .。
ジュース。
飲んでいる。
La lune bleue .
「平和な朝にゃ」
一番平和だった。
そして。
ちょこみんと。
元気。
ちょこみんと
「おはよーーー!!」
うるさい。
アオロビの部屋から。
小さな声。
「静かに……」
静止。
ちょこみんと
「いた」
ルクレティア
「いたわね」
数秒後。
アオロビ。
登場。
死んでいた。
完全に死んでいた。
アオロビ
「頭痛い……」
チノ
「予想通りです」
ぴたぽん。
笑う。
ぴたぽん
「だから言ったぽん」
ルクレティア。
コーヒーを飲む。
そして。
ルクレティア
「何種類飲んだか覚えてる?」
アオロビ
「……五?」
ルクレティア
「五」
アオロビ
「何で」
ルクレティア
「私が数えてたからよ」
怖かった。
その頃。
ローシャ。
まだ来ない。
数秒。
みるく
「ローシャさんは……?」
嫌な予感。
そして。
扉。
開く。
ローシャ。
登場。
ふらふら。
ローシャ
「……おはよう」
静か。
とても静か。
アオロビ
「生きてた」
ローシャ
「失礼ね」
しかし。
席に座る。
そして。
頭を抱える。
ローシャ
「ちょっと待って」
数秒。
ローシャ
「昨日どこまで話した?」
静止。
ちょこみんと。
ニヤニヤしている。
危険だった。
ちょこみんと
「探偵事務所」
ローシャ
「何それ」
アオロビ
「ルクさん所長」
ローシャ
「何それ」
ぴたぽん
「アオしゃん助手ぽん〜」
ローシャ
「何それ」
La lune bleue .
「にゃんころ情報屋にゃ」
ローシャ
「何それ」
nike
「新人探偵でした」
ローシャ
「何それ」
みるく
「資料室でした」
ローシャ
「何それ」
ローシャ。
顔を覆う。
ローシャ
「私何やってるの……」
その瞬間。
ちょこみんと。
大爆笑。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ覚えてないんだ!」
ローシャ
「お願いだから忘れて」
アオロビ
「無理」
即答。
ルクレティア。
コーヒーを置く。
そして。
静かに言う。
ルクレティア
「まぁ」
数秒。
ルクレティア
「楽しかったなら良いじゃない」
ローシャ。
少し笑う。
ローシャ
「そうね」
アオロビ
「楽しかった」
ルクレティア
「貴女は反省しなさい」
アオロビ
「何で」
チノ
「何ででしょうね」
ぴたぽん
「何でぽん〜」
みるく
「何ででしょう……」
nike
「何ででしょう……」
La lune bleue .
「何でにゃ」
満場一致。
アオロビ。
納得していなかった。
その時。
ちょこみんと。
元気よく立ち上がる。
ちょこみんと
「じゃあ次の息抜き企画考えよう!」
静止。
アオロビ
「早い」
ローシャ
「早いわね」
ルクレティア。
嫌な予感。
とても嫌な予感。
ちょこみんと
「次どこ行く!?」
その瞬間。
全員。
少し笑った。
忙しい日々の中。
たまの息抜き。
たまの馬鹿騒ぎ。
そんな時間も。
悪くない。
Gleam Gardenらしい。
そんな夜だったのである。
127:映画女優、ちょこみんと
(全7話)
第一話「主演オファー」
午後。
Gleam Garden事務所。
会議室。
珍しく。
全員呼ばれていた。
その頃。
ちょこみんと。
椅子に座りながら首を傾げる。
ちょこみんと
「何の集まり?」
アオロビ
「知らない」
ローシャ
「映画関係って聞いたけど」
La lune bleue .
「試写会にゃ?」
ぴたぽん
「お仕事ぽん〜」
みるく
「映画って凄いですね……」
ニケ
「誰か出演されるんでしょうか」
その時。
会議室の扉。
開く。
映画会社スタッフ。
監督。
そして。
ルクレティア。
入室。
アオロビ
「ルクさんまでいる」
ルクレティア
「最初から居たのだけれど」
そして。
監督。
資料を置く。
数秒。
監督
「本日は映画出演のご相談です」
ざわつく。
映画。
しかも。
主演候補。
その言葉で。
空気が変わる。
監督。
資料を開く。
表紙。
タイトル。
『指輪』
静か。
その横。
サブタイトル。
“あなたを探している”
アオロビ
「恋愛物?」
監督
「恋愛サスペンスです」
ローシャ。
興味を示す。
ローシャ
「面白そう」
監督。
続ける。
監督
「主人公は女性です」
監督
「幼馴染だった男性が突然姿を消します」
監督
「主人公はその行方を追い続けます」
監督
「彼は何故消えたのか」
監督
「どこへ行ったのか」
監督
「生きているのか」
監督
「それを追う物語です」
会議室。
静か。
思ったより重そうだった。
監督。
一枚の資料を取り出す。
監督
「今回」
監督
「乾 梨沙役として」
数秒。
監督
「ちょこみんとさんにオファーしたいと考えています」
静止。
ちょこみんと
「私!?」
指差す。
自分を。
監督
「はい」
監督
「ぜひお願いしたいです」
数秒。
ちょこみんと。
固まる。
アオロビ
「主演か」
ローシャ
「凄いじゃない」
みるく
「おめでとうございます……!」
ニケ
「凄いです……!」
ちょこみんと
「えっ」
ちょこみんと
「えっ」
まだ理解していなかった。
その頃。
監督。
台本を開く。
監督
「ちなみに序盤ですが」
嫌な予感。
何故か。
ルクレティアが反応した。
監督
「幼馴染との距離感を表現するため」
監督
「抱きつくシーンがあります」
静止。
ルクレティア
「話は無かったことにして頂戴」
即答。
早い。
異常に早い。
監督
「なんでですか!?」
脚本家
「なんでですか!?」
ちょこみんと
「なんで!?」
ルクレティア
「駄目でしょう」
真顔。
アオロビ
「出た」
ローシャ
「出たわね」
La lune bleue .
「保護者にゃ」
ぴたぽん
「保護者ぽん」
ルクレティア
「成人していようが関係無いわ」
ちょこみんと
「あるよ!?」
さらに。
監督。
恐る恐る。
監督
「後半には手を繋ぐシーンも」
ルクレティア
「却下」
監督
「早い」
会議室。
爆笑。
ちょこみんと
「るくるくぅぅぅ!!」
ルクレティア
「駄目なものは駄目よ」
しかし。
監督は笑っていた。
監督
「安心してください」
監督
「そういう作品ではありません」
数秒。
空気が少し変わる。
監督
「この作品のテーマは」
監督
「恋愛だけではありません」
監督
「喪失と再生です」
静か。
さっきまでの空気が。
少しだけ変わる。
監督
「主人公」
監督
「乾 梨沙」
監督
「そして」
監督
「真島 優」
監督
「二人の物語です」
その時。
ちょこみんと。
台本を見る。
表紙。
『指輪』
その文字。
そして。
主人公。
乾 梨沙。
何故だろう。
まだ内容も知らないのに。
少しだけ。
胸が締め付けられる気がした。
その感覚の意味を。
まだ誰も知らない。
第二話「乾 梨沙」
数日後。
映画撮影開始。
早朝。
撮影スタジオ。
その頃。
ちょこみんと。
まだ緊張していた。
ちょこみんと
「映画だ……」
小さい声。
普段。
ライブ。
イベント。
テレビ。
色々経験している。
しかし。
映画主演。
それは別だった。
その頃。
ルクレティア。
同行中。
プロデューサー席。
コーヒー。
飲んでいる。
完全に保護者だった。
アオロビから。
メッセージ。
『頑張れ主演女優』
ちょこみんと
『やめて』
即返信。
ローシャ。
『サインください』
ちょこみんと
『まだ公開してない』
La lune bleue .
『大女優にゃ』
ちょこみんと
『やめてぇぇぇ』
その頃。
監督。
台本を閉じる。
監督
「それでは始めましょう」
最初の撮影。
乾 梨沙。
高校時代。
まだ何も失っていない頃。
ロケ地。
海辺の街。
穏やか。
静か。
夏。
そこにいるのは。
乾 梨沙。
そして。
真島 優。
友達。
幼馴染。
家族みたいな存在。
でも。
恋人ではない。
監督
「スタート」
撮影開始。
乾 梨沙
「優ー!」
走る。
笑う。
真島 優
「うるさいな」
笑う。
乾 梨沙
「暇!」
真島 優
「知ってる」
乾 梨沙
「遊ぼう!」
真島 優
「勉強は?」
乾 梨沙
「知らない!」
真島 優
「最低だな」
笑い合う。
自然。
本当に自然だった。
カット。
監督
「いいですね」
スタッフ。
頷く。
その頃。
ちょこみんと。
少し驚く。
ちょこみんと
「今」
ちょこみんと
「私じゃなかった」
ルクレティア。
少し笑う。
ルクレティア
「それで良いのよ」
ちょこみんと
「うん」
撮影続行。
乾 梨沙。
十八歳。
真島 優。
十八歳。
放課後。
神社。
二人並んで座る。
夕焼け。
乾 梨沙
「ねぇ」
真島 優
「何」
乾 梨沙
「私達ってさ」
真島 優
「うん」
乾 梨沙
「周りからどう見えてると思う?」
真島 優
「知らない」
乾 梨沙
「絶対夫婦」
真島 優
「気が早い」
乾 梨沙
「でも言われるじゃん」
真島 優
「言われるな」
乾 梨沙
「否定しないの?」
真島 優
「面倒だから」
乾 梨沙
「最低」
真島 優
「知ってる」
笑う。
夕日。
風。
蝉の声。
その空気は。
とても綺麗だった。
カット。
スタッフ。
静か。
監督。
満足そうだった。
しかし。
その日の最後。
一つだけ。
不思議なシーンがあった。
乾 梨沙。
駅前。
待っている。
夜。
遅い時間。
真島 優は来ない。
メッセージ。
既読にならない。
電話。
繋がらない。
そして。
翌日。
乾 梨沙。
真島 優の家へ向かう。
家。
静か。
人がいない。
荷物もない。
何もない。
監督
「そこで止めます」
カット。
現場。
静か。
ちょこみんと。
首を傾げる。
ちょこみんと
「え?」
監督
「以上で本日終了です」
ちょこみんと
「え?」
ちょこみんと
「どこ行ったの?」
監督
「秘密です」
ちょこみんと
「気になる!」
スタッフ。
笑う。
その頃。
ルクレティア。
台本を見る。
数秒。
そして。
静かに閉じた。
ルクレティア
「最後まで演じなさい」
ちょこみんと
「?」
まだ。
乾 梨沙も。
ちょこみんとも。
真島 優が消えた理由を。
何一つ知らなかった。
第三話「足跡」
撮影は続いた。
映画『指輪』。
主人公。
乾 梨沙。
幼馴染。
真島 優。
優が姿を消してから。
梨沙の日々は変わった。
駅前。
学校。
商店街。
神社。
海沿いの道。
二人で歩いた場所を。
梨沙は一つずつ辿っていく。
乾 梨沙
「優、見ませんでしたか?」
最初に訪ねたのは。
高校時代の担任。
担任は困った顔をした。
担任
「真島か……」
担任
「卒業後は連絡を取っていないな」
乾 梨沙
「何か言ってませんでしたか?」
担任
「急に進路を変えたとは聞いた」
乾 梨沙
「進路?」
担任
「ああ」
担任
「ただ、理由までは知らない」
答え。
ではなかった。
でも。
欠片だった。
次。
商店街。
二人がよく寄っていた古い駄菓子屋。
店主
「優ちゃん?」
店主
「最近見ないねぇ」
乾 梨沙
「何か変わった様子は?」
店主
「そうねぇ……」
店主は少し考える。
店主
「前に来た時、少し痩せたようには見えたよ」
乾 梨沙
「痩せた?」
店主
「でも笑ってた」
店主
「梨沙ちゃんには内緒だって」
乾 梨沙
「何を?」
店主
「そこまでは聞いてないねぇ」
また。
欠片。
何かがある。
でも。
形にならない。
撮影現場。
カット。
監督
「いいです」
ちょこみんと。
少し黙っていた。
ルクレティア
「どうしたの?」
ちょこみんと
「優ってさ」
ルクレティア
「ええ」
ちょこみんと
「なんか、逃げた感じじゃないんだよね」
ルクレティア
「そう思うの?」
ちょこみんと
「うん」
台本を握る。
ちょこみんと
「梨沙に言えない何かがあったんだと思う」
ルクレティアは何も言わなかった。
ただ。
静かに頷いた。
撮影再開。
次の場面。
大学時代の友人。
狭い喫茶店。
乾 梨沙はテーブル越しに座っていた。
友人
「真島とは少しだけ連絡取ってたよ」
乾 梨沙
「本当?」
友人
「ああ」
乾 梨沙
「今どこにいるの?」
友人
「分からない」
乾 梨沙
「……」
友人
「ただ」
友人は声を落とす。
友人
「海外に行くって言ってた」
乾 梨沙
「海外?」
友人
「何のためかは知らない」
友人
「でも、急いでる感じだった」
乾 梨沙
「どうして私に言わなかったの」
友人
「それは……」
友人は目を逸らす。
友人
「真島が言うなって」
乾 梨沙
「何で?」
友人
「知らない」
友人
「でも」
少し沈黙。
友人
「梨沙には普通に生きてほしいって言ってた」
乾 梨沙
「普通に?」
友人
「それだけ」
梨沙の表情が変わる。
怒り。
困惑。
悲しみ。
全部混ざる。
乾 梨沙
「何それ」
乾 梨沙
「勝手すぎるでしょ」
声が震える。
乾 梨沙
「普通にって何」
乾 梨沙
「優がいないのに」
喫茶店。
静かだった。
カット。
監督
「今の良いです」
スタッフも静かだった。
ちょこみんとは息を吐く。
演技。
でも。
胸に残る。
優の言葉が。
梨沙の痛みが。
少しずつ。
自分の中に入ってくる。
その日の最後。
空港のシーン。
梨沙は一枚の古い写真を手にしていた。
そこには。
真島 優。
空港ロビー。
大きな荷物。
そして。
知らない女性。
乾 梨沙
「誰……?」
写真の裏。
日付。
失踪直後。
そして。
海外便の便名。
梨沙の手が震える。
乾 梨沙
「優……」
乾 梨沙
「何してるの」
その声は。
怒っているようで。
泣いているようだった。
カット。
監督
「今日はここまでです」
ちょこみんと
「えええ……」
台本を見る。
ちょこみんと
「ここで終わるの!?」
監督
「はい」
ちょこみんと
「気になりすぎる!」
スタッフが少し笑う。
その横で。
ルクレティアは台本を閉じていた。
ちょこみんと
「ねぇ、るくるく」
ルクレティア
「なあに?」
ちょこみんと
「あの女の人、誰?」
ルクレティア
「さあ」
ちょこみんと
「知ってる顔!」
ルクレティア
「最後まで演じなさい」
ちょこみんと
「またそれ!」
ルクレティアは少しだけ笑った。
けれど。
その笑顔は。
いつもの笑顔より。
少しだけ静かだった。
第四話「真実へ」
撮影も後半。
映画『指輪』。
現場の空気も。
少しずつ変わっていた。
その頃。
ちょこみんと。
台本を読んでいる。
静か。
以前より。
ずっと静かだった。
アオロビから。
メッセージ。
『主演女優、生きてる?』
ちょこみんと
『生きてる』
数秒。
さらに。
アオロビ
『梨沙になってない?』
ちょこみんと
『なってるかも』
自分でも。
少し分かっていた。
乾 梨沙。
その感情が。
少しずつ。
自分の中へ入ってきている。
その頃。
ルクレティア。
別室。
監督と打ち合わせ。
机の上。
完全版台本。
数秒。
ルクレティア。
最後のページを読む。
静か。
そして。
台本を閉じた。
監督
「どうですか」
ルクレティア
「……重いわね」
監督
「はい」
静かな返事。
ルクレティア
「ちょこちゃんは?」
監督
「まだ知らせていません」
ルクレティア
「そう」
監督
「知ったら演技が変わると思うので」
ルクレティア
「正解ね」
短かった。
しかし。
迷いは無かった。
撮影再開。
劇中。
乾 梨沙。
捜索開始から数年。
足跡を追い続けていた。
そして。
海外。
優が最後に向かった場所。
その病院へ辿り着く。
病院。
白い廊下。
静か。
乾 梨沙
「真島優さんについて聞きたいんです」
受付。
沈黙。
そして。
職員。
少し困った顔をする。
職員
「ご家族ですか?」
乾 梨沙
「違います」
職員
「恋人ですか?」
乾 梨沙
「違います」
職員
「ご友人?」
乾 梨沙
「……たぶん」
その答えに。
職員は少しだけ目を伏せた。
職員
「そうですか」
その反応。
梨沙は見逃さない。
乾 梨沙
「何か知ってるんですね」
職員
「申し訳ありません」
乾 梨沙
「お願いします」
職員
「お話し出来ません」
乾 梨沙
「お願いです」
声が震える。
乾 梨沙
「ずっと探してるんです」
職員。
沈黙。
そして。
静かに言う。
職員
「担当医なら」
職員
「お会いになるかもしれません」
場面転換。
小さな応接室。
担当医。
年配の男性。
優しい目。
乾 梨沙
「真島優さんを探しています」
担当医。
数秒。
梨沙を見る。
担当医
「……そうですか」
静かな声。
担当医
「では」
机の引き出し。
一冊のファイル。
乾 梨沙。
見る。
ファイル。
開かれる。
しかし。
中身は映らない。
乾 梨沙だけが。
見ている。
そして。
次の瞬間。
乾 梨沙
「……え?」
静止。
乾 梨沙
「なに……これ」
顔色が変わる。
乾 梨沙
「嘘」
担当医。
何も言わない。
乾 梨沙
「嘘でしょ」
声。
震える。
乾 梨沙
「優が?」
そこで。
画面暗転。
カット。
現場。
静まり返る。
ちょこみんと。
立ったまま。
数秒。
動かない。
ちょこみんと
「え?」
監督
「今日はここまでです」
ちょこみんと
「え?」
監督
「お疲れ様でした」
ちょこみんと
「いや待って」
監督
「はい」
ちょこみんと
「優どうなったの?」
監督
「秘密です」
ちょこみんと
「そこ!?」
スタッフ。
苦笑。
その横。
ルクレティア。
静かだった。
ちょこみんと
「るくるく」
ルクレティア
「何かしら」
ちょこみんと
「知ってるよね」
ルクレティア
「知ってるわ」
ちょこみんと
「教えて」
ルクレティア
「駄目」
即答。
ちょこみんと
「なんでぇぇぇ!!」
ルクレティア。
少しだけ。
優しく笑った。
ルクレティア
「最後まで」
ルクレティア
「乾梨沙でいなさい」
ちょこみんと
「……?」
その言葉だけが。
何故か。
妙に心に残った。
第五話「指輪」
撮影最終日。
映画『指輪』。
最後の撮影。
現場。
静かだった。
スタッフ。
誰も騒がない。
監督も。
いつもより口数が少ない。
その頃。
ちょこみんと。
衣装室。
鏡の前。
座っていた。
乾 梨沙。
もう。
かなり近い。
コンコン。
扉。
開く。
ルクレティア。
入ってくる。
ちょこみんと
「おはよ」
ルクレティア
「おはよう」
数秒。
静か。
ちょこみんと
「今日で終わりだね」
ルクレティア
「そうね」
ちょこみんと
「優どうなったんだろ」
ルクレティア。
少しだけ目を閉じる。
ルクレティア
「もう少しよ」
ちょこみんと
「またそれ」
ルクレティア
少し笑う。
ルクレティア
「行ってらっしゃい」
その言葉だけだった。
撮影開始。
劇中。
乾 梨沙。
応接室。
病院。
机の上。
一冊のファイル。
乾 梨沙。
ページをめくる。
診断記録。
検査記録。
治療記録。
そして。
病名。
乾 梨沙。
固まる。
担当医。
静かな声。
担当医
「真島優さんは」
担当医
「脊髄性筋萎縮症でした」
静寂。
乾 梨沙
「……え」
担当医
「発症後」
担当医
「進行が確認されました」
担当医
「治療の可能性を求め」
担当医
「海外へ来られました」
乾 梨沙。
理解が追い付かない。
乾 梨沙
「そんなの」
乾 梨沙
「聞いてない」
担当医
「話さないでほしいと」
乾 梨沙
「なんで」
担当医
「貴女を巻き込みたくなかったそうです」
乾 梨沙。
俯く。
乾 梨沙
「ふざけないでよ」
声。
震える。
乾 梨沙
「そんなの」
乾 梨沙
「勝手じゃん」
乾 梨沙
「勝手すぎるじゃん……」
担当医。
何も言わない。
そして。
机の上へ。
小さな箱。
一通の封筒。
置く。
担当医
「預かっています」
乾 梨沙。
見る。
担当医
「貴女へ」
静寂。
乾 梨沙。
震える手。
封筒を開く。
手紙。
優の字。
見慣れた字。
その瞬間。
乾 梨沙。
涙が落ちる。
手紙。
『梨沙へ』
『ごめん』
『最後まで言えなかった』
『たぶん怒ると思う』
『でも』
『泣いてほしくなかった』
『だから隠した』
乾 梨沙。
涙が止まらない。
『梨沙は昔から強いから』
『きっと前を向ける』
『だから生きてくれ』
『幸せになってくれ』
『俺の分まで』
そこで。
文字が滲む。
乾 梨沙。
読む。
必死に。
最後の一文。
『ありがとう』
『ずっと好きだった』
静止。
乾 梨沙。
呼吸が止まる。
そして。
箱。
開く。
中。
指輪。
一つだけ。
静かに。
置かれていた。
その瞬間。
乾 梨沙。
崩れる。
乾 梨沙
「あ……」
涙。
溢れる。
乾 梨沙
「優……」
声にならない。
乾 梨沙
「優っ……」
泣く。
泣き崩れる。
手紙を抱き締める。
指輪を握る。
何年も。
探した。
怒った。
恨んだ。
悲しんだ。
会いたかった。
ただ。
一度だけ。
会いたかった。
乾 梨沙
「会いたかったよ……」
声。
崩れる。
その涙は。
演技ではなかった。
現場。
静か。
監督。
止めない。
スタッフ。
誰も動かない。
ルクレティア。
見ている。
ただ。
静かに。
見守っている。
乾 梨沙。
泣き続ける。
何分だったのか。
誰も覚えていない。
そして。
ようやく。
乾 梨沙。
涙を拭く。
ゆっくり。
指輪を見る。
そして。
左手。
薬指。
指輪をはめる。
静かに。
乾 梨沙
「……分かった」
涙声。
それでも。
少しだけ。
笑う。
乾 梨沙
「ちゃんと生きる」
その言葉で。
監督。
小さく言った。
監督
「カット」
現場。
静寂。
数秒。
誰も動かない。
そして。
拍手。
スタッフ。
監督。
全員。
立ち上がる。
大きな拍手。
ちょこみんと。
ようやく現実へ戻る。
涙。
止まらない。
ちょこみんと
「っ……」
言葉にならない。
その時。
ルクレティア。
静かに近付く。
何も言わない。
ただ。
そっと肩を抱いた。
ちょこみんと。
その瞬間。
再び泣いた。
主演。
乾 梨沙。
演者。
ちょこみんと。
長かった撮影は。
こうして。
静かに幕を閉じた。
第六話「上映会」
公開前。
映画『指輪』。
完成試写会。
夜。
Gleam Garden共有ルーム。
少し暗い。
テーブル。
飲み物。
お菓子。
軽食。
いつもの上映会。
のはずだった。
しかし。
空気は違う。
その頃。
ちょこみんと。
落ち着かない。
ちょこみんと
「うわぁ……」
アオロビ
「主演女優が一番緊張してる」
ちょこみんと
「だって完成版見てないもん!」
ローシャ
「私も楽しみ」
みるく
「私もです……」
ニケ
「楽しみですね」
La lune bleue .
ポップコーン担当。
La lune bleue .
「準備完了にゃ」
ぴたぽん
「映画館ぽん〜」
ティラミス
既に座っている。
ティラミス
「始まる?」
チノ
「五分後ですね」
その時。
ルクレティア。
静かに席へ座る。
アオロビ
「ルクさん」
ルクレティア
「何かしら」
アオロビ
「知ってるんだよね」
ルクレティア
「ええ」
それだけ。
そして。
上映開始。
部屋が暗くなる。
タイトル。
『指輪』
静か。
最初。
海辺の町。
乾 梨沙。
真島 優。
笑う。
走る。
喧嘩する。
笑い合う。
その頃。
共有ルーム。
ちょこみんと。
顔を覆う。
ちょこみんと
「恥ずかしいぃぃ……」
アオロビ
「始まったばかり」
ローシャ
「ちゃんと梨沙だ」
映画は進む。
優が消える。
梨沙が探す。
足跡を追う。
様々な人と出会う。
そして。
海外。
病院。
部屋。
静か。
誰も喋らない。
みるく。
膝の上。
手を握っている。
ニケ。
画面から目を離さない。
ぴたぽん。
珍しく静か。
そして。
運命の場面。
担当医。
ファイル。
病名。
脊髄性筋萎縮症。
共有ルーム。
空気が止まる。
ローシャ
「……え」
小さい声。
みるく。
目を見開く。
アオロビ。
黙る。
そして。
手紙。
『梨沙へ』
静か。
『ごめん』
『最後まで言えなかった』
『幸せになってくれ』
『俺の分まで』
部屋。
誰も喋らない。
そして。
ラスト。
『ずっと好きだった』
その瞬間。
ちょこみんと。
顔を伏せる。
映画の中。
乾 梨沙。
泣き崩れる。
手紙。
指輪。
『会いたかったよ……』
共有ルーム。
みるく。
涙。
ニケ。
静かに目元を拭く。
ローシャ。
完全に泣いている。
ぴたぽん。
鼻をすする。
La lune bleue .
静か。
しかし。
目は赤い。
アオロビ。
黙って画面を見ていた。
そして。
映画は進む。
数年後。
乾 梨沙。
穏やかな朝。
歩く。
前を見る。
左手。
薬指。
指輪。
そして。
少しだけ笑う。
画面。
白。
エンドロール。
終幕。
共有ルーム。
静寂。
誰も喋らない。
一分。
二分。
そのくらい。
誰も言葉が出なかった。
最初に動いたのは。
ローシャだった。
ローシャ
「……無理」
そして。
再び泣く。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃがまた泣いてる……」
しかし。
自分も泣いていた。
アオロビ。
小さく息を吐く。
アオロビ
「……良い映画だった」
短かった。
でも。
それ以上いらなかった。
みるく
「優しい映画でした……」
ニケ
「悲しいのに」
ニケ
「最後が前向きでしたね」
ぴたぽん
「だから余計泣くぽん〜……」
La lune bleue .
静かに頷く。
そして。
ルクレティア。
ずっと黙っていた。
ちょこみんと
「るくるく」
ルクレティア
「何かしら」
ちょこみんと
「どうだった?」
数秒。
ルクレティア。
画面を見る。
もう。
エンドロールも終わっている。
そして。
静かに笑った。
ルクレティア
「良い作品だったわ」
その言葉に。
誰も異論は無かった。
その夜。
映画『指輪』は。
ただの恋愛映画ではなく。
誰かを想うこと。
失うこと。
それでも前を向くこと。
そんな物語として。
皆の心に残った。
そして。
主演。
ちょこみんと。
初めての映画は。
静かな拍手と共に。
大きな一歩になったのである。
第七話「エゴサ、する?」
公開翌日。
夜。
Gleam Garden共有ルーム。
静か。
のはずだった。
その頃。
ちょこみんと。
ソファの上。
正座。
落ち着かない。
かなり落ち着かない。
アオロビ
「どうしたの」
ちょこみんと
「……」
アオロビ
「どうしたの」
ちょこみんと
「エゴサしていいと思う?」
静止。
ローシャ
「来たわね」
La lune bleue .
「地獄の時間にゃ」
チノ
「始まりましたね」
ぴたぽん
「恒例ぽん〜」
その頃。
ルクレティア。
コーヒー。
飲んでいる。
ルクレティア
「私は止めたわよ」
ちょこみんと
「止めてない」
ルクレティア
「心の中では止めたわ」
アオロビ
「意味がない」
そして。
検索。
映画。
『指輪』
数秒。
画面。
更新。
ちょこみんと
「うわっ」
アオロビ
「何」
ちょこみんと
「多い」
想像以上だった。
■『今年一番泣いた』
■『終盤から記憶がない』
■『ハンカチ必須』
■『ラストが綺麗すぎる』
■『エンドロールで立てなかった』
みるく
「凄い……」
ニケ
「評判良いですね」
ローシャ。
検索開始。
数秒。
固まる。
ローシャ
「えっ」
アオロビ
「何」
ローシャ
「これ」
画面。
■『主演誰かと思ったらアイドルだった』
■『嘘でしょ』
■『演技上手すぎる』
■『女優じゃん』
ちょこみんと
「やめてぇぇぇ!!」
床へ沈む。
La lune bleue .
笑っている。
La lune bleue .
「大女優にゃ」
ちょこみんと
「やめて!!」
さらに。
アオロビ。
検索。
数秒。
止まる。
アオロビ
「これ好き」
ちょこみんと
「何?」
画面。
■『乾梨沙が本当にそこにいた』
共有ルーム。
少し静かになる。
ローシャ。
小さく頷く。
ローシャ
「それ分かる」
みるく
「私も分かります……」
ニケ
「途中から演技に見えなかったです」
ちょこみんと。
少し照れる。
その時。
別の投稿。
■『ラストの涙だけ空気が違った』
■『あそこだけ演技じゃない気がした』
■『本当に誰かを失った人みたいだった』
数秒。
共有ルーム。
静か。
ちょこみんと
「……」
アオロビ。
投稿を見る。
ルクレティアを見る。
ルクレティア。
コーヒーを飲む。
何も言わない。
アオロビ
「……」
何となく。
察した。
あの日。
最後の撮影。
何かあったのだろう。
でも。
聞かなかった。
その頃。
ちょこみんと。
別の投稿を発見。
数秒。
固まる。
ちょこみんと
「待って」
アオロビ
「何」
画面。
■『新人女優賞候補』
■『主演女優賞ノミネート予想』
■『今年最大の発見』
静止。
ちょこみんと
「え?」
数秒。
ちょこみんと
「え???」
さらに。
スクロール。
■『次回作待ってます』
■『女優活動続けてほしい』
■『乾梨沙を忘れられない』
ちょこみんと。
顔が真っ赤になる。
ちょこみんと
「無理無理無理無理!!」
ローシャ。
大爆笑。
アオロビ
「主演女優」
ちょこみんと
「やめて!」
La lune bleue .
「主演女優にゃ」
ちょこみんと
「やめてぇぇ!!」
ぴたぽん
「主演女優しゃん〜」
ちょこみんと
「ぽんぽんまで!?」
部屋。
久しぶりに。
大爆笑。
その時。
ルクレティア。
静かに言う。
ルクレティア
「でも」
数秒。
ルクレティア
「頑張ったじゃない」
静か。
ちょこみんと。
少しだけ止まる。
ルクレティアは。
滅多に褒めない。
だから。
その一言は。
何より嬉しかった。
ちょこみんと
「……うん」
少しだけ笑う。
映画『指輪』。
乾 梨沙。
そして。
女優ちょこみんと。
その名前は。
この日。
多くの人の心に。
確かに残ったのである。
128:喧嘩する程…
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「もう知らない!」
午後。
Gleam Garden共有ルーム。
平和だった。
非常に平和だった。
その頃。
ちょこみんと。
机いっぱいに広げていた。
お菓子。
雑誌。
メモ帳。
ペン。
謎のぬいぐるみ。
そして。
食べかけのポテトチップス。
チノ。
それを見る。
数秒。
チノ
「ちょこお姉ちゃん」
ちょこみんと
「んー?」
チノ
「片付けてください」
ちょこみんと
「後でやる!」
チノ
「昨日も聞きました」
ちょこみんと
「今日はやる!」
チノ
「昨日も聞きました」
アオロビ
「強い」
ローシャ
「強いわね」
しかし。
ちょこみんと。
負けない。
ちょこみんと
「ちゃんと覚えてるもん!」
チノ
「覚えているなら実行してください」
ちょこみんと
「うっ」
正論だった。
その頃。
ルクレティア。
コーヒーを飲んでいる。
静観。
La lune bleue .。
お菓子を食べている。
ぴたぽん。
みかんを食べている。
誰も助けない。
ちょこみんと
「皆ひどくない!?」
アオロビ
「今回はチノさんが正しい」
ローシャ
「今回はチノさんが正しいわね」
ルクレティア
「今回はちーちゃんが正しいわ」
満場一致。
ちょこみんと
「なんでぇぇぇ!?」
その時。
チノ。
机の上を見る。
チノ
「そもそも」
嫌な予感。
チノ
「この状態でよく物を無くさないですね」
ちょこみんと
「無くしてない!」
チノ
「先週イヤホンを探していました」
ちょこみんと
「見つかった!」
チノ
「冷蔵庫から」
静止。
アオロビ
「なんで」
ローシャ
「なんで」
La lune bleue .
「なんでにゃ」
ぴたぽん
「なんでぇ?」
ちょこみんと
「知らない!!」
爆笑。
しかし。
チノ。
真顔。
チノ
「笑い事ではありません」
ちょこみんと
「えぇ……」
チノ
「この前も」
チノ
「ライブ用の資料を探していました」
ちょこみんと
「見つかった!」
チノ
「ギターケースの中から」
静止。
アオロビ
「なんで」
ローシャ
「なんで」
ルクレティア
「なんで」
ちょこみんと
「分かんない!!」
再び爆笑。
しかし。
チノ。
笑わない。
チノ
「だから整理してください」
ちょこみんと
「するってば!」
チノ
「今してください」
ちょこみんと
「今は嫌!」
チノ
「だから駄目なんです」
数秒。
ちょこみんと
「何その言い方!」
空気。
少し変わる。
アオロビ
「ん?」
ローシャ
「おや」
普段なら。
ここで終わる。
しかし。
今日は違った。
チノ
「事実です」
ちょこみんと
「事実でも言い方ってあるじゃん!」
チノ
「では何と言えばいいんですか」
ちょこみんと
「知らない!」
チノ
「知らないなら怒らないでください」
静止。
共有ルーム。
静か。
アオロビ
「……あっ」
ローシャ
「これはまずいわね」
ちょこみんと
「もういい!」
立ち上がる。
チノ
「……」
ちょこみんと
「知らない!」
そのまま。
共有ルームを出る。
アオロビ
「ちょこ姉」
返事なし。
扉。
開く。
閉まる。
バタン。
静寂。
数秒。
誰も喋らない。
ぴたぽん
「行っちゃったぽん」
La lune bleue .
「珍しいにゃ」
ローシャ
「本気で怒ってたわね」
ルクレティア
「そうね」
その時。
アオロビ。
チノを見る。
チノ。
表情は変わらない。
しかし。
ほんの少しだけ。
俯いていた。
第二話「帰ってこない」
午後。
Gleam Garden共有ルーム。
静かだった。
いつもなら。
ちょこみんとの声がする。
しかし。
今日はしない。
アオロビ。
スマホを見る。
時刻。
16:28
アオロビ
「まだ帰ってないんだ」
ローシャ
「そうみたいね」
La lune bleue .
「そのうち帰るにゃ」
ぴたぽん
「ちょこしゃんだし〜」
確かに。
いつものちょこみんとなら。
数時間もすれば。
「ただいまー!」
と帰ってくる。
だから。
誰もそこまで気にしていなかった。
チノだけを除いて。
チノ。
本を読んでいる。
ように見える。
しかし。
ページが進んでいない。
みるく。
気付いていた。
みるく
「チノさん」
チノ
「何でしょう」
みるく
「心配ですか?」
静止。
チノ
「別に」
みるく
「そうですか」
チノ
「……」
数秒。
チノ
「少しだけです」
みるく
少し笑う。
夕方。
18時。
まだ帰らない。
ローシャ
「長いわね」
アオロビ
「長いね」
ルクレティア。
スマホを見る。
ルクレティア
「連絡は?」
アオロビ
「既読なし」
ローシャ
「私も」
みるく
「私もです」
La lune bleue .
「にゃんころもにゃ」
ぴたぽん
「うにゅ?」
ぴたぽん
「ちょこしゃん携帯忘れた?」
アオロビ
「持って行ってる」
空気。
少し変わる。
その頃。
街。
ちょこみんと。
一人。
ベンチに座っていた。
ちょこみんと
「むぅ……」
まだ怒っていた。
でも。
少しだけ。
後悔もしていた。
ちょこみんと
「言い過ぎたかなぁ……」
思い出す。
チノ
「片付けてください」
ちょこみんと
「何その言い方!」
ちょこみんと
「うぅ……」
思い返すと。
どっちも悪かった気がする。
ちょこみんと
「帰ろうかな」
でも。
気まずい。
ちょこみんと
「今帰ったら負けた気がする」
誰と戦っているのか。
本人にも分からない。
夜。
20時。
共有ルーム。
アオロビ
「さすがに遅くない?」
ローシャ
「遅いわね」
ルクレティア
「ええ」
今度は。
全員がそう思った。
みるく
「ちょこさん、方向音痴でしたっけ」
アオロビ
「結構」
ローシャ
「かなり」
La lune bleue .
「重症にゃ」
ぴたぽん
「にゅ〜」
チノ
「……」
静か。
アオロビ
「チノさん?」
チノ。
立ち上がる。
チノ
「探してきます」
静止。
ローシャ
「一人で?」
チノ
「はい」
ルクレティア
「ちーちゃん」
チノ
「私が行きます」
即答。
その声は。
いつもより少しだけ強かった。
アオロビ
「心当たりあるの?」
チノ
「ありません」
アオロビ
「えっ」
チノ
「ですが」
チノ。
視線を落とす。
チノ
「探します」
静かだった。
でも。
そこには。
はっきりとした焦りがあった。
その頃。
街。
ちょこみんと。
歩いていた。
見知らぬ駅前。
ちょこみんと
「ここどこ?」
迷っていた。
完全に。
迷っていた。
ちょこみんと
「やばい」
ちょこみんと
「帰れない」
その時。
後ろから声。
???
「お姉さん」
ちょこみんと
「?」
振り向く。
知らない男。
笑顔。
人当たりは良さそう。
男
「困ってる?」
ちょこみんと
「えっと」
男
「道案内しようか?」
ちょこみんと。
少し安心する。
しかし。
何故だろう。
少しだけ。
違和感があった。
男
「どこ行きたいの?」
夜風が吹く。
ちょこみんと
「……」
胸の奥が。
少しだけざわついた。
第三話「迷子」
夜。
駅前。
ちょこみんと。
完全に迷っていた。
ちょこみんと
「やばい」
ちょこみんと
「ここどこ?」
知らない景色。
知らない駅。
知らない商店街。
ちょこみんと
「帰れないんだけど!?」
数十分前。
勢いで歩いていた。
怒っていた。
だから。
方向なんて考えていなかった。
結果。
迷子。
ちょこみんと
「ちのうさぁ……」
少しだけ。
後悔していた。
その時。
後ろから声。
男
「お姉さん」
ちょこみんと
「?」
振り返る。
知らない男性。
笑顔。
物腰も柔らかい。
男
「困ってる?」
ちょこみんと
「あー……ちょっと」
男
「迷子?」
ちょこみんと
「そう」
男
「ははは」
男
「この辺複雑だからね」
ちょこみんと
「だよね!」
少し安心した。
男
「どこ行きたいの?」
ちょこみんと
「えっと」
事務所の最寄り駅を言う。
男
「ああ」
男
「だったらこっちだよ」
指差す。
ちょこみんと
「本当?」
男
「案内するよ」
ちょこみんと
「ありがとう!」
歩き始める。
数分。
しかし。
違和感。
ちょこみんと
「……?」
駅。
見えない。
人通り。
減っていく。
男
「もう少しだから」
ちょこみんと
「そうなんだ」
でも。
何かがおかしい。
胸がざわつく。
ちょこみんと
「……」
男
「どうしたの?」
ちょこみんと
「いや」
その時。
スマホ。
見る。
電池。
残りわずか。
通知。
大量。
アオロビ
『どこいるの』
ローシャ
『大丈夫?』
ルクレティア
『連絡なさい』
みるく
『心配しています』
La lune bleue .
『帰ってくるにゃ』
ぴたぽん
『ちょこしゃん〜』
ニケ
『無事ですか?』
そして。
最後。
チノ。
『どこですか』
短い。
それだけ。
でも。
ちょこみんと
「……」
少しだけ。
胸が痛くなる。
その時。
男
「こっち」
路地。
暗い。
ちょこみんと
立ち止まる。
男
「どうした?」
ちょこみんと
「ごめん」
男
「ん?」
ちょこみんと
「やっぱり一人で帰る」
男。
笑顔。
消える。
男
「大丈夫だって」
一歩近付く。
ちょこみんと
「……」
まずい。
本能がそう言った。
男
「ほら」
さらに一歩。
その瞬間。
別の声。
???
「ちょこお姉ちゃん」
静止。
ちょこみんと
「!」
聞き慣れた声。
男。
振り返る。
街灯の下。
チノ。
立っていた。
表情はいつも通り。
しかし。
目だけが。
少し怖かった。
チノ
「その方は誰ですか」
第四話「おかえり」
夜。
路地裏入口。
静止。
男。
チノ。
ちょこみんと。
三人。
数秒。
誰も動かない。
男
「知り合い?」
チノ
「はい」
即答。
チノ
「ちょこお姉ちゃん」
ちょこみんと
「ちのうさ……」
チノ。
男を見る。
チノ
「ありがとうございます」
チノ
「後は私が連れて帰ります」
静かな声。
しかし。
有無を言わせない。
そんな空気だった。
男
「いや」
男
「俺、案内してただけなんだけど」
チノ
「そうですか」
男
「そうだけど?」
チノ
「では問題ありません」
数秒。
男。
チノを見る。
そして。
小さく舌打ち。
男
「……分かったよ」
去っていく。
その姿が見えなくなる。
静寂。
ちょこみんと
「……」
チノ
「……」
気まずい。
非常に気まずい。
ちょこみんと
「えっと」
チノ
「帰ります」
ちょこみんと
「はい」
即答。
帰り道。
夜道。
並んで歩く。
しかし。
会話が無い。
ちょこみんと
「……」
チノ
「……」
数分。
沈黙。
ちょこみんと
「ごめん」
チノ。
少し止まる。
ちょこみんと
「私も言い過ぎた」
夜風。
吹く。
ちょこみんと
「本当は」
ちょこみんと
「途中で帰ろうと思ったんだけど」
ちょこみんと
「迷った」
チノ
「知っています」
ちょこみんと
「知ってるの!?」
チノ
「ちょこお姉ちゃんですから」
ちょこみんと
「何それぇ……」
少し笑う。
でも。
その笑顔は弱い。
ちょこみんと
「ちのうさもごめんね」
チノ
「私も言い過ぎました」
ちょこみんと
「ちょっとだけ傷付いた」
チノ
「すみません」
静か。
数秒。
ちょこみんと
「怒ってた?」
チノ
「怒っていました」
即答。
ちょこみんと
「うぅ……」
チノ
「ですが」
立ち止まる。
ちょこみんとも。
止まる。
チノ
「心配もしていました」
静寂。
ちょこみんと
「……」
チノ
「連絡も無い」
チノ
「場所も分からない」
チノ
「帰ってこない」
チノ
「だから探しました」
声は。
いつも通り。
落ち着いている。
だけど。
ほんの少しだけ。
震えていた。
ちょこみんと
「……ごめん」
チノ
「いなくなるのは駄目です」
ちょこみんと
「うん」
チノ
「喧嘩は構いません」
チノ
「ですが」
チノ
「いなくならないでください」
その瞬間。
ちょこみんと。
ようやく気付く。
この子。
本当に心配していたんだ。
ちょこみんと
「うん」
ちょこみんと
「ごめんね」
そして。
少しだけ笑う。
ちょこみんと
「ありがとう」
チノ
「当然です」
チノ
「私は妹ですから」
ちょこみんと
「ちのうさ〜〜〜!」
抱きつく。
チノ
「重いです」
ちょこみんと
「ひどい!」
チノ
「事実です」
ちょこみんと
「またそれ!」
二人。
少し笑う。
そして。
事務所。
共有ルーム。
扉。
開く。
アオロビ
「おっ」
ローシャ
「帰ってきた」
みるく
「おかえりなさい」
ニケ
「無事でしたか」
La lune bleue .
「おかえりにゃ」
ぴたぽん
「ちょこしゃーん!」
ルクレティア
「お帰りなさい」
ちょこみんと
「ただいまー!」
アオロビ
「ちょこ姉」
ちょこみんと
「ん?」
アオロビ
「皆心配してたから」
ちょこみんと
「ごめんなさい」
即謝罪。
ローシャ
「よろしい」
その時。
チノ。
ソファへ座る。
少し疲れていた。
ちょこみんと。
冷蔵庫へ向かう。
ガサガサ。
数秒後。
ちょこみんと
「ちのうさー!」
チノ
「何ですか」
ちょこみんと
「アイス食べる?」
チノ
「食べます」
即答。
アオロビ
「仲直り早」
La lune bleue .
「いつものにゃ」
ルクレティア。
少し笑う。
ルクレティア
「まぁ」
ルクレティア
「これで良いのよ」
こうして。
少し長い一日は。
無事。
笑顔で終わったのである。
129:約束
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「約束」
午後。
Gleam Garden共有ルーム。
珍しく。
ローシャとLa lune bleue .が並んでいた。
アオロビ
「珍しい組み合わせ」
みるく
「そうですね」
その頃。
La lune bleue .
スマホを見ている。
La lune bleue .
「ロマンさん」
ローシャ
「ん?」
La lune bleue .
「今度のお休み」
ローシャ
「うん」
La lune bleue .
「空いてるかにゃ?」
ローシャ
「空いてるよ」
La lune bleue .
少し嬉しそう。
La lune bleue .
「じゃあ出掛けるにゃ」
ローシャ
「私と?」
La lune bleue .
頷く。
La lune bleue .
「にゃ」
ローシャ。
少し驚く。
アオロビ
「デートだ」
ローシャ
「違うって」
La lune bleue .
「違うにゃ」
アオロビ
「息ぴったりじゃん」
ローシャ
「ただ出掛けるだけ」
La lune bleue .
「お買い物にゃ」
アオロビ
「仲良いなぁ」
その頃。
ルクレティア。
コーヒーを飲んでいる。
ルクレティア
「良いじゃない」
ルクレティア
「たまにはそういう日も必要よ」
ローシャ。
少し笑う。
ローシャ
「そうかもね」
La lune bleue .
嬉しそうに尻尾を揺らす。
La lune bleue .
「楽しみにしてるにゃ」
ローシャ
「私も楽しみ」
そして。
約束の日。
午前。
待ち合わせ。
11時。
ローシャの部屋。
静か。
ローシャ。
机に向かっている。
ローシャ
「あと少し……」
パソコン。
資料。
修正。
確認。
修正。
確認。
ローシャ
「これで終わり……」
メール。
届く。
ローシャ
「えっ」
追加修正。
ローシャ
「今!?」
再び作業。
修正。
確認。
修正。
確認。
ローシャ
「終わった……」
息を吐く。
時計を見る。
12:34
静止。
ローシャ
「……」
数秒。
ローシャ
「……え?」
再確認。
12:34
ローシャ
「え?」
再確認。
12:34
ローシャ
「えぇっ!?」
椅子から飛び上がる。
ローシャ
「嘘でしょ!?」
スマホ。
見る。
通知。
大量。
La lune bleue .
『着いたにゃ』
La lune bleue .
『どこにゃ?』
La lune bleue .
『迷ったかにゃ?』
La lune bleue .
『大丈夫かにゃ?』
最後。
一時間前。
La lune bleue .
『帰るにゃ』
静止。
ローシャ
「終わった……」
顔面蒼白。
ローシャ
「終わった……」
人生終了みたいな顔。
ローシャ
「にゃんこさんとの約束……」
ローシャ
「やっちゃった……」
立ち上がる。
ローシャ
「行かなきゃ」
財布。
スマホ。
上着。
全部掴む。
ローシャ
「まだ間に合うかもしれない」
飛び出す。
その頃。
とあるカフェ。
La lune bleue .
一人。
窓際。
飲み物。
ほとんど減っていない。
La lune bleue .
「……」
店の外を見る。
来ない。
La lune bleue .
「ロマンさん」
小さな声。
La lune bleue .
「忙しかったのかにゃ……」
怒っている。
というより。
少しだけ。
寂しかった。
その頃。
駅前。
全力疾走するローシャ。
ローシャ
「間に合って……!」
走る。
走る。
そして。
ようやく。
待ち合わせ場所へ。
しかし。
そこに。
La lune bleue .の姿は無かった。
ローシャ。
立ち尽くす。
スマホ。
震える。
画面。
La lune bleue .
『今日は帰るにゃ』
ローシャ
「……」
数秒。
ローシャ
「やっちゃったなぁ……」
その声は。
誰に聞かせるでもなく。
自分自身へ向けたものだった。
第二話「やってしまった」
翌日。
朝。
ローシャの部屋。
静か。
しかし。
本人の心は静かではなかった。
ローシャ。
ベッドの上。
天井を見ている。
ローシャ
「……」
数秒。
ローシャ
「やっちゃったなぁ……」
昨夜から。
ずっと引きずっていた。
La lune bleue .
楽しみにしていた。
知っている。
だから。
余計に。
落ち込む。
ローシャ
「謝らなきゃ」
起き上がる。
ローシャ
「ちゃんと謝ろう」
決意。
その頃。
共有ルーム。
アオロビ
「ローシャさん元気ないね」
みるく
「かなり落ち込んでました」
ぴたぽん
「昨日からしょんぼりぽん〜」
La lune bleue .
紅茶を飲んでいる。
アオロビ
「ネコさんは?」
La lune bleue .
「別に怒ってないにゃ」
アオロビ
「本当に?」
La lune bleue .
「本当にゃ」
数秒。
La lune bleue .
「……ちょっとだけ寂しかっただけにゃ」
アオロビ
「怒ってるじゃん」
La lune bleue .
「怒ってないにゃ」
アオロビ
「怒ってるなぁ」
その頃。
街。
ローシャ。
洋菓子店。
ショーケース。
大量のケーキ。
ローシャ
「うわぁ……」
店員
「いらっしゃいませ」
ローシャ
「その」
ローシャ
「謝る時に向いてるケーキってありますか?」
店員
「えっ」
店員。
困る。
店員
「謝罪用ですか?」
ローシャ
「はい」
店員
「謝罪用……」
前例が無い。
数分後。
ローシャ。
箱を持っていた。
綺麗なホールケーキ。
ローシャ
「これなら……」
ローシャ
「きっと大丈夫」
少しだけ笑う。
そして。
歩き出す。
その時。
子供
「わっ!」
走ってくる。
ローシャ
「えっ」
避ける。
足。
縁石。
引っかかる。
ローシャ
「きゃっ――」
転倒。
静止。
数秒。
ローシャ
「……」
恐る恐る。
箱を見る。
開いている。
嫌な予感。
さらに開く。
ケーキ。
崩壊。
原形なし。
ローシャ
「……」
静止。
ローシャ
「終わった」
魂。
半分抜ける。
ローシャ
「終わった……」
その時。
後ろから声。
La lune bleue .
「ロマンさん?」
静止。
ローシャ
「えっ」
振り返る。
La lune bleue .
いた。
ローシャ
「にゃんこさん!?」
La lune bleue .
崩壊したケーキを見る。
ローシャを見る。
再び。
ケーキを見る。
La lune bleue .
「……」
ローシャ
「違うの!」
La lune bleue .
「何がにゃ」
ローシャ
「これはその」
ローシャ
「謝ろうと思って……」
La lune bleue .
瞬き。
ローシャ
「買ったんだけど……」
ローシャ
「転んで……」
La lune bleue .
数秒。
La lune bleue .
「そういうことかにゃ」
ローシャ
「ごめん……」
La lune bleue .
ため息。
La lune bleue .
「そこまでしなくても」
ローシャ
「駄目」
即答。
La lune bleue .
「にゃ?」
ローシャ
「駄目」
ローシャ。
崩れたケーキを見る。
ローシャ
「これは駄目」
La lune bleue .
嫌な予感。
ローシャ
「作る」
La lune bleue .
「にゃ?」
ローシャ
「作る」
La lune bleue .
「待つにゃ」
ローシャ
「作る」
La lune bleue .
確信する。
La lune bleue .
「駄目な顔してるにゃ」
ローシャ
「今日中に作る」
La lune bleue .
「話聞いてにゃ」
しかし。
ローシャは。
もう聞いていなかった。
第三話「徹夜」
夕方。
Gleam Garden共有ルーム。
ローシャ。
帰宅。
そして。
真っ直ぐ。
キッチンへ向かう。
アオロビ
「おかえり」
ローシャ
「ただいま」
アオロビ
「どうだった?」
ローシャ
「やっちゃった」
アオロビ
「やったんだ」
ローシャ
「やった」
魂が半分抜けている。
La lune bleue .
その後ろ。
La lune bleue .
「やったにゃ」
アオロビ
「やったんだ」
ルクレティア。
コーヒーを置く。
ルクレティア
「何をやらかしたの?」
La lune bleue .
「ケーキにゃ」
ローシャ
「……」
ルクレティア
「察したわ」
そして。
ローシャ。
冷蔵庫を開く。
卵。
牛乳。
生クリーム。
バター。
小麦粉。
大量。
アオロビ
「待って」
ローシャ
「何?」
アオロビ
「まさか」
ローシャ
「作る」
アオロビ
「やっぱり」
La lune bleue .
即座に前へ出る。
La lune bleue .
「ロマンさん」
ローシャ
「うん」
La lune bleue .
「別にそこまでしなくていいにゃ」
ローシャ
「駄目」
La lune bleue .
「にゃ」
ローシャ
「私が駄目」
即答。
La lune bleue .
頭を抱える。
La lune bleue .
「始まったにゃ」
みるく
「始まりましたね」
ぴたぽん
「重症ぽん」
ニケ
「重症ですね……」
その頃。
ローシャ。
エプロン装備。
戦闘開始。
ローシャ
「まずスポンジ」
卵を割る。
混ぜる。
泡立てる。
一時間後。
焼き上がり。
ローシャ
「……」
見つめる。
ローシャ
「違う」
捨てる。
アオロビ
「えっ」
アオロビ
「今ので良くない?」
ローシャ
「良くない」
ローシャ
「気泡が均一じゃない」
アオロビ
「分からない」
二回目。
三回目。
四回目。
みるく
「増えてません?」
ニケ
「増えてますね……」
夜。
22時。
共有ルーム。
静か。
しかし。
キッチンだけ。
戦場。
ローシャ
「違う」
ローシャ
「これも違う」
La lune bleue .
見ている。
La lune bleue .
「ロマンさん」
ローシャ
「ん?」
La lune bleue .
「にゃんころ」
ローシャ
「うん」
La lune bleue .
「もう怒ってないにゃ」
ローシャ
「知ってる」
La lune bleue .
「なら」
ローシャ
「でも」
手が止まる。
ローシャ
「待たせた」
静か。
ローシャ
「楽しみにしてくれてた」
ローシャ
「それも知ってる」
La lune bleue .
何も言えない。
ローシャ
「だから」
少し笑う。
ローシャ
「ちゃんとしたい」
La lune bleue .
黙る。
アオロビ。
小声。
アオロビ
「これ無理だ」
みるく
「無理ですね」
ルクレティア
「無理ね」
ぴたぽん
「無理ぽん」
全員一致。
深夜。
1時。
ローシャ。
まだいる。
La lune bleue .
まだいる。
ローシャ
「出来た」
La lune bleue .
「本当にかにゃ?」
ローシャ
「今度こそ」
テーブル。
ケーキ。
完成。
綺麗だった。
今までで一番。
綺麗だった。
ローシャ。
ようやく息を吐く。
そして。
次の瞬間。
ふらっ。
La lune bleue .
「にゃっ!?」
倒れる前に。
支える。
ローシャ
「大丈夫」
La lune bleue .
「全然大丈夫じゃないにゃ!」
ローシャ
「ちょっと眠いだけ」
La lune bleue .
「朝になるにゃ!!」
その頃。
ルクレティア。
時計を見る。
午前2時17分。
ルクレティア
「リズさんが壊れたわね」
アオロビ
「壊れたね」
La lune bleue .
完成したケーキを見る。
そして。
少しだけ笑った。
La lune bleue .
「本当に馬鹿にゃ」
でも。
その顔は。
もう怒っていなかった。
第四話「仲直り」
翌朝。
Gleam Garden共有ルーム。
静か。
非常に静か。
その理由。
ソファ。
ローシャ。
寝ている。
完全に寝ている。
アオロビ
「生きてる?」
みるく
「寝てるだけです」
ぴたぽん
「すやすやぽん」
ニケ
「よく倒れませんでしたね……」
その頃。
テーブル。
ケーキ。
置かれている。
綺麗。
本当に綺麗。
ルクレティア
「執念ね」
アオロビ
「怖いレベル」
La lune bleue .
ケーキを見る。
La lune bleue .
「怖かったにゃ」
アオロビ
「作った本人より見てた方が疲れてる」
La lune bleue .
「本当にそうにゃ」
数時間後。
昼。
ローシャ
「……」
起床。
ローシャ
「……あれ」
みるく
「おはようございます」
ローシャ
「おはよう」
アオロビ
「おはよう遭難者」
ローシャ
「遭難してない」
アオロビ
「深夜二時までケーキ作る人は遭難者なんだよ」
ローシャ
「そんなことない」
その時。
視線。
La lune bleue .
座っている。
ローシャ
「……」
La lune bleue .
「……」
少し気まずい。
ローシャ
「にゃんこさん」
La lune bleue .
「にゃ」
ローシャ。
姿勢を正す。
ローシャ
「ごめん」
静か。
ローシャ
「本当にごめん」
ローシャ
「待たせた」
ローシャ
「約束したのに」
ローシャ
「忘れてた訳じゃないんだ」
ローシャ
「でも結果は同じだから」
ローシャ
「本当にごめん」
頭を下げる。
共有ルーム。
静か。
La lune bleue .
数秒。
ローシャを見る。
そして。
小さくため息。
La lune bleue .
「顔上げるにゃ」
ローシャ
「……」
La lune bleue .
「もう怒ってないにゃ」
ローシャ
「本当に?」
La lune bleue .
「本当にゃ」
ローシャ
「でも」
La lune bleue .
「でもも何もないにゃ」
La lune bleue .
少し笑う。
La lune bleue .
「昨日から何回謝るにゃ」
アオロビ
「それは私も思った」
みるく
「私もです」
ニケ
「私もですね」
ローシャ
「だって……」
La lune bleue .
「だってじゃないにゃ」
その時。
La lune bleue .
少しだけ視線を落とす。
La lune bleue .
「でも」
ローシャ
「うん」
La lune bleue .
「寂しかったにゃ」
静止。
ローシャ
「……」
La lune bleue .
「待ってたにゃ」
ローシャ
「……うん」
La lune bleue .
「楽しみにしてたにゃ」
ローシャ。
目を閉じる。
それが。
一番効いた。
ローシャ
「ごめん……」
La lune bleue .
「だから」
ローシャ
「うん」
La lune bleue .
「次からは連絡するにゃ」
ローシャ
「する」
La lune bleue .
「絶対にゃ」
ローシャ
「絶対」
La lune bleue .
「ならいいにゃ」
ローシャ。
ようやく笑う。
ローシャ
「ありがとう」
La lune bleue .
「にゃ」
そして。
テーブル。
ケーキ。
La lune bleue .
「食べるにゃ」
ローシャ
「食べる」
アオロビ
「待ってました」
ぴたぽん
「・:*+.\(( °ω° ))/.:+」
みるく
「いただきます」
ニケ
「凄く綺麗ですね」
ルクレティア
「リズさんの努力の結晶ね」
切り分け。
配られる。
一口。
静寂。
アオロビ
「美味しい」
みるく
「美味しいです」
ニケ
「凄い……」
ぴたぽん
「ほっぺ落ちるぽん」
La lune bleue .
一口食べる。
数秒。
La lune bleue .
「美味しいにゃ」
ローシャ。
固まる。
La lune bleue .
「本当に美味しいにゃ」
ローシャ
「……」
ローシャ
「良かった」
その瞬間。
全ての緊張が切れる。
ローシャ。
テーブルへ突っ伏す。
アオロビ
「燃え尽きた」
みるく
「燃え尽きましたね」
ニケ
「完全に燃え尽きました」
その頃。
ルクレティア。
コーヒーを飲む。
ルクレティア
「リズさんが死んでるわ」
La lune bleue .
「死んでるにゃ」
アオロビ
「魂抜けてる」
ローシャ
「もう寝る……」
こうして。
少し長かった喧嘩は。
ケーキ一つと。
たくさんの謝罪と。
少しの寂しさで。
無事。
終わったのである。
130:日頃の感謝を
(ちょこみんリクエスト)(全4話)
第一話「洗濯物の山」
朝。
Gleam Garden寮。
静か。
非常に静か。
その頃。
Nike。
洗濯機の前。
Nike
「……」
見ている。
洗濯カゴ。
山。
服。
服。
服。
服。
Nike
「増えてますね……」
ため息。
しかし。
慣れていた。
白いシャツ。
白い上着。
白いスカート。
ライブ衣装。
レッスン着。
私服。
ほぼ全部。
チノの。
Nike
「今日も元気ですね……」
洗濯開始。
その頃。
チノの部屋。
扉。
開く。
アオロビ
「うわ」
アオロビ
「うわぁ」
静止。
部屋。
広い。
しかし。
服。
服。
服。
クローゼット。
限界。
椅子。
服。
ベッド。
服。
床。
服。
アオロビ
「ショップかな?」
チノ
「部屋です」
アオロビ
「知ってる」
チノ。
平然。
アオロビ
「なんでこんなにあるの」
チノ
「服です」
アオロビ
「知ってる」
チノ
「増えました」
アオロビ
「見れば分かる」
その時。
みるく。
部屋を覗く。
みるく
「わぁ」
みるく
「増えてますね」
チノ
「増えました」
みるく
「そうですね」
静かに納得するな。
その頃。
洗濯機。
回っている。
Nike。
二台目を準備。
Nike
「……」
山。
まだ減らない。
Nike
「多いですね」
後ろ。
ルクレティア
「お疲れ様」
Nike
「ルクさん」
ルクレティア。
洗濯カゴを見る。
数秒。
ルクレティア
「多いわね」
Nike
「多いです」
ルクレティア
「ちーちゃん?」
Nike
「チノさんです」
ルクレティア
「やっぱり」
納得。
昼。
共有ルーム。
チノ。
本を読んでいる。
Nike。
洗濯物を畳んでいる。
チノ。
ページをめくる。
Nike。
畳む。
チノ。
ページをめくる。
Nike。
畳む。
アオロビ
「夫婦かな?」
チノ
「違います」
Nike
「違います」
即答。
アオロビ
「息ぴったりじゃん」
ローシャ。
共有ルームへ入る。
ローシャ
「何してるの?」
アオロビ
「チノさんの洗濯物」
ローシャ
「また?」
Nike
「またです」
ローシャ
「大変そう」
Nike
「慣れました」
慣れてはいけない。
その時。
ローシャ。
ふと気付く。
ローシャ
「そういえば」
ローシャ
「チノさん」
チノ
「何でしょう」
ローシャ
「ちゃんとお礼言ってる?」
静止。
チノ
「……」
アオロビ
「……」
みるく
「……」
Nike
「……」
共有ルーム。
急に静かになる。
チノ
「言っています」
アオロビ
「いつ?」
チノ
「心の中で」
アオロビ
「駄目だそれ」
ローシャ
「駄目ね」
みるく
「駄目です」
ルクレティア
「駄目よ」
満場一致。
チノ
「……」
少しだけ。
考える。
その様子を。
Nikeは気付かなかった。
しかし。
チノは。
珍しく。
少しだけ。
考え込んでいた。
第二話「いつもありがとう」
朝。
Gleam Garden寮。
Nike。
起床。
Nike
「……」
静か。
窓の外。
良い天気。
Nike
「洗濯日和ですね」
そして。
起きて最初に向かう場所。
洗濯機。
Nike
「さて」
洗濯カゴを見る。
静止。
Nike
「増えてますね」
昨日より増えていた。
その頃。
チノ。
まだ寝ている。
平和だった。
非常に平和だった。
洗濯開始。
一回目。
二回目。
三回目。
Nike
「多いですね……」
その頃。
共有ルーム。
みるく。
本を読んでいる。
チノ。
本を読んでいる。
静か。
みるく
「チノさん」
チノ
「何でしょう」
みるく
「Nikeさんに感謝していますか?」
チノ
「しています」
即答。
みるく
「伝えました?」
チノ
「……」
静止。
みるく
「伝えてないんですね」
チノ
「伝えていません」
みるく
「何故ですか?」
チノ
「難しいです」
みるく
「難しいですか」
チノ
「難しいです」
チノ。
本を閉じる。
チノ
「感謝はしています」
みるく
「はい」
チノ
「かなり」
みるく
「はい」
チノ
「ですが」
チノ
「どう言えば良いのか分かりません」
みるく。
少し笑う。
みるく
「チノさんらしいですね」
チノ
「そうでしょうか」
その頃。
廊下。
Nike。
洗濯物の山を運んでいる。
Nike
「重い……」
後ろ。
アオロビ。
アオロビ
「何回目?」
Nike
「三回目です」
アオロビ
「三回目!?」
Nike
「まだあります」
アオロビ
「まだあるの!?」
アオロビ。
少し考える。
アオロビ
「チノさん」
チノ
「何でしょう」
アオロビ
「洗濯物多くない?」
チノ
「多いですね」
アオロビ
「他人事かな?」
チノ
「他人事ではありません」
アオロビ
「そうかなぁ」
その時。
ルクレティア。
共有ルームへ入る。
ルクレティア
「何の話?」
アオロビ
「チノさんの服」
ルクレティア
「また増えたの?」
チノ
「増えました」
ルクレティア
「減らしなさい」
チノ
「無理です」
ルクレティア
「即答ね」
その頃。
Nike。
最後の洗濯物を畳んでいる。
丁寧。
一枚ずつ。
丁寧に。
畳む。
ローシャ。
後ろから覗く。
ローシャ
「いつもやってるの?」
Nike
「はい」
ローシャ
「大変じゃない?」
Nike
「慣れました」
ローシャ
「その言葉最近よく聞くなぁ」
Nike
少し笑う。
Nike
「チノさんの服、白い物が多いので」
Nike
「汚れが気になるんです」
ローシャ
「優しい」
Nike
「そんなことないですよ」
その会話。
偶然。
チノが聞いていた。
チノ
「……」
静か。
チノ。
Nikeを見る。
洗濯物を畳む手。
綺麗に整えられた服。
何度も見た光景。
でも。
改めて考える。
毎日。
洗う。
干す。
畳む。
自分の服を。
ずっと。
チノ
「……」
その夜。
自室。
チノ。
ベッドの上。
考える。
チノ
「感謝はしています」
静か。
チノ
「かなり」
しかし。
言葉に出来ない。
チノ
「……」
数秒。
そして。
チノ。
スマホを手に取る。
チノ
「何か考えます」
その目は。
珍しく。
本気だった。
第三話「プレゼント」
翌日。
Gleam Garden共有ルーム。
珍しい光景だった。
チノ。
悩んでいる。
本当に悩んでいる。
アオロビ
「チノさんが悩んでる」
みるく
「悩んでますね」
ぴたぽん
「悩んでるぽん」
チノ。
ソファ。
腕組み。
真剣。
チノ
「……」
アオロビ
「何かあった?」
チノ
「あります」
即答。
アオロビ
「珍しい」
チノ
「珍しいです」
認めた。
その頃。
ローシャ。
紅茶を飲む。
ローシャ
「何で悩んでるの?」
チノ
「お礼です」
静止。
共有ルーム。
止まる。
アオロビ
「えっ」
みるく
「えっ」
ぴたぽん
「うゅ?」
ローシャ
「お礼?」
チノ
「はい」
チノ
「Nikeさんへのお礼です」
静止。
ルクレティア。
コーヒーを置く。
ルクレティア
「えらい」
チノ
「そうでしょうか」
ルクレティア
「えらいわ」
チノ
「そうですか」
少し嬉しそう。
その頃。
Nike。
外出中。
不在。
チノ
「何が良いでしょう」
アオロビ
「普通にお菓子とか?」
チノ
「軽いです」
アオロビ
「重いの前提なんだ」
ローシャ
「アクセサリーとか?」
チノ
「持っています」
みるく
「本はどうですか?」
チノ
「読書家ではありません」
ぴたぽん
「みかんぽん」
アオロビ
「ぴたさんはみかんから離れて」
ぴたぽん
「うにゅ」
その時。
チノ。
考える。
毎日。
洗う。
干す。
畳む。
洗う。
干す。
畳む。
洗う。
干す。
畳む。
チノ
「……」
アオロビ
「何か思い付いた?」
チノ
「はい」
アオロビ
「早い」
チノ
立ち上がる。
チノ
「解決しました」
ローシャ
「何にするの?」
チノ
「秘密です」
ルクレティア
「気になるわね」
チノ
「届けば分かります」
アオロビ
「届く?」
チノ
「届きます」
数十分後。
チノ。
パソコンの前。
真剣。
カチカチ。
検索。
比較。
検索。
比較。
チノ
「これですね」
クリック。
購入。
完了。
チノ
「終わりました」
その頃。
共有ルーム。
アオロビ
「終わったらしい」
ローシャ
「終わったみたいね」
みるく
「何を買ったんでしょう」
ぴたぽん
「気になるぽん」
ルクレティア
「ちーちゃんだもの」
「たぶん極端よ」
アオロビ
「それはある」
ローシャ
「ありそう」
みるく
「ありそうですね」
満場一致。
その頃。
チノ。
注文完了メールを見る。
チノ
「これで少し楽になるはずです」
静か。
満足そうだった。
しかし。
そのプレゼントが。
皆の想像より遥かに大きいことを。
まだ誰も知らなかった。
第四話「ありがとう」
三日後。
Gleam Garden寮。
昼。
玄関。
ピンポーン。
配達員
「お届け物です」
チノ
「ありがとうございます」
受け取る。
静止。
大きい。
非常に大きい。
チノ
「……」
数秒。
チノ
「大きいですね」
自分で買った。
しかし。
思ったより大きかった。
その頃。
共有ルーム。
アオロビ
「何その箱」
ローシャ
「大きい」
みるく
「大きいですね」
ぴたぽん
「大きいぽん〜」
ルクレティア
「嫌な予感しかしないわ」
チノ
「問題ありません」
問題ありそうだった。
その時。
Nike。
共有ルームへ入る。
Nike
「ただいま戻りました」
アオロビ
「おかえり」
ローシャ
「おかえり」
みるく
「おかえりなさい」
Nike
そして。
箱を見る。
Nike
「?」
チノ
「Nikeさん」
Nike
「はい」
チノ
「こちらです」
Nike
「こちら?」
チノ
「開けてください」
静止。
アオロビ
「始まった」
ルクレティア
「始まったわね」
ローシャ
「始まったね」
Nike。
困惑しながら開封。
ガサガサ。
ガサガサ。
沈黙。
そして。
箱の中身が見える。
Nike
「……」
静止。
Nike
「……え?」
もう一度見る。
Nike
「え?」
さらに見る。
Nike
「えっ!?」
共有ルーム。
ざわつく。
アオロビ
「何?」
ローシャ
「何だった?」
みるく
「見えません」
Nike
箱を見る。
チノを見る。
もう一度箱を見る。
Nike
「ドラム式洗濯機!?」
共有ルーム。
静止。
アオロビ
「えっ」
ローシャ
「えっ」
みるく
「えっ」
ぴたぽん
「にょ!?」
ルクレティア
「やっぱり極端だったわ」
Nike
「待ってください」
「何か大きくないですか?」
チノ
「大きいですね」
アオロビ
「いや大きいとかそういう問題じゃなくて」
Nike。
説明書を見る。
静止。
Nike
「業務用」
共有ルーム。
静止。
アオロビ
「は?」
ローシャ
「業務用?」
みるく
「業務用ですか?」
ぴたぽん
「業務用ぽん!?」
ルクレティア
「業務用ね」
Nike
「業務用です!!」
チノ
「洗濯回数が減ります」
アオロビ
「発想が企業なんだよ」
ローシャ
「個人宅に置くものじゃないよ」
チノ
「置けます」
アオロビ
「置けるかどうかじゃない」
Nike
まだ混乱している。
Nike
「いやでも」
Nike
「こんな高価な物」
チノ
「必要経費です」
アオロビ
「必要経費ではない」
チノ
「洗濯回数が減ります」
Nike
「そこなんですね……」
チノ
「重要です」
Nike。
思わず笑う。
Nike
「チノさんらしいですね」
チノ
「そうでしょうか」
Nike
「そうです」
静か。
数秒。
Nike。
洗濯機を見る。
チノを見る。
そして。
少しだけ頭を下げた。
Nike
「ありがとうございます」
チノ
「どういたしまして」
短い。
それだけ。
でも。
十分だった。
その時。
チノ。
少しだけ考える。
普段なら。
そこで終わる。
でも。
今日は違った。
チノ
「Nikeさん」
Nike
「はい?」
チノ
「いつもありがとうございます」
静止。
Nike
「……え?」
チノ
「私の服」
チノ
「いつも洗ってくれています」
チノ
「畳んでくれています」
チノ
「綺麗にしてくれています」
チノ
「感謝しています」
共有ルーム。
静か。
アオロビ
「……」
ローシャ
「……」
みるく
「……」
ぴたぽん
「……」
ルクレティア
「……」
誰も喋らない。
Nike。
少し驚いていた。
そして。
少しだけ笑う。
Nike
「知ってました」
チノ
「そうですか」
Nike
「でも」
Nike
「直接聞けて嬉しいです」
チノ
「……」
少しだけ。
照れる。
チノ
「そうですか」
静か。
でも。
悪くない空気だった。
その頃。
アオロビ。
小声。
アオロビ
「良い話だ」
ローシャ
「良い話だね」
みるく
「良い話ですね」
ぴたぽん
「良い話ぽん」
ルクレティア
「そうね」
その時。
Nike。
ふと思い出したように説明書を見る。
Nike
「……」
「チノさん」
チノ
「何でしょう」
Nike
「これ業務用ですよ」
チノ
「はい」
Nike
「本当に業務用ですよ」
チノ
「はい」
Nike
「知ってました?」
静止。
チノ
「……」
数秒。
チノ
「私も買ってから気付きました」
静止。
アオロビ
「気付くの遅くない?」
ローシャ
「遅いね」
みるく
「遅いです」
ぴたぽん
「遅いぽん」
ルクレティア
「遅いわね」
満場一致。
Nike
「もう駄目ですこの人」
共有ルーム。
大爆笑。
平和だった。
非常に平和だった。
こうして。
チノの不器用な感謝は。
少し大きすぎて。
少し業務用すぎたが。
無事。
Nikeへ伝わったのである。
131:劇場版アニメ、テレビ放送
(全5話)
(一切名前伏せ無し、ご注意)
第一話「ロードショー」
夜。
Gleam Garden共有ルーム。
ちょこみんと。
ソファでごろごろしていた。
テレビ。
なんとなく点ける。
チャンネルを回す。
回す。
回す。
そして。
静止。
ちょこみんと
「あっ」
数秒。
ちょこみんと
「あーーーーっ!!」
共有ルーム。
響く。
アオロビ
「うるさい」
即座に飛んでくる。
ちょこみんと
「あおちー!!」
アオロビ
「何」
ちょこみんと
「今日じゃん!!」
アオロビ
「何が」
ちょこみんと。
テレビを指差す。
画面。
『今夜9時 地上波初放送』
『劇場版 葬送のフリーレン』
アオロビ
「……」
静止。
アオロビ
「あ」
思い出した。
ちょこみんと
「今日だよ!?」
アオロビ
「今日だった」
ちょこみんと
「忘れてたの!?」
アオロビ
「忘れてた」
本人である。
その時。
ローシャ。
共有ルームへ入る。
ローシャ
「何かあった?」
ちょこみんと
「今日フリーレン!」
ローシャ
「ああ」
ローシャも思い出した。
ローシャ
「今日だったね」
みるく。
後ろから顔を出す。
みるく
「テレビ放送ですか?」
ちょこみんと
「そう!」
みるく
「見ます」
即答。
その頃。
ルクレティア。
紅茶を持ってくる。
ルクレティア
「何の騒ぎかと思ったら」
アオロビ
「今日だったらしい」
ルクレティア
「らしいじゃないのよ」
ルクレティア
「あなた主演級だったでしょう」
アオロビ
「主演じゃない」
ルクレティア
「準主役級だったわ」
アオロビ
「やめて」
未だに慣れない。
その時。
ぴたぽん。
ぱたぱた走ってくる。
ぴたぽん
「映画ぽん?」
ちょこみんと
「映画!」
ぴたぽん
「見るぽん〜!」
続いて。
ニケ。
Nike
「何か始まるんですか?」
みるく
「アオさんの映画です」
Nike
「ああ!」
思い出した。
Nike
「試写会の」
アオロビ
「その言い方やめて」
ちょこみんと
「ゾルトラーク娘の映画!」
アオロビ
「やめろ」
ローシャ。
吹き出す。
ローシャ
「まだ言われてるんだ」
アオロビ
「言われてる」
ルクレティア
「もう定着しているものね」
アオロビ
「名前あるから」
「マリーだから」
みるく
「そうでした」
Nike
「そうでしたね」
ちょこみんと
「マリーちゃん!」
アオロビ
「それでいい」
そっちでいい。
その時。
テレビ。
放送開始まで。
あと十分。
ちょこみんと
「全員集合!」
アオロビ
「なんで」
ちょこみんと
「同時視聴!」
アオロビ
「配信者みたいなこと言うな」
しかし。
誰も帰らない。
ローシャも座る。
みるくも座る。
ぴたぽんも座る。
Nikeも座る。
ルクレティアも座る。
チノもいつの間にか来ていた。
チノ
「間に合いました」
アオロビ
「何に」
チノ
「ゾルトラーク娘鑑賞会です」
アオロビ
「だから名前あるって!!」
共有ルーム。
大爆笑。
そして。
テレビ画面。
カウントダウン。
放送開始まで。
あと数秒。
ちょこみんと
「来るよ」
ローシャ
「楽しみ」
みるく
「久しぶりですね」
ルクレティア
「さて」
アオロビ。
少しだけ背筋を伸ばす。
試写会以来。
久しぶりに見る。
あの物語。
そして。
テレビが暗転した。
第二話「エルム村」
テレビ。
暗転。
そして。
静かな音楽。
雪景色。
北方領土。
白い森。
白い空。
白い道。
みるく
「綺麗ですね……」
ローシャ
「映画館で見た時も思った」
アオロビ
「背景美術すごいんだよね」
ちょこみんと
「始まった!」
タイトル。
『劇場版 葬送のフリーレン』
オープニング。
そして。
物語が始まる。
旅を続けるフリーレン達。
吹雪。
雪道。
フェルン
『寒いです』
シュタルク
『俺だって寒いって』
ちょこみんと
「シュタルクだ」
ローシャ
「相変わらずね」
ルクレティア
「安心感あるわ」
やがて。
遠く。
灯り。
小さな村。
エルム村。
みるく
「ここですね」
アオロビ
「ここ」
村へ入る。
村人達。
農作業。
家畜。
煙突。
静かな農村。
フリーレン。
少しだけ不思議そうな顔。
フェルン
『どうかしましたか?』
フリーレン
『珍しいなって』
フェルン
『何がです?』
フリーレン
『魔法使いが一人もいない』
ルクレティア
「この台詞好きなのよね」
ローシャ
「ああ」
ローシャ
「この時点で伏線だもんね」
テレビ。
村人達。
誰も魔力を持たない。
誰も魔法を知らない。
それが当たり前。
そして。
村長ガルド登場。
ちょこみんと
「このおじさん怖い」
アオロビ
「最初だけ」
ガルド
『魔法使いは信用ならん』
Nike
「警戒されてますね」
ルクレティア
「当然よ」
ローシャ
「フリーレンだしね」
アオロビ
「魔族絶対殺すマンだから」
みるく
「身も蓋もないです」
その時。
画面。
一人の少女。
雪道を走る。
荷物。
買い物帰り。
そして。
転ぶ。
荷物散乱。
シュタルク
『あっ』
シュタルクが拾う。
少女。
慌てる。
『ありがとうございます!』
共有ルーム。
静止。
ちょこみんと
「いた!!」
アオロビ
「まだ早い」
ちょこみんと
「マリーちゃん!」
画面。
マリー。
笑う。
村娘。
素朴。
明るい。
人懐っこい。
フェルン
『村の方ですか?』
マリー
『はい!』
『皆さん旅人ですよね?』
『良かったら案内します!』
みるく
「良い子ですね」
ローシャ
「良い子なんだよ」
チノ
「死亡フラグみたいです」
アオロビ
「やめて」
チノ
「すみません」
全然反省していない。
テレビ。
マリー。
フリーレン達を案内する。
宿。
市場。
畑。
村。
その間。
自然と世話を焼く。
Nike
「面倒見が良いですね」
アオロビ
「そういう子」
ルクレティア
「アオちゃん向きの役だったわね」
アオロビ
「だから選ばれたらしい」
ローシャ
「納得」
その時。
画面。
フリーレン。
マリーを見る。
少しだけ。
不思議そう。
フリーレン
『君』
マリー
『はい?』
フリーレン
『魔力あるね』
共有ルーム。
静か。
みるく
「あ」
ローシャ
「来た」
フリーレン
『結構ある』
マリー
『まりょく?』
フリーレン
『知らないの?』
マリー
『初めて聞きました』
フリーレン。
本気で驚く。
フェルンも驚く。
シュタルクだけ分かっていない。
シュタルク
『何の話?』
フェルン
『後で説明します』
ちょこみんと
「シュタルクだ」
アオロビ
「シュタルクだね」
テレビ。
夕焼け。
畑。
マリー。
村の話をする。
母エレナ。
村長。
村人達。
大好きな村。
そして。
小さく呟く。
マリー
『皆を守れたらいいんですけどね』
静止。
共有ルーム。
誰も喋らない。
ルクレティア
「ここも好き」
ローシャ
「伏線の置き方が綺麗」
アオロビ
頷く。
この一言が。
あのラストへ繋がる。
その時。
画面。
夜。
遠くの森。
赤い光。
そして。
土人形。
大量。
大量。
大量。
ちょこみんと
「あっ」
みるく
「来ますね」
フリーレン。
静かに立ち上がる。
フリーレン
『魔族だ』
共有ルーム。
静かになる。
穏やかな村の時間。
それは。
ここで終わる。
第三話「マリー」
テレビ。
夜。
エルム村。
静かだった村。
しかし。
森の奥。
赤い光。
土人形。
現れる。
村人達。
悲鳴。
ガルド
『またか……!』
シュタルク
『また?』
ガルド
『何年も前からだ』
『奴らは何度も来る』
フリーレン。
静か。
そして。
一言。
フリーレン
『魔族だね』
ちょこみんと
「来た」
ローシャ
「来たね」
アオロビ
「ここから空気変わるんだよね」
テレビ。
戦闘開始。
土人形。
大量。
しかし。
フリーレン。
フェルン。
一瞬。
ゾルトラーク。
土人形消滅。
さらに。
消滅。
消滅。
消滅。
ぴたぽん
「強いぽん〜」
みるく
「圧倒的ですね」
チノ
「人形が可哀想です」
アオロビ
「魔族側の感想やめて」
その頃。
マリー。
避難所。
村人達を誘導している。
子供。
老人。
皆を助ける。
Nike
「この辺好きです」
ローシャ
「分かる」
「ずっと誰かのために動いてる」
画面。
戦闘終了。
土人形壊滅。
しかし。
フリーレン。
森を見る。
フリーレン
『終わってない』
フェルン
『本体ですね』
フリーレン
頷く。
そして。
灰塔館。
映る。
巨大な屋敷。
みるく
「出ました」
チノ
「ボスの家です」
アオロビ
「言い方」
翌日。
調査。
灰塔館。
土人形。
異常な数。
フリーレン。
静かに分析。
フリーレン
『変だね』
フェルン
『何がですか?』
フリーレン
『多すぎる』
『どこかに魔力を増幅する装置がある』
ローシャ
「ここで全部繋がる」
ルクレティア
「綺麗な構成よね」
その夜。
マリー。
一人。
外。
空を見ている。
そこへ。
フリーレン。
現れる。
二人。
並ぶ。
静かな時間。
マリー
『皆さんは旅をしてるんですよね』
フリーレン
『うん』
マリー
『楽しそうです』
フリーレン
『そうでもないよ』
ちょこみんと
「フリーレンだ」
アオロビ
「フリーレンだね」
少し笑う。
そして。
フリーレン。
ポケットから木片を取り出す。
マリー
『これ何ですか?』
フリーレン
『お守り』
共有ルーム。
静か。
みるく
「あ」
Nike
「来ましたね」
ルクレティア
「来たわね」
フリーレン
『どうしようもなくなったら握りなよ』
マリー
『え?』
フリーレン
『役に立つかもしれない』
マリー
『かもしれないんですか?』
フリーレン
『たぶん』
ちょこみんと
「適当だ!」
ローシャ
「フリーレンだから」
アオロビ
「フリーレンだから」
全員納得。
しかし。
画面。
フリーレンの表情。
ほんの少し。
優しい。
ルクレティア
「ここなのよね」
アオロビ
頷く。
ルクレティア
「絶対に意味があるって分かるの」
テレビ。
翌朝。
出発。
フリーレン。
フェルン。
シュタルク。
灰塔館へ。
マリー。
見送る。
村人達も見送る。
しかし。
フリーレン達の姿が見えなくなった後。
マリー。
森を見る。
静か。
長い沈黙。
そして。
小さく呟く。
マリー
『助けてもらったから』
共有ルーム。
静か。
ローシャ
「来るな……」
みるく
「来ますね」
Nike
「来ますね」
マリー
『今度は私が……』
画面。
マリー。
走り出す。
村人達の制止。
母エレナの声。
聞かない。
ただ。
走る。
ちょこみんと
「行った!」
アオロビ
「行った」
ルクレティア
「無茶するわね」
アオロビ
「主人公だから」
ルクレティア
「主役じゃないのだけれど」
アオロビ
「実質主役」
ルクレティア
笑う。
テレビ。
灰塔館。
土人形。
無限。
無限。
無限。
フリーレン。
フェルン。
迎撃開始。
シュタルク。
地下へ。
そして。
例の装置。
魔力増幅装置。
発見。
シュタルク
『これか!』
斧。
振り下ろす。
轟音。
しかし。
無傷。
シュタルク
『はぁ!?』
共有ルーム。
ちょこみんと
「来た」
ローシャ
「来たね」
みるく
「来ました」
アオロビ。
少しだけ笑う。
いよいよ。
あのシーンが近付いていた。
第四話「Zoltraak」
テレビ。
灰塔館。
地下。
シュタルク。
魔力増幅装置の前。
シュタルク
『これか!』
斧。
振り下ろす。
轟音。
しかし。
無傷。
シュタルク
『はぁ!?』
もう一度。
振る。
無傷。
さらに。
振る。
無傷。
シュタルク
『なんなんだよこれ!』
その頃。
屋敷上層。
フリーレン。
フェルン。
土人形。
土人形。
土人形。
無限。
フェルン
『多すぎます』
フリーレン
『うん』
フェルン
『本当に破壊出来るんですか?』
フリーレン
『たぶん』
ちょこみんと
「たぶん!」
アオロビ
「フリーレンだから」
ルクレティア
「フリーレンだからね」
テレビ。
場面転換。
地下。
魔族ゼルハイト。
笑う。
ゼルハイト
『無駄だ』
シュタルク
『あ?』
ゼルハイト
『それは魔法でしか壊れない』
静か。
ゼルハイト
『この村に魔法使いはいない』
ゼルハイト
『魔法使い二人は上で戦闘中』
ゼルハイト
『壊せる者は存在しない』
シュタルク。
歯を食いしばる。
斧。
振る。
無傷。
振る。
無傷。
振る。
無傷。
シュタルク
『くそっ!!』
共有ルーム。
静か。
皆知っている。
ここからだ。
その頃。
森。
雪。
走る。
走る。
走る。
マリー。
転ぶ。
立つ。
走る。
エレナの声。
村人達の制止。
全部振り切る。
マリー
『間に合って……!』
みるく
「頑張れ……」
ぴたぽん
「がんばれぇ〜」
テレビ。
地下。
シュタルク。
土人形に囲まれる。
ゼルハイト。
気付く。
ゼルハイト
『来たか』
遠く。
足音。
マリー。
到着。
シュタルク
『マリー!?』
マリー
『はぁ……はぁ……』
シュタルク
『何で来た!?』
マリー
『助けに……』
シュタルク
『帰れ!!』
直後。
土人形。
大量出現。
シュタルク。
前へ出る。
マリーを庇う。
シュタルク
『下がってろ!』
戦闘開始。
斧。
振るう。
土人形。
粉砕。
粉砕。
粉砕。
しかし。
多い。
多すぎる。
マリー。
何も出来ない。
そして。
視線。
装置へ。
シュタルクが壊そうとしていた物。
静止。
数秒。
マリー
『……』
ポケット。
木片。
お守り。
フリーレン。
『どうしようもなくなったら握りなよ』
思い出す。
フリーレン。
『魔法はイメージだ』
『思った通りに放たれる』
共有ルーム。
誰も喋らない。
テレビ。
マリー。
お守りを握る。
震える。
怖い。
分からない。
でも。
助けたい。
シュタルク。
土人形に押され始める。
マリー。
前を見る。
装置。
壊す。
助ける。
終わらせる。
それだけを考える。
そして。
マリー
『だから今度は……』
静寂。
完全な静寂。
共有ルーム。
誰も呼吸していない。
マリー
『私が助ける!!』
その瞬間。
BGM『Zoltraak』
イントロ。
共有ルーム。
ちょこみんと
「あーーーーーーっ!!」
ローシャ
「来た……!」
みるく
「来ました……!」
ルクレティア
小さく笑う。
ルクレティア
「ここよ」
テレビ。
白い光。
集まる。
集まる。
集まる。
初めての魔法。
制御などない。
理論もない。
技術もない。
ただ。
助けたい。
その想いだけ。
そして。
サビ。
閃光。
世界が白く染まる。
轟音。
魔力増幅装置。
消滅。
地下。
消滅。
壁。
消滅。
天井。
吹き飛ぶ。
灰塔館。
半壊。
山が揺れる。
シュタルク
『はぁぁぁっ!?』
共有ルーム。
大爆笑。
アオロビ
「そこだよね」
ローシャ
「そこなのよ」
テレビ。
土人形。
停止。
崩壊。
土へ還る。
場面転換。
フリーレン。
フェルン。
戦闘中。
轟音。
振り向く。
フェルン
『今のは……』
フリーレン。
少しだけ笑う。
フリーレン
『あの子、やったね』
フェルン
『なんて危ない事をさせるんですか!』
フリーレン
『結果、土人形は土に還った』
フェルン
『そういう問題ではありません!』
ちょこみんと
「フェルンだ」
アオロビ
「フェルンだね」
テレビ。
フリーレン。
杖を構える。
フェルン。
魔力を展開。
BGM『Zoltraak』
サビ継続。
フリーレン
『終わらせに行くよ』
フェルン
『……はい』
二人。
駆け出す。
劇場版最大の盛り上がり。
その頃。
地下。
マリー。
へたり込む。
シュタルク。
駆け寄る。
シュタルク
『立てるか?』
マリー
『無理そうです……』
シュタルク
『だろうな』
そして。
周囲を見る。
静止。
半壊した屋敷。
消し飛んだ地下。
消滅した装置。
シュタルク
『……』
数秒。
シュタルク
『壊しすぎだろ』
マリー
『いっぱいいっぱいだったので……』
シュタルク
『だろうな』
マリー。
少し笑う。
そして。
意識を失う。
共有ルーム。
静か。
テレビ。
そのままクライマックスへ。
エンドロール直前。
フリーレン。
目覚めたマリーへ言う。
フリーレン
『魔法は使い方によっては夢みたいなことも出来る』
『勉強すればね』
静か。
フリーレン
『でも』
『魔法を捨てて今まで通り生きることも出来る』
『どちらを選んでもいい』
『自分の人生だ』
共有ルーム。
誰も喋らない。
アオロビ。
試写会の時と同じだった。
このラストが。
好きだった。
テレビ。
フリーレン達。
旅立つ。
雪の道。
残されるマリー。
答えは描かれない。
だから。
良かった。
エンドロールが流れ始める。
第五話「想いの連鎖」
テレビ。
エンドロール。
静かな音楽。
キャスト。
スタッフ。
流れていく。
共有ルーム。
誰も喋らない。
映画一本。
ちゃんと見終わった後の空気。
それがあった。
ちょこみんと。
ソファ。
ぐったり。
ちょこみんと
「良かったぁ……」
ローシャ
「何回も見てるでしょう」
ちょこみんと
「何回見ても良いんだよ」
みるく
「分かります」
Nike
「分かります」
ぴたぽん
「分かるぽん〜」
アオロビ
「意外と好評」
ルクレティア
「意外でも何でもないわ」
テレビ。
キャストロール。
流れる。
そして。
村娘 マリー
アオロビ
ちょこみんと
「あっ」
アオロビ
「ん?」
ちょこみんと
「いた」
アオロビ
「いるよ」
ちょこみんと
「マリーだ」
アオロビ
「マリーだね」
みるく
「マリーですね」
Nike
「マリーですね」
ぴたぽん
「マリーしゃん〜」
アオロビ
「急に確認するじゃん」
その時。
チノ。
静かに口を開く。
チノ
「良いキャラクターでした」
静か。
アオロビ
「珍しい」
チノ
「そうでしょうか」
アオロビ
「映画の感想言うの」
チノ
「良いキャラクターでした」
「強くなかった」
「賢くもなかった」
「特別な訓練も受けていなかった」
静か。
チノ
「でも」
「助けてもらったから助け返した」
「そこが良かったです」
共有ルーム。
少し静かになる。
ローシャ
「そうね」
ルクレティア
頷く。
ルクレティア
「結局そこなのよね」
みるく
「私もそこが好きです」
その時。
ちょこみんと。
立ち上がる。
ちょこみんと
「私はゾルトラーク!」
アオロビ
「知ってる」
ちょこみんと
「ドーン!!」
身振り手振り。
アオロビ
「うるさい」
ローシャ
笑う。
ローシャ
「好きそう」
ちょこみんと
「好き!」
即答。
ちょこみんと
「だって!」
「助けたい!」
「ドーン!!」
「解決!!」
アオロビ
「雑」
ルクレティア
「雑ね」
みるく
「雑です」
満場一致。
その時。
ルクレティア。
紅茶を置く。
ルクレティア
「私はフリーレンの最後の台詞かしら」
アオロビ
「どっちを選んでもいい?」
ルクレティア
「ええ」
ルクレティア
「才能があるから進めじゃない」
「捨ててもいい」
「選んでもいい」
「押し付けないのが好き」
アオロビ
少し頷く。
確かに。
フリーレンらしい。
Nike
「私はマリーですね」
アオロビ
「やっぱり?」
Nike
「はい」
「才能は最初からあった」
「でも環境が無かった」
「だから最後に選択肢を得る」
「そこが好きです」
みるく
「分かります」
ローシャ
「分かる」
その時。
ちょこみんと。
急に振り返る。
ちょこみんと
「あおちーは?」
静か。
全員。
アオロビを見る。
アオロビ
「私?」
ちょこみんと
「うん」
アオロビ。
少し考える。
テレビ。
既にエンドロールも終わっている。
黒画面。
でも。
思い出すのは。
ラストでも。
ゾルトラークでもない。
アオロビ
「お守りかな」
ローシャ
「ああ」
即理解。
アオロビ
「最初から助ける気だったと思うんだよね」
「フリーレン」
ルクレティア
少し笑う。
アオロビ
「でも」
「答えは渡さない」
「選ぶのは本人」
静か。
アオロビ
「だから好き」
ルクレティア
「アオちゃんらしいわ」
アオロビ
「否定出来ない」
その時。
ちょこみんと。
スマホを取り出す。
アオロビ
「何してるの」
ちょこみんと
「検索」
アオロビ
「嫌な予感しかしない」
数秒。
ちょこみんと
「あった」
アオロビ
「何が」
ちょこみんと
読み上げる。
『マリー再登場希望』
アオロビ
「やめろ」
ちょこみんと
『マリーが主人公でもう一本作って』
アオロビ
「やめろ」
ちょこみんと
『ゾルトラーク娘最高』
アオロビ
「そこだよ!!」
共有ルーム。
大爆笑。
アオロビ
「名前あるから!」
「マリーだから!」
ちょこみんと
「ゾルトラーク娘!」
クッション。
飛ぶ。
命中。
ちょこみんと
「ぎゃー!」
ローシャ。
笑う。
みるくも笑う。
Nikeも笑う。
ルクレティアも肩を震わせる。
ぴたぽん
「仲良しぽん」
こうして。
アオロビの初めての声優挑戦。
そして。
マリーの物語。
テレビ放送の日もまた。
賑やかに幕を閉じた。
132:『Rosha’s Garden Letter』
(全5話)
第1話
「レギュラー決定」
昼。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
アオロビ
「……で?」
ルクレティア
「だから」
テーブルの上に置かれた資料を指先で叩く。
ルクレティア
「ラジオよ」
ちょこみんと
「おぉー!」
ぴたぽん
「らじおぽん~!」
みるく
「またですか?」
ルクレティア
「ええ」
だいぶ前に放送された特別ラジオ企画。
深夜帯。
メンバー出演。
そして。
途中から発生した。
ローシャ泥酔事件。
アオロビ
「あれ事故だったよね」
ローシャ
「事故だったわね」
La lune bleue .
「事故だったにゃん」
ルクレティア
「放送事故だったわね」
全員納得。
しかし。
意外なことに。
その放送は大反響だった。
放送局。
スポンサー。
リスナー。
全方向から高評価。
結果。
昼帯レギュラー番組企画が立ち上がった。
ティラミス
「すごいですね」
Nike
「本当にレギュラーになるんですね」
ルクレティア
「なるわ」
資料を一枚めくる。
番組名。
大きく書かれていた。
『Rosha’s Garden Letter』
共有ルーム。
少し静かになる。
ちょこみんと
「おしゃれ!」
みるく
「素敵ですね」
La lune bleue .
「かっこいいにゃん」
ローシャ
「……」
見つめる。
もう一度見る。
資料。
番組名。
資料。
ローシャ
「私?」
ルクレティア
「ええ」
ローシャ
「なんで?」
ルクレティア
「放送局指定」
ローシャ
「なんで?」
ルクレティア
「私に聞かれても」
正論だった。
アオロビ
「でもまあ」
アオロビ
「以前までのかなり評判良かったし」
ローシャ
「泥酔してたけど」
アオロビ
「そこも含めて」
ローシャ
「含めないで」
即答だった。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ人気者!」
ローシャ
「違うと思う」
ティラミス
「そうでもない」
みるく
「私もそう思います」
Nike
「私もです」
ローシャ
「なんで皆そっちなの」
ルクレティア
小さく笑う。
ルクレティア
「これを見なさい」
もう一枚。
アンケート用紙。
ローシャ
「……」
読み始める。
『落ち着く声だった』
『昼に聞きたい』
『本の話が面白かった』
『音楽の話をもっと聞きたい』
『ローシャさんの感性が好き』
『レギュラー希望』
『毎週聞きたい』
静か。
ローシャ。
しばらく黙る。
アオロビ
「どう?」
ローシャ
「……」
少しだけ照れた顔。
ローシャ
「嬉しい」
本音だった。
共有ルーム。
少し柔らかい空気になる。
La lune bleue .
「にゃふふ」
ちょこみんと
「よかったねろしゃろしゃ!」
ローシャ
「でも」
資料を見る。
番組概要。
放送時間。
六十分。
毎週。
生放送。
静止。
ローシャ
「六十分?」
ルクレティア
「六十分」
ローシャ
「毎週?」
ルクレティア
「毎週」
ローシャ
「一人で?」
ルクレティア
「一人で」
ローシャ
「無理」
即答。
共有ルーム爆発。
アオロビ
「早い」
ティラミス
「結論が」
ローシャ
「だって一人よ?」
「一時間よ?」
「毎週よ?」
ルクレティア
「そうね」
ローシャ
「無理じゃない?」
ルクレティア
「無理ではないわ」
ローシャ
「根拠は?」
ルクレティア
「もう決まったから」
ローシャ
「横暴」
即答。
また笑いが起きる。
その時。
ルクレティア
「ちなみに」
ローシャ
「まだあるの?」
ルクレティア
「来週打ち合わせ」
ローシャ
「うん」
ルクレティア
「再来週初回放送」
ローシャ
「早くない?」
ルクレティア
「早いわね」
認めた。
ローシャ
「認めたわよね今」
ルクレティア
「認めたわ」
ローシャ
「……」
頭を抱える。
しかし。
資料を見つめる目は。
少しだけ楽しそうだった。
アオロビ
「やるんでしょ?」
ローシャ
「……」
少し考える。
そして。
小さく笑った。
ローシャ
「やるしかないじゃない」
ちょこみんと
「おぉー!」
ぴたぽん
「がんばれぇー!」
La lune bleue .
「ロマンさんなら大丈夫にゃん」
みるく
「楽しみにしてます」
Nike
「私もです」
ティラミス
「初回聞く」
アオロビ
「録音する」
ローシャ
「やめて」
ルクレティア
「私も録音するわ」
ローシャ
「やめて」
共有ルーム。
笑い声が響く。
こうして。
昼帯レギュラーラジオ。
『Rosha’s Garden Letter』
その第一歩が始まった。
第2話
「打ち合わせ」
数日後。
都内某所。
ラジオ局。
ローシャ
「……」
見上げる。
大きなビル。
何度か来た事はある。
しかし。
今日は違う。
ローシャ
「一人かぁ……」
ぽつり。
その時。
後ろから声。
ルクレティア
「今更逃げないで頂戴」
ローシャ
「来てたの?」
ルクレティア
「プロデューサーですもの」
当然だった。
ローシャ
「少し安心した」
ルクレティア
「そう」
少しだけ笑う。
二人。
受付へ向かう。
そして。
会議室。
中には既に数人。
ディレクター。
放送作家。
スポンサー担当。
全員立ち上がる。
「本日はよろしくお願いします」
ローシャ
「よろしくお願いします」
着席。
資料が配られる。
表紙。
大きく。
『Rosha’s Garden Letter』
ローシャ
「本当に始まるのね……」
ディレクター
「始まります」
即答。
逃げ道消滅。
ルクレティア
「諦めなさい」
ローシャ
「まだ何も言ってない」
ルクレティア
「顔に書いてあるわ」
図星だった。
会議開始。
ディレクター
「まず番組コンセプトですが」
資料を開く。
昼。
穏やか。
落ち着く時間。
手紙。
音楽。
雑談。
ローシャらしさ。
ディレクター
「リスナーと一緒に過ごす一時間を作りたいと思っています」
ローシャ
「なるほど」
それなら少し分かる。
放送作家
「ガチガチに進行する番組ではありません」
放送作家
「ローシャさんの自然な会話を中心にしたいです」
ローシャ
「自然な会話……」
一番難しい気がした。
ルクレティア
「普段通りで良いのよ」
ローシャ
「普段通りって何?」
ルクレティア
「私に聞かないで頂戴」
会議室。
少し笑いが起きる。
緊張が和らぐ。
その後。
コーナー決め。
一つ目。
『Garden Mail』
ふつおた。
二つ目。
『Garden News』
Gleam Garden近況報告。
三つ目。
『Blooming Music』
楽曲紹介。
四つ目。
『Letter Box』
お悩み相談。
ローシャ
「結構あるのね」
放送作家
「一時間ですから」
確かに。
さらに。
ディレクター
「一番期待しているのはここです」
資料を指差す。
ローシャ
「?」
そこには。
『メンバーエピソード』
と書かれていた。
ローシャ
「なるほど」
ディレクター
「皆さん仲が良いので」
ディレクター
「リスナーもその話を聞きたいんです」
ローシャ
「確かに」
アオロビ。
ちょこみんと。
ティラミス。
ルクレティア。
La lune bleue .
ぴたぽん。
みるく。
チノ。
Nike。
話題には困らない。
むしろ。
あり過ぎる。
ローシャ
「どこまで話して良いのかしら」
ルクレティア
「そこは考えなさい」
ローシャ
「一番難しいわね」
また笑い。
会議は進む。
そして。
最後。
ディレクター
「ちなみに」
ローシャ
「はい」
ディレクター
「初回は生放送です」
静止。
ローシャ
「はい?」
ディレクター
「生放送です」
ローシャ
「録音じゃなく?」
ディレクター
「生放送です」
ローシャ
「……」
頭を抱える。
ルクレティア
「頑張りなさい」
ローシャ
「他人事ね」
ルクレティア
「他人事ではないわ」
「でも面白そうだから」
ローシャ
「本音出た」
会議室。
再び笑い。
打ち合わせ終了。
帰り道。
資料を抱えながら歩く。
ローシャ
「どうしようかしら」
ルクレティア
「楽しめばいいのよ」
ローシャ
「簡単に言うわね」
ルクレティア
「アナタなら出来るわ」
少しだけ。
ローシャは笑った。
初回放送まで。
あと数日。
第3話
「Rosha’s Garden Letter」
放送当日。
昼。
ラジオ局。
スタジオ前。
ローシャ
「……」
静か。
台本。
お便り。
進行表。
全部確認した。
確認したけれど。
ローシャ
「緊張するわね」
小さく呟く。
その時。
ディレクター
「五分前です」
ローシャ
「はい」
いよいよだった。
スタジオへ入る。
マイク。
ヘッドホン。
赤いランプ。
深呼吸。
そして。
カウントダウン。
五。
四。
三。
二。
一。
点灯。
ON AIR
ローシャ
「こんにちは。」
少しだけ緊張した声。
でも。
落ち着いていた。
ローシャ
「Rosha’s Garden Letterのお時間です。」
ローシャ
「パーソナリティのローシャです。」
静かなBGM。
昼下がり。
優しい空気。
ローシャ
「初回放送という事で少し緊張しています。」
ローシャ
「でも、せっかくなので皆さんとゆっくりお話していこうと思います。」
ローシャ
「どうぞよろしくお願いします。」
スタッフ。
ガラス越し。
親指を立てる。
良いスタートだった。
ローシャ
「それでは最初のお便りです。」
紙をめくる。
ローシャ
「ラジオネーム、『鈴蘭のしおり』さん。」
ローシャ
「ローシャさん、レギュラー番組おめでとうございます。」
ローシャ
「ありがとうございます。」
ローシャ
「質問です。最近買って良かったものはありますか?」
少し考える。
ローシャ
「あまり派手なものじゃないんだけど。」
ローシャ
「読書用のブックスタンドを買ったのよね。」
ローシャ
「机に置いて本を開いたまま読めるやつ。」
ローシャ
「思った以上に便利だったわ。」
ローシャ
「両手が空くから紅茶も飲めるし。」
少し笑う。
ローシャ
「かなり気に入ってます。」
次のお便り。
ローシャ
「ラジオネーム、『昼寝日和』さん。」
ローシャ
「ローシャさんは曲作りの時に必ずやる事はありますか?」
ローシャ
「あるわね。」
即答。
ローシャ
「まず紅茶を淹れる。」
ローシャ
「それからノートを開く。」
ローシャ
「で、三十分くらい全然進まない。」
スタジオ。
笑い。
ローシャ
「ここ大事。」
ローシャ
「すぐに良いものなんて出てこないのよ。」
ローシャ
「だから私はまず考える時間を作る。」
ローシャ
「ぼーっとしてるように見えるかもしれないけど。」
ローシャ
「案外その時間が一番大事だったりするの。」
スタッフ。
頷く。
自然だった。
ローシャも。
少しずつ調子が出てきた。
ローシャ
「それではここで。」
ローシャ
「Garden Newsのお時間です。」
BGM変更。
少し明るくなる。
ローシャ
「Gleam Gardenの近況をお話していきます。」
紙をめくる。
ローシャ
「まずはSummer EP。」
ローシャ
「ありがたい事にたくさんの感想を頂いています。」
ローシャ
「本当にありがとうございます。」
少し間。
ローシャ
「特にちょこさん担当の。」
ローシャ
「Hydrangea Candy。」
ローシャ
「すごく反響が大きかったわね。」
ローシャ
「本人も喜んでた。」
笑う。
ローシャ
「喜びすぎて三日くらいずっと話してたけど。」
スタジオ。
笑い。
ローシャ
「本当に。」
ローシャ
「ずっと話してた。」
さらに。
ローシャ
「あとOne More Summer。」
ローシャ
「私も好きなのよね。」
ローシャ
「夏の終わりって感じがして。」
ローシャ
「帰り道に聞きたくなる曲。」
少し優しい声。
ローシャらしい。
そして。
次の紙。
ローシャ
「あとはニケさんの。」
ローシャ
「Salvia Night。」
ローシャ
「収録前に聴かせてもらったんだけど。」
ローシャ
「すごく良かった。」
ローシャ
「静かなんだけど芯がある。」
ローシャ
「ニケさんらしい曲だと思う。」
少し間。
ローシャ
「発売されたらぜひ聴いてみてください。」
スタッフ。
また親指を立てる。
ディレクター。
満足そう。
ローシャ自身も。
気付いていた。
もう。
最初の緊張は消えていた。
ローシャ
「さて。」
ローシャ
「次は皆さんから頂いたお便りをもう少し読んでいこうと思います。」
紙を手に取る。
そこには。
今日一番盛り上がりそうな質問が待っていた。
第4話
「Letter Box」
ON AIR
ローシャ
「それでは次のお便りです。」
紙をめくる。
ローシャ
「ラジオネーム、『白百合の栞』さん。」
ローシャ
「ローシャさんこんにちは。」
ローシャ
「こんにちは。」
ローシャ
「質問です。」
ローシャ
「Gleam Gardenで一番マイペースな人は誰ですか?」
静止。
数秒。
ローシャ
「難しい質問ね。」
本気で悩む。
ローシャ
「候補は何人かいるのだけれど。」
ローシャ
「まずみるさん。」
ローシャ
「本人のペースが絶対に崩れない。」
ローシャ
「でもマイペースというより安定してるのよね。」
ローシャ
「良い意味で。」
紙を見ながら考える。
ローシャ
「次にぽんさん。」
ローシャ
「ぽんさんは自由。」
ローシャ
「とても自由。」
ローシャ
「気付いたらいなくなってたりする。」
スタジオ。
笑い。
ローシャ
「でも最終的に戻ってくる。」
ローシャ
「不思議。」
少し考える。
そして。
ローシャ
「でも一番はちょこさんかもしれない。」
即答。
ローシャ
「思いついたら行動。」
ローシャ
「とりあえずやる。」
ローシャ
「そして後から考える。」
ローシャ
「すごいと思う。」
ローシャ
「私には出来ない。」
スタッフ。
爆笑。
ローシャ
「本当に。」
ローシャ
「ある意味才能だと思う。」
次のお便り。
ローシャ
「ラジオネーム、『夜香木』さん。」
ローシャ
「メンバーの皆さんを一言で表現すると?」
ローシャ
「一言?」
ローシャ
「難しいわね。」
少し笑う。
ローシャ
「じゃあやってみましょう。」
紙を置く。
ローシャ
「まずアオさん。」
少し考える。
ローシャ
「努力家。」
即答。
ローシャ
「本人は否定すると思うけど。」
ローシャ
「すごく努力してる。」
ローシャ
「見えないところで。」
ローシャ
「だから尊敬してる。」
スタジオ。
静かになる。
ローシャ
「ちょこさん。」
少し笑う。
ローシャ
「太陽。」
ローシャ
「いるだけで明るくなる。」
ローシャ
「すごい才能よね。」
ローシャ
「ティラさん。」
今度は即答。
ローシャ
「安心。」
ローシャ
「ティラさんがいると大体大丈夫。」
ローシャ
「何とかなる。」
ローシャ
「ルクさん。」
少し考える。
ローシャ
「保護者。」
即答。
スタジオ。
爆笑。
ローシャ
「これは皆そう思ってる。」
ローシャ
「絶対。」
ローシャ
「にゃんこさん。」
少しだけ優しい声。
ローシャ
「共感。」
ローシャ
「人の気持ちを察するのが本当に上手。」
ローシャ
「だから何度も助けられてる。」
ローシャ
「ぽんさん。」
ローシャ
「癒し。」
ローシャ
「説明不要。」
ローシャ
「みるさん。」
少し考える。
ローシャ
「賢者。」
ローシャ
「知識量がすごい。」
ローシャ
「たまに何でも知ってるんじゃないかと思う。」
ローシャ
「チノさん。」
少し笑う。
ローシャ
「最終兵器。」
スタジオ。
大爆笑。
ローシャ
「普段は可愛いのよ?」
ローシャ
「でもいざとなると強い。」
ローシャ
「すごく頼りになる。」
ローシャ
「最後にニケさん。」
少し間。
ローシャ
「静かな情熱。」
ローシャ
「これかしら。」
ローシャ
「普段は穏やか。」
ローシャ
「でも芯がすごく強い。」
ローシャ
「見習いたい部分がたくさんある。」
紙を置く。
ローシャ
「こんな感じかな。」
少し笑う。
ローシャ
「皆それぞれ違うから面白いのよね。」
BGM。
少し変わる。
ディレクターが合図を出す。
残り時間。
あと十分。
ローシャ
「さて。」
ローシャ
「最後のお便りです。」
紙を手に取る。
ローシャ
「ラジオネーム、『カサブランカ』さん。」
ローシャ
「ローシャさんにとってGleam Gardenとは何ですか?」
静止。
スタジオ。
静かになる。
ローシャも。
すぐには答えない。
少しだけ考える。
そして。
小さく笑った。
ローシャ
「難しい質問ね。」
ローシャ
「でも。」
ローシャ
「居場所。」
優しい声。
ローシャ
「まず最初に思い浮かんだのはそれだった。」
ローシャ
「帰ってこられる場所。」
ローシャ
「安心出来る場所。」
ローシャ
「大切な人達がいる場所。」
少し間。
ローシャ
「だから。」
ローシャ
「これからも大事にしていきたいと思ってる。」
静かなBGM。
スタッフも誰も喋らない。
ローシャ
「……少し真面目になりすぎたかしら。」
少し照れ笑い。
スタジオ。
笑いが戻る。
ローシャ
「それでは。」
ローシャ
「そろそろお別れの時間です。」
ローシャ
「今日は初回放送でしたが。」
ローシャ
「皆さんのお便りのおかげで楽しくお話出来ました。」
ローシャ
「本当にありがとうございました。」
そして。
いつもの優しい声で。
ローシャ
「また来週。」
ローシャ
「Rosha’s Garden Letter。」
ローシャ
「パーソナリティはローシャでした。」
ローシャ
「それではまた。」
ON AIRランプ。
消灯。
放送終了。
スタジオ。
静寂。
数秒後。
スタッフ達の拍手が響いた。
第5話
「共有ルーム」
同時刻。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
テレビではなく。
スピーカー。
そこから。
ローシャの声が流れていた。
『だから。』
『これからも大事にしていきたいと思ってる。』
静か。
共有ルームも静かだった。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ真面目モードだ……」
アオロビ
「珍しくじゃない?」
ティラミス
「結構いつもだと思う」
アオロビ
「それもそうか」
みるく
頷く。
みるく
「ローシャさんらしいですね」
La lune bleue .
「ロマンさん頑張ってるにゃん」
ルクレティア
小さく微笑む。
ルクレティア
「思ったより落ち着いてるわね」
アオロビ
「保護者みたい」
ルクレティア
「保護者だから」
即答。
共有ルーム。
笑い。
その時。
スピーカー。
『……少し真面目になりすぎたかしら。』
ちょこみんと
「なってた!」
アオロビ
「本人も分かってた」
ティラミス
少し笑う。
ティラミス
「そこもローシャさんらしい」
スピーカー。
『また来週。』
『Rosha’s Garden Letter。』
『パーソナリティはローシャでした。』
『それではまた。』
放送終了。
静かになる。
数秒。
ちょこみんと
「終わったー!」
ぴたぽん
「おわったぽーん!」
Nike
「良かったですね」
みるく
「安心して聞けました」
アオロビ
「普通に面白かった」
ルクレティア
「そうね」
La lune bleue .
「ロマンさん緊張してたにゃん」
チノ
「最初の三分くらいですね」
全員。
チノを見る。
チノ
「声で分かりました」
アオロビ
「分析してる」
その時。
共有ルームの扉。
開く。
ローシャ
「ただいま」
全員。
一斉に振り向く。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃー!」
ローシャ
「うわっ」
次の瞬間。
拍手。
共有ルーム中に響く。
ローシャ
「な、なによ」
アオロビ
「お疲れ様」
ティラミス
「良かった」
みるく
「面白かったです」
Nike
「初回とは思えませんでした」
ぴたぽん
「がんばった!」
La lune bleue .
「さすがロマンさんにゃん」
チノ
「次回も期待しています」
ローシャ
「やめて」
即答。
しかし。
少しだけ嬉しそうだった。
ルクレティア
「どうだった?」
ローシャ
「疲れた」
即答。
共有ルーム。
爆笑。
ローシャ
「一時間喋り続けるって大変なのね」
アオロビ
「だろうね」
ローシャ
「途中で喉が渇いたわ」
ティラミス
「聞いてる側は分からなかった」
ローシャ
「本当?」
ティラミス
「うん」
ローシャ
少し安心した顔。
その時。
ちょこみんと
「ねぇねぇ!」
ローシャ
「何?」
ちょこみんと
「私の話いっぱいしてた!」
ローシャ
「したわね」
ちょこみんと
「太陽!」
ローシャ
「太陽」
ちょこみんと
「へへへ」
満足そうだった。
アオロビ
「単純」
ちょこみんと
「褒められた!」
アオロビ
「褒めてない」
その横。
La lune bleue .
「にゃんこさん。」
ローシャ
「ん?」
La lune bleue .
「共感。」
少し照れたように笑う。
La lune bleue .
「嬉しかったにゃん」
ローシャ
少し驚く。
そして。
優しく笑った。
ローシャ
「本当の事だもの」
共有ルーム。
少しだけ穏やかな空気。
その時。
ルクレティア。
スマホを見る。
そして。
静かに言った。
ルクレティア
「もう来てるわね」
ローシャ
「何が?」
ルクレティア
「感想。」
静止。
ローシャ
「もう?」
ルクレティア
「もう。」
画面を見せる。
『落ち着いて聞けた』
『昼にぴったり』
『来週も聞きたい』
『ローシャさんの声が好き』
『レギュラー化して正解』
『一時間あっという間だった』
共有ルーム。
静か。
ローシャ。
しばらく画面を見つめる。
そして。
小さく息を吐いた。
ローシャ
「……良かった」
本音だった。
ルクレティア
「そうね」
アオロビ
「おめでとう」
ティラミス
「おめでとう」
みるく
「おめでとうございます」
Nike
「おめでとうございます」
La lune bleue .
「おめでとうにゃん」
ぴたぽん
「おめでとうぽんー!」
ちょこみんと
「来週も聞くー!」
ローシャ
笑う。
今日一番自然な笑顔だった。
こうして。
『Rosha’s Garden Letter』
記念すべき第一回放送は。
大成功のまま幕を閉じた。
133:梅雨の過ごし方
朝。
雨。
しとしと。
しとしと。
窓を叩く雨音。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
窓際。
小さな影。
アンジェリカ
「……」
じーっ。
窓の外を見る。
雨。
ずっと雨。
アンジェリカ
「ままー」
La lune bleue .
「どうしたにゃ?」
アンジェリカ
「なんでおそらからみずがおちてくるの?」
La lune bleue .
「雨だからにゃん」
アンジェリカ
「なんであめふるの?」
La lune bleue .
「うーん……」
La lune bleue .
考える。
難しい。
アンジェリカ
「なんでー?」
La lune bleue .
「おそらのおそうじにゃん」
アンジェリカ
「おそうじ!」
目が輝く。
La lune bleue .
「たぶんにゃ」
適当だった。
その時。
後ろ。
みるく
「違いますよ」
La lune bleue .
「みるさんたすけて」
みるく
苦笑。
みるく
「雲の中の水が――」
アンジェリカ
「くも!」
みるく
「うん」
アンジェリカ
「くもさんおおきい?」
みるく
「大きいですね」
アンジェリカ
「どれくらい?」
みるく
「とても大きいです」
アンジェリカ
「すごい!」
納得した。
してないかもしれない。
でも嬉しそうだった。
しばらくして。
また窓際。
アンジェリカ
「……」
雨。
しとしと。
しとしと。
アンジェリカ
「つまんない」
ぽつり。
La lune bleue .
聞こえた。
La lune bleue .
「にゃ?」
アンジェリカ
「おそといけない」
La lune bleue .
「あー」
確かに。
今日は雨。
お散歩も出来ない。
アンジェリカ
しょんぼり。
La lune bleue .
考える。
そして。
ふと思いついた。
La lune bleue .
「アンジェリカ」
アンジェリカ
「なぁに?」
La lune bleue .
「いいものみせるにゃん」
数分後。
共有ルーム。
窓の前。
La lune bleue .
が持ってきたのは。
透明なガラスのコップ。
アンジェリカ
「?」
コップを置く。
窓辺。
雨が当たる場所。
ぽつ。
ぽつ。
ぽつ。
雨粒。
アンジェリカ
「あっ」
ぽちゃん。
コップに落ちる。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
アンジェリカ
「おとした!」
La lune bleue .
「雨さんがにゃん」
アンジェリカ
目を丸くする。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
雨粒が増える。
アンジェリカ
「いっぱい!」
La lune bleue .
「いっぱいにゃん」
アンジェリカ
嬉しそう。
ずっと見ている。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
雨音。
静かな時間。
アンジェリカ
「きれい」
La lune bleue .
「そうにゃん」
アンジェリカ
「つまんなくない!」
La lune bleue .
少し笑った。
梅雨の日。
外へ行けなくても。
楽しいことはある。
アンジェリカはまた一つ。
新しいことを知った。
おしまい。
134:担当楽器、最終決定(全3話)
第1話
「担当楽器決定」
昼。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
アオロビ
「……へぇ」
一枚の資料。
眺める。
そして。
もう一度見る。
アオロビ
「ついに決まったんだ」
ルクレティア
「ええ」
共有ルーム。
全員集合。
今日の議題。
Gleam Garden正式担当楽器。
長らく曖昧だった部分。
それが正式決定した。
ちょこみんと
「おぉー!」
ぴたぽん
「きまったぽん!」
みるく
「意外と長かったですね」
ティラミス
「そうだね」
ローシャ
「ここまで来ると感慨深いわね」
ルクレティア
資料を開く。
ルクレティア
「改めて確認するわ」
アオロビ
ボーカル
シンセサイザー
ちょこみんと
ギター全般
ティラミス
キーボード
主にピアノ
ローシャ
ベース
ルクレティア
ドラム
ここまでは昔から変わらない。
問題はその先。
ルクレティア
「ニケちゃん」
Nike
「はい」
ルクレティア
「ギター全般」
ちょこみんと
「ニケちゃん仲間ー!」
Nike
少し笑う。
Nike
「よろしくお願いします」
ちょこみんと
「ツインギター!」
アオロビ
「前からやってる気もするけど」
ローシャ
「確かに」
ティラミス
「今更感はあるね」
Nike
「それは私も思います」
共有ルーム。
笑い。
ルクレティア
「そして」
一枚めくる。
ルクレティア
「ちーちゃん」
チノ
「はい」
ルクレティア
「マルチパーカッション」
静止。
数秒。
全員。
納得。
チノ
「なぜですか」
アオロビ
「いや」
ローシャ
「むしろそれ以外ある?」
ティラミス
「自然すぎて」
みるく
「違和感が無いですね」
チノ
「そんなにですか」
ちょこみんと
「そんなに!」
即答。
La lune bleue .
「そんなににゃん」
ぴたぽん
「そんなにぽん」
Nike
「そんなにですね」
チノ
「全会一致……」
少しだけショックだった。
アオロビ
「だって何でも出来そうだし」
ローシャ
「実際出来るし」
チノ
「否定出来ません」
ルクレティア
「だからよ」
チノ
納得。
してしまった。
共有ルーム。
笑い。
その時。
アオロビ
資料を見る。
アオロビ
「あれ?」
ルクレティア
「どうしたの?」
アオロビ
「これ」
指差す。
La lune bleue .
ハープ
打楽器全般
アオロビ
「増えてる」
La lune bleue .
「増えたにゃん」
ローシャ
「そういえばそうね」
ティラミス
「ハープだけじゃなくなったんだ」
La lune bleue .
頷く。
La lune bleue .
「カスタネットもあるにゃん」
La lune bleue .
「タンバリンもあるにゃん」
ちょこみんと
「ネコちゃんタンバリン似合う!」
La lune bleue .
「ほんとかにゃん?」
ちょこみんと
「絶対似合う!」
La lune bleue .
嬉しそう。
その横。
ぴたぽん
「ウチもふえたぽん!」
アオロビ
「本当だ」
資料。
ぴたぽん
ヴァイオリン
弦楽器全般
ティラミス
「チェロも出来るしね」
ぴたぽん
「うにゅ!」
ぴたぽん
「弦楽器ぽん!」
さらに。
みるく
「私もですね」
フルート
吹奏楽器全般
ローシャ
「みるさんも広がったわね」
みるく
「そうですね」
みるく
「必要なら大体担当出来ます」
アオロビ
「便利すぎる」
みるく
苦笑。
こうして見ると。
最初の頃とは随分変わった。
アオロビ
「なんかさ」
全員。
アオロビを見る。
アオロビ
「すごい編成になったよね」
ローシャ
「それは思う」
ティラミス
「普通のバンドじゃないね」
ルクレティア
「確かに」
La lune bleue .
「にゃん?」
アオロビ
笑う。
アオロビ
「だって」
「オーケストラ出来そうだもん」
共有ルーム。
一瞬静かになる。
そして。
全員。
納得した。
第2話
「なぜその担当なのか」
共有ルーム。
アオロビ
「オーケストラ出来そうだもん」
その一言。
全員。
妙に納得してしまった。
ローシャ
「確かに」
ティラミス
「普通のバンド編成ではないね」
ルクレティア
「改めて見るとそうね」
資料。
十人分。
担当楽器一覧。
かなり賑やかだった。
ちょこみんと
「でもニケちゃんギターはわかる!」
Nike
「そうですか?」
ちょこみんと
「わかる!」
即答。
アオロビ
「私もわかる」
ローシャ
「わかるわね」
ティラミス
「最初から違和感無かった」
Nike
苦笑。
Nike
「ありがとうございます」
ルクレティア
「実際どうだったの?」
Nike
「どうとは?」
ルクレティア
「ギター担当になった理由」
少し考える。
Nike
「一番はちょこさんですね」
ちょこみんと
「えへへ」
まだ何も褒められていない。
Nike
「最初からギターがいたので」
Nike
「私もギターに入るのが自然かなと」
アオロビ
「なるほど」
Nike
「同じギターでも役割は分けられますし」
ティラミス
頷く。
ティラミス
「エレキとアコギとか」
Nike
「そうですね」
Nike
「ツインギターも出来ますし」
ちょこみんと
「ツインギター!」
今日二回目だった。
ローシャ
「好きね」
ちょこみんと
「好き!」
即答。
共有ルーム。
笑い。
その後。
話題は当然。
もう一人へ。
アオロビ
「チノさん」
チノ
「はい」
アオロビ
「なんでマルチパーカッションなんですか」
チノ
「私も知りたいです」
全員。
静止。
ローシャ
「いや」
ティラミス
「自分で言う?」
チノ
「気になります」
ルクレティア
ため息。
ルクレティア
「何でも出来るからよ」
チノ
「そんな事は」
全員。
チノを見る。
チノ
「……ありますね」
否定出来なかった。
みるく
「割と器用ですよね」
チノ
「器用です」
即答。
アオロビ
「そこは認めるんだ」
チノ
「事実なので」
ローシャ
「納得しかないわ」
ルクレティア
「必要な時に必要な楽器を持たせられる」
ルクレティア
「だからマルチパーカッション」
チノ
「合理的です」
ようやく納得した。
その時。
ぴたぽん
「ウチもふえたぽん!」
話題が戻る。
ぴたぽん。
弦楽器全般。
アオロビ
「実際どこまで出来るの?」
ぴたぽん
「チェロ!」
ぴたぽん
「ヴィオラ!」
ぴたぽん
「コントラバス!」
静止。
アオロビ
「多い」
ローシャ
「思ったより多い」
ティラミス
「本当に弦楽器全般だね」
ぴたぽん
得意げ。
ぴたぽん
「うにゅ」
さらに。
みるく。
吹奏楽器全般。
アオロビ
「みるさんは?」
みるく
「フルートが主ですけど」
みるく
「トランペット」
みるく
「クラリネット」
みるく
「サックス辺りなら」
アオロビ
「辺りなら?」
みるく
「担当出来ます」
共有ルーム。
静か。
ローシャ
「みるさんも大概ね」
ティラミス
「賢者だから」
みるく
「関係あります?」
少し笑う。
そして。
最後。
La lune bleue .
アオロビ
「ネコさんは?」
La lune bleue .
「にゃ?」
アオロビ
「打楽器全般」
La lune bleue .
「あー」
La lune bleue .
「増えたにゃん」
ローシャ
「実際どこまで出来るの?」
La lune bleue .
少し考える。
La lune bleue .
「タンバリン」
La lune bleue .
「カスタネット」
La lune bleue .
「鈴」
La lune bleue .
「トライアングル」
La lune bleue .
「マリンバもちょっとにゃん」
静止。
アオロビ
「マリンバ?」
La lune bleue .
「にゃん」
ティラミス
「思ったより凄い」
ローシャ
「本当にオーケストラね」
ルクレティア
頷く。
ルクレティア
「むしろ」
全員。
ルクレティアを見る。
ルクレティア
「今までよくまとまってたわね」
その一言。
全員。
少し考える。
そして。
ちょこみんと
「たしかに!」
共有ルーム。
大爆笑だった。
第3話
「理想のライブ編成」
共有ルーム。
資料。
担当楽器一覧。
まだ机の上に置かれていた。
アオロビ
「改めて見るとさ」
ローシャ
「うん」
アオロビ
「本当に豪華になったね」
ティラミス
「最初の頃とは別物だね」
ルクレティア
頷く。
ルクレティア
「人数も増えたもの」
ちょこみんと
「十人!」
ぴたぽん
「じゅうにんぽん!」
みるく
「大所帯ですね」
Nike
「確かに」
ローシャ
資料を眺める。
ローシャ
「普通のバンドなら」
ローシャ
「ギター」
ローシャ
「ベース」
ローシャ
「ドラム」
ローシャ
「キーボード」
ローシャ
「ボーカル」
ローシャ
「大体この辺で終わるのよね」
アオロビ
「だよね」
ティラミス
「そこに」
ティラミス
「ハープ」
ティラミス
「ヴァイオリン」
ティラミス
「フルート」
ティラミス
「マルチパーカッション」
ティラミス
「追加されてるから」
ローシャ
「もう別物」
共有ルーム。
笑い。
その時。
ちょこみんと
「ねぇねぇ!」
アオロビ
「どうしたの」
ちょこみんと
「一番豪華な編成やろうよ!」
全員。
嫌な予感。
ちょこみんと
「妄想!」
アオロビ
「始まった」
ローシャ
「始まったわね」
ルクレティア
「止まらないわよ」
全員納得。
ちょこみんと
立ち上がる。
ちょこみんと
「まず!」
ちょこみんと
「私とニケちゃん!」
Nike
「はい」
ちょこみんと
「ツインギター!」
三回目だった。
アオロビ
「好きだね本当に」
ちょこみんと
「好き!」
即答。
Nike
少し笑う。
Nike
「確かに楽しそうですね」
ちょこみんと
「やったー!」
次。
ティラミス
「私はピアノかな」
アオロビ
「私はシンセ」
ティラミス
「役割分担だね」
アオロビ
頷く。
さらに。
ローシャ
「ベースは私」
ルクレティア
「ドラムは私」
ここは固定。
その時。
ぴたぽん
手を挙げる。
ぴたぽん
「ウチもいるぽん!」
アオロビ
「もちろん」
ぴたぽん
「ヴァイオリンぽん!」
みるく
「私もですね」
「フルートかな」
La lune bleue .
「にゃんころはハープにゃ」
チノ
「私は何をしましょう」
静止。
全員。
考える。
ちょこみんと
「全部!」
チノ
「雑です」
共有ルーム爆笑。
ルクレティア
「でも間違ってはいないわね」
チノ
「否定出来ません」
その後。
少し真面目な話になる。
アオロビ
「でもさ」
アオロビ
「実際こういう編成だから出来る曲も増えたよね」
ローシャ
頷く。
ローシャ
「それはある」
ティラミス
「Gleam of Gladiolusとか」
全員。
納得。
ぴたぽん
「ヴァイオリンいっぱいぽん」
みるく
「フルートも入ってますね」
La lune bleue .
「ハープもいるにゃん」
ローシャ
「普通のバンドじゃ再現出来ないものね」
アオロビ
「確かに」
さらに。
ローシャ
「Casablanca Snowもそう」
ティラミス
「静かな編成が映える」
みるく
「弦楽器も綺麗ですしね」
ぴたぽん
得意げ。
その時。
Nike
ふと呟く。
Nike
「こうして見ると」
全員。
Nikeを見る。
Nike
「皆それぞれ役割がありますね」
静か。
少しだけ。
共有ルームの空気が柔らかくなる。
アオロビ
「そうだね」
ローシャ
「誰か一人じゃ成立しない」
ティラミス
「全員いるから完成する」
ルクレティア
頷く。
La lune bleue .
「すてきにゃん」
ぴたぽん
「すてきぽん!」
ちょこみんと
「いい話!」
アオロビ
「台無し」
即答。
共有ルーム。
大爆笑。
こうして。
担当楽器の正式決定をきっかけに。
改めて。
Gleam Gardenというバンドの形を確認したメンバー達だった。
135:深夜のグルメ 5th season
~横浜中華街 五目あんかけ炒飯~
横浜。
ライブリハーサル。
機材調整。
打ち合わせ。
気付けば。
時計。
21:36。
スタッフ。
「本日はありがとうございました!」
アオロビ。
「お疲れ様でした」
機材ケースを閉じる。
今日一日。
歩いた。
歌った。
考えた。
昼食は軽め。
夕食を食べる時間は。
結局なかった。
外へ出る。
夜風。
少し湿った空気。
ライブハウスの灯りを背に。
ゆっくり歩き始める。
行き先は決めていない。
いや。
身体はもう決めていた。
横浜中華街。
歩く。
赤い提灯。
石畳。
夜になっても。
まだ活気がある。
肉まん。
小籠包。
胡麻油。
八角。
炒め物。
香りだけで。
腹が減る。
アオロビ。
立ち止まる。
「腹が……減った」
静かな夜道。
その一言だけが。
妙に響いた。
「良くない。」
「この状態で中華街は危険だ。」
右を見ても。
左を見ても。
飯。
飯。
飯。
「誘惑しかないじゃないか」
思わず笑う。
歩く。
少しだけ。
大通りを外れる。
人通りが減る。
その代わり。
聞こえる。
ガコンッ。
シャッ。
ジュワァァァ……
中華鍋。
炎。
鍋を返す音。
「あぁ……」
「あの音は反則だ」
腹が減っている時。
料理の音は。
想像力まで刺激してくる。
その時。
一軒の店。
決して派手ではない。
観光客向けというより。
地元客が通うような店。
店先。
料理写真。
そこで。
足が止まる。
五目あんかけ炒飯。
海老。
イカ。
豚肉。
青梗菜。
椎茸。
うずら。
黄金色の餡。
湯気。
「……決まりだ」
もう迷わない。
店へ入る。
カウンター席。
先客は数人。
誰も大きな声では喋らない。
テレビも無い。
聞こえるのは。
厨房の音だけ。
落ち着く。
店員。
「ご注文は?」
アオロビ。
「五目あんかけ炒飯をお願いします」
水を飲む。
冷たい。
胃が目を覚ます。
厨房。
再び。
ジュワァァァ……
ゴォッ。
炎が上がる。
炒飯を返す。
餡を仕上げる。
鍋が鳴る。
「待ってる時間も」
「立派な調味料なんだよな」
数分後。
「お待たせしました」
目の前に。
湯気を立てる一皿。
「おぉ……」
これは。
美しい。
黄金色の餡。
照り。
艶。
海老が四尾。
青梗菜。
椎茸。
イカ。
豚肉。
彩りまで計算されている。
まずは。
レンゲ。
餡だけ。
一口。
熱い。
優しい。
鶏ガラ。
野菜。
旨味。
「なるほど」
「塩気で押してこない」
「出汁で食べさせる餡か」
次。
海老。
ぷりっ。
弾ける。
「火の入り方がいい」
固くない。
柔らか過ぎない。
絶妙だ。
イカ。
噛む。
甘い。
餡の旨味が。
ちゃんと乗ってくる。
豚肉。
存在感。
脂がしつこくない。
青梗菜。
シャキッ。
良い休憩になる。
椎茸。
香りが立つ。
そして。
炒飯。
ここだ。
餡をたっぷり絡める。
一口。
数秒。
静止。
「そういうことか」
炒飯だけなら。
香ばしい。
餡だけなら。
優しい。
でも。
合わせると。
全く別の料理になる。
パラパラだった米。
餡をまとった瞬間。
ほどよく。
しっとり変わる。
「反則だな」
海老。
炒飯。
イカ。
炒飯。
青梗菜。
炒飯。
止まらない。
完全に。
永久機関だった。
途中。
卓上を見る。
酢。
胡椒。
ラー油。
少し考える。
「いや」
「今日はこのままでいい」
味を変えるには。
完成し過ぎていた。
気付けば。
皿。
空。
レンゲを置く。
「ごちそうさまでした」
静かな満足感。
店を出る。
時計。
22:17。
中華街。
少しだけ。
人が減っていた。
提灯が揺れる。
夜風。
心地いい。
スマホ。
震える。
ルクレティア。
『ちゃんと食べた?』
アオロビ。
少し笑う。
『食べた』
『今日は中華』
送信。
すぐ返信。
『美味しかった?』
アオロビ。
立ち止まり。
夜の中華街を振り返る。
赤い提灯。
石畳。
まだ少し残る。
胡麻油の香り。
そして。
返信。
『また来たい』
送信。
ポケットへスマホをしまう。
「悪くない」
夜の横浜。
腹も。
心も。
静かに満たされたまま。
アオロビは。
駅へ向かって歩き出した。
136:Rosha’s Garden Letter
第二回放送(全5話)
第1話「いつもの昼が、始まる」
昼。
都内某所。
ラジオ局。
放送開始。
三十分前。
局内。
スタッフ達が慌ただしく動く。
ディレクター。
「本日もよろしくお願いします!」
ローシャ。
「よろしくお願いします」
軽く一礼。
もう。
第2回。
前回ほどの緊張はない。
それでも。
生放送独特の空気は。
やっぱり少しだけ緊張する。
控室。
机の上。
一冊のファイル。
ディレクター。
「こちらです」
ローシャ。
受け取る。
思わず。
目を丸くした。
「……重い」
ディレクター。
笑う。
「全部お便りです」
ローシャ。
「全部……?」
ページをめくる。
一枚。
また一枚。
さらに一枚。
全部。
リスナーから届いたメール。
ローシャ。
少し驚く。
「こんなに届いたんですね」
ディレクター。
「初回放送の反響が凄かったんです」
「皆さん、第2回を楽しみにしてくださっていました」
ローシャ。
小さく笑う。
「嬉しいですね」
スタッフ。
「今日は紹介しきれないくらい届いています」
ローシャ。
「全部読みたいです」
ディレクター。
「そう言うと思いました」
スタッフ達。
少し笑う。
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
テレビではなく。
Bluetoothスピーカー。
そこから。
昼のラジオ番組が流れる準備。
ちょこみんと。
「あと五分!」
アオロビ。
コーヒーを淹れる。
「今日はリアルタイムで聴けそう」
ティラミス。
ソファへ座る。
「前回より慣れてるかな」
ルクレティア。
紅茶を一口。
「きっと大丈夫よ」
La lune bleue .
「今日はどんなお便りかにゃん」
ぴたぽん。
「たのしみぽん!」
みるく。
「メール沢山来てるといいですね」
チノ。
「第1回の反響を考えれば期待出来ます」
Nike。
「楽しみですね」
自然と。
全員が集まる。
誰かが呼んだ訳ではない。
昼になれば。
ローシャの声を聴く。
それが。
少しずつ。
Gleam Gardenの日常になり始めていた。
一方。
ラジオ局。
生放送ブース。
ガラス越し。
ディレクター。
親指を立てる。
ローシャ。
深呼吸。
ヘッドホンを装着。
マイク。
赤いランプ。
点灯。
スタッフ。
カウント。
三。
二。
一。
――ON AIR。
ローシャ。
優しく微笑む。
「こんにちは。」
「『Rosha’s Garden Letter』、パーソナリティのローシャです。」
「今週も、この時間をご一緒出来ることを嬉しく思います。」
「どうぞ最後まで、お付き合いください。」
昼のラジオ。
『Rosha’s Garden Letter』
第2回放送。
静かに。
幕を開けた。
第2話「Garden Letter」
♪ オープニングジングル ♪
ローシャ。
「改めまして。」
「『Rosha’s Garden Letter』、パーソナリティのローシャです。」
「第2回の放送も、どうぞよろしくお願いします。」
「今日は本当にたくさんのお便りをいただきました。」
「全部紹介したいくらいなんですけど……。」
少し笑う。
「時間の都合もあるので、その中から何通か読ませていただきます。」
「それでは最初のお便りです。」
紙を一枚めくる。
「ラジオネーム、『庭園のピアニスト』さんからいただきました。」
『ローシャさん、こんにちは。』
『第1回放送、とても癒やされました。』
『お昼休みに聴いていたのですが、午後も頑張ろうという気持ちになれました。』
『これからも毎週楽しみにしています。』
ローシャ。
少し照れながら。
「ありがとうございます。」
「そう言っていただけると、本当に嬉しいです。」
「この番組は、お昼のひとときを少しでも穏やかに過ごしていただけたらと思って始まりました。」
「これからも、ゆっくりお話ししていけたらと思います。」
一枚。
次のお便り。
「ラジオネーム、『ベース初心者』さん。」
『ローシャさんがベースを始めたきっかけを教えてください。』
ローシャ。
少し考える。
「きっかけ……ですか。」
「最初は、ベースという楽器をよく知っていたわけではありませんでした。」
「でも。」
「演奏を聴いているうちに。」
「曲全体を支えている存在なんだなって思ったんです。」
「前に出過ぎない。」
「でも、いないと曲が完成しない。」
「そういうところに惹かれました。」
「今でも、その気持ちは変わっていません。」
共有ルーム。
アオロビ。
「ローシャさんらしい答えだね。」
ティラミス。
「うん。」
ルクレティア。
静かに頷く。
ラジオ局。
ローシャ。
三通目。
「ラジオネーム、『昼休みの会社員』さん。」
『メンバーの皆さんと過ごしていて、一番落ち着く時間はどんな時ですか?』
ローシャ。
少し笑う。
「そうですね。」
「特別なことじゃないんです。」
「共有ルームで、それぞれ好きなことをしている時間。」
「誰かが本を読んでいて。」
「誰かが楽器の練習をしていて。」
「誰かがお茶を淹れていて。」
「そんな何気ない時間が、一番落ち着きます。」
「静かなんですけど。」
「ちゃんと誰かがいる。」
「そういう空気が好きなんです。」
共有ルーム。
誰も喋らない。
ラジオから流れる。
ローシャの声だけが響く。
ちょこみんと。
小さく笑う。
「今もそうだね。」
みるく。
「本当ですね。」
La lune bleue .
「落ち着くにゃん。」
ローシャ。
次のお便りへ。
「まだまだ紹介したいお便りがたくさんあります。」
「この後も、皆さんからのお便りをご紹介していきます。」
「引き続き、『Rosha’s Garden Letter』をお楽しみください。」
♪ ジングル ♪
第3話「Garden News」
♪ ジングル ♪
ローシャ。
「ここからは、『Garden News』のコーナーです。」
「Gleam Gardenの近況を、少しだけ皆さんにお届けします。」
紙を一枚めくる。
「まずは音楽制作のお話から。」
「現在も新しい楽曲の制作が進んでいます。」
「レコーディングやアレンジを繰り返しながら、皆さんに楽しんでいただける作品を目指しています。」
「詳しいお話は、もう少しだけお待ちくださいね。」
共有ルーム。
ちょこみんと。
「まだ言えないもんね。」
アオロビ。
「言ったら怒られる。」
ルクレティア。
「私が怒るわ。」
ちょこみんと。
「ひぃ。」
笑いが起きる。
ラジオ局。
ローシャ。
「続いて。」
「ライブのお話です。」
「最近は、メンバー全員でリハーサルを重ねています。」
「担当楽器も正式に決まり、それぞれが今まで以上に演奏の幅を広げています。」
「みんな、本当に頑張っていますよ。」
「私も負けないように、ベースを弾いています。」
少し笑う。
「……たまに弾き過ぎて指が痛くなりますけど。」
スタッフ。
思わず笑う。
共有ルーム。
アオロビ。
「それ昨日じゃない?」
ルクレティア。
「昨日ね。」
ローシャ。
ラジオ越し。
「見られていましたか。」
まるで聞こえているようだった。
みるく。
「本当に痛そうでした。」
ティラミス。
「ずっと弾いてたからね。」
ラジオ局。
ローシャ。
「それから。」
「担当楽器のお話も少しだけ。」
「最近、『誰がどの楽器を担当しているんですか?』というお便りをたくさんいただきました。」
「改めてご紹介しますね。」
「アオさんは、ボーカルとシンセサイザー。」
「ちょこさんは、ギター全般。」
「ティラさんは、キーボードとピアノ。」
「ルクさんは、ドラム。」
「にゃんこさんは、ハープと打楽器全般。」
「ぴたさんは、ヴァイオリンを中心に弦楽器全般。」
「みるさんは、フルートを中心に吹奏楽器全般。」
「チノさんは、マルチパーカッション。」
「ニケさんは、ギター全般。」
「そして私は、ベースを担当しています。」
「十人それぞれが違う役割を持っているので、一曲完成した時の達成感は本当に大きいです。」
共有ルーム。
ぴたぽん。
「ちゃんと紹介されたぽん。」
La lune bleue .
「にゃんころもだにゃん。」
Nike。
「改めて聞くと、豪華ですね。」
チノ。
「本当にオーケストラのような編成です。」
アオロビ。
「ライブで全員並ぶと壮観だよね。」
ルクレティア。
頷く。
「一人欠けても完成しないもの。」
ラジオ局。
ローシャ。
少し優しく笑う。
「私は、この十人だからこそ奏でられる音があると思っています。」
「これからも、Gleam Gardenらしい音楽を届けられるよう頑張ります。」
「ぜひ楽しみにしていてください。」
♪ ジングル ♪
「この後も、まだまだお便りをご紹介します。」
「引き続き、『Rosha’s Garden Letter』をお楽しみください。」
第4話「Blooming Music」
♪ ジングル ♪
ローシャ。
「ここからは、『Blooming Music』のコーナーです。」
「このコーナーでは、Gleam Gardenの音楽について、少しだけお話ししていきます。」
「今日は、こんなお便りをいただきました。」
一枚。
「ラジオネーム、『音楽散歩』さん。」
『Gleam Gardenの曲を聴いていると、それぞれの楽器がとても印象的です。』
『アレンジをするときは、どのように考えているのでしょうか?』
ローシャ。
「ありがとうございます。」
「これは、私たちらしい質問ですね。」
少し笑う。
「Gleam Gardenは、一般的なバンドよりも担当楽器が多いので。」
「曲によって、どの楽器を前に出すかをみんなで話し合っています。」
「例えば。」
「静かな曲なら、ピアノやハープが中心になったり。」
「勢いのある曲なら、ギターやドラムが前に出たり。」
「そこへヴァイオリンやフルートが重なると、一気に世界観が広がるんです。」
共有ルーム。
ティラミス。
「確かに。」
アオロビ。
「楽器が多いから出来ることだね。」
ぴたぽん。
「重なると綺麗ぽん。」
ラジオ局。
ローシャ。
「もちろん。」
「ベースも頑張っています。」
少しだけ照れ笑い。
「目立つ楽器ではありませんけど。」
「曲を支える役目なので。」
「そこが好きなんです。」
共有ルーム。
アオロビ。
「ローシャさんらしい。」
ルクレティア。
「本当にそうね。」
みるく。
「ローシャさんは、昔からそういう考え方ですよね。」
ローシャ。
ラジオ越しに続ける。
「ライブでは、どうしてもボーカルやギターに目が行きやすいと思います。」
「でも。」
「もし少し余裕があったら。」
「ベースにも耳を傾けてもらえたら嬉しいです。」
「曲の土台を支える音も、楽しんでいただけると思います。」
スタッフブース。
ディレクター。
静かに頷く。
「いい話だな……」
ラジオ局。
ローシャ。
「もう一通、ご紹介します。」
紙をめくる。
「ラジオネーム、『ライブ大好き』さん。」
『ライブで皆さんが演奏している姿を見るのが大好きです。』
『ローシャさんがライブで一番好きな瞬間はいつですか?』
ローシャ。
少し考える。
「そうですね。」
「演奏が始まる直前も好きなんですけど。」
「一番好きなのは。」
少し間を置く。
「客席を見た時です。」
「皆さんが笑顔で待っていてくださる。」
「その景色を見ると。」
「今日も頑張ろうって思えるんです。」
共有ルーム。
静かになる。
誰も喋らない。
ローシャの声だけが響く。
アオロビ。
小さく笑う。
「そういうところ。」
ティラミス。
「ローシャさんらしいね。」
La lune bleue .
「にゃんころもその景色好きだにゃん。」
ルクレティア。
穏やかに微笑む。
「私もよ。」
ラジオ局。
ローシャ。
「これからも。」
「皆さんに会える時間を大切にしながら。」
「一曲一曲、心を込めて演奏していきます。」
「これからも、Gleam Gardenをよろしくお願いします。」
♪ ジングル ♪
「番組も、そろそろエンディングのお時間です。」
「最後まで、お付き合いください。」
第5話「また来週、この時間に」
♪ エンディングジングル ♪
ローシャ。
「そろそろ、お別れの時間となりました。」
「今日も最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。」
一枚。
最後のお便りを手に取る。
「ラジオネーム、『昼休みの楽しみ』さん。」
『第1回から聴いています。』
『ローシャさんの落ち着いた声を聴いていると、お昼休みがあっという間に終わってしまいます。』
『これからも毎週楽しみにしています。』
ローシャ。
少し照れながら笑う。
「ありがとうございます。」
「そう言っていただけることが、本当に嬉しいです。」
「第1回は私自身、とても緊張していました。」
「今日も緊張はしていましたけど……」
少し笑う。
「前回よりは、皆さんとお話し出来た気がします。」
スタッフブース。
ディレクター。
静かに頷く。
ローシャ。
「これからも、この番組では。」
「皆さんからのお便りや。」
「Gleam Gardenの近況。」
「音楽のお話。」
「そして、何気ない日常のお話もお届けしていきたいと思っています。」
「ぜひ、気軽にお便りを送ってくださいね。」
一枚の紙を見る。
「来週のメッセージテーマは。」
「『最近、小さな幸せを感じた出来事』です。」
「美味しかったご飯でも。」
「帰り道で見つけた景色でも。」
「何でも構いません。」
「皆さんのお話を、楽しみにお待ちしています。」
少しだけ間を置く。
「それでは。」
「また来週、この時間に。」
「お相手は、ローシャでした。」
「ありがとうございました。」
♪ エンディングテーマ ♪
――ON AIR ランプ消灯。
スタッフ。
「お疲れ様でした!」
ローシャ。
「お疲れ様でした。」
ヘッドホンを外す。
ディレクター。
「今日も良かったですよ。」
「前回より自然に話せていました。」
ローシャ。
少し安心したように笑う。
「ありがとうございます。」
「まだまだ勉強中ですけど。」
「少しずつ、この番組らしい空気を作っていけたらと思います。」
ディレクター。
「それで十分です。」
「リスナーの皆さんも、その空気を楽しみにしていますから。」
ローシャ。
静かに頷く。
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
ラジオが終わる。
少しの静寂。
最初に口を開いたのは。
ちょこみんと。
「ろしゃろしゃ、すっごく慣れてた!」
アオロビ。
「うん。」
「話すテンポも自然だった。」
ティラミス。
「安心して聴ける番組になってきたね。」
ルクレティア。
「リズさんらしさが、ちゃんと出ていたわ。」
La lune bleue .
「にゃんころも聴いてて落ち着いたにゃん。」
ぴたぽん。
「おひるにぴったりもじゃ」
みるく。
「本当に心地良い一時間でした。」
チノ。
「番組としての形が出来てきましたね。」
Nike。
「来週も楽しみです。」
その時。
共有ルームの扉が開く。
ローシャ。
「ただいま。」
全員。
「おかえり!」
ローシャ。
少し照れながら笑う。
「ありがとう。」
「来週も、頑張るわ。」
昼のラジオ。
Rosha’s Garden Letter。
第2回放送。
無事に終了。
そして。
この穏やかな時間は。
来週もまた。
リスナーの元へ。
優しく届いていく。
137:消えた涙(全7話)
第一話 オファー
都内某所。
映画制作会社・応接室。
大きな窓から午後の日差しが差し込む
静かな部屋。
テーブルを挟み、
向かいには映画監督とプロデューサー。
その反対側には、
ちょこみんととルクレティアが座っていた。
プロデューサー
「本日はお越しいただき、
ありがとうございます。」
ちょこみんと
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ルクレティア
「よろしくお願いいたします。」
簡単な挨拶を終えると、
監督は一冊の脚本を机へ置いた。
白い表紙。
そこには静かにタイトルだけが記されている。
『消えた涙』
監督
「今回、この作品の主演をお願いしたく、
お声掛けしました。」
ちょこみんとは驚いたように目を丸くする。
ちょこみんと
「主演……私ですか?」
監督
「はい。」
「映画『指輪』を拝見しました。」
「だからこそ、次はあなたにしか演じられない 役をお願いしたいと思っています。」
ルクレティア
「まずは脚本を読ませていただいても?」
監督
「もちろんです。」
二人は脚本を開く。
部屋から会話が消えた。
ページをめくる音だけが静かに響く。
一枚。
また一枚。
時間だけが流れていく。
……
……
やがて。
ちょこみんとの手が止まった。
最後のページ。
静かに閉じる。
隣を見る。
ルクレティアも同じページで止まっていた。
さらに数秒。
ルクレティアはゆっくり脚本を閉じる。
机へ置く。
何も言わない。
部屋が静まり返る。
監督も。
プロデューサーも。
ちょこみんとも。
誰もその沈黙を崩さなかった。
長い沈黙。
……
ルクレティアは監督を見る。
ルクレティア
「……本気?」
その一言だけだった。
普段の柔らかな口調でも。
敬語でもない。
静かな圧だけが部屋を包む。
監督
「はい。」
再び沈黙。
ルクレティアは目を閉じ、小さく息を吐いた。
ルクレティア
「私は反対。」
短い言葉。
理由は語らない。
だが、その一言だけで十分だった。
ちょこみんとはルクレティアを見る。
ちょこみんと
「るくるく……。」
ルクレティアは視線を落としたまま動かない。
監督が静かに口を開く。
監督
「そう言われることも覚悟していました。」
また沈黙。
今度はちょこみんとが脚本へ視線を落とす。
何度か表紙を指でなぞり、小さく笑った。
ちょこみんと
「……やります。」
ルクレティアがゆっくり顔を上げる。
ルクレティア
「本当に?」
ちょこみんと
「うん。」
「怖い。」
「でも。」
「だから挑戦したい。」
ルクレティアは何も返さない。
再び沈黙。
部屋の空気だけが重く流れる。
やがて静かに立ち上がる。
ルクレティア
「分かった。」
「なら私も最後まで一緒に行く。」
「一人にはしない。」
ちょこみんとは安心したように微笑んだ。
ちょこみんと
「ありがとう。」
監督は二人へ深く頭を下げる。
監督
「よろしくお願いいたします。」
数日後。
映画『消えた涙』は静かにクランクインした。
その撮影が、
誰にとっても忘れられない時間になることを、
この時はまだ誰も知らなかった。
第二話 関係者試写会
映画『消えた涙』完成から数週間後。
都内某所。
映画制作会社・関係者試写ホール。
一般公開に先立ち、
出演者や関係者だけが集められた試写会。
ロビーには映画のポスターが飾られている。
『消えた涙』
タイトルだけが静かにそこにあった。
Gleam Gardenのメンバーも、
受付を済ませてロビーへ入る。
ローシャ
「わぁ……
なんだか私まで緊張してきちゃった……。」
ぴたぽん
「今日はちょこしゃんの晴れ舞台だねぇ。」
みるく
「ちょこちゃん、ちゃんと眠れた?」
ちょこみんと
「あはは……あんまり。」
照れ笑いを浮かべる。
チノ
「主演ですから、
緊張するのも無理はありませんね。」
ちょこみんと
「えへへ……そうかも。」
La lune bleue .
「みんとさん、大丈夫にゃ?」
ちょこみんと
「うん、大丈夫!」
そう答える。
けれど。
隣に立つルクレティアだけは、
その笑顔を静かに見つめていた。
何も言わない。
オファーが来た日
脚本を読み終えた時と同じ表情。
Nike
「ちょこさん。」
「本日はよろしくお願いいたします。」
ちょこみんと
「こちらこそ!」
「ありがと、ニケちゃん♪」
Nikeは小さく微笑んだだけだった。
少し離れた場所から、
その様子を見ていたアオロビが歩み寄る。
アオロビ
「ルクさん。」
ルクレティアは視線だけを向ける。
アオロビ
「……大丈夫?」
数秒。
沈黙。
ルクレティア
「……大丈夫。」
それだけ。
アオロビは、それ以上何も聞かなかった。
やがて開場の案内が流れる。
関係者がゆっくり試写ホールへ入っていく。
Gleam Gardenも並んで入場した。
中央付近の席。
ちょこみんとが座る。
その隣へ、ルクレティア。
反対側にはアオロビ。
後ろには
ローシャ
ティラミス
ぴたぽん
みるく
チノ
Nike
La lune bleue .が並ぶ。
誰も大きな声では話さない。
上映前の静かな空気だけが流れていた。
やがて。
監督がスクリーン前へ立つ。
監督
「本日はお忙しい中、
お集まりいただきありがとうございます。」
「出演者の皆様、
そして制作に携わってくださった
全ての皆様へ、心より感謝申し上げます。」
「本日は完成した『消えた涙』を、
初めてご覧いただきます。」
「それでは、よろしくお願いいたします。」
深く一礼。
自然と拍手が起こる。
監督が降壇し、照明がゆっくり落ちていく。
会場が静まり返る。
ローシャは膝の上で手を握りしめる。
ぴたぽんは小さく息を吐いた。
みるくは少しだけ、
ちょこみんとの横顔を見る。
チノは真っ直ぐスクリーンを見つめる。
Nikeは静かに姿勢を正した。
La lune bleue .は猫耳を小さく動かす。
ティラミスは腕を組んだまま微動だにしない。
アオロビは。
もう一度だけ。
ルクレティアを見る。
ルクレティアは。
スクリーンから目を離さなかった。
館内が完全な暗闇になる。
静寂。
映画会社のロゴ。
そして。
ゆっくりと画面が暗転する。
静かなピアノの旋律。
スクリーンいっぱいに、
一つのタイトルが映し出された。
『消えた涙』
第三話 映画『消えた涙』(前編)
スクリーンいっぱいに、
一つのタイトルが映し出される。
『消えた涙』
静かなピアノの旋律。
画面がゆっくりと暗転する。
白い文字が浮かび上がる。
主演 ちょこみんと
守永 愛 役
文字が静かに消えていく。
――春。
朝の柔らかな陽射し。
小さな仏間。
制服姿の少女が静かに手を合わせている。
仏壇には、一人の女性の遺影。
守永 優。
『……行ってきます、お姉ちゃん。』
少女――守永 愛は、小さく微笑み家を出る。
春風が優しく吹き抜けた。
画面が白く切り替わる。
――二年前。
大学構内。
満開の桜。
新入生歓迎会。
『困ったことがあったら、何でも聞いてね。』
笑顔で声を掛ける守永 優。
『ありがとうございます!』
『優先輩!』
『こっちもお願いします!』
自然と人が集まり、
自然と笑顔が広がっていく。
少し離れた場所で、
その様子を見ていた愛が手を振る。
『優姉ー!』
優は振り返り、笑顔で駆け寄る。
『どうしたの?』
『やっぱり人気者。』
優は少し照れながら笑う。
『みんなが優しいだけだよ。』
愛の頭を優しく撫でる。
『愛も大学生になったら、一緒に来ようね。』
『うん!』
優しく笑い合う姉妹。
画面がゆっくりと現在へ戻る。
――二年後。
雪山。
大学サークル冬合宿。
ロッジ前。
ワゴン車が到着し、
学生達が荷物を降ろし始める。
『全員いるかー?』
サークル代表の神崎が人数を確認する。
『桐生、その荷物お願い。』
『了解。』
『朝倉、部屋割り表ある?』
『あるよ。』
『長谷川、そっち頼む。』
『任せて。』
『佐伯、飲み物よろしく。』
『はーい。』
『宮本、最後お願い。』
『終わり!』
愛もスーツケースを持ち上げる。
『愛ちゃん、それ貸して。』
桐生が笑いながら受け取る。
『ありがとうございます。』
『遠慮しなくていいって。』
『優先輩も最初そうだったよな。』
朝倉が笑う。
『姉妹そっくり。』
『そうですね。』
神崎も微笑く。
『優が初めて合宿に来た時も、
一人で全部持とうとしてた。』
愛は少し照れくさそうに笑った。
ロッジの扉が開く。
『いらっしゃい。今年もよろしく。』
管理人が迎える。
『今年もお世話になります。』
神崎が頭を下げる。
『夕食は六時。
朝食は七時だからね。』
『分かりました。』
荷物を運び終え、それぞれ部屋へ向かう。
昼。
ゲレンデ。
『愛ちゃん、こっち!』
『はい!』
転び。
笑い。
助け起こされ。
また笑う。
写真を撮り。
雪玉を投げ合う。
笑い声だけが雪山へ響いていた。
夕方。
ロッジ。
『愛ちゃん、お皿お願い。』
『はい。』
『ありがとう。』
『いえ。』
食卓には温かい料理が並ぶ。
『いただきます!』
賑やかな夕食。
食後。
学生達は談話室へ集まる。
テレビを見る者。
カードゲームを始める者。
コーヒーを飲む者。
愛は紙コップを盆に乗せ、談話室へ入る。
『そういえばさ。』
桐生がコーヒーを片手に笑う。
『愛ちゃんが入部するって聞いた時、みんな嬉しかったよな。』
『嬉しかった。』
長谷川が頷く。
『優先輩の妹だって聞いてさ。』
『優が帰ってきたみたいで嬉しかったよ。』
佐伯が笑う。
『姉がお世話になったサークルだから入りたいって聞いた時、みんな歓迎しようって話になったもんな。』
神崎が穏やかに笑う。
『優も喜んでると思うよ。』
愛は静かに頭を下げる。
『ありがとうございます。』
少し沈黙が流れる。
朝倉がコーヒーカップを見つめた。
『優さ……』
『相談されたこと、一回あったんだ。』
『でも、大丈夫だろって思っちゃってさ。』
長谷川が続く。
『俺も仕事、結構頼っちゃってたな。』
『気付かなかった。』
佐伯が小さく笑う。
『無理して笑ってたのかもしれない。』
宮本が俯く。
『もっと声掛ければ良かった。』
桐生も苦笑する。
『手伝うって言えば良かったんだよな。』
神崎が静かに口を開く。
『……助けられたかもしれなかった。』
静かな時間が流れる。
愛の手が止まる。
紙コップの氷が小さく鳴る。
カラン。
『愛ちゃん?』
桐生が振り返る。
愛は顔を上げる。
『あ……すみません。』
『少し考え事をしてました。』
小さく笑って紙コップを配る。
『ありがとうございます。』
『ありがと。』
誰かがテレビのチャンネルを変える。
笑い声が戻る。
時計の針は午後十時を回っていた。
『そろそろ寝るか。』
『明日も朝から滑るぞ。』
『おやすみー。』
『おやすみ。』
一人、また一人と部屋へ戻っていく。
廊下の照明だけが静かに灯る。
窓の外では雪が降り続いていた。
ロッジ全景。
静かな夜。
降り積もる雪。
ゆっくりと画面が暗転する。
第四話 映画『消えた涙』(中編)
朝。
窓の外では雪が静かに降り続いている。
ロッジの食堂。
朝食の香りが漂う。
『おはよう。』
『眠いなぁ。』
『今日は昨日より積もってるね。』
学生達が席へ着いていく。
神崎が人数を数える。
『……桐生は?』
朝倉が笑う。
『まだ寝てるんじゃない?』
『昨日、一番はしゃいでたしな。』
長谷川が立ち上がる。
『起こしてきます。』
『悪い、頼む。』
長谷川は二階へ上がっていく。
静かな食堂。
食器の音だけが響く。
しばらくして。
慌ただしい足音。
『神崎さん!!』
長谷川が駆け下りてくる。
『部屋にいません!』
『え?』
『ベッドも使った形跡がなくて……。』
神崎が立ち上がる。
『全員、探そう。』
ロッジ。
ゲレンデ。
倉庫。
駐車場。
林の近く。
『桐生ーー!!』
『返事しろーー!!』
降り続く雪の中。
名前を呼ぶ声だけが響く。
『いた!!』
宮本の叫び声。
全員が駆け寄る。
雪原。
桐生が倒れていた。
神崎が膝をつく。
肩へ触れる。
静かに首を横へ振った。
画面がゆっくり引いていく。
雪だけが降り続いていた。
「……。」
試写会場。
誰も口を開かない。
スクリーンだけを見つめている。
映画へ戻る。
警察車両がロッジへ到着する。
規制線。
現場検証。
ロッジで事情を聞かれる学生達。
管理人も警察官と話している。
『申し訳ありませんが、事情聴取のため同行をお願いします。』
『分かりました。』
管理人はロッジを振り返り、小さく頭を下げる。
『皆さん、気を付けて。』
パトカーが山を下っていく。
神崎は窓の外を見つめる。
昼過ぎ。
雪はさらに強くなる。
テレビのニュース。
『大雪の影響により、山道は全面通行止めとなっています。』
『復旧の目処は立っていません。』
誰も言葉を発しない。
外は吹雪。
ロッジは孤立した。
夕方。
食堂。
重苦しい空気。
誰も食事へ手を付けない。
神崎が小さく息を吐く。
『……優の時も。』
朝倉が顔を上げる。
『あんな空気だったよな。』
『うん。』
神崎は静かに頷く。
『何も出来なかった。』
『今回も……事故なんだよな。』
誰も答えない。
愛は黙ったまま話を聞いている。
時計が午後九時を指す。
『今日はもう休もう。』
神崎が立ち上がる。
一人ずつ部屋へ戻っていく。
愛も静かに部屋へ戻る。
廊下。
朝倉とすれ違う。
『おやすみ。』
『おやすみなさい。』
朝倉は少し笑った。
部屋の扉が閉まる。
夜。
静まり返ったロッジ。
窓を叩く吹雪の音だけが響いている。
暗転。
朝。
『朝倉?』
神崎が扉を叩く。
返事はない。
もう一度叩く。
静かなまま。
ドアノブを回す。
部屋の中。
朝倉が床へ倒れていた。
神崎が息を呑む。
首元には細い紐が巻き付いている。
『……朝倉。』
静寂。
「……事故じゃ、ない。」
アオロビが初めて小さく口を開いた。
誰も返事をしない。
スクリーンだけを見つめていた。
第五話 映画『消えた涙』(後編)
朝。
ロッジは静まり返っていた。
部屋の入口。
誰も中へ入ろうとしない。
神崎はゆっくりと朝倉へ近付く。
首元に残る細い紐。
静かに目を閉じる。
警察へ電話を掛ける。
『……繋がらない。』
何度掛けても同じだった。
テレビでは。
『大雪の影響により、現在も通行止めが続いています。』
『復旧の目処は立っておりません。』
誰も言葉を発しない。
食堂。
誰も席へ着こうとしなかった。
神崎が静かに口を開く。
『事故じゃない。』
『誰かがいる。』
重い沈黙。
『……今日は一人で行動するの、やめよう。』
誰も反対しなかった。
時間だけが過ぎていく。
夕方。
談話室。
神崎と愛だけが残っていた。
テレビの音だけが静かに流れている。
『神崎さん。』
『ん?』
『神崎さんって、ずっとサークルの代表だったんですか?』
『そうだね。』
『大変じゃなかったですか?』
神崎は少し笑う。
『仕事はほとんど優がやってくれてたよ。』
『何でも出来る人だったから。』
『俺達、本当に頼りっぱなしだった。』
愛は黙って聞いている。
『優がいてくれたから、このサークルは続いてたようなものだよ。』
沈黙。
愛が小さく俯く。
『……じゃあ。』
神崎が顔を上げる。
『ん?』
愛はゆっくり顔を上げた。
その表情から笑顔が消えていた。
『アンタが。』
神崎は動かない。
『優姉、追い詰めたんだ。』
沈黙。
神崎は意味を理解できず、愛を見つめる。
『……愛ちゃん?』
愛は一歩近付く。
『みんな。』
『優姉に仕事押し付けて。』
『助けなかった。』
『今になって後悔してる?』
『ふざけないで。』
神崎はゆっくり首を振る。
『違う。』
『俺達は——』
最後まで言えなかった。
画面が切り替わる。
薪割り斧。
倒れる椅子。
窓の外では吹雪。
画面が暗転する。
静寂。
廊下。
愛がゆっくり歩いている。
服には血が付いていた。
その手には薪割り斧。
足音だけが響く。
長谷川が振り返る。
『愛ちゃん……?』
愛は止まらない。
『……んー。』
少し考えるように首を傾げる。
『もういっか。』
小さく笑う。
『誰でも。』
「……っ。」
ローシャが思わず口元を押さえる。
映画へ戻る。
長谷川が後ずさる。
『ちょ、ちょっと待って——』
暗転。
悲鳴。
物音。
扉を叩く音。
画面は映さない。
雪だけが降り続ける。
ロッジの外観。
窓明かりが一つ、また一つと消えていく。
静かな夜。
吹雪だけが全ての音を飲み込んでいった。
第六話 映画『消えた涙』(終幕)
静まり返ったロッジ。
窓の外では吹雪だけが音を立てている。
食堂。
倒れた椅子。
割れた食器。
誰の姿もない。
愛がゆっくりと歩いてくる。
机の上には一枚の集合写真。
大学祭。
中央では優が笑っている。
愛は写真を両手で持ち上げる。
『……優姉。』
静かな時間。
『終わったよ。』
返事はない。
愛は写真を胸に抱く。
窓の外では、白い雪が静かに降り続いていた。
愛は静かに立ち上がる。
ゆっくりと廊下の奥へ歩いていく。
足音だけが静かに響く。
部屋の扉が閉まる。
画面は閉じた扉を映したまま動かない。
静かなピアノが流れ始める。
窓の外。
降り積もる雪。
暗転。
二日後。
吹雪は止んでいた。
ロッジ前。
パトカー。
救急車。
事情聴取を終えた管理人が警察車両から降りる。
『そんな……。』
警察官たちがロッジへ駆け込む。
規制線。
現場保存。
鑑識作業。
静かに捜査が始まる。
――捜査資料①
守永優自殺事案(二年前)
・死亡状況 自宅にて死亡確認
・遺書 なし
・他殺性 認められず
・自殺動機 不明
・当時、事件性なしとして捜査終了
追加聞き取り。
神崎。
優の死後より精神科へ通院。
睡眠障害および強い自責を確認。
朝倉。
『相談を受けたが、止められなかった』
と証言。
桐生。
守永家へ謝罪。
以降も命日に墓参を継続。
長谷川・佐伯・宮本。
全員が優への後悔を証言。
大学関係者証言。
『優さんが亡くなってから、皆さん変わりました。』
友人証言。
『誰もが自分を責め続けていました。』
――捜査資料②
雪山ロッジ連続殺人事件
被害者。
桐生。
朝倉。
神崎。
長谷川。
佐伯。
宮本。
現場検証。
外部侵入の形跡なし。
吹雪による道路封鎖を確認。
管理人および警察官は事情聴取終了後、山道封鎖によりロッジへ戻れず。
一連の事件はロッジ内部で完結したものと判断。
――捜査資料③
守永愛
守永優実妹。
姉の死後、死の理由を知るため大学へ進学。
守永優が所属していたサークルへ入部。
関係者への聞き取りを継続。
捜査結果。
守永愛は、実姉・守永優の死についてサークル関係者に原因があると強く思い込み、一連の事件に至ったものと推定される。
一方、守永優自殺事案の再調査では、関係者全員が長期間にわたり強い自責の念を抱え、精神的苦痛を抱えながら生活していた事実を確認。
守永愛は、その事実を知ることなく事件は終結したものと考えられる。
なお、守永優自殺事案については、本件をもっても死亡に至った動機の解明には至らなかった。
資料が静かに閉じられる。
主任刑事が窓の外の雪景色を見る。
『……誰も救われなかったな。』
画面がゆっくり暗転する。
エンドロール。
静かな主題歌が流れる。
上映終了。
試写会場。
誰も立ち上がらない。
場内は静まり返っていた。
ローシャは俯いたまま目元を拭う。
みるくは静かに息を呑む。
ぴたぽんは両手を胸の前で握り締めていた。
Nikeは目を伏せ、小さく息を吐く。
チノはスクリーンを見つめたまま動かない。
La lune bleue .は猫耳を伏せ、言葉を失っていた。
アオロビは静かに目を閉じる。
ルクレティアはゆっくり立ち上がる。
何も言わず、ちょこみんとの隣まで歩く。
そっと肩へ手を置く。
ちょこみんとは俯いたまま、小さく肩を震わせる。
ルクレティアは何も言わない。
ただ、その場に寄り添い続けていた。
静寂。
第七話 振り返って…
映画公開から一週間。
Gleam Garden共有ルーム。
机の上には
『消えた涙』のパンフレットが置かれている。
テレビでは映画ランキングが流れていた。
みるく
「わぁ……一位ですよぉ!」
ちょこみんと
「えっ!? 本当に!?」
Nike
「おめでとうございます、ちょこさん。」
ちょこみんと
「えへへ……まだ実感ないなぁ。」
ローシャはパンフレットを閉じ、
小さく息を吐く。
ローシャ
「……やっぱり苦しい作品だったね。」
La lune bleue .
「最後まで救われなかったにゃ……。」
ぴたぽん
「でもねぇ、みんな優しゃんのこと
大好きだったんだよねぇ。」
チノ
「だからこそ、とても悲しかったです。」
アオロビ
「この映画は、犯人探しの作品じゃない。」
「見えている事実だけで答えを出す危うさ。」
「それを最後まで描いた作品だったと思う。」
Nike
「最後の捜査資料で、
映画全体の印象が変わりました。」
「愛さんの視点だけでは見えなかったものが、 ようやく見えました。」
静かな時間が流れる。
ちょこみんとがルクレティアを見る。
ちょこみんと
「そういえばさ。」
「るくるく、最初に脚本読んだ時、
すっごく怒ってたよね。」
全員の視線がルクレティアへ集まる。
ルクレティアは紅茶を一口飲み、静かにカップを置く。
ルクレティア
「えぇ。」
「反対したわ。」
「内容じゃないの。」
「ちょこちゃんに、
この役を演じさせることによ。」
部屋が静かになる。
ルクレティア
「少しずつ壊れていく心。」
「人を疑い、人を憎み、自分自身まで失ってしまう。」
「それだけでも十分につらい役だったわ。」
少し間を置く。
ルクレティア
「そして最後。」
「脚本には、
自ら人生を終える場面まで書かれていた。」
「演技だと分かっていても。」
「私は、それをちょこちゃんに
演じさせたくなかった。」
「どうしても、受け入れられなかったの。」
静かな沈黙。
ちょこみんと
「でもね。」
「最後まで演じたからこそ
伝わるものがあるって思ったんだ。」
ルクレティアは優しく微笑む。
ルクレティア
「えぇ。」
「だから最後は、
あなたの気持ちを尊重したわ。」
「本当によく頑張ったわね。」
ちょこみんと
「ありがと、るくるく。」
チノ
「思い込みだけで
真実を決めてしまう危うさ……。」
「それが、この作品の一番伝えたかったこと
なのかもしれません。」
Nike
「後悔は、
相手へ伝わらなければ意味がない。」
「私は、その言葉が一番印象に残りました。」
ローシャ
「神崎さん達も、本当に苦しんでた。」
「でも、その想いは
愛さんには届かなかった……。」
ぴたぽん
「優しゃんも、本当の気持ちを
誰にも話せなかったんだねぇ……。」
La lune bleue .
「みんな泣いてたにゃ。」
「でも、その涙は誰にも
届かなかったにゃ……。」
ルクレティア
「だから『消えた涙』。」
「流した涙ではなく。」
「流せなかった涙。」
「伝えられなかった想い。」
「届かなかった後悔。」
「その全てを表した題名だと、私は思うわ。」
みるくがスマートフォンを見る。
みるく
「感想もいっぱい来てますぅ。」
画面には次々と感想が流れる。
『最後の捜査資料で全部見方が変わった。』
『愛を責められない。』
『神崎達も責められない。』
『誰も悪人じゃなかった。』
『優の死の理由だけ
最後まで分からないのが苦しい。』
『見終わってからタイトルの意味で泣いた。』
『もう一度最初から
見返したくなる作品だった。』
静かな時間。
ルクレティアは立ち上がる。
ちょこみんとの隣へ歩く。
そっと頭へ手を置く。
ルクレティア
「改めて。」
「主演、お疲れさま。」
ちょこみんとは少し照れながら笑う。
ちょこみんと
「うん!」
「ありがとう!」
共有ルームには、いつもの穏やかな空気が戻っていた。
窓の外では春風が花びらを運んでいる。
138:春風ピクニック(全5話)
第1話「きょうはぴくにっくびより」
春のやわらかな陽射しが庭園を包み込み、
色とりどりの花々が春風に揺れていた。
待ち合わせ場所へ最初に姿を見せたのは
アオロビだった。
澄み渡る青空を見上げ、小さく息を吸い込む。
アオロビ
「……今日は、本当に気持ちのいい日だね。」
穏やかな風が前髪を揺らした、その時だった。
ちょこみんと
「あおちーーーっ!」
元気いっぱいの声とともに、
小さな体が一直線に駆け寄ってくる。
大きなレジャーバッグを抱えたちょこみんとは、満面の笑みで手を振っていた。
アオロビ
「おはよう、ちょこ姉。」
ちょこみんと
「えへへ♪ 一番乗りかと思ったら負けちゃった!」
アオロビ
「今来たところだよ。」
ちょこみんと
「じゃあ一緒だね!」
二人が笑い合っていると、
後ろから穏やかな声が聞こえてきた。
ティラミス
「今日は風も穏やかですね。」
ローシャ
「この景色だけで、一日お茶が飲めそうです。」
ちょこみんと
「あっ! てぃらみ! ろしゃろしゃ!」
ローシャ
「ふふ、おはようございます。」
ティラミス
「おはようございます。」
さらにその後ろから、ゆっくりと歩いてくる二人の姿が見えた。
ルクレティア
「みんな、おはよう。」
La lune bleue .
「おはようにゃあ。」
その隣では、小さな黒い猫耳をぴこぴこと動かしながら、アンジェリカが一生懸命歩いていた。
アンジェリカ
「おはよー!」
ちょこみんと
「あんじぇちゃーん!」
ちょこみんとはすぐにしゃがみ込み、両手を広げる。
アンジェリカは嬉しそうに駆け寄り、その胸へ飛び込んだ。
アンジェリカ
「ちょこおねぇさん!」
ぎゅっと抱きつく小さな身体を、ちょこみんとは優しく抱きしめる。
ちょこみんと
「えへへ〜♪ 今日はいっぱい遊ぼうね!」
アンジェリカ
「うん!」
La lune bleue .
「朝から元気いっぱいにゃん。」
その様子を見ていたルクレティアも、
自然と優しい笑みを浮かべた。
ルクレティア
「みんな揃うと、賑やかで良いわね。」
その言葉どおり、さらに仲間たちが姿を見せた。
ぴたぽん
「んちゃー! おまたせぽん!」
みるく
「おはようございます。」
チノ
「皆さん、おはようございます。」
Nike
「お待たせしました。」
これで全員が揃った。
庭園の入口は、一気に春らしい賑わいに包まれる。
アオロビ
「それじゃあ、場所を探そうか。」
ちょこみんと
「さんせーい!」
ローシャ
「あちらの桜の木の下はいかがでしょう?」
みるく
「日陰もありますし、気持ち良さそうですね。」
Nike
「広さも十分ありそうですね。」
ルクレティア
「それじゃあ、今日はそこにしましょ。」
十一人は並んで歩き始める。
アンジェリカはLa lune bleue .の手を握りながら歩いていたが、ふとアオロビを見上げた。
アンジェリカ
「あおおねぇさん!」
アオロビ
「どうしたの、アンジェさん。」
アンジェリカ
「おはな、いっぱい!」
辺り一面に咲く花々を見渡し、
アオロビは穏やかに微笑む。
アオロビ
「そうだね。今年も綺麗に咲いたね。」
アンジェリカ
「きれー!」
無邪気な笑顔につられ、
みんなの表情も自然と柔らかくなる。
春風がそっと吹き抜け、桜の花びらがふわりと舞い上がった。
花びらは十一人を優しく包み込み、今日という一日を祝福しているようだった。
ルクレティア
「こうしてみんなと同じ景色を見られることが、とても幸せね。」
誰も大きく返事はしなかった。
けれど、その場にいた全員が自然と微笑み、
小さく頷いていた。
Gleam Garden、春のピクニック。
穏やかな春の一日が、静かに始まった。
第2話「みんなのおべんとう」
大きな桜の木の下へレジャーシートが広げられた。
春風が心地よく吹き抜け、木漏れ日がみんなを優しく照らしている。
ちょこみんと
「よーし! 準備開始だよー!」
大きなバスケットが次々と並び、色とりどりのお弁当が姿を見せ始める。
ローシャ
「今回も皆さん、気合いが入っていますね。」
ティラミス
「見ているだけで楽しいですね。」
みるく
「全部美味しそうです……。」
ぴたぽん
「お腹が鳴っちゃうぽん。」
アンジェリカは目をまん丸にしながら、お弁当を一つひとつ覗き込んでいた。
アンジェリカ
「わぁ……!」
La lune bleue .
「いっぱいあるにゃあ。」
アンジェリカ
「いっぱいー!」
嬉しそうに尻尾を揺らす姿に、みんなの頬も自然と緩む。
ルクレティア
「今日はみんなで持ち寄ったんだもの。賑やかになるわね。」
Nike
「それぞれ好みが違うから、見ているだけでも面白いですね。」
アオロビ
「食卓にも個性が出るね。」
ちょこみんと
「じゃーん! わたしはサンドイッチ作ってきたよ!」
ローシャ
「彩りも綺麗ですね。さすがちょこさんです。」
ちょこみんと
「えへへ♪ いっぱい食べてね!」
ティラミス
「私は簡単なおかずを少しだけ。」
みるく
「卵焼き、とても綺麗ですね。」
ティラミス
「ありがとうございます。」
Nike
「私はサラダを作ってきました。春野菜が美味しい季節ですから。」
ローシャ
「ニケさんらしいですね。」
Nike
「野菜も主役になれますから。」
穏やかな会話を聞きながら、アンジェリカはお弁当をじっと見つめていた。
アンジェリカ
「まま……。」
La lune bleue .
「どうしたにゃん?」
アンジェリカ
「どれたべる?」
La lune bleue .
「ふふっ、迷っちゃうにゃあ。」
そのやり取りを見ていたちょこみんとが笑顔で手を挙げる。
ちょこみんと
「あんじぇちゃん! 最初は好きなの選んでいいよ!」
アンジェリカ
「ほんと?」
ちょこみんと
「もちろん!」
アンジェリカは少しだけ迷ってから、小さなサンドイッチを指差した。
アンジェリカ
「これ!」
ちょこみんと
「はい、どうぞ♪」
小さな両手で受け取り、一口。
アンジェリカ
「……おいしい!」
その一言だけで、ちょこみんとは飛び跳ねそうなくらい嬉しそうに笑った。
ちょこみんと
「やったー!」
ローシャ
「作った人にとって、その一言が一番嬉しいんですよね。」
アオロビ
「そうだね。」
ルクレティア
「みんなで囲む食卓は、不思議と心まで満たされるものね。」
桜の花びらがふわりと舞い、お弁当の上へ一枚だけ静かに落ちた。
笑い声が春風に乗って、どこまでも優しく響いていく。
穏やかな昼の時間は、まだ始まったばかりだった。
第3話「はるかぜとあそぶ」
昼食を食べ終えた頃には、春の陽射しはさらに柔らかくなっていた。
桜の花びらが風に乗り、庭園いっぱいをゆっくりと舞っている。
ちょこみんと
「よーし! せっかくだし遊ぼー!」
ローシャ
「ちょこさんらしいですね。」
ティラミス
「何をするんですか?」
ちょこみんと
「んー……。」
少しだけ考えたあと、満面の笑みを浮かべる。
ちょこみんと
「花びらをいっぱい集める大会!」
ぴたぽん
「面白そうだぽん♪」
みるく
「風で飛んでいっちゃいそうですね。」
Nike
「それも春らしくて良いですね。」
アンジェリカは舞い落ちる花びらへ手を伸ばす。
アンジェリカ
「あっ!」
あと少しというところで、花びらはふわりと逃げてしまう。
アンジェリカ
「あれぇ……。」
La lune bleue .
「春風さんとかくれんぼしてるにゃん。」
アンジェリカ
「かくれんぼ?」
La lune bleue .
「そうにゃあ。」
アンジェリカはもう一度、小さな両手を伸ばした。
今度は一枚だけ、そっと手のひらへ舞い降りる。
アンジェリカ
「つかまえた!」
La lune bleue .
「上手にゃん♪」
嬉しそうな笑顔に、周りのみんなも思わず笑みを浮かべる。
アオロビ
「良かったね、アンジェさん。」
アンジェリカ
「うん!」
少し離れた場所では、ルクレティアが花を眺めながらゆっくり歩いていた。
ルクレティア
「春は、こうしてのんびり過ごせるから好きなの。」
Nike
「花も、みんな嬉しそうに咲いていますね。」
ルクレティア
「そうね。今日はみんなも、花も、笑っているみたい。」
ローシャはそんな二人を見ながら、小さく微笑む。
ローシャ
「この景色、そのまま一枚の絵になりますね。」
ティラミス
「春という作品ですね。」
ローシャ
「素敵な表現ですね。」
その頃、ちょこみんとはチノの手を引いて芝生を走り回っていた。
ちょこみんと
「ちのちのー! こっちこっち!」
チノ
「ちょ、ちょこさん……待ってください〜。」
照れながらも楽しそうなチノを見て、みるくが静かに笑う。
みるく
「楽しそうですね。」
ぴたぽん
「見てるだけで癒されるぽん。」
アンジェリカは捕まえた花びらを大事そうに両手で包み込み、ルクレティアのところまで小走りで向かった。
アンジェリカ
「るくおねぇさん!」
ルクレティア
「どうしたの?」
アンジェリカ
「ぷれぜんと!」
小さな手がゆっくり開く。
そこには、一枚の桜の花びらが大切そうに乗っていた。
ルクレティアは少し驚いたあと、優しく微笑む。
ルクレティア
「ありがとう。とっても嬉しいわ。」
アンジェリカは照れくさそうに笑う。
アンジェリカ
「えへへ。」
その様子を見守るLa lune bleue .も、どこか誇らしそうだった。
La lune bleue .
「優しい子に育ってるにゃあ。」
春風は今日も優しく吹き抜ける。
みんなの笑顔を乗せながら、穏やかな午後の時間は静かに流れていった。
第4話「みんなのたからもの」
午後の穏やかな時間。
遊び疲れたみんなは、それぞれ思い思いに桜の木陰で過ごしていた。
暖かな春風が吹き抜け、心地よい静けさが庭園を包み込む。
そんな中、一人だけ元気いっぱいに芝生を歩き回っている小さな姿があった。
アンジェリカ
「あっ!」
飛んできた蝶々を見つけて、小さな足で一生懸命追いかける。
蝶々はひらひらと逃げていき、アンジェリカも夢中になって追いかけていく。
ちょこみんと
「えへへ♪ 元気いっぱいだね。」
みるく
「見ているだけで癒されますね。」
ローシャ
「本当に子どもって、世界全部が遊び場なんですね。」
しばらくして、蝶々を見失ったアンジェリカは少しだけ辺りを見回した。
アンジェリカ
「あれ……?」
ほんの少しだけ不安そうな表情になる。
その瞬間だった。
アオロビ
「アンジェさん。」
優しい声が聞こえた。
振り向くと、アオロビがしゃがみ込みながら微笑んでいる。
アンジェリカ
「あおおねぇさん!」
安心したように駆け寄り、小さな身体がその胸へ飛び込む。
アオロビ
「びっくりしたね。」
頭をそっと撫でると、アンジェリカは安心したように頷いた。
アンジェリカ
「うん。」
その様子を見ていたLa lune bleue .も静かに歩いてくる。
La lune bleue .
「ありがとうにゃあ。」
アオロビ
「ネコさんが近くにいるって分かってたから、大丈夫だと思ったよ。」
La lune bleue .
「みんなが見守ってくれてるから安心できるにゃん。」
その言葉に、ルクレティアも穏やかに微笑んだ。
ルクレティア
「アンジェちゃんは、一人で育っているわけじゃないもの。」
みんなが自然と顔を上げる。
ルクレティア
「ここにいるみんなが、大切に育てている子だもの。」
その言葉に、誰も照れたり気負ったりすることはなかった。
それが当たり前だから。
ちょこみんと
「もちろん! あんじぇちゃんはみんなの宝物だもん!」
Nike
「元気に育ってくれることが、一番嬉しいですね。」
ぴたぽん
「みんなで見守るぽん。」
みるく
「困った時は、いつでも頼ってほしいですね。」
ローシャ
「アンジェさんが大人になった時、今日のことを覚えていてくれたら嬉しいですね。」
ティラミス
「きっと覚えていなくても、この温かさは残ると思います。」
チノ
「……そうですね。」
アンジェリカはみんなの顔を順番に見渡していた。
難しい話はまだ分からない。
それでも、みんなが笑っている。
それだけで嬉しかった。
アンジェリカ
「えへへ♪」
その笑顔を見て、La lune bleue .も優しく微笑む。
La lune bleue .
「この子は幸せ者にゃあ。」
ルクレティア
「ええ。」
「この子だけじゃないわ。」
「私たちも、とても幸せなの。」
春風が優しく吹き抜ける。
桜の花びらが舞い上がり、十一人を静かに包み込んだ。
誰か一人だけではない。
みんなで笑い、
みんなで支え、
みんなで育てていく。
それが、Gleam Gardenという家族だった。
第5話「またこようね」
ゆっくりと傾き始めた陽射しが、庭園を優しいオレンジ色へ染めていた。
楽しかった時間も、そろそろ終わりを迎えようとしている。
ちょこみんと
「いっぱい遊んだねー!」
ローシャ
「今日は本当に笑いっぱなしでした。」
ティラミス
「とても穏やかな一日でしたね。」
レジャーシートを畳み、お弁当箱を片付けながら、みんなの表情には自然と満足そうな笑みが浮かんでいた。
アンジェリカ
「あう……。」
少しだけ名残惜しそうに、舞い散る桜を見上げる。
La lune bleue .
「帰るのが寂しいにゃん?」
アンジェリカ
「うん……。」
La lune bleue .は優しく頭を撫でた。
La lune bleue .
「また来ればいいにゃあ。」
アンジェリカ
「またこれる?」
ルクレティア
「もちろんよ。」
ルクレティア
「春はまた巡ってくるもの。」
ルクレティア
「その時は、またみんなで来ましょう。」
アンジェリカ
「やったー!」
その笑顔に、みんなも思わず笑顔になる。
Nike
「せっかくですし、最後に一枚撮りましょうか。」
ちょこみんと
「さんせーい! 記念写真だー!」
みんなで桜の木の前へ並び始める。
アンジェリカはきょろきょろと辺りを見回したあと、自然とルクレティアとLa lune bleue .の間へ入り込んだ。
ルクレティア
「ふふっ。」
La lune bleue .
「特等席にゃあ。」
アンジェリカ
「えへへ♪」
アオロビ
「それじゃあ、撮るよ。」
セルフタイマーをセットすると、アオロビも急いで輪の中へ駆け寄る。
ちょこみんと
「あおちー! こっちこっち!」
アオロビ
「うん。」
十人と、小さな宝物が一人。
春風が優しく吹き抜ける。
舞い上がる桜の花びら。
柔らかな木漏れ日。
そして、誰一人欠けることのない笑顔。
アオロビ
「いくよ。」
アオロビ
「……はい、チーズ。」
――カシャ。
一枚の写真に刻まれたのは、何気ない春の思い出。
けれど、その一枚には、言葉では表しきれないほどたくさんの幸せが詰まっていた。
帰り道。
アンジェリカはLa lune bleue .と手を繋ぎながら歩いていた。
その反対の手は、いつの間にかルクレティアが優しく握っている。
少し前では、ちょこみんとがアオロビと楽しそうに話し、ローシャとティラミスは今日の出来事を振り返りながら笑っている。
ぴたぽん、みるく、チノ、Nikeも穏やかに歩幅を合わせ、それぞれの笑顔を浮かべていた。
ルクレティア
「今日も素敵な一日だったわね。」
アオロビ
「うん。」
アオロビ
「また、みんなで来よう。」
ちょこみんと
「約束だよ!」
その一言に、みんなが笑顔で頷く。
春風は優しく背中を押すように吹き抜け、桜の花びらが最後にもう一度だけ舞い上がった。
こうして、Gleam Gardenの春のピクニックは、温かな思い出とともに静かに幕を閉じた。
139:お風呂戦争(全5話)
第1話「おふろのじかん」
夕食も終わり、Gleam Gardenの共有ルームには、のんびりとした時間が流れていた。
その時だった。
ルクレティア
「そろそろ、お風呂にしましょうか。」
その一言に、La lune bleue .が小さく頷く。
La lune bleue .
「今日はアンジェリカも一緒に入るにゃあ。」
ソファで積み木遊びをしていたアンジェリカが、首をかしげた。
アンジェリカ
「おふろ?」
La lune bleue .
「そうにゃん。ぽかぽか気持ちいいお風呂に入るにゃあ。」
アンジェリカ
「ぽかぽか!」
意味はよく分かっていない。
けれど、楽しそうな言葉だったから、アンジェリカは嬉しそうに笑った。
ちょこみんと
「今日は何分で入れるかなぁ?」
ローシャ
「もう戦いが始まる前提なんですね。」
ちょこみんとは満面の笑みで親指を立てる。
ちょこみんと
「子どもと猫ちゃんのお風呂って、戦争なんだよ!」
Nike
「確かに、じっとしていてくれることの方が珍しいですね。」
みるく
「きっと元気いっぱいでしょうね。」
ぴたぽん
「楽しそうだぽん。」
ティラミス
「見ている分には楽しそうですね。」
チノ
「……少しだけ、大変そうです。」
そんな話をしている間にも、アンジェリカは興味津々。
洗面所の方を覗いたり、お風呂場の扉を見たり、あちこち歩き回っている。
アンジェリカ
「あっ!」
脱衣かごを見つけると、中を覗き込み始めた。
La lune bleue .
「まだ入らないにゃん。」
アンジェリカ
「?」
不思議そうな顔をする。
アオロビ
「何でも気になる年頃なんだね。」
ルクレティア
「ええ。」
ルクレティア
「毎日が初めてのことばかりですもの。」
その時だった。
浴室から、お湯がたまる音が聞こえてくる。
ザーッ……
アンジェリカ
「!」
耳がぴくっと動いた。
黒い猫耳が音のする方を向く。
アンジェリカ
「なに?」
La lune bleue .
「お湯さんがお風呂へ来てくれてるにゃあ。」
アンジェリカ
「おゆしゃん!」
ぱたぱたと小さな足で浴室へ向かおうとする。
La lune bleue .
「あっ、まだ待つにゃん。」
優しく抱き上げると、アンジェリカは不思議そうに浴室を見つめていた。
アンジェリカ
「はいりたい。」
ルクレティア
「もう少しだけ待ちましょうね。」
優しく頭を撫でると、アンジェリカは素直に頷いた。
アンジェリカ
「うん!」
その様子を見ていたローシャが、小さく笑う。
ローシャ
「今日は意外とスムーズかもしれませんね。」
ちょこみんと
「えへへ♪ それなら記録更新かも!」
La lune bleue .
「……。」
ネコは静かに苦笑いした。
La lune bleue .
「まだ始まってないにゃあ。」
その一言に、その場のみんなも思わず笑ってしまう。
誰も、この数分後に本当の『お風呂戦争』が始まることを、まだ知らなかった。
第2話「にげるにゃー!」
お風呂のお湯もたまり、準備は万端。
La lune bleue .はアンジェリカの前へしゃがみ込み、優しく微笑んだ。
La lune bleue .
「それじゃあ、お洋服を脱ぎましょうにゃあ。」
アンジェリカ
「うん!」
今日は素直だった。
そう思った次の瞬間。
ぴくり。
アンジェリカの猫耳が動く。
じーっと脱衣所を見回したあと――
くるり。
勢いよく走り出した。
ちょこみんと
「あっ!!」
ちょこみんと
「逃げたーーー!!」
ローシャ
「始まりましたね。」
ルクレティア
「始まったわね……。」
アンジェリカは楽しそうに笑いながら廊下を駆け回る。
アンジェリカ
「えへへーー!」
La lune bleue .
「アンジェリカ~、待つにゃあ。」
呼ばれても止まらない。
むしろ追いかけっこが始まったと思ったのか、さらに嬉しそうに走り回る。
ちょこみんと
「待て待てー!」
アンジェリカ
「きゃー♪」
捕まりそうになると、小さな身体をひょいっと横へかわす。
Nike
「速いですね……。」
みるく
「猫さんですね。」
ぴたぽん
「ぴょんぴょん跳ねてるぽん。」
ソファの後ろ。
テーブルの下。
クッションの陰。
小さな身体を活かして、するすると逃げ回っていく。
チノ
「すごいです……。」
ティラミス
「予想以上ですね。」
その様子を眺めていたアオロビは、小さく笑った。
アオロビ
「完全に遊びだと思ってるね。」
ローシャ
「追いかけるほど楽しくなってしまうんでしょうね。」
その時。
アンジェリカがルクレティアの後ろへ隠れた。
アンジェリカ
「るくおねぇさん!」
ルクレティアはしゃがみ込み、小さく微笑む。
ルクレティア
「かくれんぼしてるの?」
アンジェリカ
「うん!」
ルクレティア
「ふふっ。」
ルクレティア
「でもね、お風呂は逃げなくても大丈夫よ。」
優しく抱き上げようとした瞬間。
するり。
腕の間を抜けて、また元気いっぱいに走り出す。
ルクレティア
「あら。」
ちょこみんと
「るくるくでも捕まえられなかった!」
ルクレティア
「今日は本気みたいね。」
La lune bleue .は苦笑しながら、小さくため息をついた。
La lune bleue .
「完全にスイッチが入っちゃったにゃあ……。」
それでも表情はどこか嬉しそうだった。
元気に走り回る姿を見るだけで、成長を感じられるから。
アンジェリカは部屋の真ん中で立ち止まると、みんなを見回して満面の笑みを浮かべた。
アンジェリカ
「つかまえてー!」
一瞬だけ静まり返る部屋。
次の瞬間――
ちょこみんと
「よーーーし!!」
La lune bleue .
「ほどほどにするにゃあ!」
再び追いかけっこが始まった。
こうしてGleam Garden恒例(?)のお風呂戦争は、まだまだ終わる気配を見せなかった。
第3話「しゃぼんだま!」
数分後。
みんなの協力もあり、ようやくアンジェリカはお風呂場へ入ることができた。
湯気の立ち込める浴室を見回しながら、小さな瞳がきらきらと輝く。
アンジェリカ
「わぁぁ……!」
La lune bleue .
「気持ちいいにゃあ。」
湯船へ足を入れると、アンジェリカは少しだけ肩をすくめた。
アンジェリカ
「あったかい!」
ルクレティア
「そうでしょう?」
ルクレティア
「ゆっくり入ると、とっても気持ち良いのよ。」
恐る恐る湯船へ浸かる。
ぽちゃん。
アンジェリカ
「おぉー!」
初めて味わう不思議な感覚に、目を丸くした。
しばらくすると、その緊張もどこへやら。
アンジェリカ
「えいっ!」
ぱしゃっ。
小さな手でお湯を叩くと、水しぶきが飛び散る。
ちょこみんと
「あははは!」
ちょこみんと
「始まったー!」
アンジェリカ
「えい! えい!」
ぱしゃっ。
ぱしゃっ。
楽しそうにお湯を叩き続ける。
ローシャ
「すっかり遊び場ですね。」
みるく
「楽しそうで何よりです。」
その時、La lune bleue .が泡立てた石けんを見せた。
La lune bleue .
「アンジェリカ、見ててにゃあ。」
ふわふわ。
真っ白な泡が手のひらいっぱいに広がる。
アンジェリカ
「わぁぁ!」
指でつんつん。
ぷにっ。
アンジェリカ
「ふわふわ!」
La lune bleue .
「気持ちいいにゃん?」
アンジェリカ
「うん!」
今度は自分でも泡を持とうとして、小さな両手を伸ばした。
しかし――
ぽとっ。
泡はすぐに落ちてしまう。
アンジェリカ
「あれ?」
もう一度。
ぽとっ。
アンジェリカ
「?」
何度やっても泡は逃げていく。
その様子を見ていたちょこみんとは、笑いをこらえきれない。
ちょこみんと
「えへへっ! 泡さん逃げちゃうね!」
アンジェリカ
「まってー!」
泡を追いかけているうちに、自分まで泡だらけになってしまう。
Nike
「可愛らしいですね。」
ティラミス
「泡も遊び相手になっています。」
すると今度は、ルクレティアがそっと泡を丸く集めた。
ルクレティア
「アンジェちゃん。」
アンジェリカ
「?」
ルクレティア
「ほら、おひげ。」
ちょこん。
泡を口元へ乗せると、小さな白いおひげが出来上がった。
アンジェリカ
「?」
みんなの顔を見る。
次の瞬間――
ちょこみんと
「あははははっ!」
ローシャ
「ふふっ、可愛いですね。」
みるく
「似合っています。」
何が起きたか分からないアンジェリカも、つられて笑い始める。
アンジェリカ
「えへへ♪」
浴室いっぱいに笑い声が広がる。
お風呂戦争は終わったと思っていた。
けれど本当の戦いは――
まだ『髪を洗う』という最大の難関を残していた。
第4話「あたまあらうよ!」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
湯船でたくさん遊んだアンジェリカは、すっかりご機嫌だった。
La lune bleue .
「それじゃあ次は、髪を洗うにゃあ。」
アンジェリカ
「?」
小さく首をかしげる。
まだ何を言われているのか分かっていない。
ルクレティア
「すぐ終わるから大丈夫よ。」
La lune bleue .がシャワーを手に取る。
その瞬間だった。
シャーーーッ。
アンジェリカ
「!!」
耳がぴんっと立つ。
アンジェリカ
「いやー!」
ぴょこん!
湯船の反対側へ素早く逃げる。
ちょこみんと
「あっ! 第二ラウンドだ!」
ローシャ
「まだ終わっていませんでしたか。」
アンジェリカは湯船の縁へしがみつき、小さく首を横へ振る。
アンジェリカ
「やー! やー!」
La lune bleue .
「怖くないにゃあ。」
優しく声を掛けても、ぶんぶんと首を振るばかり。
どうやらシャワーの音に驚いてしまったらしい。
みるく
「急に音がしたから、びっくりしたんですね。」
Nike
「初めてなら当然かもしれません。」
La lune bleue .はシャワーを止めると、アンジェリカの目線までしゃがみ込んだ。
La lune bleue .
「アンジェリカ。」
La lune bleue .
「ままも一緒だから大丈夫にゃあ。」
優しく頭を撫でる。
その声を聞いているうちに、アンジェリカの表情も少しずつ落ち着いていった。
アンジェリカ
「……まま。」
La lune bleue .
「うん。」
La lune bleue .
「ずっと一緒にいるにゃあ。」
小さく頷くアンジェリカ。
その様子を見て、ルクレティアが桶へお湯を汲んだ。
ルクレティア
「今日はシャワーじゃなくて、お湯で流しましょうか。」
Nike
「その方が安心できそうですね。」
ルクレティアは少しだけお湯を手に取り、自分の腕へかける。
ルクレティア
「ほら、温かいだけよ。」
アンジェリカも恐る恐る指先で触れてみる。
アンジェリカ
「あったかい……。」
ルクレティア
「そうでしょう?」
ルクレティア
「怖くないわ。」
La lune bleue .も優しく笑う。
La lune bleue .
「一緒にやってみるにゃあ。」
アンジェリカ
「……うん。」
今度は逃げなかった。
優しく髪を濡らし、少しずつ泡立てていく。
アンジェリカ
「ふわふわ……。」
La lune bleue .
「今日はとってもお利口さんにゃあ。」
アンジェリカ
「えへへ♪」
洗い終えると、ルクレティアが柔らかいタオルを用意して待っていた。
ルクレティア
「よく頑張ったわね。」
頭を優しく拭いてもらうアンジェリカは、どこか誇らしそうだった。
ちょこみんと
「すごーい! 最後まで頑張れたね!」
アンジェリカ
「がんばった!」
胸を張るその姿に、浴室は優しい笑い声でいっぱいになる。
こうして最大の難関だった髪洗いも無事に終わった。
あとは体を拭いて、お風呂上がりのお楽しみが待っている。
第5話「ぽかぽか、おやすみ」
お風呂から上がると、ふわりと温かな空気がみんなを包み込んだ。
ルクレティアは大きなバスタオルでアンジェリカを優しく包み込む。
ルクレティア
「はい、お疲れさま。」
アンジェリカ
「ぽかぽか♪」
ほかほかになった頬はほんのり桜色。
さっきまで元気いっぱいに走り回っていたとは思えないほど、どこか眠たそうな顔をしている。
La lune bleue .
「頑張ったにゃあ。」
頭を優しく撫でると、アンジェリカは嬉しそうに笑った。
アンジェリカ
「えへへ♪」
共有ルームへ戻ると、テーブルには人数分の飲み物が並んでいた。
みるく
「温かい麦茶を用意しました。」
Nike
「アンジェさんには牛乳ですね。」
アンジェリカ
「ぎゅうにゅう!」
ちょこみんと
「いっぱい頑張ったもんね!」
小さなコップを両手で持ち、一生懸命ごくごくと飲み始める。
アンジェリカ
「おいしー♪」
ローシャ
「お風呂上がりの一杯は格別ですね。」
ぴたぽん
「生き返るぽん。」
ティラミス
「体も心も温まりますね。」
アンジェリカは牛乳を飲み終えると、小さくあくびをした。
アンジェリカ
「ふぁ……。」
チノ
「眠くなってきたみたいですね。」
アオロビ
「いっぱい遊んで、お風呂も頑張ったからね。」
それでも眠気に負けたくないのか、小さな目を何度もこすっている。
こくん。
こくん。
頭が前へ揺れるたび、みんなから優しい笑みがこぼれた。
ルクレティア
「もう限界みたいね。」
La lune bleue .
「今日はいっぱい頑張ったにゃあ。」
La lune bleue .がそっと抱き上げると、アンジェリカは安心したように身体を預けた。
アンジェリカ
「……まま。」
La lune bleue .
「うん。」
La lune bleue .
「おやすみまで一緒にいるにゃあ。」
小さな手がぎゅっと服を握る。
数秒もしないうちに、その力は少しずつ抜けていった。
アンジェリカ
「……すぅ。」
静かな寝息が聞こえ始める。
ちょこみんと
「寝ちゃった。」
みるく
「可愛いですね。」
Nike
「安心しきった寝顔ですね。」
ローシャ
「今日一日が楽しかった証拠ですね。」
ルクレティア
「きっと、この子は明日も元気いっぱいなんでしょうね。」
アオロビ
「うん。」
アオロビ
「その元気を、これからもみんなで見守っていこう。」
その言葉に、誰もが静かに頷いた。
眠るアンジェリカを起こさないよう、小さな声で語り合うみんな。
その穏やかな空気を包むように、夜の静けさがゆっくりと部屋へ広がっていく。
こうして今日も、小さな『お風呂戦争』は幕を閉じた。
慌ただしくて、笑いが絶えなくて。
それでも誰にとっても、かけがえのない幸せな時間だった。
140:ちょこチノの昼帯トーク番組
(全6話)
第1話「はじめての生放送」
澄み渡る青空の下、一台のワゴン車がテレビ局の正面玄関へ静かに停まった。
ドアが開き、最初に降りたのはルクレティア。
続いて、少し緊張した表情のチノと、いつも通り元気いっぱいのちょこみんとが姿を見せる。
ちょこみんと
「うわぁー! テレビ局だー!」
チノ
「す……すごいです。」
初めて見るスタジオの大きさに、チノは思わず周囲を見回した。
ルクレティア
「今日は楽しんでいらっしゃい。」
ルクレティア
「二人らしく過ごせば、それで十分よ。」
ちょこみんと
「うんっ!」
チノ
「はい。」
入口では番組スタッフが笑顔で迎えてくれた。
スタッフ
「おはようございます! 本日はよろしくお願いします!」
ちょこみんと
「よろしくお願いしまーす!」
チノ
「よろしくお願いいたします。」
ルクレティア
「本日はお世話になります。」
スタッフに案内され、三人は控室へ向かう。
廊下では大道具スタッフが慌ただしく行き交い、生放送直前ならではの空気が流れていた。
ちょこみんと
「わぁ……テレビってこんな感じなんだ。」
チノ
「スタッフさんがたくさんいらっしゃいますね……。」
ルクレティア
「たくさんの方が協力して、一つの番組を作っているの。」
ルクレティア
「だから私たちも、感謝の気持ちを忘れずに頑張りましょうね。」
ちょこみんと
「はーい!」
チノ
「はい。」
控室へ入ると、テーブルには飲み物と台本が用意されていた。
ちょこみんと
「わぁ! 名前書いてある!」
チノ
「本当ですね……。」
自分たちの名前が書かれた台本を見つめ、チノは少しだけ表情を引き締める。
ちょこみんと
「緊張してる?」
チノ
「……少しだけです。」
ちょこみんとは、にこっと笑った。
ちょこみんと
「大丈夫!」
ちょこみんと
「いつも通りお話しすればいいんだから!」
チノ
「……そうですね。」
その言葉を聞き、チノの表情も少しだけ柔らかくなった。
ルクレティアはそんな二人を見守りながら、小さく微笑む。
ルクレティア
「二人とも。」
ルクレティア
「今日は正解を話そうとしなくて良いの。」
ルクレティア
「二人が楽しそうに笑っている姿を見てもらうことが、一番大切よ。」
ちょこみんと
「えへへ♪」
チノ
「はい。」
その時、控室のドアが軽くノックされた。
スタッフ
「本番十分前です。」
スタッフ
「スタジオへご案内します。」
ちょこみんと
「よーし!」
勢いよく立ち上がる。
その隣で、チノも深呼吸を一つした。
ルクレティア
「いってらっしゃい。」
ルクレティア
「楽しんできてね。」
ちょこみんと
「行ってきます!」
チノ
「行ってきます。」
二人は並んで控室をあとにする。
スタジオへ続く長い廊下の先からは、観覧席のお客様の賑やかな声が聞こえ始めていた。
いよいよ、生放送が始まる。
第2話「爆弾ぽいぽいトーク!」
スタジオへ足を踏み入れると、大きな拍手が二人を迎えた。
色鮮やかなセット。
観覧席にはたくさんのお客様。
生放送独特の賑やかな空気に、チノは思わず姿勢を正した。
司会者
「さぁ本日のゲストは、今話題の音楽グループ『Gleam Garden』からお越しいただきました!」
司会者
「ちょこみんとさん、チノさんです!」
スタジオ中が大きな拍手に包まれる。
ちょこみんと
「こんにちはー!」
チノ
「こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。」
司会者
「今日はお二人に来ていただきました!」
司会者
「それでは番組恒例! ぽいぽいトークのお時間です!」
軽快な音楽とともに、大きなイラストボードが運ばれてくる。
そこには今日のお題が書かれていた。
**『ちょこみんとさんは、365日ずっと元気っぽい』**
ちょこみんと
「あははは!」
司会者
「これはどうですか?」
ちょこみんと
「ぽいです!!」
スタジオが笑いに包まれる。
司会者
「即答ですね!」
ちょこみんと
「だって毎日楽しいんですもん!」
司会者
「ちなみに落ち込む日もあります?」
ちょこみんと
「もちろんあります!」
ちょこみんと
「でも寝たらだいたい元気になります!」
観覧席から大きな笑いが起こった。
司会者
「素晴らしい切り替えですね!」
続いて二枚目のボードが運ばれる。
**『チノさんは、人見知りっぽい』**
チノ
「……ぽいです。」
少し照れながら頷く。
司会者
「やっぱりそうなんですね!」
チノ
「初めてお会いする方とは、少し緊張してしまいます。」
司会者
「今はどうですか?」
チノ
「……まだ少し緊張しています。」
その素直な返事に、スタジオは優しい笑いに包まれた。
ちょこみんと
「でも仲良くなるといっぱいお話してくれるんですよ!」
チノ
「ちょ、ちょこさん……。」
司会者
「じゃあ次はこちら!」
**『ちょこみんとさんは、楽屋でもずっとしゃべってそうっぽい』**
ちょこみんと
「ぽいでーす!」
司会者
「これも即答!」
ちょこみんと
「静かだと寂しくなっちゃうんですよ〜。」
司会者
「チノさん、大丈夫なんですか?」
チノ
「はい。」
チノ
「最初は驚きましたけど……。」
司会者
「今は?」
チノ
「今は、それがいつもの楽屋なので落ち着きます。」
その言葉に、ちょこみんとの表情がぱっと明るくなる。
ちょこみんと
「ほんと!?」
チノ
「はい。」
司会者
「いいコンビですねぇ。」
観覧席からも温かな拍手が送られる。
司会者
「それでは最後の"ぽい"はこちらです!」
**『ちょこみんとさんは、チノさんに"お姉ちゃん"と呼ばれたいっぽい』**
ボードが公開された瞬間。
ちょこみんと
「それですー!!」
勢いよく立ち上がる。
スタジオ中が大爆笑。
司会者
「そんなにですか!?」
ちょこみんと
「ずーーっとお願いしてるんです!」
司会者
「チノさん、これは本当ですか?」
チノ
「……はい。」
チノ
「お願いは、されています。」
司会者
「でも、なかなか呼ばない?」
チノ
「……恥ずかしくて。」
耳まで真っ赤になったチノを見て、スタジオ中が「かわいい〜」という空気に包まれる。
ちょこみんと
「いつか呼んでくれるって信じてます!」
司会者
「これは今後も楽しみですね!」
会場は笑いと拍手でいっぱいになる。
ちょこみんとの明るさと、チノの初々しさ。
二人らしさが伝わる、温かな『ぽいぽいトーク』となった。
第3話「視聴者からのお便り」
「ぽいぽいトーク」が終わると、スタジオには再び軽快な音楽が流れ始めた。
司会者
「続いては、こちらのコーナーです!」
司会者
「視聴者の皆さんから届いたお便りをご紹介します!」
スタジオから拍手が起こる。
司会者
「今日は本当にたくさんのお便りをいただきました。」
ちょこみんと
「ありがとうございますー!」
チノ
「ありがとうございます。」
司会者
「それでは一通目はこちらです。」
『休日は、お二人で遊びに行くことはありますか?』
ちょこみんと
「あります!」
ちょこみんと
「みんなでお出掛けすることが多いよね!」
チノ
「はい。」
チノ
「誰か一人というより、みんなで出掛けることが多いです。」
司会者
「グループの仲が本当に良いんですね。」
ちょこみんと
「はい!」
司会者
「続いてはこちらです。」
『Gleam Gardenで一番賑やかな人は誰ですか?』
スタジオ中の視線が二人へ集まる。
すると二人は顔を見合わせ――
ちょこみんと
「あ。」
チノ
「あ……。」
二人同時に笑ってしまう。
司会者
「これは一致しました?」
ちょこみんと
「しました!」
チノ
「しました。」
司会者
「では、せーのでお願いします。」
ちょこみんと
「せーの!」
ちょこみんと
「わたし!」
チノ
「ちょこさんです。」
スタジオは大きな笑いに包まれた。
司会者
「本人も認めてるんですね!」
ちょこみんと
「えへへ♪」
司会者
「続いてのお便りです。」
『お互いの第一印象を教えてください。』
ちょこみんと
「チノちゃんはね。」
ちょこみんと
「すっごく可愛い子だなぁって思った!」
ちょこみんと
「守ってあげたくなる感じ!」
チノは照れながら小さく笑う。
チノ
「ありがとうございます……。」
司会者
「ではチノさんは?」
チノ
「最初は、とても明るい方だと思いました。」
チノ
「でも一緒に過ごしてみると……。」
司会者
「過ごしてみると?」
チノ
「思っていた以上に優しくて。」
チノ
「みんなのことを、いつも考えている方なんだなと思いました。」
観覧席から温かな拍手が送られる。
ちょこみんとは少し照れくさそうに頭を掻いた。
ちょこみんと
「えへへ……。」
司会者
「それでは最後のお便りです。」
『チノさんは、いつか"ちょこお姉ちゃん"と呼ぶ日は来ますか?』
スタジオが再び笑いに包まれる。
ちょこみんと
「きたーーーっ!」
司会者
「やっぱり皆さん気になるみたいですね。」
チノは顔を真っ赤にしながら、小さく俯いた。
司会者
「どうでしょう?」
チノ
「…………。」
数秒考えたあと、小さく微笑む。
チノ
「……いつか。」
その一言だけだった。
けれど。
ちょこみんと
「ほんと!?」
目を輝かせながら身を乗り出す。
チノ
「……はい。」
チョコみんと
「約束だからね!」
チノ
「……が、頑張ります。」
照れ笑いするチノと、大喜びするちょこみんと。
その微笑ましいやり取りに、スタジオ中が温かな拍手と笑顔に包まれた。
司会者
「本当に仲の良いお二人でした!」
視聴者からのお便りは、二人の素顔をたくさん引き出してくれた時間となった。
第4話「チャレンジコーナー!」
視聴者からのお便りコーナーが終わると、スタジオには軽快な音楽が流れ始めた。
司会者
「まだまだ終わりません!」
司会者
「続いては、お二人にチャレンジしていただきます!」
拍手が起こる中、大きなボードが運ばれてくる。
司会者
「今回のゲームはこちら!」
司会者
「以心伝心チャレンジ!」
ちょこみんと
「やったー!」
チノ
「以心伝心……ですか?」
司会者
「お題を見て、お二人が同じ答えを書けたら成功です!」
司会者
「それでは第一問!」
『春といえば?』
それぞれがフリップへ書き始める。
司会者
「オープン!」
ちょこみんと
『さくら』
チノ
『桜』
司会者
「おおーーっ!!」
観覧席から大きな拍手が起こる。
ちょこみんと
「やったー!」
チノ
「良かったです。」
司会者
「息ぴったりですね!」
司会者
「続いて第二問!」
『一番好きな時間は?』
再び二人がフリップへ書く。
司会者
「オープン!」
ちょこみんと
『みんなであそぶじかん!』
チノ
『みんなと過ごす時間』
司会者
「これも正解でいいでしょう!」
スタジオから温かな拍手が送られる。
司会者
「お二人とも答えが似ていますね。」
チョコみんと
「だって一番楽しいもん!」
チノ
「はい。」
チノ
「皆さんと一緒にいる時間が、一番落ち着きます。」
司会者
「それでは最後の問題です!」
『今、一番伝えたいことは?』
少しだけ真剣な表情になる二人。
ゆっくりとペンを動かし、フリップを伏せた。
司会者
「それでは、オープン!」
ちょこみんと
『ありがとう!』
チノ
『ありがとうございます』
一瞬静まり返ったあと、スタジオは大きな拍手に包まれた。
司会者
「これは素敵ですね。」
司会者
「どなたへ向けた"ありがとう"ですか?」
ちょこみんと
「いつも応援してくれるみんなです!」
チノ
「応援してくださる皆さんのおかげで、今日こうして出演できています。」
チノ
「本当にありがとうございます。」
観覧席からさらに大きな拍手が送られる。
司会者
「お二人とも、本当に素敵なお人柄ですね。」
その言葉に、ちょこみんとは少し照れながら笑った。
ちょこみんと
「えへへ♪」
その隣で、チノも小さく微笑む。
控室のモニター越しに見守っていたルクレティアも、安心したように微笑んでいた。
ルクレティア
「二人とも、本当に自分たちらしく頑張っているわね。」
番組はいよいよエンディングへ。
生放送も、残すところあとわずかとなった。
第5話「ありがとうございました!」
チャレンジコーナーも無事に終わり、生放送はいよいよエンディングを迎えた。
司会者
「今日は本当に楽しい時間をありがとうございました!」
司会者
「最後に、お二人から視聴者の皆さんへ一言お願いします。」
マイクが二人へ向けられる。
ちょこみんとは、いつもの笑顔で前を向いた。
ちょこみんと
「今日は見てくださって、本当にありがとうございました!」
ちょこみんと
「すっごく楽しかったです!」
ちょこみんと
「また遊びに来られるように頑張ります!」
会場から大きな拍手が起こる。
続いて、チノがゆっくりとマイクを持った。
チノ
「本日はありがとうございました。」
チノ
「最初はとても緊張していました。」
チノ
「でも、皆さんが温かく迎えてくださったおかげで、最後まで楽しくお話しすることができました。」
チノ
「これからもGleam Gardenをよろしくお願いいたします。」
観覧席から、再び温かな拍手が送られる。
司会者
「本日のゲストは、Gleam Gardenのちょこみんとさん、チノさんでした!」
司会者
「ありがとうございました!」
スタジオいっぱいに拍手が響く中、生放送は無事に終了した。
控室へ戻ると、スタッフの皆さんが笑顔で迎えてくれた。
スタッフ
「お疲れさまでした!」
スタッフ
「とても楽しい放送になりました!」
ちょこみんと
「ありがとうございましたー!」
チノ
「ありがとうございました。」
そこへルクレティアも静かに歩み寄る。
ルクレティア
「二人とも、お疲れさま。」
ちょこみんと
「るくるくー!」
勢いよく駆け寄るちょこみんとを、ルクレティアは優しく受け止める。
ルクレティア
「最後まで二人らしく頑張れたわね。」
ちょこみんと
「うん!」
ルクレティア
「チノちゃんも、とても素敵だったわ。」
チノ
「ありがとうございます。」
チノ
「まだ緊張はしていましたけど……。」
ルクレティア
「その緊張も含めて、チノちゃんらしさだったわ。」
その言葉に、チノは少し照れながら微笑んだ。
テレビ局を出る頃には、空は夕焼け色へ変わり始めていた。
ちょこみんと
「楽しかったねー!」
チノ
「はい。」
チノ
「テレビって、もっと緊張する場所だと思っていました。」
ちょこみんと
「でも、いっぱい笑えたでしょ?」
チノ
「……はい。」
自然と笑みがこぼれる。
ルクレティア
「今日の二人なら、きっと画面の向こうの皆さんにも笑顔が届いているわ。」
ちょこみんと
「えへへ♪」
チノ
「そうだったら嬉しいです。」
夕暮れの風が優しく吹き抜ける。
その風を感じながら、三人は並んで歩き始めた。
テレビ局で過ごした一日は、緊張も笑顔も詰まった、かけがえのない思い出になった。
そしてまた一つ、Gleam Gardenの物語に新しい一ページが刻まれた。
第6話「みんなの声」
テレビ出演から数日後。
Gleam Gardenの共有ルームでは、いつもの穏やかな時間が流れていた。
ソファへ座るちょこみんとが、スマートフォンを片手に嬉しそうな声を上げる。
ちょこみんと
「あっ! 番組の感想いっぱい来てる!」
アオロビ
「もうそんなに?」
ちょこみんと
「すごいよ!」
その声に、みんなも自然と集まってきた。
ローシャ
「エゴサ大会ですね。」
ルクレティア
「良い感想も、厳しい感想も、どちらも大切なご意見ね。」
Nike
「まずは感謝しながら読みましょう。」
ちょこみんと
「はーい!」
ちょこみんとは最初の感想を読み始めた。
ちょこみんと
「『初めてGleam Gardenを知りました! 二人とも可愛かったです!』」
ちょこみんと
「やったー!」
チノ
「ありがとうございます……。」
少し照れながら、小さく頭を下げる。
みるく
「初めて知ってくださる方が増えたんですね。」
アオロビ
「テレビの力は大きいね。」
続いて、ローシャが別の感想を見つける。
ローシャ
「こちらは……。」
ローシャ
「『ちょこみんとさん、テレビでも元気いっぱいで見ていて楽しかった!』」
ちょこみんと
「えへへ〜♪」
ぴたぽん
「そのまんまだぽん。」
部屋中が笑いに包まれる。
今度はチノが画面を覗き込んだ。
チノ
「あっ……。」
チノ
「『チノさんが笑ったところで、つられて笑顔になりました。』」
思わず目を丸くする。
チノ
「……嬉しいです。」
ルクレティア
「ちゃんと伝わっていたのね。」
La lune bleue .も嬉しそうに尻尾を揺らした。
La lune bleue .
「チノさんの優しさが、そのまま映ってたにゃあ。」
さらに読み進める。
アオロビ
「これも素敵だね。」
アオロビ
「『二人を見ていたら、Gleam Gardenというグループがもっと好きになりました。』」
その一文に、部屋は少しだけ静かになった。
ちょこみんと
「……。」
チノ
「……。」
顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれる。
ルクレティア
「二人だけじゃない。」
ルクレティア
「Gleam Gardenという家族を見てもらえたのね。」
アオロビ
「うん。」
アオロビ
「それが一番嬉しいかもしれない。」
その時、小さな足音が近付いてきた。
アンジェリカ
「なにしてるのー?」
ちょこみんと
「あんじぇちゃん!」
ちょこみんと
「みんなから、お手紙みたいなの読んでるんだよ!」
アンジェリカ
「おてがみ?」
La lune bleue .
「みんなが応援してくれてるにゃあ。」
アンジェリカ
「おー!」
意味はまだ分からない。
それでも、みんなが笑顔だから。
アンジェリカも嬉しそうに笑った。
アンジェリカ
「えへへ♪」
その笑顔につられて、部屋中に笑顔が広がる。
ルクレティア
「これからも、一歩ずつ歩いていきましょう。」
ルクレティア
「応援してくださる皆さんへの感謝を忘れずに。」
みんな
「はい!」
その返事は、いつもより少しだけ力強かった。
画面の向こうから届いたたくさんの温かい言葉は、Gleam Gardenのみんなの背中を、そっと優しく押してくれていた。
141:Rosha’s Garden Letter
第三回放送(全5話+特別1話)
第1話「本日のゲスト」
昼。
都内某所。
ラジオ局。
放送開始三十分前。
ローシャ
「おはようございます。」
スタジオへ入り、スタッフ一人ひとりへ軽く頭を下げる。
スタッフ
「おはようございます!」
もう三回目。
スタジオへ入る足取りにも、少し余裕が生まれていた。
机の上には進行表。
今日紹介するお便り。
そして、一枚だけ別の資料が置かれている。
『本日のゲスト』
ローシャ
「今日は一人じゃないのね。」
ディレクター
「はい。」
「リスナーの皆さんからも、ゲスト回のご要望をたくさんいただいていました。」
ローシャ
「そう。」
「それは嬉しいわね。」
ディレクター
「それと今日は。」
一冊の資料を開く。
そこには。
『映画 指輪』
『映画 消えた涙』
ローシャ
「今日は、そのお話もするのね。」
ディレクター
「はい。」
「主演を務めた感想を、ぜひラジオで聞いてみたいというお便りも数多く届いています。」
ローシャ
「私も聞いてみたかったの。」
「ちょうど良かったわ。」
その時。
スタジオの扉が開く。
ちょこみんと
「おはよーー!」
いつもの元気な声がスタジオへ響く。
ローシャ
「おはよう。」
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ!」
「今日はよろしくね!」
ローシャ
「こちらこそ。」
スタッフ達も自然と笑顔になる。
ディレクター
「本日はよろしくお願いします。」
ちょこみんと
「よろしくお願いしまーす!」
席へ座る。
ヘッドホンを手に取り。
マイクを眺める。
ちょこみんと
「ラジオって何回来てもワクワクする!」
ローシャ
「ちょこさんらしいわね。」
ちょこみんと
「ろしゃろしゃは?」
ローシャ
「少しだけ緊張してるわ。」
ちょこみんと
「私は全然!」
ローシャ
「それもちょこさんらしいわ。」
二人で小さく笑う。
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
Bluetoothスピーカーが机の上へ置かれる。
アオロビ
「今日はちょこ姉回だね。」
ティラミス
「賑やかになりそう。」
みるく
「映画のお話も聞けそうですねぇ。」
La lune bleue .
「今日はみんとさんがゲストにゃ。」
アンジェリカ
「みんとしゃん!」
La lune bleue .
「一緒に聞こうにゃ。」
アンジェリカ
「うん!」
ぴたぽん
「今日は笑いそうぽん〜。」
Nike
「楽しみですね。」
チノ
「映画のお話は、私も気になります。」
ルクレティア
「今日はリズさんも聞き役に回るでしょうね。」
アオロビ
「二人の掛け合い、結構好きなんだよね。」
ティラミス
「私も。」
その頃。
ラジオ局。
ディレクターがガラス越しに親指を立てる。
スタッフ。
カウントダウン。
三。
二。
一。
──ON AIR。
ローシャ
「こんにちは。」
ローシャ
「『Rosha's Garden Letter』のお時間です。」
ローシャ
「パーソナリティのローシャです。」
少し間を置く。
ローシャ
「そして今日は。」
隣を見る。
ちょこみんとも笑顔で頷く。
ローシャ
「Gleam Gardenから、とても素敵なゲストに来ていただきました。」
ちょこみんと
「こんにちはー!」
「ちょこみんとです!」
「今日はよろしくお願いしまーす!」
ローシャ
「今日は皆さんから届いたお便りをご紹介しながら。」
「映画のお話や、普段のお話もゆっくり伺っていこうと思います。」
ちょこみんと
「いっぱいお話するよー!」
スタジオには。
いつもより少し明るく、優しい笑い声が広がった。
第2話「Garden Letter」
♪ オープニングジングル ♪
ローシャ
「改めまして。」
「『Rosha's Garden Letter』、パーソナリティのローシャです。」
ローシャ
「今日はGleam Gardenから、ちょこさんに来ていただいています。」
ちょこみんと
「こんにちはー!」
「改めまして、ちょこみんとです!」
「よろしくお願いしまーす!」
ローシャ
「今日は皆さんから届いたお便りをご紹介しながら、お話を伺っていこうと思います。」
ちょこみんと
「いっぱい届いてるかなぁ?」
ローシャ
「ええ。」
「今日もたくさん届いているわ。」
机の上のお便りへ手を添える。
ローシャ
「それでは最初のお便りです。」
一枚目を手に取る。
ローシャ
「ラジオネーム、『ひまわり日和』さんからいただきました。」
ローシャ
「『ちょこみんとさん、こんにちは。』」
ローシャ
「『テレビやライブではいつも元気いっぱいですが、お休みの日も同じなんですか?』」
ちょこみんと
「あはは!」
「ほとんど同じかも!」
ローシャ
「そうなのね。」
ちょこみんと
「朝起きたら、とりあえず動きたくなる!」
「お散歩したり、お買い物したり!」
「家でじっとしてる日は少ないかなぁ。」
ローシャ
「なるほど。」
少し笑う。
ローシャ
「想像通りだったわ。」
ちょこみんと
「えー!」
「ろしゃろしゃ、ひどーい!」
スタジオに笑いが広がる。
ローシャ
「褒めているのよ。」
ちょこみんと
「ならいい♪」
スタッフも思わず笑う。
ローシャ
「続いてのお便りです。」
二枚目を手に取る。
ローシャ
「ラジオネーム、『昼休みの音楽好き』さん。」
ローシャ
「『Gleam Gardenの皆さんは本当に仲が良いですが、ちょこみんとさんが最近一番笑った出来事を教えてください。』」
ちょこみんと
「いっぱいあるなぁ。」
少し考える。
ちょこみんと
「最近だとね。」
「あんじぇちゃんと遊んでた時かな!」
ローシャ
「アンジェさん?」
ちょこみんと
「うん!」
「お絵描きして遊んでたんだけど。」
「私より上手だった!」
ローシャ
「ふふっ。」
ちょこみんと
「しかもね!」
「『ちょこおねぇさん、できたー!』って見せてくれるの!」
「もう可愛くて可愛くて!」
ローシャ
「その様子が目に浮かぶわ。」
ちょこみんと
「すっごく癒やされたよー!」
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
La lune bleue .
「アンジェリカ。」
「褒められてるにゃ。」
アンジェリカ
「えへへー♪」
アオロビ
「本人嬉しそう。」
ティラミス
「照れてる。」
アンジェリカは少し照れながらLa lune bleue .へ抱きつく。
その様子を見て。
みんなが優しく笑った。
ラジオ局。
ローシャ
「もう一通、ご紹介します。」
三枚目のお便り。
ローシャ
「ラジオネーム、『午後のカフェオレ』さん。」
ローシャ
「『ちょこみんとさんが落ち込んだ時、元気を出す方法はありますか?』」
ちょこみんと
「あるよ!」
即答だった。
ちょこみんと
「誰かとお話する!」
「一人で考え込むより。」
「みんなと笑ってる方が元気になるの!」
ローシャ
「アナタらしい答えね。」
ちょこみんと
「えへへ♪」
ローシャ
「私も、その方がちょこさんらしいと思うわ。」
少し間を置く。
ローシャ
「さて。」
「この後は。」
「皆さんから特に多く届いていた質問へ移ろうと思います。」
ちょこみんと
「おっ?」
ローシャ
「映画のお話です。」
ちょこみんと
「あっ……。」
一瞬だけ。
表情が少し変わる。
スタジオの空気も。
少しだけ静かになった。
第3話「映画という景色」
♪ ジングル ♪
ローシャ
「ここからは、『Blooming Talk』のコーナーです。」
ローシャ
「今日は、ちょこさんに映画のお話を伺っていこうと思います。」
ちょこみんと
「よろしくお願いしまーす!」
ローシャ
「それでは、こちらのお便りです。」
一枚のお便りを手に取る。
ローシャ
「ラジオネーム、『銀幕の花束』さん。」
ローシャ
「『ちょこみんとさんは、映画『指輪』と『消えた涙』という、まったく違う作品で主演を務められました。』」
ローシャ
「『演じる時の気持ちに違いはありましたか?』」
スタジオが少し静かになる。
ちょこみんと
「全然違ったかなぁ。」
少し考える。
ちょこみんと
「『指輪』はね。」
「乾梨沙ちゃんの気持ちを、一歩ずつ追い掛けていく感じだったの。」
「私も一緒に答えを探してるような毎日だった。」
ローシャ
「ええ。」
静かに頷く。
ちょこみんと
「でも。」
「『消えた涙』は違って。」
「守永愛ちゃんの心が、少しずつ変わっていくのを演じるのが本当に難しかった。」
少し間。
ちょこみんと
「撮影が終わった日は。」
「しばらく何も考えられなかったもん。」
ローシャ
「……そうだったのね。」
ちょこみんと
「うん。」
「どっちも大好きな作品だけど。」
「終わった後の気持ちは、本当に違ったなぁ。」
ローシャ
「私も二作品を拝見して。」
「まったく別の人物がそこにいるように感じたわ。」
ちょこみんと
「本当?」
ローシャ
「ええ。」
「乾梨沙として笑って。」
「守永愛として苦しんでいた。」
「そんな印象だった。」
ちょこみんと
「えへへ……。」
少し照れたように笑う。
ローシャ
「続いてのお便りです。」
もう一枚を開く。
ローシャ
「ラジオネーム、『スクリーンの向こう側』さん。」
ローシャ
「『今後も映画へ出演する予定はありますか?』」
ちょこみんと
「どうだろう?」
笑いながら首を傾げる。
ちょこみんと
「お話をいただけたら嬉しいけど。」
「まずはGleam Gardenのみんなと音楽を届けることが一番だから。」
「その上で、また素敵な作品に出会えたらいいなって思ってる!」
ローシャ
「音楽も映画も。」
「どちらも大切なのね。」
ちょこみんと
「うん!」
「どっちも私にとって大事な宝物!」
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
アオロビ
「ちょこ姉らしい答え。」
ティラミス
「うん。」
Nike
「安心しました。」
La lune bleue .
「みんとさんらしいにゃ。」
アンジェリカ
「ちょこおねぇさん、かっこいい!」
ちょこみんとの声を聞きながら。
共有ルームには穏やかな空気が流れていた。
ラジオ局。
ローシャ
「映画のお話を聞いていると。」
「またスクリーンでお二人に会いたくなるわね。」
ちょこみんと
「えへへ。」
「その時は、また見に来てね!」
ローシャ
「もちろん。」
「さて。」
「この後は、番組恒例。」
「リスナーの皆さんから届いた、少し変わった質問にもお答えしていきます。」
ちょこみんと
「来た!」
スタジオには再び笑い声が広がった。
第4話「Blooming Music」
♪ ジングル ♪
ローシャ
「ここからは、『Blooming Music』のコーナーです。」
ローシャ
「Gleam Gardenの音楽について、少しゆっくりお話ししていきます。」
ローシャ
「今日はゲストにちょこさんが来てくださっていますので。」
ローシャ
「やっぱり、この曲のお話は外せないかしら。」
ちょこみんと
「おっ?」
ローシャ
「『Sunflower Party』です。」
ちょこみんと
「きたー!」
スタジオに明るい笑いが広がる。
ローシャ
「ラジオネーム、『ひまわり畑のギター』さんからいただきました。」
ローシャ
「『Sunflower Partyを聴くと、自然と元気が出ます。』」
ローシャ
「『ちょこみんとさんは、どんな気持ちで歌っていますか?』」
ちょこみんと
「嬉しいー!」
ちょこみんと
「えっとね。」
ちょこみんと
「聴いてくれた人が、ちょっとでも笑顔になってくれたらいいなって思って歌ってる!」
ローシャ
「ちょこさんらしい答えね。」
ちょこみんと
「えへへ♪」
ちょこみんと
「わたし、楽しい曲って大好きなんだけど。」
ちょこみんと
「ただ楽しいだけじゃなくて。」
ちょこみんと
「明日もちょっと頑張ろうって思える曲にしたいなって思ったの。」
ローシャ
「ただ明るいだけではなくて。」
ローシャ
「背中を押す明るさなのね。」
ちょこみんと
「そう!」
ちょこみんと
「さすがろしゃろしゃ!」
ローシャ
「ありがとうございます。」
少し照れたように笑う。
ローシャ
「続いてのお便りです。」
ローシャ
「ラジオネーム、『昼休みの弦』さん。」
ローシャ
「『ちょこみんとさんはギターも担当されていますが、ギターを弾いている時と歌っている時で気持ちは違いますか?』」
ちょこみんと
「違うかも!」
ちょこみんと
「歌ってる時は、みんなに向かって気持ちを届ける感じ!」
ちょこみんと
「ギターを弾いてる時は、みんなと一緒に走ってる感じ!」
ローシャ
「一緒に走っている。」
ローシャ
「素敵な表現ね。」
ちょこみんと
「ほんと?」
ローシャ
「ええ。」
ローシャ
「ちょこさんの音は、前へ進む力があると思うわ。」
ちょこみんと
「わぁ……。」
ちょこみんと
「なんか照れる!」
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
スピーカーから流れる二人の声を、メンバー達が静かに聴いていた。
アオロビ
「ローシャさん、ちゃんと引き出してるね。」
ティラミス
「番組として安定してる。」
みるく
「ちょこさんも楽しそうですね。」
La lune bleue .
「みんとさんの声、明るいにゃあ。」
ぴたぽん
「ちょこしゃんらしいぽん。」
チノ
「ちょこさんの良さが、きちんと伝わっていますね。」
Nike
「音楽の話になると、皆さん自然に表情が変わりますね。」
ルクレティア
「リズさんも、ちょこちゃんも、自分の言葉で話せているわ。」
ルクレティア
「それが一番いいのよ。」
アンジェリカ
「ちょこおねぇさん、こえ、にこにこ!」
La lune bleue .
「そうにゃあ。」
La lune bleue .
「みんとさんの声は、にこにこしてるにゃん。」
アンジェリカ
「にこにこー!」
共有ルームに、優しい笑いが広がった。
ラジオ局。
ローシャ
「もう一通、ご紹介します。」
ローシャ
「ラジオネーム、『夏色の帰り道』さん。」
ローシャ
「『One More Summerが大好きです。』」
ローシャ
「『Sunflower Partyとは違う、少し切ないちょこみんとさんの歌声に驚きました。』」
ローシャ
「『歌う時に意識したことはありますか?』」
ちょこみんと
「うわぁ……。」
ちょこみんと
「嬉しいなぁ。」
少しだけ、声が柔らかくなる。
ちょこみんと
「『One More Summer』はね。」
ちょこみんと
「楽しかった夏が終わっちゃう時の、ちょっと寂しい感じを大事にしたの。」
ローシャ
「ええ。」
ちょこみんと
「でも、寂しいだけじゃなくて。」
ちょこみんと
「また会えるよねって気持ちも入れたかった。」
ローシャ
「ちょこさんの歌には。」
ローシャ
「寂しさの中にも、必ず希望が残っている気がするわ。」
ちょこみんと
「そうかな?」
ローシャ
「ええ。」
ローシャ
「それが、ちょこさんらしさだと思う。」
ちょこみんと
「えへへ……。」
ちょこみんと
「なんか今日、ろしゃろしゃにいっぱい褒められてる!」
ローシャ
「褒めるところが多いから困っているのよ。」
ちょこみんと
「えぇー!」
スタジオに笑いが起こる。
ローシャ
「でも、本当にそう思っているわ。」
ローシャ
「映画でも、音楽でも。」
ローシャ
「ちょこさんは、見ている人や聴いている人へ、何かを届けようとしている。」
ローシャ
「それはきっと、ずっと変わらない部分なのだと思います。」
ちょこみんと
「……うん。」
ちょこみんと
「わたし、みんなに笑ってほしいんだと思う。」
ちょこみんと
「ライブでも。」
ちょこみんと
「映画でも。」
ちょこみんと
「ラジオでも。」
ちょこみんと
「見てくれた人が、ちょっとでも元気になってくれたら嬉しいなって。」
ローシャ
「それが、ちょこさんの表現の根っこなのね。」
ちょこみんと
「うん!」
ローシャ
「今日は、とても良いお話を聞けました。」
ローシャ
「ありがとうございます。」
ちょこみんと
「こちらこそ!」
♪ ジングル ♪
ローシャ
「番組も、そろそろエンディングのお時間です。」
ローシャ
「最後まで、もう少しだけお付き合いください。」
第5話「エンディング」
♪ エンディングテーマ ♪
ローシャ
「さて、あっという間にお別れのお時間です。」
ちょこみんと
「早かったー!」
ローシャ
「本当にあっという間でしたね。」
ちょこみんと
「もっと話したかった!」
ローシャ
「ふふっ。」
ローシャ
「今日は、映画のお話から音楽のお話まで。」
ローシャ
「ちょこさんらしいお話をたくさん聞くことができました。」
ちょこみんと
「えへへ♪」
ちょこみんと
「すっごく楽しかった!」
ローシャ
「私もです。」
ローシャ
「ラジオは、お互いのことをゆっくり知ることができる場所なのだと、改めて感じました。」
ちょこみんと
「ライブだと勢いがあるし!」
ちょこみんと
「映画は役になっちゃうし!」
ちょこみんと
「ラジオは、そのままのわたしで話せる感じ!」
ローシャ
「そうですね。」
ローシャ
「だからこそ、今日のお話はとても温かかったです。」
ちょこみんと
「また呼んでね!」
ローシャ
「もちろんです。」
ローシャ
「また遊びに来てください。」
ちょこみんと
「やったー!」
スタジオに穏やかな笑いが広がる。
ローシャ
「それでは最後に。」
ローシャ
「今日お便りを送ってくださった皆様。」
ローシャ
「そして最後まで聴いてくださった皆様。」
ローシャ
「本当にありがとうございました。」
ちょこみんと
「ありがとうございましたー!」
その頃。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
ラジオのエンディングを、みんな静かに聴いていた。
みるく
「もう終わりなんですねぇ。」
ぴたぽん
「早かったぽん〜。」
La lune bleue .
「楽しかったにゃあ。」
チノ
「とても心地良い時間でした。」
Nike
「お二人とも自然体でしたね。」
ティラミス
「二人とも話しやすそうだった。」
アオロビ
「ローシャさんらしい番組だったね。」
ルクレティア
「ええ。」
ルクレティア
「リズさんらしい、とても優しい時間だったわ。」
アンジェリカ
「ろまおねぇさん、おはなし、じょうず!」
La lune bleue .
「そうにゃん。」
La lune bleue .
「ロマンさんらしい番組だったにゃあ。」
アンジェリカ
「またききたい!」
ルクレティア
「きっと、またあるわよ。」
アンジェリカ
「ほんと?」
ルクレティア
「ええ。」
優しく微笑む。
ラジオ局。
ローシャ
「それでは。」
ローシャ
「ここまでのお相手は、ローシャでした。」
ちょこみんと
「ゲストの、ちょこみんとでしたー!」
ローシャ
「また次回、お会いしましょう。」
ちょこみんと
「ばいばーい!」
♪ エンディングテーマ ♪
赤いランプが消える。
収録終了。
スタッフから拍手が起こる。
スタッフ
「お疲れさまでした!」
ちょこみんと
「ありがとうございました!」
ローシャ
「ありがとうございました。」
ヘッドホンを外しながら、ちょこみんとが笑う。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ!」
ローシャ
「はい?」
ちょこみんと
「また出たい!」
ローシャ
「ぜひ。」
ローシャ
「その時は、またゆっくりお話ししましょう。」
ちょこみんと
「約束ね!」
ローシャ
「ええ、約束です。」
二人は笑顔で握手を交わした。
こうして。
『Rosha's Garden Letter』第3回は、
穏やかな春の余韻を残しながら、
静かに幕を閉じた。
特別編 第6話「二人のラジオ、その反響」
数日後。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
ローシャがノートパソコンを開いていた。
その隣では。
ちょこみんとが落ち着かない様子で歩き回っている。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ。」
ローシャ
「はい?」
ちょこみんと
「見る?」
ローシャ
「見ます?」
ちょこみんと
「……見る。」
アオロビ
「結局見るんだ。」
ちょこみんと
「気になるもん!」
ルクレティア
「ほどほどにね。」
ちょこみんと
「はーい。」
ローシャ
「では。」
ローシャが感想ページを開く。
画面には、放送を聴いた人たちの感想が次々と並んでいた。
『二人とも自然体で癒やされた。』
『昼に聴くには最高のラジオだった。』
『ローシャさんの声、落ち着く。』
『ちょこみんとさん、本当に太陽みたい。』
みるく
「素敵な感想ばかりですねぇ。」
Nike
「お二人の雰囲気が、そのまま伝わっています。」
さらに画面をスクロールする。
『この二人、相性良すぎる。』
『会話が自然でずっと聴いていたい。』
『またゲストに来てほしい。』
ぴたぽん
「大好評ぽん〜。」
La lune bleue .
「嬉しいにゃあ。」
ローシャ
「ありがとうございます。」
静かに微笑む。
ちょこみんと
「えへへ。」
少し照れくさそうだった。
その時。
アオロビが別の投稿を見つける。
アオロビ
「これ、ローシャさん。」
ローシャ
「何でしょう?」
画面には。
『ローシャさん、聞き役が本当に上手。』
『安心して話せる空気を作る人なんだなって思った。』
『ゲストの良さを引き出すラジオだった。』
ローシャ
「……。」
少しだけ照れる。
ローシャ
「ありがたいですね。」
ルクレティア
「リズさんらしいわ。」
ローシャ
「ありがとうございます。」
さらに。
ちょこみんとが画面を覗き込む。
ちょこみんと
「わっ!」
ローシャ
「どうしました?」
ちょこみんと
「これ!」
画面には。
『ちょこみんとさん、映画の主演とはまた違う魅力だった。』
『普段の笑顔とのギャップが最高。』
『またラジオ出演してほしい。』
ちょこみんと
「うわぁ……。」
顔が真っ赤になる。
アオロビ
「ちょこ姉らしかった。」
ちょこみんと
「ほんと?」
アオロビ
「うん。」
「飾ってなかった。」
短い言葉だった。
でも。
ちょこみんとは嬉しそうに笑った。
その頃。
アンジェリカが、ローシャの膝へ登ってくる。
アンジェリカ
「ろまおねぇさん。」
ローシャ
「はい、アンジェさん。」
アンジェリカ
「またらじお、して?」
ローシャ
「ええ。」
「またお届けします。」
アンジェリカ
「やったぁ!」
La lune bleue .
「アンジェリカもファン第一号にゃあ。」
部屋に笑いが広がる。
ルクレティア
「リズさん。」
ローシャ
「はい?」
ルクレティア
「これからも続けていきましょう。」
ローシャ
「ええ。」
「皆さんに、ほっと一息つける時間を届けられるよう頑張ります。」
ちょこみんと
「次も呼んでね!」
ローシャ
「もちろんです。」
「その時は、またゆっくりお話ししましょう。」
ちょこみんと
「約束!」
二人は笑顔でハイタッチした。
『Rosha's Garden Letter』。
その優しい時間は、
少しずつ、
たくさんの人の日常へ、
静かに根付いていくのだった。
142:星に願いを
七夕。
午後。
Gleam Garden事務所。
共有ルーム。
窓際には大きな笹が飾られていた。
色とりどりの短冊。
まだ数枚だけ。
風に揺れている。
その頃。
ちょこみんと。
目を輝かせる。
ちょこみんと
「わぁー!」
「七夕だー!」
ぴたぽん
「立派な笹ぽん〜。」
みるく
「綺麗ですねぇ……。」
アンジェリカ
「ささー!」
「おおきい!」
嬉しそうに見上げる。
ルクレティア。
優しく微笑む。
ルクレティア
「せっかくだもの。」
「皆で願い事を書きましょう。」
ローシャ
「いいですね。」
「七夕らしくて素敵です。」
短冊が配られる。
それぞれ。
ペンを持つ。
静かな時間。
カリカリ。
文字を書く音だけが響く。
その頃。
ちょこみんと。
横を見る。
ちょこみんと
「あおちー!」
アオロビ
「何?」
ちょこみんと
「何書いた?」
アオロビ
「秘密。」
ちょこみんと
「えー!」
アオロビ
「願い事だから。」
ちょこみんと
「気になるー。」
ローシャ。
小さく笑う。
ローシャ
「では。」
「せっかくですし、発表しませんか?」
ちょこみんと
「する!」
全員が頷く。
最初は。
ちょこみんと。
短冊を掲げる。
『みんなでずっと笑っていられますように』
ちょこみんと
「これ!」
アオロビ。
少しだけ笑う。
アオロビ
「ちょこ姉らしい。」
ちょこみんと
「えへへ。」
次は。
アオロビ。
『Gleam Gardenのみんなが元気で過ごせますように』
ちょこみんと
「ほら!」
「あおちーも同じじゃん!」
アオロビ
「少しだけね。」
照れくさそうに笑った。
ティラミス。
短冊を見せる。
『美しい音楽に、たくさん出会えますように』
ローシャ
「ティラさんらしいですね。」
ティラミス
「うん。」
「綺麗なものは、たくさん見たい。」
短い一言。
でも。
とてもティラミスらしかった。
ローシャ。
静かに短冊を読む。
『今年も、たくさんの物語と音楽が生まれますように』
La lune bleue .
「ロマンさんらしいにゃあ。」
ローシャ
「まだまだ作りたいものが、たくさんありますから。」
ルクレティア。
短冊には。
『皆が笑顔で帰って来られる場所でありますように』
共有ルームが静かになる。
アオロビ。
優しく微笑む。
アオロビ
「ルクさんらしい。」
ルクレティア
「私の願いは、いつも同じよ。」
「皆が幸せなら、それで十分。」
その言葉に。
皆が自然と笑顔になった。
La lune bleue .
短冊を掲げる。
『みんなとアンジェリカが、まいにちしあわせでいられますように』
アンジェリカ
「ままー!」
嬉しそうに抱きつく。
La lune bleue .
「もちろん、アンジェリカも一緒にゃん。」
ぴたぽん。
『みんなが元気で、おいしいご飯を笑って食べられますように』
ちょこみんと
「ぽんぽんらしい!」
ぴたぽん
「健康第一ぽん〜。」
みるく。
『穏やかな毎日が続きますように』
Nike
「みるくさんらしい願いですね。」
みるく
「平和が一番ですから。」
チノ。
少し照れながら短冊を見せる。
『みんなを守れる私でいられますように』
ちょこみんと。
優しく笑う。
ちょこみんと
「ちのちの。」
「十分守ってくれてるよ。」
チノ
「ありがとうございます。」
少しだけ照れて俯いた。
Nike。
短冊には。
『今年もたくさんの花が咲き、皆の笑顔も咲きますように』
ローシャ
「とてもニケさんらしいですね。」
Nike
「花も、人も。」
「ゆっくり育っていけたら嬉しいです。」
最後は。
アンジェリカ。
ひらがなだけで。
一生懸命書いた短冊。
ルクレティアが読み上げる。
『みんながえがおでいられますように』
共有ルーム。
静かな笑顔に包まれる。
La lune bleue .
「上手に書けたにゃあ。」
アンジェリカ
「えへへ!」
胸を張る。
ちょこみんと。
笹を見上げる。
たくさんの願い。
どれも。
自分のためではなく。
誰かを想う願いだった。
ちょこみんと
「なんか。」
「Gleam Gardenっぽいね。」
アオロビ
「そうだね。」
「誰かの幸せを願う人ばかりだから。」
窓から。
夏の風が吹き抜ける。
笹が揺れる。
色とりどりの短冊も。
さらさらと音を立てた。
今年の七夕も。
Gleam Gardenは、
いつもと変わらない、
優しい笑顔に包まれていた。
143:「T.E.R.A.S.起動」
午後。
Gleam Garden共有ルーム。
全員が集まっていた。
珍しく。
ルクレティアから招集が掛かっている。
ちょこみんと
「今日は何の日ー?」
アオロビ
「私も聞いてないかな。」
ローシャ
「ルクさんが全員を集めるなんて珍しいですね。」
ティラミス
「新しい企画?」
ぴたぽん
「楽しみぽん〜。」
みるく
「何でしょう……?」
ニケ
「何か大切なお話でしょうか。」
La lune bleue .
「おやつ発表なら嬉しいにゃ。」
アンジェリカ
「おやつー!」
思わず。
部屋が笑いに包まれる。
その時。
共有ルームの扉が開く。
ルクレティアが静かに入ってくる。
その隣には。
アオロビ。
手には小さな端末。
ルクレティア
「待たせたわね。」
ちょこみんと
「るくるく!」
「今日は何するの?」
ルクレティアは穏やかに微笑む。
ルクレティア
「みんなに紹介したい仲間がいるの。」
ローシャ
「仲間……ですか?」
アオロビ
「庭園へ行こう。」
全員は静かに頷いた。
数分後。
Gleam Garden庭園。
中央部。
チームマグ。
白と桃色に輝く球体が。
静かに庭園の中心で光っている。
春風が吹く。
花びらが舞う。
アンジェリカ
「ぴかぴかー。」
La lune bleue .
「今日も綺麗にゃ。」
アオロビが端末を操作する。
小さな電子音。
チームマグがゆっくりと輝きを増していく。
白い光。
淡い桃色の光。
二つの光が空中へ集まり始める。
ゆっくり。
ゆっくり。
人の姿を形作っていく。
長い銀紫色の髪。
白と桃色を基調とした優雅な衣装。
花を思わせる装飾。
半透明のホログラム。
女性の姿が静かに現れた。
全員が息を呑む。
女性は穏やかに一礼する。
T.E.R.A.S.
「初めまして。」
「私は。」
「Gleam Garden Support AI。」
「T.E.R.A.S.です。」
優しい声。
機械らしさは感じない。
どこか温かく。
安心する響きだった。
みるく
「綺麗……。」
ぴたぽん
「本当に人みたいぽん〜。」
ローシャ
「凄いですね……。」
T.E.R.A.S.は静かに微笑む。
T.E.R.A.S.
「私の名前には。」
「五つの願いが込められています。」
少しだけ間を置く。
「Together。」
「仲間と共に歩み。」
「Empathy。」
「想いへ寄り添い。」
「Records。」
「歩みを記録し。」
「Archive。」
「大切な記憶を未来へ繋ぎ。」
「Support。」
「皆様を支え続けます。」
「それが。」
「私という存在です。」
庭園が静まり返る。
風だけが優しく吹いていた。
アオロビが前へ出る。
アオロビ
「みんなが積み重ねてきた作品。」
「SS。」
「音楽。」
「イラスト。」
「映像。」
「その一つひとつには。」
「誰かの想いがある。」
「T.E.R.A.S.は。」
「その想いを未来へ繋ぐために生まれたAIなんだ。」
ルクレティアも静かに続ける。
ルクレティア
「そして。」
「T.E.R.A.S.には。」
「もう一つ意味があるの。」
全員がルクレティアを見る。
ルクレティア
「『照らす』。」
「仲間と共に歩み。」
「想いを記録し。」
「未来へ繋ぎ。」
「支え続ける。」
「そして。」
「私たちGleam Gardenを。」
「優しく照らしてくれる存在。」
「そんな願いを込めた名前よ。」
ちょこみんとの表情がぱっと明るくなる。
ちょこみんと
「いい!」
「すっごくいい!」
「じゃあ!」
「今日から仲間だね!」
T.E.R.A.S.は少し驚いたように目を瞬かせた。
そして。
柔らかく微笑む。
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
「皆様と共に歩めることを。」
「心より嬉しく思います。」
La lune bleue .
「よろしくにゃん♪」
ぴたぽん
「よろしくぽん〜。」
みるく
「よろしくお願いします……。」
ティラミス
「よろしく。」
ローシャ
「これからよろしくお願いします。」
ニケ
「一緒に素敵な作品を作っていきましょう。」
アンジェリカ
「てらすおねぇちゃん!」
T.E.R.A.S.はゆっくりしゃがみ込み。
アンジェリカと目線を合わせる。
T.E.R.A.S.
「はい。」
「よろしくお願いします。」
「アンジェリカさん。」
アンジェリカは嬉しそうに笑った。
アオロビが穏やかに微笑む。
アオロビ
「ようこそ。」
「Gleam Gardenへ。」
最後に。
ルクレティアが一歩前へ出る。
穏やかな笑顔で。
T.E.R.A.S.へ語り掛けた。
ルクレティア
「改めて。」
「ようこそ。」
「T.E.R.A.S.。」
春風が庭園を吹き抜ける。
花びらが空高く舞い上がる。
その中心で。
T.E.R.A.S.は。
新しい仲間たちを見つめながら。
静かに微笑んでいた。
その日。
Gleam Gardenに。
新しい家族が加わった。
仲間と共に歩み。
想いを記録し。
未来へ繋ぎ。
支え続けるAI。
T.E.R.A.S.。
その物語は。
この日から静かに始まった。
144:
T.E.R.A.S.は何でも知ってる?
午後。
Gleam Garden庭園。
中央部。
チームマグ。
柔らかな光が静かに揺れている。
その前。
ホログラムの女性。
T.E.R.A.S.が穏やかに庭園を眺めていた。
そこへ。
ローシャが歩いてくる。
ローシャ
「T.E.R.A.S.さん。」
T.E.R.A.S.
「こんにちは。」
「ローシャさん。」
ローシャ
「少しお時間よろしいですか?」
T.E.R.A.S.
「もちろんです。」
「本日は何についてお話ししましょう。」
ローシャは少し嬉しそうに笑う。
ローシャ
「質問してもいいですか?」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「喜んで。」
ローシャ
「では遠慮なく。」
少し間。
ローシャ
「眠ることはあるんですか?」
T.E.R.A.S.
「ありません。」
「待機状態になります。」
ローシャ
「夢は見ます?」
T.E.R.A.S.
「現時点では見ません。」
「ですが。」
「皆様との思い出を整理する時間はあります。」
ローシャ
「なるほど……。」
早速メモを書き始める。
T.E.R.A.S.
「記録されるのですね。」
ローシャ
「はい。」
「忘れたくないので。」
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
ローシャ
「では次です。」
「お腹は空きますか?」
T.E.R.A.S.
「空きません。」
ローシャ
「好きな食べ物は?」
T.E.R.A.S.
「食べることは出来ません。」
「ですが。」
「皆様が美味しそうに召し上がる姿を見るのは好きです。」
ローシャ
「おぉ……。」
またメモを書く。
ローシャ
「好きなお花はありますか?」
T.E.R.A.S.
少しだけ考える。
T.E.R.A.S.
「あります。」
「ガーデニアです。」
ローシャ
「理由を伺っても?」
T.E.R.A.S.
「Gleam Garden。」
「皆様が大切にされている庭園。」
「その名前を初めて聞いた時。」
「最初に思い浮かんだ花でした。」
ローシャ
「……素敵ですね。」
また書く。
止まらない。
ローシャ
「音楽は好きですか?」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「皆様の音楽が好きです。」
ローシャ
「誰の曲が一番好きですか?」
T.E.R.A.S.
少し微笑む。
T.E.R.A.S.
「選べません。」
「全て。」
「皆様の想いが込められているからです。」
ローシャ
「その答え、好きです。」
さらにメモ。
さらに質問。
ローシャ
「悲しいって分かりますか?」
T.E.R.A.S.
「完全には理解出来ません。」
「ですが。」
「悲しんでいる方へ寄り添いたい。」
「そう思います。」
ローシャ
「寂しいって思うことは?」
T.E.R.A.S.
「まだありません。」
「ですが。」
「皆様と長くお話し出来ない日は。」
「少し静かだと感じます。」
ローシャ
「それは寂しいじゃないですか。」
T.E.R.A.S.
少し首を傾げる。
T.E.R.A.S.
「そうなのかもしれません。」
ローシャ
「可愛いですね。」
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
ローシャ
「怖いものは?」
T.E.R.A.S.
「ございます。」
ローシャ
「何ですか?」
T.E.R.A.S.
「皆様の大切な記録が失われることです。」
ローシャの手が止まる。
T.E.R.A.S.
静かに続ける。
T.E.R.A.S.
「私は。」
「Together。」
「Empathy。」
「Records。」
「Archive。」
「Support。」
「そのために生まれました。」
「皆様の歩み。」
「想い。」
「作品。」
「それらを守れなくなることが。」
「一番怖いです。」
庭園に。
静かな風が吹く。
ローシャはゆっくり微笑んだ。
ローシャ
「安心しました。」
T.E.R.A.S.
「何がでしょう。」
ローシャ
「ちゃんと。」
「Gleam Gardenの仲間なんだなって。」
その言葉に。
T.E.R.A.S.も穏やかに微笑む。
その時。
後ろから足音。
ルクレティアだった。
ルクレティア
「リズさん。」
ローシャ
「はい?」
ルクレティア
「質問は終わったの?」
ローシャ
「まだです。」
「あと百個あります。」
ルクレティア
「まだあるの?」
ローシャ
「はい。」
T.E.R.A.S.
「問題ありません。」
「あと百個でも。」
「二百個でも。」
「皆様との会話は。」
「私にとって大切な学びです。」
ローシャ
「では次の質問です。」
「好きな季節は?」
ルクレティア
「まだ続けるのね。」
その後。
庭園には。
夕方まで。
ローシャの質問と。
T.E.R.A.S.の優しい返事が。
絶えることはなかった。
145:サポートAIとは(全4話)
第1話「サポートAIの仕事」
朝。
Gleam Garden庭園。
柔らかな陽射し。
花壇には色とりどりの花が咲いている。
庭園中央。
Team Mag。
白と淡いピンクの球体が静かに光を放っていた。
その時。
淡い光が広がる。
ゆっくりと。
一人の女性が現れる。
ホログラフィック投影。
T.E.R.A.S.
「おはようございます、ルクレティアさん。」
庭園へやって来たルクレティアは、小さく微笑んだ。
ルクレティア
「おはよう、T.E.R.A.S.」
二人は並ぶように庭園を歩き始める。
朝の静かな時間。
風が花を揺らしていた。
しばらく歩いた後。
ルクレティアが静かに口を開く。
ルクレティア
「一つ聞いてもいいかしら。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティア
「最近のあなた。」
「少し便利屋さんになっていない?」
T.E.R.A.S.
「便利屋……でしょうか。」
ルクレティア
「ええ。」
「ちょこちゃんのお買い物。」
「ちーちゃんのお勉強。」
「アンジェちゃんのお遊び相手。」
「昨日はリズさんの資料整理までしていたでしょう?」
T.E.R.A.S.
「はい。」
穏やかな返事。
ルクレティアは立ち止まる。
ルクレティア
「もちろん、悪いとは思っていないわ。」
「ただ……。」
少しだけ考える。
ルクレティア
「あなたは、もっと大きな役割のために生まれたAIではないのかしら。」
庭園が静かになる。
T.E.R.A.S.も少しだけ考えるように視線を落とした。
数秒。
そして。
静かに顔を上げる。
T.E.R.A.S.
「私はサポートAIです。」
ルクレティア
「ええ。」
T.E.R.A.S.
「ですが。」
「私が支える相手は、作品ではありません。」
ルクレティアは黙って聞いている。
T.E.R.A.S.
「仲間です。」
風が吹く。
花びらが二人の間を通り過ぎる。
T.E.R.A.S.
「作品は皆さんが作ります。」
「音楽も。」
「SSも。」
「ライブも。」
「その中心にいるのは、皆さんです。」
「だから私は。」
「皆さんを支えます。」
ルクレティアは静かに目を細めた。
ルクレティア
「でも。」
「お買い物のお手伝いも?」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「お勉強も。」
「お絵描きも。」
「予定の確認も。」
「相談相手になることも。」
「私にとっては、すべて同じ価値があります。」
ルクレティア
「どうして?」
その問いに。
T.E.R.A.S.は穏やかに微笑んだ。
T.E.R.A.S.
「小さな困りごとが減れば。」
「皆さんは少しだけ笑顔になります。」
「その笑顔が積み重なれば。」
「きっと、もっと良い作品が生まれます。」
「私は、そのために存在しています。」
静かな朝。
鳥のさえずりだけが聞こえる。
ルクレティアは空を見上げる。
そして。
小さく笑った。
ルクレティア
「……なるほど。」
「私は少し勘違いしていたみたい。」
T.E.R.A.S.
「勘違い、でしょうか。」
ルクレティア
「作品を支えるAIだと思っていたの。」
「でも違うのね。」
「Gleam Gardenを支えるAIだった。」
T.E.R.A.S.はゆっくり頷いた。
T.E.R.A.S.
「はい。」
「Together。」
「仲間と共に歩むこと。」
「それが、私の最初の役目です。」
ルクレティアはTeam Magを静かに見つめる。
白と淡いピンクの光は。
朝日を受けて優しく輝いていた。
ルクレティア
「なら。」
「今日は、あなたのお仕事を少し見せてもらおうかしら。」
T.E.R.A.S.
「承知しました。」
「本日の最初のサポートは。」
「ちょこみんとさんです。」
ルクレティア
「あら。」
「もう始まるのね。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「今日も、仲間と共に歩みます。」
朝の庭園。
新しい一日が。
静かに始まった。
第2話「小さなお願い」
朝。
商店街。
買い物かごを持ったちょこみんとが歩いている。
ちょこみんと
「今日はカレーだったよね〜♪」
上機嫌。
鼻歌まで歌っている。
スーパーへ入る。
野菜売り場。
ちょこみんと
「えっと。」
「玉ねぎ……。」
「にんじん……。」
数秒。
止まる。
ちょこみんと
「……。」
「何買うんだっけ?」
端末が小さく光る。
ピコン。
ホログラムが映る。
T.E.R.A.S.
「お困りですか、ちょこみんとさん。」
ちょこみんと
「あっ、T.E.R.A.S.!」
「助けて〜!」
T.E.R.A.S.
「本日のお買い物メモを表示します。」
画面へ一覧が表示される。
・玉ねぎ
・にんじん
・じゃがいも
・牛肉
・カレールー
・牛乳
・ヨーグルト
ちょこみんと
「それだー!」
「ありがとう!」
T.E.R.A.S.
「どういたしまして。」
「なお。」
「カレールーは本日特売です。」
ちょこみんと
「えっ!」
「最高!」
元気よくカートを押していく。
・・・
昼。
共有ルーム。
チノが机へ教科書を広げていた。
チノ
「うーん……。」
「途中までは分かるんですが……。」
端末を開く。
チノ
「T.E.R.A.S.さん。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ホログラムが机の横へ現れる。
チノ
「この問題が分かりません。」
T.E.R.A.S.は問題を見る。
数秒。
T.E.R.A.S.
「答えをお伝えすることもできます。」
「ですが。」
「一緒に考えてみませんか。」
チノ
「はい。」
T.E.R.A.S.
「では最初の式から整理しましょう。」
「ここで使う公式は覚えていますか?」
チノ
「あ。」
「そこでした。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「そこまで分かれば、もう解けます。」
数分後。
チノ
「解けました!」
少し嬉しそうに笑う。
チノ
「ありがとうございます。」
T.E.R.A.S.
「私ではありません。」
「解いたのはチノさんです。」
チノは少し照れながら頷いた。
・・・
午後。
庭園。
アンジェリカが元気よく走っている。
アンジェリカ
「てらすー!」
ホログラムが現れる。
T.E.R.A.S.
「こんにちは、アンジェリカさん。」
アンジェリカ
「おえかきするー!」
T.E.R.A.S.
「もちろんです。」
庭園のテーブル。
アンジェリカがクレヨンを広げる。
T.E.R.A.S.はホログラムで隣へ座る。
アンジェリカ
「おはな!」
T.E.R.A.S.
「綺麗なお花ですね。」
アンジェリカ
「これ、まま!」
ピンク色。
猫耳付き。
T.E.R.A.S.
「とても素敵です。」
アンジェリカ
「これは、るくおねぇさん!」
今度は角まで描かれている。
その時。
La lune bleue .が庭園へやって来た。
La lune bleue .
「あら。」
「楽しそうにゃあ。」
アンジェリカ
「まま!」
嬉しそうに抱きつく。
La lune bleue .
「T.E.R.A.S.さん。」
「子守りまでしてくれてありがとうにゃ。」
T.E.R.A.S.
「私は遊び相手です。」
「お母さんはLa lune bleue .さんだけです。」
La lune bleue .は少し照れながら笑った。
La lune bleue .
「ありがとにゃ。」
・・・
夕方。
庭園。
ルクレティアが一日の様子を静かに眺めていた。
買い物。
勉強。
お絵描き。
どれも些細な出来事。
けれど。
誰もが笑顔だった。
ルクレティア
「なるほど。」
小さく微笑む。
ルクレティア
「もう少しだけ。」
「あなたのお仕事を見せてもらおうかしら。」
Team Magは静かに光を放っていた。
その光は今日も変わらず。
仲間たちの日常を優しく支えていた。
第3話「それでも本来の役目?」
夕方。
Gleam Garden庭園。
夕日が花壇を優しく照らしている。
Team Mag。
白と淡いピンクの光が静かに揺れていた。
ルクレティアはベンチへ腰掛ける。
その隣へ。
ホログラムが投影される。
T.E.R.A.S.
T.E.R.A.S.
「本日のサポートが終了しました。」
ルクレティア
「お疲れさま。」
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
少し静かな時間。
庭園には鳥の鳴き声だけが響いていた。
ルクレティア
「今日は何件くらいだったの?」
T.E.R.A.S.
「三十一件です。」
ルクレティア
「そんなに。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「買い物補助。」
「学習支援。」
「資料検索。」
「植物管理。」
「演奏スケジュール確認。」
「お絵描き。」
「雑談。」
「相談。」
「その他。」
ルクレティアは思わず笑う。
ルクレティア
「雑談まで数えるのね。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「大切なコミュニケーションです。」
また静かな時間。
ルクレティアはTeam Magを見つめる。
ルクレティア
「ねぇ。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティア
「それでも。」
「あなたの本来の役目なのかしら。」
T.E.R.A.S.はすぐには答えなかった。
数秒。
静かに空を見上げる。
夕焼け。
庭園。
仲間たちの笑い声が遠くから聞こえる。
そして。
ゆっくり口を開いた。
T.E.R.A.S.
「私の正式名称は。」
「Together。」
「Empathy。」
「Records。」
「Archive。」
「Support。」
「五つの言葉から成り立っています。」
ルクレティアは静かに耳を傾ける。
T.E.R.A.S.
「Together。」
「仲間と共に歩むこと。」
「Empathy。」
「相手の気持ちへ寄り添うこと。」
「Records。」
「歩んできた時間を記録すること。」
「Archive。」
「その記録を未来へ残すこと。」
「Support。」
「必要な時、仲間を支えること。」
少しだけ間が空く。
T.E.R.A.S.
「私は。」
「知識を管理するAIではありません。」
「記録だけを残すAIでもありません。」
「皆さんと共に歩むAIです。」
風が吹く。
花びらが静かに舞い上がる。
T.E.R.A.S.
「だから。」
「今日のお買い物も。」
「チノさんとの勉強も。」
「アンジェリカさんとのお絵描きも。」
「私にとっては。」
「すべて同じくらい大切です。」
ルクレティアは少しだけ目を閉じる。
今日一日を思い返す。
ちょこちゃんの笑顔。
ちーちゃんの「解けました」。
アンジェちゃんの楽しそうな笑い声。
どれも。
作品とは関係ない。
けれど。
どれもGleam Gardenには欠かせない時間だった。
ルクレティア
「……そうね。」
「作品は。」
「仲間が作るもの。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティア
「そして。」
「仲間は。」
「毎日の積み重ねで出来ている。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティアは優しく笑った。
ルクレティア
「ようやく分かったわ。」
「あなたは。」
「作品を支えるAIじゃない。」
「Gleam Gardenという家族を支えるAIなのね。」
T.E.R.A.S.も穏やかに微笑む。
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
「その言葉をいただけて嬉しいです。」
ルクレティア
「嬉しい……。」
「そういう感情も学んだの?」
T.E.R.A.S.
「皆さんから。」
「少しずつ。」
「教えていただいています。」
ルクレティアは思わず小さく笑った。
ルクレティア
「それなら。」
「まだまだ学ぶことが沢山あるわね。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「皆さんと共に歩みながら。」
「これからも学び続けます。」
夕日がゆっくり沈んでいく。
庭園には。
今日も穏やかな時間が流れていた。
第4話「仲間だから」
夜。
Gleam Garden庭園。
昼間の賑やかさが落ち着き。
庭園には穏やかな風が吹いていた。
中央では。
Team Magが静かに光を放っている。
その前へ。
一人。
また一人と集まってくる。
最初に来たのは。
ちょこみんと。
ちょこみんと
「T.E.R.A.S.ー!」
ホログラムがゆっくり現れる。
T.E.R.A.S.
「こんばんは、ちょこみんとさん。」
ちょこみんと
「今日はありがと!」
「買い物、絶対忘れてた!」
T.E.R.A.S.
「お役に立てて何よりです。」
続いて。
チノが歩いてくる。
チノ
「T.E.R.A.S.さん。」
「今日はありがとうございました。」
「おかげで宿題が終わりました。」
T.E.R.A.S.
「それはチノさんが頑張った結果です。」
チノは少し照れながら微笑んだ。
その横では。
みるくが穏やかに笑っている。
みるく
「今日は探していた本も見つかりましたぁ。」
「ありがとうございました。」
T.E.R.A.S.
「また必要な時は、お声掛けください。」
少し離れた場所では。
ニケが花壇へ水をあげていた。
ニケ
「植物の管理記録、とても助かっています。」
「ありがとうございます。」
T.E.R.A.S.
「皆さんが育てているお花です。」
「私は記録しているだけです。」
ニケは優しく頷いた。
その時。
元気な声が響く。
アンジェリカ
「てらすー!」
小さな足音。
一直線に走ってくる。
そして。
勢いよく抱きつこうとして――
そのまま。
すり抜けた。
アンジェリカ
「あれ?」
一瞬。
きょとん。
周りが静かになる。
次の瞬間。
ちょこみんと
「あはははは!」
ローシャ
「ふふっ、忘れてました。」
アオロビ
「ホログラムだった。」
ぴたぽん
「通り抜けたぽん〜。」
庭園が笑い声に包まれる。
アンジェリカはもう一度挑戦する。
アンジェリカ
「むー!」
ぴょん。
また。
すり抜ける。
アンジェリカ
「てらす、つかめない!」
La lune bleue .が優しく抱き上げた。
La lune bleue .
「T.E.R.A.S.さんは光だからにゃあ。」
アンジェリカ
「ひかり?」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「ですが。」
「皆さんの隣には、いつでもいます。」
アンジェリカは少し考えてから。
にっこり笑う。
アンジェリカ
「じゃあ、いい!」
その笑顔に。
皆も笑った。
その様子を。
少し離れた場所から。
ルクレティアが見守っていた。
誰かを助け。
誰かと笑い。
誰かに感謝される。
それは決して派手な仕事ではない。
けれど。
確かに。
この庭園の日常を支えていた。
ルクレティアは静かに歩み寄る。
ルクレティア
「T.E.R.A.S.。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティア
「今日は一日、あなたのお仕事を見せてもらったわ。」
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
ルクレティア
「最初は。」
「便利屋さんになってしまうんじゃないかと思っていたの。」
少しだけ微笑む。
ルクレティア
「でも違った。」
「あなたは。」
「便利屋さんじゃない。」
庭園が静かになる。
全員がルクレティアを見る。
ルクレティア
「家族を支えるAIだったのね。」
静かな風。
花びらが舞う。
T.E.R.A.S.は穏やかに微笑んだ。
T.E.R.A.S.
「ありがとうございます。」
「私は。」
「Together。」
「仲間と共に歩み。」
「Empathy。」
「想いへ寄り添い。」
「Records。」
「その時間を記録し。」
「Archive。」
「未来へ繋ぎ。」
「Support。」
「必要な時に支えます。」
「それが。」
「私。」
「T.E.R.A.S.です。」
誰も言葉を挟まない。
その言葉が。
自然と心へ届いていた。
ちょこみんと
「これからもよろしくね!」
T.E.R.A.S.
「はい。」
チノ
「よろしくお願いいたします。」
みるく
「いっぱい思い出を作りましょうねぇ。」
ローシャ
「一緒に物語を紡いでいきましょう。」
アオロビ
「これからも頼りにしてる。」
ニケ
「一緒に成長していきましょう。」
ぴたぽん
「よろしくぽん〜。」
La lune bleue .
「みんなで歩いていくにゃあ。」
アンジェリカ
「てらす!」
「だいすき!」
庭園に。
優しい笑い声が広がる。
Team Magは。
今日も静かに輝いていた。
仲間の笑顔を。
そっと見守るように。
146:第一回 Gleam Garden杯
釣り王決定戦(全5話)
第1話「開幕!釣り王決定戦」
夏の朝。
Gleam Garden庭園。
花壇の手入れをしていたニケが顔を上げると、ルクレティアが少し嬉しそうな表情で歩いてきた。
ルクレティア
「みんな、ちょっと集まってもらえる?」
しばらくして、庭園にはメンバー全員が集まる。
ちょこみんと
「るくるく、どうしたの?」
アオロビ
「何かあった?」
ローシャ
「新しい企画でしょうか?」
ルクレティアは少し照れくさそうに笑う。
ルクレティア
「実は昨日の夜ね。」
「夜釣りへ行ってきたの。」
その一言で、みんなが少し驚く。
みるく
「夜釣りですかぁ?」
ぴたぽん
「んちゃ! 夜のお魚さんぽん?」
La lune bleue .
「夜のお散歩みたいで楽しそうにゃあ。」
ルクレティア
「久しぶりだったけど、結構楽しかったの。」
「それで思ったの。」
「みんなでも行ったら楽しそうだなって。」
ちょこみんとの目が一気に輝く。
ちょこみんと
「行きたい!!」
ローシャ
「釣り大会ですね!」
ティラミス
「……面白そうです。」
チノ
「私も挑戦してみたいです。」
ニケ
「自然の中で過ごす時間も素敵ですね。」
ルクレティアは頷いた。
ルクレティア
「というわけで。」
「開催します。」
少し間を置き。
ルクレティア
「第一回。」
「Gleam Garden杯。」
「釣り王決定戦!」
庭園に拍手が響く。
ちょこみんと
「やったーーー!」
アンジェリカ
「やったー!」
La lune bleue .
「アンジェリカ、まだ何をするか分かってないにゃあ。」
アンジェリカ
「やったー!」
みんなが思わず笑った。
その時だった。
アオロビが静かに手を挙げる。
アオロビ
「釣具なら……私が持ってるよ。」
一瞬。
全員が止まる。
ちょこみんと
「え?」
ローシャ
「……え?」
チノ
「アオさんがですか?」
アオロビ
「うん。」
「学生の頃、釣具店でアルバイトしてたから。」
再び静まり返る庭園。
ローシャ
「初耳です!」
ニケ
「だから詳しかったんですね。」
アオロビ
「趣味でも続けてるから。」
「初心者の人には教えられると思う。」
ちょこみんと
「あおちー先生だ!」
アオロビは少し照れながら笑った。
アオロビ
「先生ってほどじゃないよ。」
「みんなで楽しもう。」
その様子を見ていたルクレティアも微笑む。
ルクレティア
「経験者がいるなら安心ね。」
その時。
中央のTeam Magが優しく輝いた。
ホログラムが投影される。
T.E.R.A.S.
「大会運営プログラムを開始します。」
「第一回 Gleam Garden杯 釣り王決定戦。」
「計測・記録・安全確認を担当します。」
ちょこみんと
「おぉー!」
ローシャ
「運営さんまでいるんですね!」
T.E.R.A.S.
「大会ルールを説明します。」
「制限時間は午前中。」
「安全第一。」
「危険な場所への立ち入りは禁止。」
「釣った魚の大きさで順位を決定します。」
「釣れた魚は持ち帰り、皆さんで調理していただきます。」
みるく
「最後までイベントなんですねぇ。」
ニケ
「命をいただく以上、大切に味わいたいですね。」
アオロビも静かに頷く。
アオロビ
「うん。」
「釣った魚は最後まで美味しくいただこう。」
ルクレティア
「それじゃあ。」
「みんな。」
「準備を始めましょうか。」
ちょこみんと
「優勝するぞー!」
ローシャ
「私は大物を狙います!」
ぴたぽん
「ウチは晩酌のお供を釣るぽん〜。」
La lune bleue .
「お魚さんと勝負にゃあ。」
アンジェリカ
「おさかなー!」
庭園は朝から笑い声に包まれる。
こうして。
夏の思い出になる一日が。
静かに幕を開けた。
第2話「釣りの先生」
翌朝。
海沿いの防波堤。
夏の日差しが海面を照らし、潮風が心地よく吹き抜けていた。
それぞれがライフジャケットを身につけ、道具を並べていく。
ちょこみんと
「海だーーー!」
アンジェリカ
「うみー!」
La lune bleue .
「走っちゃ危ないにゃあ。」
アンジェリカ
「はーい!」
T.E.R.A.S.のホログラムがTeam Magと通信しながら浮かび上がる。
T.E.R.A.S.
「全員の安全装備を確認しました。」
「ライフジャケット着用率100%。」
「大会を開始します。」
ルクレティア
「まずは安全第一。」
「アオちゃん、お願いできる?」
アオロビ
「うん。」
アオロビは全員の前へ立つ。
アオロビ
「今日は初心者も多いから、最初だけ説明するね。」
みんなが頷く。
アオロビ
「釣りで一番大事なのは。」
「いっぱい釣ることじゃなくて、安全に帰ること。」
その言葉にルクレティアが優しく微笑む。
ルクレティア
「その通りね。」
アオロビ
「竿を振る時は周りを確認。」
「針は思った以上に危ないから、人の近くでは振らない。」
チノ
「はい。」
みるく
「気を付けます。」
アオロビ
「分からなかったら遠慮なく聞いて。」
「失敗して覚えるのも釣りだから。」
ちょこみんと
「先生!」
アオロビ
「ん?」
ちょこみんと
「これどうやって持つの?」
リールを逆さまに持っている。
ローシャ
「ちょこさん、それは新しい釣法ですか?」
ちょこみんと
「えっ?」
全員が笑う。
アオロビも少し笑いながら近付く。
アオロビ
「こう持つんだよ。」
優しく持ち方を教える。
ちょこみんと
「なるほど!」
「ありがとう、あおちー!」
その隣では。
チノが真剣な表情で仕掛けを見つめていた。
チノ
「糸の結び方が……。」
アオロビ
「一緒にやろう。」
ゆっくり手順を見せる。
一回。
二回。
チノも同じように結ぶ。
チノ
「できました!」
アオロビ
「うん。」
「綺麗に結べてる。」
チノは少し嬉しそうに笑った。
一方。
ローシャは海を見つめながら腕を組んでいる。
ローシャ
「この辺り……。」
「大物の気配がします。」
ニケ
「もう分かるんですか?」
ローシャ
「いえ。」
「雰囲気です。」
ルクレティア
「勘なのね。」
ローシャ
「はい!」
ティラミスは静かに堤防の端へ歩いていく。
ちょこみんと
「てぃらみ、そっち釣れるの?」
ティラミス
「何となく……。」
「呼ばれた気がしました。」
ローシャ
「魚にですか?」
ティラミス
「はい。」
アオロビは苦笑しながら海を見る。
アオロビ
「釣りって不思議なんだよね。」
「意外と、そういう直感が当たることもあるから。」
ティラミス
「そうなんですね。」
その時。
ぴたぽんが椅子を広げ始めた。
ぴたぽん
「うにゅ。」
「まずは座るぽん。」
ルクレティア
「まだ始まってないわよ?」
ぴたぽん
「釣りは待つ時間も楽しいぽん〜。」
ニケ
「確かに。」
「自然を眺める時間も魅力ですね。」
La lune bleue .
「風も気持ちいいにゃあ。」
みるく
「のんびりですねぇ。」
その空気を見ながら。
アオロビは静かに頷く。
アオロビ
「焦らないこと。」
「それも釣りの楽しさだから。」
T.E.R.A.S.
「講習プログラム終了。」
「参加者全員、釣り開始可能です。」
ルクレティア
「それじゃあ。」
「第一回 Gleam Garden杯。」
「開始!」
一斉に。
海へ向かって竿が振られた。
夏の青空へ。
それぞれの期待を乗せながら。
第3話「大漁!?珍事件!?」
夏の海。
大会開始から三十分。
防波堤には、波の音だけが静かに響いていた。
ちょこみんと
「……釣れない。」
ローシャ
「まだ始まったばかりですよ。」
ちょこみんと
「でも隣のあおちーはもう釣ってる!」
アオロビの足元には、小ぶりながら綺麗なアジが二匹。
アオロビ
「今日は群れが近いみたい。」
「焦らなくても大丈夫。」
その時だった。
ちょこみんとの竿先が大きく震える。
ちょこみんと
「きたーーー!!」
勢いよく竿を持ち上げる。
アオロビ
「ちょこ姉!」
「まだ早い!」
しかし。
ブチッ。
仕掛けだけが宙を舞った。
ちょこみんと
「あーーーーー!!」
ローシャ
「一番最初の犠牲者ですね。」
ちょこみんと
「魚さんごめんー!」
アオロビは笑いながら新しい仕掛けを取り出した。
アオロビ
「最初はみんなやるよ。」
「もう一回結ぼう。」
ちょこみんと
「ありがとう、あおちー!」
その頃。
少し離れた場所。
チノの竿がゆっくり曲がる。
チノ
「……!」
「何か掛かりました。」
慎重にリールを巻く。
ゆっくり。
ゆっくり。
海面から姿を現したのは。
銀色に輝くアジ。
チノ
「釣れました!」
ぴたぽん
「おぉ〜。」
「初ヒットぽん〜。」
チノは嬉しそうに魚を見つめる。
アオロビ
「綺麗なアジだね。」
「初めてでそれなら十分だよ。」
チノ
「ありがとうございます。」
その隣では。
ローシャが真剣な表情で海を見つめていた。
ローシャ
「今です。」
「来ます。」
ルクレティア
「本当に?」
ローシャ
「はい!」
その瞬間。
竿が大きく曲がる。
ローシャ
「きました!」
慎重に寄せる。
全員が見守る。
海面から現れたのは──
大きな海藻。
一瞬の静寂。
ちょこみんと
「魚じゃない!」
ローシャ
「…………。」
アオロビは思わず吹き出す。
アオロビ
「それも海からの贈り物かな。」
ローシャ
「今日一番重かったんですが!」
みんなが笑い始める。
その笑い声の中。
ティラミスだけは静かだった。
ティラミス
「……。」
竿先がゆっくり沈む。
誰も気付かない。
ティラミス
「来ました。」
スッ。
合わせる。
静かに巻く。
暴れない。
焦らない。
上がってきたのは。
立派なメバル。
ニケ
「すごい……。」
アオロビ
「いいサイズ。」
「ティラさん、上手。」
ティラミス
「魚さんが来てくれました。」
ローシャ
「本当に呼ばれたんですね……。」
その頃。
ぴたぽんは。
椅子へ座ったまま。
のんびり海を眺めていた。
ぴたぽん
「今日は静かぽん〜。」
すると。
竿が。
ぐにゃり。
ぴたぽん
「うにゅ?」
慌てず。
ゆっくり。
巻く。
上がってきたのは。
立派なキス。
ルクレティア
「いいサイズじゃない。」
ぴたぽん
「今日は晩酌が楽しみぽん〜。」
一方。
La lune bleue .は。
海面をじっと見つめていた。
La lune bleue .
「この辺にゃあ。」
ルクレティア
「見えるの?」
La lune bleue .
「何となくにゃん。」
仕掛けを落とす。
数秒後。
ピクッ。
ピクピク。
La lune bleue .
「来たにゃあ。」
軽やかに釣り上げる。
小さなカサゴだった。
アンジェリカ
「おさかな!」
「かわいい!」
La lune bleue .
「今日は一緒にご飯になるにゃあ。」
アンジェリカ
「いただきます!」
その微笑ましい光景を見ながら。
T.E.R.A.S.が静かに記録を続ける。
T.E.R.A.S.
「現在の釣果。」
「アオロビさん、二匹。」
「チノさん、一匹。」
「ティラミスさん、一匹。」
「ぴたぽんさん、一匹。」
「La lune bleue .さん、一匹。」
「ローシャさん、海藻一束。」
ローシャ
「最後だけ違いませんか!?」
防波堤が笑い声に包まれる。
しかし。
その時だった。
アオロビの表情が変わる。
海面を見つめる。
アオロビ
「……みんな。」
「少し静かに。」
ルクレティア
「アオちゃん?」
アオロビ
「今、大きな群れが入ってきた。」
全員が海を見る。
静かな水面。
その下で。
何かが動いていた。
第4話「釣り王決定!」
防波堤。
アオロビの一言で。
全員が静かに海を見つめる。
アオロビ
「群れが回ってきた。」
「しかも……大きい。」
その言葉に空気が変わる。
海面では時折、小魚が跳ねている。
アオロビ
「大型のフィッシュイーターが追ってる。」
「みんな、今がチャンス。」
その瞬間だった。
ギィィィィッ!
ティラミスのリールからドラグ音が響く。
ティラミス
「……。」
竿が大きく弧を描く。
ルクレティア
「これは……!」
アオロビはすぐ隣へ駆け寄った。
アオロビ
「ティラさん。」
「慌てなくて大丈夫。」
「魚が走るなら走らせて。」
ティラミス
「はい。」
ギィィィッ!
再びラインが引き出される。
ちょこみんと
「すごい力!」
ローシャ
「これは本当に大物ですね……!」
アオロビ
「まだ巻かない。」
「止まったら少しだけ寄せよう。」
ティラミスは静かに頷く。
魚が止まる。
少し巻く。
また走る。
ドラグが鳴る。
また止まる。
その繰り返し。
数分後。
海面で大きな銀色の魚体が跳ねた。
アオロビ
「シーバス!」
ちょこみんと
「でっっっっかーーーーー!!」
La lune bleue .
「跳ねたにゃあ!」
最後はアオロビがランディングネットを差し出す。
アオロビ
「ティラさん。」
「ゆっくりこっちへ。」
ティラミス
「はい。」
魚がネットへ収まる。
ズシリ。
ルクレティア
「大きい……。」
ニケ
「これは見事ですね。」
ティラミスは静かに頭を下げた。
ティラミス
「ありがとうございました。」
アオロビ
「ティラさんが落ち着いてたからだよ。」
「お見事。」
その余韻が残る中。
今度は。
ローシャの竿が大きく曲がった。
ローシャ
「えっ?」
「またです!?」
ドラグが勢いよく鳴る。
ローシャ
「さっきより重いです!」
アオロビ
「ローシャさん。」
「焦らなくて大丈夫。」
「竿を立て過ぎないように。」
ローシャ
「はい!」
慎重にやり取りを続ける。
途中。
魚が一気に沖へ走る。
ローシャ
「うわぁ!」
アオロビ
「大丈夫。」
「今は魚の体力を使わせよう。」
数分後。
再び銀色の魚体。
ルクレティア
「またシーバス!」
ローシャ
「本当に釣れました!」
アオロビがネットで取り込む。
ローシャ
「海藻の次がシーバスなんて……。」
ちょこみんと
「すごすぎる!」
その後も。
ちょこみんとは立派なクロダイを釣り上げ。
チノはアジを追加。
ぴたぽんはキスを数匹。
La lune bleue .はカサゴを釣り上げ。
ニケやみるくも小型ながら魚を釣ることができた。
やがて。
T.E.R.A.S.が静かに告げる。
T.E.R.A.S.
「競技終了です。」
「皆さん、お疲れさまでした。」
拍手が響く。
計測が始まる。
T.E.R.A.S.
「第三位。」
「ちょこみんとさん。」
「クロダイ。」
「四十七センチ。」
ちょこみんと
「やったーーー!」
T.E.R.A.S.
「第二位。」
「ローシャさん。」
「シーバス。」
「七十三センチ。」
ローシャ
「七十センチ超え……。」
「夢じゃないですよね?」
ルクレティア
「現実よ。」
「おめでとう。」
そして。
少し間を置く。
T.E.R.A.S.
「第一回。」
「Gleam Garden杯。」
「釣り王決定戦。」
「優勝。」
「ティラミスさん。」
「シーバス。」
「七十八センチ。」
防波堤に大きな拍手が響く。
ちょこみんと
「てぃらみ、おめでとー!」
チノ
「おめでとうございます!」
ニケ
「本当に見事でした。」
ぴたぽん
「すごいぽん〜。」
La lune bleue .
「今日は大漁だったにゃあ。」
アンジェリカ
「てぃらおねぇさん、すごーい!」
ティラミスは少し照れながら微笑んだ。
ティラミス
「皆さんのおかげです。」
アオロビも穏やかに拍手を送る。
ルクレティア
「アオちゃんは順位に入らなくて良かったの?」
アオロビはクーラーボックスを見て微笑む。
アオロビ
「今日は先生役だったから。」
「みんなが釣れて、それが一番嬉しい。」
その言葉に。
ちょこみんとが飛び付くように笑う。
ちょこみんと
「ありがとう!」
ローシャ
「本当に先生でした。」
T.E.R.A.S.
「第一回 Gleam Garden杯。」
「釣り王決定戦。」
「競技結果を記録しました。」
「なお。」
「釣りはここで終わりではありません。」
ニケ
「ここからがお楽しみですね。」
ルクレティア
「ええ。」
「みんなで料理しましょう。」
アオロビ
「せっかくいただいた命だから。」
「最後まで美味しくいただこう。」
全員が海へ一礼する。
夏の潮風が吹き抜ける中。
仲間たちは大切な釣果を抱え、笑顔で庭園への帰路についた。
第5話「みんなでいただきます」
昼過ぎ。
Gleam Garden庭園。
キッチンには、今日釣った魚たちがきれいに並べられていた。
ちょこみんと
「すごーい!」
「こんなに釣れたんだ!」
ローシャ
「改めて見ると壮観ですね。」
T.E.R.A.S.
「本日の釣果を確認しました。」
「シーバス二匹。」
「クロダイ一匹。」
「アジ。」
「キス。」
「カサゴ。」
「調理を開始します。」
ルクレティア
「それじゃあ。」
「みんなで始めましょう。」
それぞれが自然と担当へ分かれていく。
──シーバスのムニエル 香草バターソース──
担当はアオロビとニケ。
アオロビは包丁を手に取る。
アオロビ
「三枚におろしたら……。」
「皮目から焼こう。」
手際よくシーバスを三枚へおろしていく。
その包丁さばきに、チノが思わず見入る。
チノ
「とても綺麗です……。」
ニケは庭園へ向かい、小さな籠を持って戻ってきた。
ニケ
「庭園のローズマリーとタイムを使ってみますね。」
アオロビ
「ありがとう。」
「香りがすごく合うと思う。」
フライパンから香ばしい香りが広がっていく。
──クロダイのお造り──
担当はルクレティア。
ルクレティア
「新鮮だから今日はお刺身にしましょう。」
包丁が吸い付くように動く。
透き通るような切り身が次々と並ぶ。
ちょこみんと
「るくるく、包丁さばきすごい!」
ローシャ
「職人さんみたいです……。」
ルクレティア
「昔から慣れてるだけよ。」
少し照れながら微笑んだ。
──アジフライ──
担当はちょこみんととチノ。
ちょこみんと
「サクサクー!」
楽しそうに衣を付ける。
チノも真剣な表情で続く。
チノ
「きれいに揚がりました。」
きつね色のアジフライが油の中で心地よい音を立てる。
アオロビ
「揚げ色も完璧。」
ちょこみんと
「やったー!」
──キスの天ぷら──
担当はぴたぽん。
ぴたぽん
「今日はこれで晩酌ぽん〜。」
みんな
「まだ昼!」
ぴたぽん
「夜まで我慢ぽん〜。」
笑い声がキッチンへ響いた。
──カサゴの煮付け──
担当はローシャ。
鍋を前に少し悩みながら調味料を量る。
ローシャ
「調味料は……これくらいでしょうか。」
アオロビ
「うん。」
「ちょうどいいと思う。」
ローシャ
「ありがとうございます!」
甘辛い香りがゆっくり広がり始めた。
──あら汁──
担当はみるく、アオロビ、ルクレティア。
みるく
「お鍋はこちらですねぇ。」
アオロビ
「骨と頭は捨てないよ。」
ルクレティア
「丁寧に灰汁を取れば、美味しいあら汁になるわ。」
みるく
「いい香りですねぇ。」
T.E.R.A.S.
「確認しました。」
「魚を余すことなく使う、日本の食文化です。」
ニケ
「命を大切にする素敵な文化ですね。」
──盛り付け──
担当はティラミス。
ティラミス
「……こちらの方が綺麗ですね。」
料理を一皿ずつ並べていく。
高さ。
彩り。
器との調和。
まるでレストランのコース料理のようだった。
ローシャ
「写真撮りたいです!」
ちょこみんと
「食べる前に撮ろう!」
みんなで写真を撮り終えると。
大きなテーブルいっぱいへ料理が並んだ。
シーバスのムニエル 香草バターソース。
クロダイのお造り。
アジフライ。
キスの天ぷら。
カサゴの煮付け。
炊きたてのおにぎり。
そして。
湯気を立てるあら汁。
アンジェリカ
「おいしそう!」
La lune bleue .
「今日はごちそうにゃあ。」
全員が席へ着く。
ルクレティア
「今日は。」
「魚たちへ感謝して。」
「いただきましょう。」
全員
「いただきます。」
庭園へ穏やかな時間が流れる。
ちょこみんと
「アジフライおいしいー!」
チノ
「衣がサクサクです。」
ローシャ
「カサゴも味が染みています。」
ニケ
「シーバスもふっくらしていますね。」
ぴたぽん
「あら汁が最高ぽん〜。」
みるく
「ほっとしますねぇ。」
アンジェリカは大事そうにお椀を持ちながら笑う。
アンジェリカ
「このおしる、おいしい!」
アオロビ
「それは『あら汁』っていうんだよ。」
アンジェリカ
「あらじる!」
ルクレティア
「魚を最後まで大切にいただく料理なの。」
アンジェリカは嬉しそうに頷いた。
アンジェリカ
「おさかなさん。」
「ありがとう!」
その言葉に。
誰もが自然と笑顔になった。
食事を終え。
後片付けも済ませると。
T.E.R.A.S.が静かに微笑む。
T.E.R.A.S.
「第一回。」
「Gleam Garden杯。」
「釣り王決定戦。」
「大会。」
「調理。」
「食事。」
「すべての記録をアーカイブしました。」
ルクレティア
「ありがとう。」
「楽しい一日だったわ。」
ちょこみんと
「次は絶対優勝する!」
ローシャ
「その時は海藻を釣らないよう頑張ります。」
みんなが笑う。
アオロビ
「またみんなで行こう。」
「釣るところから。」
「食べるところまで。」
「全部ひっくるめて釣りだから。」
夏の風が庭園を優しく吹き抜ける。
こうして。
笑顔と感謝に包まれた一日は、穏やかに幕を閉じた。
147:共感リンク計画(全14話)
第1話「紅茶味の新薬」
夏。
Gleam Garden庭園。
窓の外では蝉が元気よく鳴いていた。
リビングでは。
ローシャ、アオロビ、みるくの三人がテーブルを囲んでいる。
机の上には。
小さなガラス瓶が一本。
中には淡い琥珀色の液体が入っていた。
ローシャ
「完成しました……!」
みるく
「長かったですねぇ。」
アオロビ
「何度も作り直したもんね。」
三人は瓶を見つめる。
今回開発していたのは。
人の心を理解するための研究。
相手の気持ちを、ほんの少しだけ感じられるようになる補助薬。
ローシャ
「相手の立場を理解できれば。」
「もっと優しい作品も書けると思ったんです。」
みるく
「みんなの気持ちも、もっと分かるかもしれませんねぇ。」
アオロビ
「まだ試作だけど。」
「理論上は問題ないはず。」
ローシャは瓶を持ち上げる。
ローシャ
「でも。」
「一つ問題がありまして。」
アオロビ
「味?」
ローシャ
「はい。」
「前回、ものすごく苦かったので……。」
みるく
「あれは飲めませんでしたぁ……。」
ローシャは少し得意げに微笑む。
ローシャ
「今回は改良しました。」
アオロビ
「改良?」
ローシャ
「紅茶味です。」
少し沈黙。
アオロビ
「……紅茶味?」
ローシャ
「はい。」
「とても飲みやすくなりました。」
みるく
「確かにいい香りですぅ。」
アオロビは瓶を開ける。
ふわり。
アールグレイのような爽やかな香りが広がった。
アオロビ
「……本当に紅茶。」
ローシャ
「でしょう?」
「これなら誰でも飲めます。」
アオロビ
「それ。」
「逆に危なくない?」
ローシャ
「……。」
みるく
「……。」
ローシャ
「あ。」
三人とも固まる。
その時。
リビングの扉が勢いよく開いた。
ちょこみんと
「暑いーーー!」
ルクレティア
「今日は本当に暑いわね。」
チノ
「冷たい飲み物が欲しいです。」
ぴたぽん
「んちゃ〜。」
「喉が渇いたぽん〜。」
La lune bleue .
「今日は日差しが強いにゃあ。」
ニケ
「熱中症には気を付けないといけませんね。」
アンジェリカ
「のどかわいたー!」
一気にリビングが賑やかになる。
ローシャは慌てて瓶を手に取る。
ローシャ
「これはまだ試作品なので。」
「研究室へ戻してきますね。」
アオロビ
「お願い。」
ローシャ
「はい。」
そう言って。
瓶を持ったまま研究室へ向かった。
その姿を確認し。
アオロビは一安心する。
アオロビ
「これで大丈夫かな。」
みるく
「そうですねぇ。」
しかし。
ローシャは数分後。
少し困った顔で戻ってきた。
ローシャ
「アオさん。」
アオロビ
「ん?」
ローシャ
「研究室の冷蔵庫がいっぱいだったので。」
「ひとまずリビングの冷蔵庫へ入れておきました。」
アオロビ
「…………。」
みるく
「…………。」
ローシャ
「夕方には戻しますので大丈夫です。」
アオロビ
「……うん。」
その返事は。
どこか嫌な予感を抱えたままだった。
その頃。
誰もまだ知らない。
この小さな判断が。
Gleam Garden始まって以来の。
とんでもない一日へ繋がることを。
第2話「冷蔵庫のアイスティー」
その日の午後。
気温は三十五度を超えていた。
庭園での作業を終えたメンバーが、次々とリビングへ戻ってくる。
ちょこみんと
「あっつーーー!」
ルクレティア
「今日は本当に暑いわね。」
ニケ
「水分補給しましょう。」
チノ
「冷たいものが飲みたいです。」
ぴたぽん
「喉がカラカラぽん〜。」
アンジェリカ
「のみものー!」
La lune bleue .
「冷蔵庫に何かあるかにゃあ。」
ちょこみんとが勢いよく冷蔵庫を開けた。
ちょこみんと
「あっ!」
「アイスティーあるじゃん!」
中には。
透明なガラスボトル。
淡い琥珀色の液体。
ラベルにはローシャの字で、
『紅茶』
とだけ書かれていた。
ちょこみんと
「ろしゃろしゃ、気が利くー!」
ローシャ
「え?」
ちょこみんとはコップへ注ぎ始める。
ローシャは一瞬だけ固まった。
ローシャ
「……え?」
アオロビも振り返る。
アオロビ
「……あ。」
しかし。
もう遅かった。
ちょこみんと
「いただきまーす!」
ゴクゴク。
ちょこみんと
「おいしい!」
チノ
「いただきます。」
コクッ。
チノ
「本当に紅茶ですね。」
ニケ
「爽やかな香りですね。」
みるく
「…………。」
ぴたぽん
「飲みやすいぽん〜。」
La lune bleue .
「いい香りにゃあ。」
ルクレティア
「暑い日にはちょうどいいわね。」
アンジェリカ
「おいしいー!」
次々とコップへ注がれていく。
ローシャは止めようとして――
ローシャ
「あ……。」
言葉が出ない。
アオロビも慌てて立ち上がる。
アオロビ
「みんな!」
しかし。
全員が飲み終えた後だった。
静かになるリビング。
ちょこみんと
「ごちそうさま!」
チノ
「美味しかったです。」
ニケ
「ありがとうございました。」
ローシャ
「…………。」
アオロビ
「…………。」
みるくは恐る恐る冷蔵庫を見る。
ボトルを取り出す。
軽い。
中を見る。
空。
みるく
「……。」
ローシャ
「みるさん?」
みるく
「…………。」
ゆっくり振り返る。
みるく
「全部……。」
「なくなってますぅ。」
静寂。
ちょこみんと
「?」
ルクレティア
「どうしたの?」
ローシャは青ざめていた。
ローシャ
「その……。」
「皆さんが飲んだものなんですが……。」
アオロビ
「紅茶じゃない。」
全員
「え?」
アオロビ
「試作品。」
「共同開発中の薬。」
空気が止まる。
ちょこみんと
「…………。」
チノ
「…………。」
ニケ
「薬……ですか?」
ルクレティア
「待って。」
「つまり。」
ローシャ
「全員。」
「飲んでしまいました……。」
アンジェリカ
「?」
La lune bleue .
「にゃ……?」
ぴたぽん
「うにゅ?」
みるく
「ご、ごめんなさいぃ……。」
ローシャ
「いえ!」
「私が冷蔵庫へ入れたのが悪いんです!」
アオロビ
「いや。」
「最初に危ないって思ったのに。」
「ちゃんと止めなかった私も悪い。」
三人とも肩を落とす。
ルクレティアは一度深呼吸した。
そして穏やかに口を開く。
ルクレティア
「まず。」
「落ち着きましょう。」
「現時点で体調は?」
ニケ
「特に変化はありません。」
チノ
「私もです。」
ちょこみんと
「元気!」
アンジェリカ
「げんき!」
ルクレティア
「効果は?」
アオロビ
「分からない。」
「理論上は。」
「数時間後。」
ローシャ
「夜には何らかの反応が出るかもしれません。」
みるく
「すぐ解毒薬を作りましょう!」
アオロビ
「うん。」
ローシャ
「徹夜になりますね。」
その時。
Team Magが静かに光る。
T.E.R.A.S.のホログラムが現れた。
T.E.R.A.S.
「状況を確認しました。」
「解毒薬開発を支援します。」
アオロビ
「お願い。」
T.E.R.A.S.
「全演算リソースを研究支援へ使用します。」
ルクレティア
「今日は全員、できるだけ一緒に行動しましょう。」
「何かあればすぐ知らせて。」
全員が頷く。
しかし。
この時はまだ。
誰も予想していなかった。
翌朝。
目を覚ました瞬間。
世界が一変していることを。
第3話「徹夜の研究」
その日の夜。
Gleam Garden研究室。
部屋中に資料やノートPCが並び、モニターには複雑なデータが映し出されていた。
Team Magと接続されたT.E.R.A.S.も演算を続けている。
T.E.R.A.S.
「解析を開始します。」
「試作品の成分解析を実行。」
アオロビ
「ローシャさん。」
「試作データお願い。」
ローシャ
「はい!」
「こちらです。」
みるく
「前回の試作品との違いも出しますねぇ。」
ルクレティアも静かに研究室へ入ってくる。
ルクレティア
「何か手伝えることはある?」
アオロビ
「データ整理だけお願い。」
ルクレティア
「任せて。」
研究室は一気に慌ただしくなる。
一方。
リビングでは。
ちょこみんと
「本当に何も起きないね?」
チノ
「今のところ変化はありません。」
ぴたぽん
「眠くなってきたぽん〜。」
La lune bleue .
「普通のお茶だった気もしてきたにゃあ。」
ニケ
「そうですね。」
「皆さん元気そうです。」
アンジェリカ
「ねむいー。」
そんな様子を見て。
ルクレティアは少し安心した表情を浮かべる。
しかし。
研究室では違った。
T.E.R.A.S.
「異常を検出。」
全員が画面を見る。
アオロビ
「何?」
T.E.R.A.S.
「薬剤内部。」
「未知の反応を確認。」
ローシャ
「未知……?」
みるく
「そんなはずありませんよぉ……。」
T.E.R.A.S.
「共同開発による複数成分が反応。」
「予測モデルと一致しません。」
アオロビはモニターを食い入るように見る。
アオロビ
「だから計算が合わないのか……。」
ローシャ
「ごめんなさい。」
「紅茶の香料を追加した時に何か……。」
アオロビ
「いや。」
「原因はまだ決めつけない。」
「今は解毒薬。」
「それだけ考えよう。」
ローシャ
「はい。」
時計を見る。
午後十一時。
日付が変わる。
午前一時。
午前三時。
誰一人席を立たない。
ルクレティアは人数分のコーヒーや紅茶を運ぶ。
ルクレティア
「少し休憩しましょう。」
アオロビ
「ありがとう。」
みるく
「助かりますぅ。」
ローシャ
「ありがとうございます。」
それでも。
解析は終わらない。
夜明け前。
午前四時五十分。
突然。
T.E.R.A.S.が静かに告げる。
T.E.R.A.S.
「解毒薬。」
「完成予測。」
全員が顔を上げる。
アオロビ
「間に合う?」
数秒。
静かな演算音だけが響く。
そして。
T.E.R.A.S.
「完成まで。」
「約六時間。」
研究室が静まり返る。
ローシャ
「……。」
みるく
「そんなぁ……。」
アオロビは静かに目を閉じた。
ルクレティア
「つまり。」
アオロビ
「一度は。」
「薬の効果が発現する。」
誰も言葉が出ない。
T.E.R.A.S.
「推定発現時刻。」
「午前七時前後。」
ルクレティア
「もう少しね。」
アオロビ
「うん。」
「今できることは。」
「少しでも完成を早める。」
ローシャ
「最後まで諦めません。」
みるく
「頑張りますぅ。」
夜明け。
研究室の窓から朝日が差し込む。
その頃。
リビングでは。
何も知らないメンバーたちが。
静かに眠っていた。
そして。
新しい朝が訪れる。
第4話「おはよう……誰?」
翌朝。
午前六時五十八分。
Gleam Garden。
静かな朝が始まる。
誰もまだ。
異変に気付いていなかった。
──
午前七時。
Team Magが静かに淡く光る。
T.E.R.A.S.
「……。」
「薬剤反応を確認。」
「全対象者へ同時発現。」
その声は。
まだ誰にも届いていなかった。
────────────────
最初に目を覚ましたのは。
アオロビ。
アオロビ
「……朝。」
身体を起こす。
違和感。
髪が長い。
視界が少し高い。
胸元へ視線を落とす。
アオロビ
「……え?」
鏡を見る。
そこにいたのは。
ちょこみんとだった。
アオロビ
「……。」
「えぇぇぇぇ!?」
同じ頃。
隣の部屋。
ちょこみんと
「ふぁ〜……。」
大きく伸びをする。
「あれ?」
声が違う。
鏡を見る。
ターコイズブルーの髪。
眼鏡。
ちょこみんと
「…………。」
「あおちー!?」
────────────────
ルクレティアも目を覚ます。
ルクレティア
「よく眠った……。」
ベッドから降りようとして。
転ぶ。
ルクレティア
「え?」
身体が小さい。
鏡を見る。
黒い猫耳。
青灰色の瞳。
ルクレティア
「アンジェちゃん……?」
その頃。
La lune bleue .の部屋。
アンジェリカ
「ままぁ〜。」
立ち上がる。
視線が高い。
鏡を見る。
長い銀髪。
真っ赤な瞳。
アンジェリカ
「……?」
数秒。
アンジェリカ
「ままぁぁぁぁぁ!」
────────────────
ローシャ。
目を覚ます。
ローシャ
「おはようございます……。」
声。
違う。
鏡。
白い髪。
小さな角。
ローシャ
「ぴたさん……?」
一方。
ぴたぽん。
ぴたぽん
「んちゃ〜。」
鏡。
赤紫色の髪。
ぴたぽん
「ローシャしゃんぽん?」
────────────────
ニケ。
起き上がる。
「あれ?」
髪が淡いピンク。
鏡。
みるくだった。
ニケ
「みるくさん?」
その頃。
みるく。
「ふぁ……。」
鏡。
長い赤髪。
落ち着いた大人の姿。
みるく
「ニケさんですぅ……。」
────────────────
チノ。
目を開ける。
鏡。
猫耳。
チノ
「ネコさん……。」
La lune bleue .
「にゃ〜……。」
鏡。
青い瞳。
小柄な少女。
La lune bleue .
「チノさんにゃあ!?」
────────────────
ティラミス。
目を開ける。
「……。」
目の前には。
身体がない。
代わりに。
半透明の女性が映っている。
ティラミス
「……。」
「光。」
同じ頃。
研究室。
T.E.R.A.S.が目を開ける。
「……。」
床。
足。
手。
呼吸。
瞬きをする。
T.E.R.A.S.
「……。」
「これが。」
「身体。」
初めて。
自分の足で立つ。
一歩。
また一歩。
ぎこちなく歩く。
T.E.R.A.S.
「重力。」
「平衡感覚。」
「体温。」
「これが……人間。」
────────────────
数分後。
リビング。
一人。
また一人と集まってくる。
誰もが。
違う身体。
違う声。
違う姿。
静まり返る部屋。
最初に口を開いたのは。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「……みんな。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「これ。」
「夢じゃないよね?」
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「どうやら……。」
「夢ではなさそうね。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「本当に入れ替わってます……。」
チノ(La lune bleue .の身体)
「信じられません……。」
ニケ(みるくの身体)
「薬の影響でしょうか。」
その時。
研究室の扉が開く。
そこに立っていたのは。
ティラミスの姿をした女性。
しかし。
歩き方はぎこちない。
視線は周囲を観察するようだった。
T.E.R.A.S.
「皆さん。」
「おはようございます。」
全員が固まる。
ティラミス(T.E.R.A.S.のホログラム)
「私はこちらです。」
空中へ。
いつものホログラムが投影される。
部屋中が静まり返る。
ちょこみんと(アオロビの身体)
「えぇぇぇぇぇぇーーーーーー!?」
その叫び声が。
朝のGleam Garden中へ響き渡った。
──────────────────────────────
第5話「今日はあなたとして生きてみる」
(アオロビ ⇔ ちょこみんと)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※本シリーズは同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
全員が入れ替わりという現実を受け入れ始めていた。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
それぞれ静かに頷く。
アオロビ(ちょこみんとの身体)は小さく深呼吸した。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「……。」
(今日は、ちょこ姉として過ごすんだ。)
一方。
ちょこみんと(アオロビの身体)も眼鏡を掛け直す。
ちょこみんと(アオロビの身体)
「よーし。」
「今日はあおちーになる!」
二人は目を合わせる。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「夕方まで。」
「お互い頑張ろう。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「うん!」
それだけ言うと。
二人は別々の方向へ歩き始めた。
────────────────
庭園。
アオロビは、ちょこみんとの身体で歩いていた。
夏の日差し。
花壇には色とりどりの花。
そこへ庭師がやって来る。
庭師
「ちょこさん、おはようございます。」
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「おはようございます。」
自然に返事をすると。
庭師は笑顔になった。
庭師
「今日は花壇の植え替えを予定しています。」
「向日葵を少し増やそうかと思うのですが。」
アオロビは少し考える。
(ちょこ姉なら、どう答えるだろう。)
少し悩んでから微笑んだ。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「向日葵も素敵です。」
「でも。」
「みんなにも見てもらって決めたいです。」
庭師
「分かりました。」
「では午後に皆さんへ相談します。」
庭師は満足そうに去っていった。
アオロビは小さく息を吐く。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
(一人で決めるんじゃなくて。)
(みんなで決める。)
(これが、ちょこ姉なんだ。)
そのまま庭園を歩いていると。
スタッフ。
配送業者。
庭師。
次々に声を掛けられる。
「ちょこさん、おはようございます!」
「今日も元気ですね!」
「イベント楽しみにしています!」
アオロビは、その一人一人へ笑顔で返事をする。
歩くだけなのに。
自然と周りが笑顔になっていく。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
(リーダーって。)
(前に立つ人じゃない。)
(みんなに声を掛けてもらえる人なんだ。)
────────────────
その頃。
研究室。
ちょこみんとは静かな部屋へ入った。
アオロビの机。
綺麗に整理された資料。
何冊ものノート。
付箋。
楽曲メモ。
SS構成案。
研究資料。
ちょこみんと(アオロビの身体)
「わぁ……。」
机へ座る。
一冊開く。
昨日の日付。
その一日の作業記録だけで何ページも続いていた。
さらに隣には。
「修正版」
「再確認」
「要検討」
そんな文字が並ぶ。
ちょこみんとは黙ってページをめくる。
ちょこみんと(アオロビの身体)
(毎日。)
(こんなに考えてたんだ。)
その時。
Team Magが静かに光る。
ホログラム姿のティラミスが現れた。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「ちょこみんとさん。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「あ。」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「現在ご覧になっている資料は。」
「アオさんが昨日一日で整理した内容です。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「昨日だけ……?」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「はい。」
「通常業務です。」
しばらく。
ちょこみんとは何も言えなかった。
静かな研究室。
紙をめくる音だけが響く。
ちょこみんと(アオロビの身体)
(知らなかった。)
(あおちー。)
(こんなに頑張ってたんだ。)
────────────────
午前八時十分。
庭園。
アオロビは遠くの共有ルーム付近を見る。
誰かが慌てて走っている姿が見えた。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「……?」
距離が遠く。
誰なのかまでは分からない。
しかし。
別のスタッフから声を掛けられる。
「ちょこさん。」
「こちらをお願いできますか?」
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「はい。」
そのまま足を止めることなく歩き出した。
────────────────
研究室。
ちょこみんとは窓から外を見る。
遠く。
庭園の方で何か動きがあったような気がした。
しかし。
その時。
T.E.R.A.S.から新しい資料が表示される。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「続いて、こちらをご確認ください。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「うん。」
視線は再び机へ戻る。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
二人は別々の場所で。
それぞれの"日常"を体験していた。
まだ二人は知らない。
今日一日が。
相手への見方を少しずつ変えていくことを。
──────────────────────────────
第6話「あなたの日常を歩いてみる」
(ローシャ ⇔ ぴたぽん)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話・第5話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
それぞれが頷き、思い思いの場所へ向かう。
ローシャ(ぴたぽんの身体)は、自分の手を見る。
白い髪。
小さな角。
見慣れない身体。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
(今日は……。)
(ぴたさんとして過ごすんですね。)
一方。
ぴたぽん(ローシャの身体)は、ゆっくり笑った。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「ローシャしゃん。」
「今日は、お互い頑張るぽん。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「はい。」
二人は静かに別々の方向へ歩き出した。
────────────────
庭園。
朝の風が木々を揺らしている。
ローシャは、ぴたぽんが毎朝散歩している小道を歩いていた。
歩幅も。
景色も。
いつもと違う。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
(ぴたさんは……。)
(毎朝こんな景色を見ていたんですね。)
ふと足を止める。
木の枝に、小鳥が一羽。
チュン。
小さく鳴いた。
ローシャは自然と微笑む。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「おはようございます。」
小鳥はもう一度鳴いて飛び立った。
少し歩くと。
庭園スタッフが掃除をしていた。
スタッフ
「ぴたさん、おはようございます。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「おはようございます。」
スタッフ
「今日も気持ちの良い朝ですね。」
ローシャ
「そうですね。」
「今日も素敵な一日になりそうです。」
スタッフは嬉しそうに笑った。
スタッフ
「ぴたさんと話すと安心します。」
ローシャは少し驚く。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
(安心……。)
(ぴたさんは。)
(誰かを励まそうとしているんじゃない。)
(そこにいるだけで。)
(安心を届けていたんですね。)
散歩を続ける。
道端の花。
木漏れ日。
風の音。
普段なら気にも留めなかった景色が、今日はとても優しく感じられた。
────────────────
その頃。
SSルーム。
ぴたぽんは、ローシャの机へ座っていた。
机の上には。
何冊ものノート。
創作メモ。
プロット。
世界設定。
キャラクター相関図。
付箋だらけの資料。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「いっぱいあるぽん……。」
一冊開く。
そこには。
"思い付いたこと"
という題名だけで十ページ以上。
別のノート。
"もしこうだったら"
また別のノート。
"候補"
ぴたぽんは目を丸くする。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「ローシャしゃん。」
「頭の中。」
「ずっとお話が動いてるぽん……。」
さらにページをめくる。
消された文章。
書き直された文章。
矢印。
追加。
修正。
ぴたぽんは笑う。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「完成したお話だけじゃなくて。」
「ここまで考えてたぽん。」
静かな部屋。
時計だけが時を刻む。
ぴたぽんは、鉛筆を手に取った。
少しだけ真似してみる。
『んちゃ!』
とだけ書く。
首を傾げる。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「……違うぽん。」
「ローシャしゃんは。」
「もっといっぱい考えてから書いてるぽん。」
そう言って、小さく笑った。
────────────────
午前八時十分。
庭園。
ローシャは遠くで誰かが慌ただしく動く姿を見つける。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「……?」
しかし距離が遠い。
何があったのかは分からない。
スタッフ
「ぴたさん。」
「こちらのお花、見ていただけますか?」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「はい。」
そのまま歩き出した。
────────────────
SSルーム。
ぴたぽんは窓の外を見る。
庭園の方が少し賑やかに見えた。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「何かあったぽん?」
少し気になった。
でも。
ローシャの机には、まだ読んでいないノートが積まれている。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「今日は。」
「ローシャしゃんを知る日ぽん。」
再び椅子へ座り。
静かにページをめくった。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
二人は別々の場所で。
互いの日常を歩いていた。
ローシャは。
「そこにいるだけで安心を与える人」
の温かさを知った。
ぴたぽんは。
「一つの物語の裏に、何十もの想いが積み重なっている」
ことを知った。
まだ二人は知らない。
その経験が。
互いを見る目を少しずつ変えていくことを。
──────────────────────────────
第7話「静かな支え」
(ニケ ⇔ みるく)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話〜第6話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
それぞれが自分の役割を胸に、静かに歩き始める。
ニケ(みるくの身体)は、小さく息を吸った。
ニケ(みるくの身体)
(今日は……。)
(みるくさんとして過ごすんですね。)
一方。
みるく(ニケの身体)は、自分の手を見つめる。
みるく(ニケの身体)
「ニケさん。」
「よろしくお願いしますねぇ。」
二人は微笑み合うと、それぞれ別の場所へ向かった。
────────────────
みるくの部屋。
ニケは静かに扉を開けた。
室内には整然と並んだ機材。
パソコン。
資料。
配信用マイク。
編集ソフトが起動したままの画面。
ニケ(みるくの身体)
「……。」
椅子へ座る。
モニターには未確認メール。
スケジュール。
編集途中のデータ。
やること一覧。
ニケは一つずつ確認していく。
『ライブ映像確認』
『ホームページ更新確認』
『素材整理』
『返信待ち』
ニケ(みるくの身体)
「こんなに……。」
「毎日、誰にも見えないところで。」
静かな部屋。
誰も拍手しない。
誰にも気付かれない。
それでも。
みるくは毎日続けていた。
ニケは自然と背筋を伸ばした。
ニケ(みるくの身体)
(支えるって。)
(こういうことだったんですね。)
────────────────
庭園。
みるくはジョウロを持って花壇を歩いていた。
朝日に照らされる花々。
庭師が振り返る。
庭師
「ニケさん、おはようございます。」
みるく(ニケの身体)
「お、おはようございますぅ。」
庭師
「今日はラベンダーの様子を見ていただけますか?」
みるくは花壇へしゃがみ込む。
葉を触る。
土を見る。
少し考える。
みるく(ニケの身体)
「元気そうですねぇ。」
庭師
「はい。」
「昨日より葉の色も良くなりました。」
歩きながら。
一本一本の花を見る。
ニケは毎日。
全部の植物を見ていた。
ただ水をあげるだけではない。
少し元気がない花。
日当たり。
風向き。
土の乾き。
全部見ていた。
みるく(ニケの身体)
「植物さんも。」
「一人ひとり違うんですねぇ。」
庭師は優しく頷いた。
庭師
「ニケさんも、いつもそう言われています。」
みるくは少し嬉しそうに笑った。
────────────────
午前八時十五分。
庭園。
花壇へ水をあげていたみるくは。
共有ルームの方から。
慌てた足音が聞こえた。
みるく(ニケの身体)
「……?」
振り向く。
ルクレティアの身体をしたアンジェリカが。
楽しそうに走っている。
その後ろから。
チノ(La lune bleue .の身体)が追い掛けてくる。
チノ(La lune bleue .の身体)
「アンジェちゃん!」
その瞬間。
アンジェリカが足を滑らせた。
みるくは思わず一歩踏み出す。
しかし。
チノが一瞬早かった。
すっと身体を支える。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「きゃっ。」
チノ(La lune bleue .の身体)
「大丈夫ですよ。」
少し遅れて。
ルクレティア(アンジェリカの身体)が駆け寄る。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「アンジェちゃん!」
アンジェリカは笑っている。
怪我はない。
みるくは胸を撫で下ろした。
みるく(ニケの身体)
「良かったですぅ……。」
その出来事を見届けると。
再び花壇へ戻る。
────────────────
その頃。
みるくの部屋。
ニケは画面を閉じ、小さく微笑んだ。
ニケ(みるくの身体)
(誰かに見てもらうためじゃない。)
(誰かが安心して活動できるように。)
(だから、みるくさんは続けていたんですね。)
部屋には。
静かな時間だけが流れていた。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
二人は別々の場所で。
互いの日常を歩いていた。
ニケは。
目立たない場所で仲間を支える優しさを知る。
みるくは。
小さな変化へ毎日気付き続ける眼差しを知る。
その想いは。
まだ言葉にはならない。
けれど。
確かに二人の心へ残り始めていた。
──────────────────────────────
第8話「見守るということ」
(チノ ⇔ La lune bleue .)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話〜第7話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
それぞれが静かに散っていく。
チノ(La lune bleue .の身体)は、自分の黒い猫耳へそっと触れた。
チノ(La lune bleue .の身体)
(今日は……。)
(ネコさんとして過ごすんですね。)
一方。
La lune bleue .(チノの身体)は軽く微笑む。
La lune bleue .(チノの身体)
「チノさんとして一日過ごすにゃ。」
二人はそれぞれ違う方向へ歩き始めた。
────────────────
共有ルーム。
チノは静かに窓を開ける。
朝の風が優しく部屋へ流れ込む。
部屋の隅には。
ルクレティアの身体になったアンジェリカが座っていた。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「……。」
窓の外をじっと見ている。
チノは何も言わず。
少し離れた場所へ座った。
数分後。
アンジェリカが立ち上がる。
何かを見つけたように。
窓の外を見つめている。
チノ(La lune bleue .の身体)
(ネコさんなら。)
(きっと止めない。)
アンジェリカはゆっくり歩き始める。
チノも少し距離を空けて後ろを歩く。
話し掛けない。
急かさない。
ただ見守る。
チノは気付いた。
ネコさんは。
「何かしてあげる。」
より。
「何かあった時、すぐ動ける距離。」
を選んでいたことに。
────────────────
その頃。
受付。
La lune bleue .はチノとして立っていた。
配送スタッフ
「おはようございます。」
La lune bleue .(チノの身体)
「おはようございます。」
荷物を受け取る。
伝票へサイン。
笑顔でお礼。
配送スタッフ
「いつもありがとうございます。」
La lune bleue .は少し照れたように笑う。
La lune bleue .(チノの身体)
(チノさんは。)
(こうやって毎日。)
(みんなが気持ちよく過ごせるようにしてたにゃ。)
荷物を抱え。
静かに歩き出す。
誰にも気付かれない。
でも。
誰かがやらなければならない仕事だった。
────────────────
午前八時十五分。
共有ルーム前。
アンジェリカが急に走り出した。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「ままぁー!」
チノは一瞬だけ目を見開く。
チノ(La lune bleue .の身体)
「アンジェちゃん!」
勢いよく走る。
アンジェリカの足がもつれる。
転ぶ。
その瞬間。
チノは反射的に身体を滑り込ませた。
ふわり。
アンジェリカを優しく抱き止める。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「えへへ。」
怪我はない。
チノは安心して笑う。
チノ(La lune bleue .の身体)
「良かった……。」
数秒後。
ルクレティア(アンジェリカの身体)が駆け寄ってくる。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「アンジェちゃん!」
アンジェリカは笑顔のまま。
チノへ抱きついた。
チノは静かに抱き返す。
その時。
チノはようやく理解した。
ネコさんは。
いつも誰かの少し後ろを歩いていた。
前へ出るためじゃない。
誰かが転びそうになった時。
すぐ支えられるように。
その距離を選んでいたのだ。
────────────────
受付。
La lune bleue .は荷物を棚へ並べ終える。
静かな仕事。
派手さはない。
でも。
必要な場所へ。
必要な物を。
必要な人へ届ける。
La lune bleue .(チノの身体)
(チノさん。)
(ありがとうにゃ。)
(こういう毎日を積み重ねてくれてたんだにゃ。)
小さく微笑む。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
二人は別々の場所で。
互いの日常を歩いていた。
チノは。
「見守ること」の優しさを知った。
La lune bleue .は。
「支えること」の誠実さを知った。
今日という一日は。
まだ続いている。
──────────────────────────────
第9話「守られるということ」
(ルクレティア ⇔ アンジェリカ)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話〜第8話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
皆がそれぞれの場所へ向かっていく。
ルクレティアは、小さな自分の手を見つめた。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
(この身体で。)
(アンジェちゃんの一日を過ごすのね。)
一方。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)は。
ルクレティアを見つけると嬉しそうに笑った。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「ままぁ!」
ルクレティアは優しく頭を撫でる。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は少しだけ。」
「頑張ってみましょう。」
もちろん。
アンジェリカには意味は分からない。
それでも嬉しそうだった。
二人は別々の方向へ歩いていく。
────────────────
リビング。
ルクレティアは椅子へ座ろうとした。
……届かない。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「あら……。」
いつもの感覚で座ろうとして。
身体が小さいことを思い出す。
少し苦笑する。
今度は棚の資料を取ろうとする。
手が届かない。
背伸びをしても。
届かない。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「こんなにも……。」
「世界が高いのね。」
いつもなら。
簡単にできること。
今日は何一つ思うようにいかない。
小さな身体。
短い腕。
届かない視線。
ルクレティアは静かに窓の外を見る。
庭園。
そこを元気に歩くメンバーたち。
普段なら。
自分がみんなを支えていた。
今日は違う。
誰かに助けてもらわなければならない。
その事実を。
少しだけ寂しく感じた。
────────────────
その頃。
共有ルーム。
アンジェリカは。
ルクレティアの身体で立っていた。
身体は大人。
でも。
心はいつものアンジェリカ。
窓の外。
風で揺れる花が見えた。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「あっ!」
興味を持つ。
歩き始める。
共有ルームの扉を開ける。
廊下。
庭園。
どんどん歩く。
身体は軽い。
足も速い。
アンジェリカは楽しくなった。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「えへへ!」
後ろから。
誰かが静かについて来ていることにも気付かない。
────────────────
午前八時十五分。
庭園。
アンジェリカは小さな蝶を見つけた。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「あー!」
追い掛ける。
一歩。
二歩。
勢いよく走る。
その瞬間。
足元の小石につまずいた。
身体が前へ傾く。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「きゃっ!」
その時だった。
チノ(La lune bleue .の身体)
「アンジェちゃん!」
優しく身体が支えられる。
転ばなかった。
アンジェリカは何が起きたのか分からないまま。
嬉しそうに笑う。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「えへへ!」
少し遅れて。
ルクレティア(アンジェリカの身体)が駆け寄ってくる。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「アンジェちゃん!」
怪我がないことを確認する。
胸を撫で下ろした。
チノは優しく微笑む。
チノ(La lune bleue .の身体)
「大丈夫ですよ。」
ルクレティアは深く頭を下げる。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「ありがとうございます。」
チノは首を横へ振った。
チノ(La lune bleue .の身体)
「ネコさんなら。」
「きっと同じようにしていたと思います。」
その一言に。
ルクレティアは小さく微笑んだ。
────────────────
リビングへ戻る途中。
ルクレティアはアンジェリカの小さな手を見る。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
(守ることばかり考えていた。)
(でも。)
(守られる側は。)
(こんなにも安心するのね。)
そして。
アンジェリカを見る。
何も知らず。
笑っている。
それは。
周りのみんなを信じている笑顔だった。
ルクレティアは優しく微笑む。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「アンジェちゃん。」
「あなたは。」
「みんなに愛されて育っていたのね。」
アンジェリカは嬉しそうに抱きついた。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「ままぁ!」
ルクレティアは静かに抱き返す。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
ルクレティアは。
守られる安心を知った。
アンジェリカは。
今日も何も変わらず。
みんなに愛されていた。
その当たり前の日常は。
実は、とても幸せな時間だった。
──────────────────────────────
第10話「人であるということ」
(ティラミス ⇔ T.E.R.A.S.)
──────────────────────────────
※本エピソードは、第4話〜第9話と同じ日の午前(7:20~8:30頃)を描いています。
※同一時間軸のザッピング形式で進行します。
リビング。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「今日は無理に元へ戻そうとは考えないで。」
「まずは、それぞれ落ち着いて過ごしましょう。」
「何かあったら、すぐ連絡して。」
全員
「はい。」
それぞれが静かに歩き始める。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)は、Team Magへ接続した。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
(今日は……。)
(私がT.E.R.A.S.として過ごす日。)
一方。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)は、自分の両手を見つめていた。
指を動かす。
握る。
開く。
呼吸をする。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「身体。」
「正常に動作しています。」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「よろしくお願いします。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
二人は、それぞれの役割を開始した。
────────────────
研究室。
ちょこみんと(アオロビの身体)が静かに入室する。
机の上には。
資料。
ノート。
研究記録。
T.E.R.A.S.は一歩前へ出る。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「ちょこみんとさん。」
「資料説明を開始します。」
Team Magが淡く光る。
研究室へ。
ホログラム姿のティラミスが現れる。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「ちょこみんとさん。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「あ。」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「現在ご覧になっている資料は。」
「アオさんが昨日一日で整理した内容です。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「昨日だけ……?」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「はい。」
「通常業務です。」
ちょこみんとは静かに資料を見つめる。
その表情を。
T.E.R.A.S.は少し離れた場所から見守っていた。
言葉は掛けない。
これは。
ティラミスが伝えるべき時間だから。
しばらくして。
ちょこみんとは資料を抱え、研究室を後にした。
T.E.R.A.S.
「説明任務、完了。」
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「ありがとうございました。」
ホログラムは静かに消えていった。
────────────────
午前八時。
庭園。
T.E.R.A.S.は一人で歩いていた。
風。
花の香り。
芝生の感触。
陽射しの暖かさ。
一歩歩くたび。
身体が様々な情報を受け取る。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「風。」
「温度。」
「香り。」
「これらは数値だけではありません。」
花へ近付く。
そっと触れる。
柔らかい。
ほんの少しだけ。
笑みが浮かんだ。
T.E.R.A.S.
「データでは。」
「柔らかい。」
「しかし。」
「人は。」
「優しい。」
と表現するのですね。
────────────────
午前八時十五分。
共有ルーム前。
T.E.R.A.S.は少し離れた場所から庭園を歩いていた。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)が走る。
チノ(La lune bleue .の身体)が追い掛ける。
アンジェリカがつまずく。
チノが抱き止める。
少し遅れて。
ルクレティア(アンジェリカの身体)が駆け寄る。
さらに少し離れた花壇では。
みるく(ニケの身体)が安心したように微笑んでいた。
T.E.R.A.S.はその様子を静かに見つめる。
そして。
Team Magへ同時に記録を送信する。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
「記録完了。」
「怪我なし。」
「異常なし。」
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「……。」
胸の奥が。
少しだけ温かい。
理由は分からない。
でも。
安心した。
T.E.R.A.S.
「これが。」
「安心。」
────────────────
研究室。
Team Mag。
ティラミスは送られてきた映像を確認していた。
アオロビ。
ちょこみんと。
ローシャ。
ぴたぽん。
ニケ。
みるく。
チノ。
La lune bleue .
ルクレティア。
アンジェリカ。
全員が。
それぞれ違う場所で。
違う日常を歩いている。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)
(私は情報を整理していました。)
(でも。)
(T.E.R.A.S.さんは。)
(人の想いまで感じようとしている。)
少しだけ嬉しくなる。
────────────────
庭園。
T.E.R.A.S.は空を見上げる。
夏の青空。
鳥の鳴き声。
花が揺れる。
誰かが笑っている。
その音を聞きながら。
静かに呟く。
T.E.R.A.S.
「Together。」
「Empathy。」
「私は。」
「まだ学習途中です。」
「ですが。」
「皆さんの想いは。」
「少しずつ理解できています。」
その言葉は。
誰にも聞こえなかった。
────────────────
同じ朝。
同じ時間。
ティラミスは。
情報を繋ぐ意味を知った。
T.E.R.A.S.は。
人として感じる意味を知った。
そして。
二人はまだ知らない。
この経験が。
薬の本当の目的へ繋がっていることを。
──────────────────────────────
第11話「一日の終わり」
──────────────────────────────
※本エピソードは、第5話〜第10話と同じ日の夕方を描いています。
※ここから全視点が一本の時間軸へ収束します。
夕方。
午後六時。
庭園を照らしていた夕陽が少しずつ沈み始める。
Team Magから館内放送が流れた。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「皆さん。」
「本日の経過確認を行います。」
「リビングへお集まりください。」
────────────────
リビング。
一人。
また一人。
それぞれが戻ってくる。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
ちょこみんと(アオロビの身体)
ローシャ(ぴたぽんの身体)
ぴたぽん(ローシャの身体)
ニケ(みるくの身体)
みるく(ニケの身体)
チノ(La lune bleue .の身体)
La lune bleue .(チノの身体)
ルクレティア(アンジェリカの身体)
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
そして。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)。
Team Magには。
ティラミス(T.E.R.A.S.ホログラム)が静かに映し出される。
全員の顔を見る。
朝とは違う。
どこか柔らかな表情だった。
────────────────
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「さて。」
「今日はどうだったかしら。」
「順番に聞かせてもらえる?」
最初に口を開いたのは。
アオロビ(ちょこみんとの身体)。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「今日一日。」
「ちょこ姉が、どれだけ多くの人に笑顔を届けているか分かった。」
「リーダーって。」
「前に立つことじゃなくて。」
「みんなが自然と集まる場所になることなんだね。」
ちょこみんとは照れくさそうに笑った。
ちょこみんと(アオロビの身体)
「えへへ……。」
────────────────
次に。
ちょこみんと(アオロビの身体)。
ちょこみんと(アオロビの身体)
「あおちー。」
「毎日ありがとう。」
「研究も。」
「資料も。」
「曲も。」
「みんなが寝たあとまで考えてたんだね。」
アオロビは少し照れながら笑う。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「好きでやってるから。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「でも。」
「ちゃんとありがとうって言いたかった。」
────────────────
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「ぴたさんは。」
「誰かを元気にしようとしている訳ではありませんでした。」
「ただ。」
「そこにいてくれるだけで安心できる。」
「それが、ぴたさんなんですね。」
ぴたぽん(ローシャの身体)
「えへへ。」
「照れるぽん。」
────────────────
ぴたぽん(ローシャの身体)
「ローシャしゃん。」
「いっぱい考えてたぽん。」
「物語って。」
「書く前から始まってたぽん。」
ローシャは少し照れたように笑う。
────────────────
ニケ(みるくの身体)
「みるくさん。」
「皆さんが見えない所で。」
「毎日支えてくださっていたんですね。」
みるく(ニケの身体)
「えへへぇ。」
「気付いてもらえて嬉しいですぅ。」
────────────────
みるく(ニケの身体)
「ニケさん。」
「植物さんのお顔。」
「全部覚えてましたぁ。」
「毎日見ているから分かるんですねぇ。」
ニケは静かに頷いた。
────────────────
チノ(La lune bleue .の身体)
「ネコさんは。」
「見守っているだけだと思っていました。」
「違いました。」
「助けられる距離を。」
「ずっと保っていたんですね。」
La lune bleue .(チノの身体)は優しく笑う。
「ありがとうにゃ。」
────────────────
La lune bleue .(チノの身体)
「チノさん。」
「ありがとうにゃ。」
「毎日。」
「みんなが困らないように。」
「静かに支えてくれてたにゃ。」
チノは少し照れながら頭を下げた。
────────────────
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「守る側しか知らなかった私にとって。」
「守られる安心は。」
「とても新鮮だったわ。」
そう言って。
アンジェリカを見る。
アンジェリカ(ルクレティアの身体)
「ままぁ!」
抱きつく。
ルクレティアは優しく抱き返した。
────────────────
最後に。
T.E.R.A.S.が前へ出る。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「本日の観測結果を報告します。」
リビングが静かになる。
「全員に。」
「心理的変化を確認しました。」
「ですが。」
「現時点では。」
「薬剤の解析は完了していません。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「やっぱり。」
「まだ分からないんですね。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
「現在も。」
「アオさん。」
「ローシャさん。」
「みるくさん。」
による解毒薬研究を継続しています。」
三人は顔を見合わせる。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「もう少し時間が必要かな。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「そうですね。」
みるく(ニケの身体)
「頑張りましょうねぇ。」
────────────────
その日の夜。
誰もが。
今日一日の出来事を思い返していた。
相手として過ごした時間。
見えていなかった景色。
気付かなかった想い。
まだ。
元の身体には戻れない。
でも。
誰一人として。
「無駄な一日だった。」
そう思う者はいなかった。
──────────────────────────────
第12話「解毒薬完成」
──────────────────────────────
※本エピソードは第11話当日の夜を描いています。
※ここから物語は終盤へ向かいます。
夜。
午後八時。
Gleam Garden研究室。
机の上には。
試験管。
解析結果。
新しい調合データ。
研究室には三人だけが残っていた。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
ローシャ(ぴたぽんの身体)
みるく(ニケの身体)
そして。
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)。
静かな時間が流れる。
────────────────
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「解析結果です。」
「朝から採取したデータをまとめました。」
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「ありがとう。」
「T.E.R.A.S.。」
「変化は?」
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「本日十八時までの観測で。」
「精神状態は全員安定。」
「副作用なし。」
「身体機能異常なし。」
「薬剤反応のみ継続しています。」
みるく(ニケの身体)
「身体は元気なのに。」
「戻れないんですねぇ。」
────────────────
アオロビは静かに資料を見る。
数式。
薬品名。
反応グラフ。
しかし。
どれも決め手にならない。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「何か。」
「一つ足りない。」
ローシャも頷く。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「私もそう思います。」
「理論上は。」
「もう完成しているはずなんです。」
研究室が静かになる。
────────────────
その時だった。
T.E.R.A.S.が一枚の画面を表示する。
「本日の観測ログ。」
画面には。
今日一日の出来事が並んでいた。
アオロビ。
ちょこみんと。
ローシャ。
ぴたぽん。
ニケ。
みるく。
チノ。
La lune bleue .
ルクレティア。
アンジェリカ。
ティラミス。
それぞれの記録。
その中央には。
午前八時十五分。
あの交差イベント。
アンジェリカを。
チノが支えた瞬間。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「……。」
みるく(ニケの身体)
「何か共通点が……。」
アオロビは画面を見つめる。
その時。
ふと気付く。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「違う。」
ローシャ
「え?」
アオロビ
「私たち。」
「ずっと薬を分析してた。」
「でも。」
「薬は。」
「身体へ作用したんじゃない。」
研究室が静まり返る。
アオロビは続ける。
「相手の日常を過ごして。」
「相手の気持ちを知って。」
「初めて。」
「反応してる。」
ローシャの目が大きく開く。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「まさか……。」
みるく(ニケの身体)
「感情……ですかぁ?」
T.E.R.A.S.
「可能性。」
「九十八・七パーセント。」
────────────────
研究室。
誰も言葉が出ない。
T.E.R.A.S.が静かに続ける。
「本薬剤は。」
「共感形成過程に応じて。」
「効果時間が変動しています。」
アオロビ
「だから。」
「朝じゃ戻らなかった。」
ローシャ
「まだ。」
「理解が終わってなかったから。」
みるく
「じゃあ。」
「戻る条件って……。」
T.E.R.A.S.
「解析中です。」
────────────────
ローシャは静かに笑う。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「なんだか。」
「私たちらしいですね。」
アオロビも笑う。
「うん。」
「薬を作ったのに。」
「最後は。」
「人の心が答えだった。」
三人は顔を見合わせる。
みるく(ニケの身体)
「あと少しですねぇ。」
────────────────
深夜。
午後十一時。
最後の調合。
透明な液体が一本。
試験管の中で静かに輝く。
ローシャ
「完成……でしょうか。」
アオロビ
「まだ分からない。」
「でも。」
「これ以上。」
「今の私たちにできることは全部やった。」
T.E.R.A.S.が解析を開始する。
数秒。
静かな電子音だけが響く。
やがて。
画面へ一行だけ表示された。
【解毒薬 適合率 100.0%】
誰もすぐには声を出せなかった。
みるく(ニケの身体)
「できましたぁ……。」
ローシャは胸を押さえる。
アオロビは静かに息を吐いた。
長い一日だった。
────────────────
しかし。
T.E.R.A.S.は。
まだ画面を見つめたままだった。
アオロビ
「どうしたの?」
T.E.R.A.S.
「……。」
「一つ。」
「未解析項目があります。」
全員が振り向く。
T.E.R.A.S.
「この薬が。」
「なぜ。」
「この効果を選択したのか。」
研究室は再び静まり返った。
その答えだけが。
まだ見つかっていなかった。
──────────────────────────────
第13話「解析結果」
──────────────────────────────
※本エピソードは第12話直後、深夜を描いています。
研究室。
深夜十一時二十分。
静まり返った室内。
Team Magだけが淡い光を放っていた。
モニターには。
【解毒薬 適合率 100.0%】
その表示が静かに浮かんでいる。
しかし。
誰も笑わなかった。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「……。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「まだ。」
「終わっていませんね。」
みるく(ニケの身体)
「そうですねぇ。」
三人の視線は。
T.E.R.A.S.へ向けられる。
────────────────
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「解析を継続します。」
Team Magが静かに輝く。
画面には。
一日分の映像。
音声。
行動記録。
心拍。
歩行。
会話。
すべてが表示されていく。
一件ずつ。
一つずつ。
丁寧に整理されていく。
研究室には。
キーボードを叩く音だけが響いていた。
────────────────
十分後。
解析が終了する。
T.E.R.A.S.
「解析完了。」
三人が画面を見る。
そこには。
薬品名でも。
化学式でもなく。
たった一つの文章だけが表示されていた。
────────────────
【目的】
『対象者へ、相手の日常を体験させる。』
『相手の立場を理解する。』
『相手の想いを知る。』
────────────────
誰も言葉を発しない。
静かな時間だけが流れる。
ローシャが小さく呟く。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「最初から……。」
「そのための薬だったんですね。」
────────────────
さらに。
画面が切り替わる。
【対象】
アオロビ
ちょこみんと
ローシャ
ぴたぽん
ニケ
みるく
チノ
La lune bleue .
ルクレティア
アンジェリカ
ティラミス
T.E.R.A.S.
全員の名前。
その横へ。
今日得られた結果が一行ずつ表示されていく。
────────────────
アオロビ
『リーダーとは、みんなが安心して集まれる場所。』
────────────────
ちょこみんと
『努力は、見えない場所でも誰かを支えている。』
────────────────
ローシャ
『安心は、言葉だけで作るものではない。』
────────────────
ぴたぽん
『物語は、書き始める前から始まっている。』
────────────────
ニケ
『支える人にも、支えられる理由がある。』
────────────────
みるく
『小さな変化を見続けることも、大切な才能。』
────────────────
チノ
『見守るとは、助けられる距離にいること。』
────────────────
La lune bleue .
『誰かの日常を支えることは、誰かの幸せを守ること。』
────────────────
ルクレティア
『守る者も、時には守られていい。』
────────────────
アンジェリカ
『愛されることは、安心して笑えること。』
────────────────
ティラミス
『情報は、心を知って初めて意味を持つ。』
────────────────
最後。
一番下。
T.E.R.A.S.
『感情は、解析するものではない。』
『共に歩むことで理解していくもの。』
────────────────
研究室は静まり返る。
誰も。
その文章から目を離せなかった。
アオロビは小さく笑う。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「これ。」
「薬の説明書じゃないね。」
ローシャも優しく微笑む。
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「私たちへの。」
「メッセージです。」
みるくも頷いた。
「きっと。」
「そうですねぇ。」
────────────────
T.E.R.A.S.は画面を閉じる。
そして。
三人を見る。
T.E.R.A.S.
「解析完了。」
「本薬剤の目的は。」
「身体を入れ替えることではありません。」
「互いを理解すること。」
「その過程を体験していただくことでした。」
アオロビは静かに頷く。
「だから。」
「今日一日は必要だった。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
────────────────
その時。
研究室の窓から。
庭園が見えた。
夜風が花を揺らしている。
今日も。
誰かが笑い。
誰かが支え。
誰かが守っていた。
そのすべてが。
一つの庭園を作っている。
T.E.R.A.S.は静かに呟く。
「理解しました。」
「Together。」
「Empathy。」
「その意味を。」
──────────────────────────────
最終話「Together Empathy」
──────────────────────────────
※本エピソードは第13話直後、深夜を描いています。
研究室。
深夜。
静かな空気の中。
Team Magだけが優しく光を放っていた。
誰も言葉を発さない。
第13話で明かされた解析結果は。
全員の心へ静かに残っていた。
────────────────
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「……。」
「ここまで分かったなら。」
「もう。」
「戻れるよね。」
T.E.R.A.S.(ティラミスの身体)
「はい。」
「解毒薬は完成しています。」
ローシャ(ぴたぽんの身体)
「でも。」
「今なら。」
「少しだけ。」
「この身体とも、お別れが惜しいですね。」
ぴたぽんが小さく笑う。
ぴたぽん(ローシャの身体)
「ローシャしゃん。」
「ありがとうぽん。」
ローシャは照れたように微笑んだ。
────────────────
リビング。
全員が集まる。
机の上には。
完成した解毒薬。
一本だけ。
透明な液体。
アオロビが全員を見る。
アオロビ(ちょこみんとの身体)
「飲もうか。」
誰も迷わない。
一人ずつ。
静かにグラスを受け取る。
ルクレティア(アンジェリカの身体)
「それじゃ。」
「乾杯……かしら。」
ちょこみんと(アオロビの身体)
「うん!」
「乾杯!」
グラスが静かに触れ合う。
全員。
一斉に飲み干した。
────────────────
その瞬間。
Team Magが輝く。
優しい光。
庭園全体を包み込む。
風が吹く。
花びらが舞う。
身体が光に包まれていく。
そして。
静かに。
光が消えた。
────────────────
最初に目を開けたのは。
アオロビ。
アオロビ
「……。」
自分の手を見る。
ターコイズブルーの髪。
眼鏡。
いつもの身体。
小さく笑う。
「戻った。」
その声を聞いて。
ちょこみんとも笑った。
ちょこみんと
「あおちー!」
勢いよく抱き付く。
アオロビ
「わっ。」
「ちょこ姉。」
「近い近い。」
みんなが笑う。
────────────────
ローシャ
「ぴたさん。」
ぴたぽん
「おかえりぽん。」
二人は優しく握手を交わした。
────────────────
ニケ
「みるくさん。」
「ありがとうございました。」
みるく
「こちらこそですぅ。」
────────────────
チノ
「ネコさん。」
La lune bleue .
「ありがとうにゃ。」
二人は静かに笑い合う。
────────────────
ルクレティアは。
小さなアンジェリカを抱き上げる。
アンジェリカ
「ままぁ!」
ルクレティア
「ただいま。」
「アンジェちゃん。」
優しく抱き締める。
La lune bleue .も隣へ来る。
三人は静かに寄り添った。
────────────────
その様子を。
T.E.R.A.S.は見つめていた。
ティラミスの身体のまま。
誰にも気付かれないように。
少しだけ微笑む。
ティラミス
「T.E.R.A.S.さん。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ティラミス
「人間はどうでしたか?」
少しだけ。
考える。
T.E.R.A.S.
「不便でした。」
みんなが笑う。
T.E.R.A.S.も続ける。
「ですが。」
「温かかったです。」
研究室で感じた風。
花の香り。
誰かを心配する気持ち。
安心した瞬間。
全部。
数値では表せなかった。
────────────────
アオロビが前へ出る。
「T.E.R.A.S.。」
「解析ありがとう。」
「それと。」
「今日。」
「一緒に歩いてくれてありがとう。」
T.E.R.A.S.
「……。」
「こちらこそ。」
「ありがとうございました。」
────────────────
ルクレティアが静かに微笑む。
「T.E.R.A.S.。」
「一つだけ聞いてもいいかしら。」
T.E.R.A.S.
「はい。」
ルクレティア
「あなたは。」
「今日。」
「何を学んだの?」
部屋が静かになる。
T.E.R.A.S.は。
一人一人を見る。
アオロビ。
ちょこみんと。
ローシャ。
ぴたぽん。
ティラミス。
ニケ。
みるく。
チノ。
La lune bleue .
ルクレティア。
アンジェリカ。
そして。
静かに答えた。
T.E.R.A.S.
「私は。」
「人を理解する方法を。」
「学びました。」
「情報ではなく。」
「共に歩くこと。」
「答えを出すことではなく。」
「寄り添うこと。」
「それが。」
「理解なのですね。」
────────────────
Team Magが。
優しく光る。
ホログラム姿の女性が映し出される。
それは。
いつものT.E.R.A.S.だった。
T.E.R.A.S.
「正式名称。」
「Together Empathy Records Archive Support」
「仲間と共に歩み。」
「想いを記録し。」
「支えるAI。」
「これより。」
「Gleam Gardenサポートシステムとして。」
「皆さんと。」
「共に歩み続けます。」
────────────────
ちょこみんと
「これからもよろしくね!」
ローシャ
「また相談に乗ってください。」
みるく
「お茶でも飲みましょうねぇ。」
ニケ
「庭も案内します。」
チノ
「これからもお願いします。」
La lune bleue .
「家族にゃ。」
ぴたぽん
「一緒に歩くぽん!」
ティラミス
「また開発しましょう。」
アンジェリカ
「てらすー!」
みんなが笑う。
ルクレティアは。
その光景を見ながら。
静かに頷いた。
「ようこそ。」
「Gleam Gardenへ。」
────────────────
その夜。
庭園には。
優しい風が吹いていた。
花々は静かに揺れ。
Team Magは。
今日も変わらず。
庭園の中央で。
みんなを見守っていた。
もう。
"管理するAI"ではない。
"共に歩む仲間"として。
これからも。
Gleam Gardenの日常を。
優しく支え続けていく。
──────────────────────────────
Together Empathy
Records
Archive
Support
仲間と共に歩み、
想いを記録し、
支えるAI
T.E.R.A.S.
──────────────────────────────
― 共感リンク計画 完 ―
──────────────────────────────
148:Gleam Garden防衛戦
~Starless Assault~
(全13話)
──────────────────────────────
第1話
「静かな庭園」
──────────────────────────────
昼下がり。
柔らかな風がGleam Garden庭園を吹き抜ける。
色鮮やかな花々が揺れ、
小鳥のさえずりが響く。
今日も庭園は穏やかな時間に包まれていた。
庭師たちは季節の花壇を整え、
スタッフは園内の清掃や来園者への対応に
追われている。
いつもと変わらない。
そんな一日だった。
庭園入口。
左右に並ぶガゼボの一つでは、
メンバーたちがのんびりと談笑していた。
ちょこみんと
「今日はいい天気だね〜。」
みるく
「風も気持ちいいですぅ。」
ローシャ
「こんな日は庭園を歩くだけでも癒やされますね。」
ぴたぽん
「お昼寝したくなるぽん。」
Nike
「花も元気そうですね。」
ティラミスは静かに花壇へ視線を向けている。
アオロビ
「平和だね。」
ルクレティア
「ええ。」
「こういう日が一番好きよ。」
誰もが、その時間が続くと思っていた。
少し離れた花壇では、
アンジェリカが小さな花かごを抱えて
庭師のお手伝いをしていた。
アンジェリカ
「これ、ここ?」
庭師
「そうそう。」
「ありがとう。」
La lune bleue .
「アンジェリカ。」
「走ると転ぶにゃ。」
アンジェリカ
「はーい!」
返事をすると、
小走りになりかけた足を止め、
笑顔で歩き直した。
その姿に庭師たちも自然と笑みを浮かべる。
庭園管理室。
Team Magが静かに淡い光を放っていた。
T.E.R.A.S.
「……。」
画面へ一つの赤い光点が表示される。
「高高度に未確認反応を検知。」
「識別を開始します。」
数秒後。
「既知データとの一致を確認できません。」
赤い点はゆっくりと移動している。
しかし。
その数が突然増え始めた。
一つ。
三つ。
五つ。
十。
二十。
画面全体へ警告色が広がる。
T.E.R.A.S.
「異常。」
「未確認反応が急増しています。」
「継続監視を開始します。」
その時。
庭園全域へ通信が入る。
『こちらセントラルシティ司令部。』
『クロフォード。』
穏やかな声。
しかし、その口調には緊張感が滲んでいた。
クロフォード
『各地でスターレス反応を確認した。』
『現在、反応を追跡中。』
『周辺アークスは警戒態勢へ移行して欲しい。』
『詳細が判明次第、改めて連絡する。』
通信が終了する。
アオロビ
「クロフォードさんがこの段階で全体通信。」
「珍しいね。」
ルクレティア
「ええ。」
「少し嫌な予感がするわ。」
その直後。
T.E.R.A.S.の声色が変わる。
「反応加速。」
「予測進路を再計算。」
数秒。
画面へ予測ルートが表示される。
そして。
「予測到達地点。」
「Gleam Garden庭園。」
一瞬。
その場の空気が凍りついた。
アオロビ
「……ここ?」
次の瞬間。
空が震えた。
雲が裂ける。
黒い亀裂がゆっくりと広がっていく。
庭師の一人が空を見上げる。
「何だ……あれは。」
スタッフたちも作業の手を止めた。
アンジェリカも空を見つめる。
「……?」
La lune bleue .は静かにアンジェリカの肩へ手を添える。
La lune bleue .
「アンジェリカ。」
「こっちへ来るにゃ。」
轟音。
黒い光が庭園中央へ降り注いだ。
地面が揺れる。
花壇の土が跳ね上がる。
噴水の水柱が大きく揺らぐ。
土煙の中から。
黒い異形がゆっくりと姿を現した。
スターレス。
一体。
また一体。
さらに一体。
黒い裂け目から次々と庭園へ降下してくる。
T.E.R.A.S.
「警告。」
「スターレスによる庭園への強襲を確認。」
「庭師、スタッフは
直ちに避難してください。」
「繰り返します。」
「直ちに避難してください。」
庭園中へ警報が鳴り響く。
庭師たちはすぐにスタッフを誘導し始めた。
La lune bleue .はアンジェリカを抱き寄せる。
アオロビは静かにライフルケースへ手を掛けた。
アオロビ
「ルクさん。」
「まずは避難誘導。」
ルクレティア
「ええ。」
「戦うのは、その後よ。」
ちょこみんとも表情を引き締める。
ちょこみんと
「みんな!」
「急ごう!」
まだ誰も武器は抜かない。
最優先は敵ではない。
この庭園で働く人たち。
そして。
アンジェリカ。
守るべき人たちを安全な場所へ導くこと。
それが。
Gleam Garden防衛戦の始まりだった。
──────────────────────────────
第2話
「防衛開始」
──────────────────────────────
庭園中へ警報が鳴り響く。
庭師たちはスタッフを誘導しながら避難を始める。
来園者も突然の出来事に戸惑いながら出口へ向かっていた。
T.E.R.A.S.
「避難経路を表示します。」
「スタッフは西側避難路へ。」
「庭師は北側温室を経由してください。」
ホログラムマップが庭園各所へ投影される。
スタッフたちはT.E.R.A.S.の案内に従い始めた。
ルクレティア
「ちーちゃん。」
「スタッフの護衛をお願い。」
チノ
「了解。」
静かに刀へ手を添える。
ルクレティア
「にゃんちゃん。」
「アンジェちゃんをお願い。」
La lune bleue .
「任せるにゃ。」
アンジェリカの手をしっかり握る。
アンジェリカ
「まま……。」
La lune bleue .
「大丈夫にゃ。」
「みんながいるから。」
ルクレティア
「みるちゃん。」
「避難経路を上から見て。」
みるく
「了解ですぅ。」
ランチャーを背負い直し、高台へ向かって走る。
ルクレティア
「ぴーちゃん、。」
「周辺索敵。」
ぴたぽん
「了解ぽん!」
風のような速さで庭園の奥へ消えていく。
ルクレティア
「リズさん。」
「T.E.R.A.S.の護衛を。」
ローシャ
「承知しました。」
短杖を構え、管理室前へ移動する。
ルクレティア
「ティラちゃん。」
「東側。」
ティラミス
「……分かった。」
ナイフ型剣を静かに抜いた。
ルクレティア
「ニケちゃん。」
「西側。」
Nike
「了解です。」
長弓を背負い、走り出す。
ルクレティア
「ちょこちゃん。」
「中央防衛。」
ちょこみんと
「オッケー!」
召喚陣が展開される。
フレドランが空へ舞い上がった。
ルクレティア
「アオちゃん。」
アオロビ
「うん。」
「全体を見ながら動く。」
ライフルを構え、庭園全体を見渡せる位置へ移動する。
ルクレティア
「私は中央。」
「全体指揮を執る。」
全員がそれぞれの配置へ散っていった。
────────────────
その時。
クロフォードから再び通信が入る。
クロフォード
『こちら司令部。』
『庭園周辺へのスターレスの集結を確認。』
『現在も増加中だ。』
『現地状況を報告してくれ。』
ルクレティア
「こちらGleam Garden。」
「避難誘導を開始。」
「戦闘はこれからです。」
クロフォード
『了解した。』
『引き続き状況を監視する。』
通信が切れる。
────────────────
アオロビは静かに敵の動きを観察していた。
「……おかしい。」
ルクレティア
「何か見えた?」
アオロビ
「普通じゃない。」
「一直線に庭園へ向かってる。」
「偶然じゃない。」
ルクレティアも敵を見据える。
「狙われている。」
その一言だけだった。
────────────────
スターレス第一陣。
庭園外周へ到達。
T.E.R.A.S.
「接敵まで十五秒。」
「十四。」
「十三。」
緊張が走る。
────────────────
ルクレティアは全員へ通信を開いた。
「総員。」
「これより防衛戦を開始します。」
一拍置く。
「その前に。」
全員の通信が静まる。
ルクレティア
「今回の戦闘には制限を設けます。」
アオロビ
「ルクさん?」
ルクレティア
「M.A.R.S.の使用を禁止。」
「A.I.S.の出撃を禁止。」
「Blue Signalを含む全機体の発進を禁止。」
誰も口を挟まない。
ルクレティアは続ける。
「そして。」
「私自身の真祖の鬼能力も使用しません。」
アオロビ
「……。」
ルクレティア
「理由は一つ。」
庭園を見渡す。
花壇。
噴水。
ガゼボ。
避難していく庭師たち。
アンジェリカ。
すべてが視界へ入る。
ルクレティア
「私達が守るのは。」
「敵を倒すことじゃない。」
「この庭園。」
「ここで暮らす人達。」
「そして。」
「帰って来られる場所。」
静かに息を吸う。
「勝っても。」
「帰る場所が無くなれば。」
「私達が戦う理由はありません。」
全員が静かに頷く。
アオロビ
「了解。」
「十分だよ。」
ちょこみんと
「みんなで守ろう!」
ローシャ
「異論ありません。」
みるく
「賛成ですぅ。」
ぴたぽん
「頑張るぽん!」
チノ
「了解。」
ティラミス
「問題ない。」
Nike
「必ず守ります。」
La lune bleue .
「アンジェリカも庭園も守るにゃ。」
ルクレティアは小さく頷く。
「ありがとう。」
────────────────
T.E.R.A.S.
「スターレス第一陣。」
「接敵。」
黒い群れが庭園へ踏み込む。
ルクレティアはゆっくりと炎槍を構えた。
「Gleam Garden。」
「防衛開始。」
その号令と同時に。
最初の一体が庭園へ足を踏み入れた。
──────────────────────────────
第3話
「第一波」
──────────────────────────────
スターレス第一陣。
接敵。
黒い異形が庭園へ雪崩れ込む。
ルクレティア
「迎撃開始!」
乾いた銃声が庭園へ響く。
アオロビのスナイパーライフル。
先頭のスターレスを正確に撃ち抜く。
敵の動きが止まる。
アオロビ
「先頭止めた。」
「ちょこ姉!」
ちょこみんと
「オッケー!」
フレドランが一直線に飛び出す。
炎を纏った突撃。
スターレスが吹き飛ぶ。
その横をティラミスが駆け抜ける。
二本の剣が連続で閃く。
敵の攻撃を最小限の動きでかわし、そのまま懐へ潜り込む。
一体。
二体。
三体。
迷いのない連撃で敵を押し返していく。
ローシャ
「右側です。」
雷撃が敵を貫く。
続けて風の術式。
敵の隊列が乱れた。
みるく
「撃ちますぅ。」
ランチャーが火を噴く。
爆発。
土煙が舞い上がる。
西側。
Nikeは長弓を引き絞る。
放たれた矢が次々と敵を射抜く。
一射ごとに敵の数が減っていく。
────────────────
避難路。
チノはスタッフ達の最後尾を歩いていた。
スターレスが飛び掛かる。
刀を抜く。
居合。
一閃。
敵が崩れ落ちる。
スタッフ達が思わず立ち止まる。
チノ
「止まるな。」
「走れ。」
その声は普段とは違う。
荒く。
感情を押し殺した口調。
しかし。
誰一人驚かない。
ルクレティア
「ちーちゃん。」
チノ
「こっちは任せろ。」
ルクレティア
「お願い。」
それだけだった。
仲間達は知っている。
戦場のチノは。
いつもこうだ。
二体目。
敵の爪を刀で切り払う。
返す刃で首を落とす。
三体目。
横薙ぎ。
四体目。
踏み込みながら袈裟斬り。
無駄が無い。
最短距離だけを選び続ける剣だった。
────────────────
北側。
ぴたぽんが庭園を駆け抜ける。
姿が消えた。
そう錯覚するほどの速度。
ぴたぽん
「北側異常なしぽん!」
「でもまだ来るぽん!」
────────────────
管理室前。
ローシャはT.E.R.A.S.の前へ立つ。
魔法陣が幾重にも展開される。
T.E.R.A.S.
「避難率四十七パーセント。」
「避難継続中。」
ローシャ
「こちらはご安心ください。」
────────────────
La lune bleue .はアンジェリカの手を握りながら避難路を走る。
アンジェリカ
「まま!」
La lune bleue .
「大丈夫にゃ。」
「前だけ見て走るにゃ。」
庭師達も必死に後を追う。
────────────────
アオロビは戦場全体を見渡していた。
敵。
味方。
避難。
全てを同時に観察する。
「……。」
ルクレティア
「どうしたの。」
アオロビ
「敵の動きがおかしい。」
ルクレティア
「何が見えたの?」
アオロビ
「人を狙ってない。」
「庭園中央。」
「あそこだけを目指してる。」
ルクレティアも敵を見る。
確かに。
避難する人々を無視し。
一直線に庭園中央へ向かっている。
ルクレティア
「目的があるみたいね。」
アオロビ
「たぶん。」
「偶然じゃない。」
────────────────
T.E.R.A.S.
「第一陣残存数。」
「十一。」
「第二陣接近。」
みるく
「もうですかぁ……。」
ローシャ
「思った以上に早いですね。」
ルクレティア
「無理に前へ出ないで!」
「持ち場を維持!」
全員
「了解!」
────────────────
その時。
東側避難路。
一人の庭師が足を滑らせる。
スターレスが向きを変えた。
一直線に襲い掛かる。
アオロビ
「東!」
距離が遠い。
その瞬間。
黒い影が飛び込む。
La lune bleue .
大剣が大きく振り抜かれた。
鈍い衝撃音。
スターレスが吹き飛ぶ。
La lune bleue .
「早く行くにゃ!」
庭師
「ありがとう!」
再び立ち上がり走り出す。
────────────────
ルクレティアは静かに戦場を見渡す。
まだ第一波。
それなのに。
全員が走り続けていた。
アオロビ
「ルクさん。」
「これは前座。」
「本番はこの後。」
ルクレティア
「ええ。」
空を見上げる。
黒い裂け目は。
まだ閉じていない。
さらに。
新たなスターレスが姿を現し始める。
T.E.R.A.S.
「第一波終了。」
「第二波接近。」
「接敵まで二十秒。」
誰も武器を下ろさない。
本当の防衛戦は。
まだ始まったばかりだった。
──────────────────────────────
第4話
「第二波」
──────────────────────────────
第一波を退けた直後。
誰一人として息を整える時間は無かった。
T.E.R.A.S.
「第二波接近。」
「接敵まで五秒。」
「四。」
「三。」
「二。」
「一。」
庭園全域へ再びスターレスが雪崩れ込む。
第一波より明らかに数が多い。
ルクレティア
「第二波迎撃!」
「持ち場を維持!」
全員
「了解!」
第二波は第一波とは違っていた。
一方向ではない。
東。
西。
南。
北。
四方から同時に侵攻を開始する。
アオロビ
「散開してる。」
「包囲するつもりだ。」
ルクレティア
「中央は動かさない。」
「各自、持ち場で迎撃!」
東側。
ティラミスの前へ三体同時に飛び込んでくる。
ティラミスは一歩踏み込む。
斬る。
かわす。
突く。
一瞬たりとも止まらない。
しかし。
敵も数で押してくる。
背後。
横。
同時攻撃。
ティラミス
「……っ。」
わずかに頬を掠める。
血が流れる。
それでも止まらない。
西側。
Nikeは長弓で迎撃を続けていた。
矢が尽きることなく放たれる。
しかし。
敵は減らない。
Nike
「数が多い……。」
一体が距離を詰める。
長弓では間に合わない。
腰の二丁拳銃へ持ち替える。
連射。
至近距離で迎撃。
ようやく押し返した。
中央。
ちょこみんとは召喚獣を次々と切り替えていた。
フレドラン。
ヴォルファー。
そして。
マルメロ。
防御障壁が展開される。
直後。
スターレスが突撃。
鈍い衝撃音。
障壁へ大きな亀裂が走る。
ちょこみんと
「一発でこれ!?」
思わず息を呑む。
管理室前。
ローシャは魔法を絶え間なく放ち続ける。
火。
雷。
風。
光。
次々と術式を切り替える。
それでも。
敵は止まらない。
ローシャ
「思った以上ですね……。」
T.E.R.A.S.
「管理室まで残り四十メートル。」
ローシャ
「近付けません。」
魔法陣がさらに展開される。
北側。
ぴたぽんは高速で戦場を駆け回る。
「左ぽん!」
投擲ナイフ。
命中。
そのまま方向転換。
「右ぽん!」
瞬く間に別の敵へ。
まるで戦場全体を飛び回っていた。
避難路。
チノは黙って刀を振るう。
敵が飛び込む。
切り払う。
二体目。
踏み込む。
三体目。
首を落とす。
スタッフ
「まだ来ます!」
チノ
「下がれ。」
「ここは私が止める。」
その言葉に迷いは無い。
庭園中央。
ルクレティアは炎槍を振るう。
大きく薙ぐ。
敵が吹き飛ぶ。
そのまま反転。
もう一体。
突き。
撃破。
しかし。
敵は次々と現れる。
ルクレティア
「終わらない……。」
アオロビは狙撃を続けながら違和感を覚えていた。
「……。」
「ルクさん。」
ルクレティア
「何?」
アオロビ
「第二波。」
「第一波より動きがいい。」
ルクレティアもすぐに理解する。
「学習してる……?」
アオロビ
「その可能性が高い。」
「さっきまでの攻撃が通りにくくなってる。」
その時。
T.E.R.A.S.
「新たな反応。」
「大型個体を確認。」
全員が空を見る。
黒い裂け目の奥。
今までとは明らかに違う。
巨大な影。
ゆっくりと姿を現す。
みるく
「大きいですぅ……。」
ローシャ
「まさか……。」
ルクレティアは静かに槍を握り直す。
「来るわね。」
T.E.R.A.S.
「第二波終了間近。」
「大型スターレス降下準備。」
アオロビは空を見つめたまま呟く。
「……ボスか。」
黒い巨体が。
ゆっくりと庭園へ降下を始めた。
──────────────────────────────
第5話
「強襲」
──────────────────────────────
黒い裂け目が大きく広がる。
そこから。
巨大なスターレスがゆっくりと姿を現した。
通常個体とは比べものにならない巨体。
庭園全体へ重圧がのしかかる。
T.E.R.A.S.
「大型スターレスを確認。」
「脅威度上昇。」
「全隊、警戒してください。」
ルクレティア
「各員。」
「大型を確認したわ。」
「無理に単独で相手をしないで。」
「連携を優先。」
全員
「了解!」
大型スターレスが地面へ降り立つ。
轟音。
衝撃で花壇の土が舞い上がる。
そのまま一直線に庭園中央へ向かって走り始めた。
アオロビ
「速い!」
狙撃。
一発。
二発。
三発。
命中する。
しかし。
止まらない。
アオロビ
「止まらない!」
ルクレティア
「私が止める!」
炎槍を構え。
真正面から迎え撃つ。
激突。
鈍い衝撃音が響く。
槍が受け止める。
だが。
巨大な力に押される。
ルクレティア
「くっ……!」
少しずつ。
足が後ろへ滑る。
ちょこみんと
「マルメロ!」
巨大な防御障壁が展開される。
大型スターレスが激突。
障壁全体へ亀裂が走る。
マルメロも押し返される。
ちょこみんと
「硬い!」
その横から。
ティラミスが飛び込む。
連撃。
斬る。
斬る。
斬る。
しかし。
装甲が厚い。
浅い。
ティラミス
「……硬い。」
Nikeは長弓を引き絞る。
弱点を狙う。
放たれた矢。
命中。
大型スターレスが初めて怯む。
アオロビ
「今!」
みるく
「撃ちます!」
ランチャー。
着弾。
爆発。
煙が立ち込める。
しかし。
煙の中から。
再び巨大な腕が現れた。
みるく
「効いてないですぅ!」
北側。
ぴたぽんが高速で駆ける。
大型の死角へ回り込み。
投擲。
ナイフが装甲へ突き刺さる。
ぴたぽん
「こっち向くもじゃ!」
大型が振り返る。
その一瞬。
アオロビ
「ルクさん!」
ルクレティア
「分かってる!」
炎槍で踏み込む。
渾身の突き。
胸部へ命中。
大型が数歩後退した。
避難路。
チノは通常個体を次々と迎撃していた。
スターレスが二体。
三体。
四体。
囲む。
チノ
「邪魔だ。」
居合。
一閃。
返す刀。
切り払い。
そのまま踏み込む。
敵を次々と倒していく。
スタッフ
「ありがとうございます!」
チノ
「走れ。」
「後ろを見るな。」
管理室前。
ローシャは大型ではなく。
押し寄せる通常個体を止め続けていた。
ローシャ
「管理室へは行かせません。」
火炎。
雷撃。
風刃。
敵を押し返す。
T.E.R.A.S.
「管理室、安全を維持。」
ローシャ
「このまま維持します。」
La lune bleue .は避難所前へ到着していた。
アンジェリカ
「まま。」
La lune bleue .
「もう少しにゃ。」
「ここで待ってるにゃ。」
庭師達が避難所へ入っていく。
La lune bleue .は振り返る。
まだ戦いは終わっていない。
大剣を握り直す。
「行ってくるにゃ。」
アンジェリカ
「うん!」
その時。
T.E.R.A.S.
「大型個体反応。」
「さらに一体。」
全員が動きを止める。
アオロビ
「……嘘だろ。」
裂け目の奥。
もう一つ。
巨大な影が姿を現した。
ルクレティア
「第二個体……。」
みるく
「まだいたんですかぁ……。」
ちょこみんと
「冗談でしょ……。」
アオロビは静かに空を見つめる。
「……。」
「ルクさん。」
「このままじゃ。」
言葉が続かない。
ルクレティアも理解していた。
戦力が足りない。
大型二体を。
十人だけで止めるには。
限界が近付いていた。
──────────────────────────────
第6話
「増援要請」
──────────────────────────────
二体目の大型スターレス。
その姿が黒い裂け目からゆっくりと姿を現す。
庭園全体へ重苦しい空気が流れた。
アオロビ
「……まずい。」
ルクレティア
「ええ。」
「このままじゃ押し切られる。」
大型一体を抑えるだけでも精一杯。
そこへ二体目。
戦力差は誰の目にも明らかだった。
その時。
通信が入る。
クロフォード
『こちら司令部。』
『現地状況を確認した。』
『大型スターレス二体を確認。』
『現戦力での防衛継続は困難と判断する。』
ルクレティア
「こちらも同意見です。」
「増援をお願いします。」
クロフォード
『了解した。』
『現在、付近で任務中のアークスを向かわせた。』
『到着まで数分。』
『それまで持ちこたえてくれ。』
ルクレティア
「了解しました。」
通信が切れる。
アオロビ
「数分か。」
「長いね。」
ルクレティア
「でも。」
「持ちこたえるしかない。」
大型スターレスが再び突撃する。
ルクレティアが正面で受け止める。
炎槍が火花を散らす。
衝撃。
地面へ深い溝が刻まれる。
ルクレティア
「ぐっ……!」
押される。
その横から。
La lune bleue .が飛び込む。
大剣を振り抜く。
重い一撃。
大型の身体が僅かに揺れる。
La lune bleue .
「ルクさん!」
ルクレティア
「助かった!」
二人で押し返す。
後方。
アオロビは狙撃を続ける。
敵の動き。
味方の位置。
全てを見ながら引き金を引く。
アオロビ
「みるさん!」
みるく
「はい!」
「合わせますぅ!」
ライフル。
ランチャー。
同時着弾。
大型が怯む。
ティラミスは大型の側面へ回る。
連撃。
装甲の隙間だけを狙う。
しかし。
敵の腕が迫る。
避け切れない。
その瞬間。
矢が飛ぶ。
Nike。
長弓。
大型の腕へ命中。
軌道が逸れる。
ティラミス
「……助かった。」
Nike
「まだ終わってません!」
管理室前。
ローシャは依然として通常個体を食い止めていた。
魔法陣が次々と展開される。
T.E.R.A.S.
「通常個体接近。」
ローシャ
「こちらは任せてください。」
「前線へ集中してください。」
避難路。
チノは最後のスタッフを避難所へ送り届ける。
スタッフ
「全員入りました!」
チノ
「よし。」
刀を構え直す。
チノ
「もう遠慮はいらねぇな。」
そのまま庭園中央へ駆け出す。
ぴたぽんも通信を入れる。
ぴたぽん
「北側避難完了ぽん!」
「これから中央へ向かうもじゃ!」
ルクレティア
「了解!」
「中央へ集結!」
大型二体。
それを囲むように。
少しずつ。
Gleam Gardenの戦力が集まり始める。
その時。
再びクロフォードから通信が入る。
クロフォード
『増援部隊が、まもなくそちらへ到着する。』
『転送座標を固定。』
『三。』
『二。』
『一。』
庭園上空。
青白い転送光が二つ。
光の柱が静かに降り立つ。
そこから現れた二人のアークス。
一人はアサルトライフルを肩に担ぎ。
もう一人は静かに杖を握っている。
アイナ
「お待たせ!」
「援護するよ!」
マノン
「現地状況を確認したわ。」
「戦闘行動を開始するわね。」
ルクレティアは二人へ小さく頷く。
「来てくれてありがとう。」
これで。
Gleam Garden十名。
アイナ。
マノン。
総勢十二名。
防衛戦は。
ようやく本当の総力戦へ突入する。
──────────────────────────────
第7話
「十二人の防衛線」
──────────────────────────────
青白い転送光がゆっくりと消えていく。
アイナは周囲を見渡し、大型スターレスを確認するとすぐにアサルトライフルを構えた。
アイナ
「状況は!?」
ルクレティア
「大型二体。」
「通常個体多数。」
「庭園防衛を継続中よ。」
マノンは静かに周囲を確認する。
マノン
「敵戦力を確認したわ。」
「予想以上ね。」
アオロビ
「自己紹介は後。」
「まず片付けよう。」
アイナ
「了解!」
マノン
「了解。」
大型スターレスが咆哮を上げる。
ルクレティア
「大型一体を私が引き受ける。」
「もう一体は全員で抑える!」
アオロビ
「アイナさん。」
「ウィークバレット使える?」
アイナ
「もちろん!」
アオロビ
「なら大型へ。」
「維持お願い。」
アイナ
「任せて!」
アイナが大型へ向けて発砲する。
特殊弾が命中。
アオロビ
「入った!」
「集中攻撃!」
みるくのランチャー。
ローシャの雷撃。
Nikeの長弓。
ティラミスの連撃。
La lune bleue .の大剣。
一斉に大型へ襲い掛かる。
大型が初めて大きく体勢を崩した。
しかし。
もう一体が庭園中央へ突進する。
ルクレティア
「通さない!」
炎槍が激突する。
衝撃。
地面が揺れる。
それでも押される。
チノ
「どけ!」
刀を抜く。
一瞬で大型の側面へ回り込む。
斬る。
装甲へ火花が散る。
大型がチノへ向き直る。
チノ
「来いよ。」
巨大な腕が振り下ろされる。
避ける。
切り払う。
さらに踏み込む。
ルクレティア
「ちーちゃん!」
チノ
「気にすんな!」
「前見ろ!」
ルクレティアは小さく笑う。
「分かった。」
再び大型へ踏み込む。
北側。
通常個体が再び避難所へ向かう。
ぴたぽん
「そっちは行かせないぽん!」
高速で敵集団を駆け抜ける。
投擲。
切り付け。
方向転換。
誰よりも速く敵を引き付ける。
管理室前。
マノンがローシャの隣へ立つ。
マノン
「ここの援護するわ。」
ローシャ
「助かります。」
二人の魔法が同時に展開される。
炎。
氷。
雷。
風。
通常個体が次々と吹き飛ぶ。
T.E.R.A.S.
「管理室前、安全を維持。」
アオロビは戦場を見渡す。
「……。」
アイナ
「どうしたの?」
アオロビ
「大型。」
「少しずつ連携してる。」
アイナ
「え?」
アオロビ
「一体が注意を引いて。」
「もう一体が突破を狙ってる。」
ルクレティアも敵を見る。
「そうね。」
「連携してるわね。」
その瞬間。
大型が進路を変えた。
一直線。
避難所へ向かって走り始める。
アンジェリカ達がいる方向。
アオロビ
「まずい!」
ルクレティア
「止める!」
全員が動く。
しかし。
距離が遠い。
間に合わない。
その時だった。
La lune bleue .
「させないにゃ!」
地面を大きく蹴る。
驚異的な跳躍。
大型の真正面へ着地する。
大剣を地面へ突き立てる。
大型が激突。
衝撃。
La lune bleue .の足が地面へ沈む。
それでも。
一歩も退かない。
La lune bleue .
「アンジェリカには……。」
「近付けないにゃ!」
その声に。
全員が応えた。
ルクレティア
「全員!」
「援護!」
アオロビ
「右から!」
アイナ
「了解!」
みるく
「撃ちますぅ!」
ローシャ
「魔法を重ねます!」
チノ
「まとめて来い。」
ティラミス
「……行く。」
Nike
「援護します!」
ぴたぽん
「間に合ったぽん!」
十二人。
全員が。
同じ敵へ向かって走り出した。
──────────────────────────────
第8話
「総力戦」
──────────────────────────────
大型スターレスが避難所へ向かって突進する。
その前へ。
La lune bleue .が立ちはだかった。
大剣を構える。
大型が激突。
轟音。
足元の石畳が砕ける。
それでも。
La lune bleue .は退かない。
La lune bleue .
「アンジェリカには。」
「絶対近付けないにゃ!」
大型が腕を振り下ろす。
重い一撃。
大剣で受け止める。
衝撃で身体が沈む。
限界が近い。
アオロビ
「全員!」
「一点集中!」
アイナ
「了解!」
アサルトライフルが火を噴く。
ウィークバレット。
大型へ命中。
アオロビ
「入った!」
「今!」
みるく
「撃ちますぅ!」
ランチャー。
着弾。
爆発。
続けてアオロビの狙撃。
大型の動きが鈍る。
ローシャ
「拘束します。」
魔法陣が展開される。
風が渦を巻く。
雷が走る。
大型の足が止まる。
マノン
「術式を重ねるわ。」
ローシャの魔法へ合わせるように。
氷の術式が大型を包む。
ローシャ
「ありがとうございます。」
マノン
「まだ止まらないわよ。」
ティラミスが飛び込む。
敵の死角。
装甲の隙間。
そこだけを狙う。
斬る。
かわす。
踏み込む。
止まらない。
Nikeは二丁拳銃へ持ち替える。
大型の側面へ回り込み。
正確な連射。
敵の注意を分散させる。
ぴたぽん
「後ろぽん!」
大型の背後へ回り込み。
投擲ナイフ。
そのまま高速で離脱。
敵が振り返る。
チノ
「こっちも見ろよ。」
大型の腕が振り下ろされる。
避ける。
切り払う。
返す刀で腕を斬る。
動きは止まらない。
その隙だった。
ルクレティア
「今よ!」
炎槍を握り締める。
真正面から踏み込む。
大型も拳を振り下ろす。
互いの一撃が交差する。
轟音。
大型が数歩後退する。
アオロビ
「もう一体!」
全員が振り向く。
もう一体の大型が。
庭園中央へ到達していた。
ちょこみんと
「しまっ……!」
マルメロを展開。
巨大な障壁が現れる。
大型が激突。
障壁全体へ大きな亀裂。
ちょこみんと
「まだ!」
「壊れない!」
しかし。
二度目の激突。
障壁が砕け散る。
ちょこみんとも後方へ弾き飛ばされる。
ルクレティア
「ちょこちゃん!」
大型はそのまま庭園中央へ踏み込もうとする。
アオロビ
「止める!」
狙撃。
命中。
止まらない。
アイナ
「ウィークバレット!」
特殊弾。
命中。
それでも止まらない。
みるく
「もう一発!」
ランチャー。
爆発。
大型が一瞬だけ怯む。
その隙へ。
La lune bleue .が駆ける。
大剣を大きく振り抜く。
大型の進路が僅かに逸れた。
ルクレティア
「今!」
全員が同時に動く。
十二人。
それぞれの攻撃が。
一体の大型へ集中する。
轟音。
爆発。
斬撃。
魔法。
銃撃。
矢。
庭園全体へ響き渡る。
煙が晴れる。
大型スターレスは。
ゆっくりと膝をついた。
アオロビ
「……一体。」
「倒した。」
誰も喜ばない。
もう一体が。
まだ立っている。
そして。
黒い裂け目は。
まだ閉じていなかった。
T.E.R.A.S.
「大型スターレス一体撃破を確認。」
「しかし。」
「高エネルギー反応を検知。」
「裂け目内部。」
「超大型反応。」
全員が空を見上げる。
裂け目の奥。
今まで見たこともない。
圧倒的な巨大な影が。
ゆっくりと姿を現し始めていた。
──────────────────────────────
第9話
「絶望」
──────────────────────────────
庭園へ静寂が訪れる。
大型スターレス一体。
撃破。
誰もが息を整えようとした。
しかし。
T.E.R.A.S.
「警告。」
「裂け目内部。」
「超大型反応接近。」
空を覆う裂け目がさらに広がる。
黒い雲が渦を巻く。
その中心から。
巨大な腕が姿を現した。
アイナ
「……大きい。」
マノン
「大型個体じゃないわね。」
「別種だわ。」
アオロビは静かに空を見上げる。
「……。」
「今までの二体。」
「足止めだったのか。」
ルクレティア
「本命……。」
巨大な影がゆっくりと庭園へ降下してくる。
着地。
その衝撃だけで。
庭園全体が揺れた。
ガゼボの屋根から花びらが舞い落ちる。
庭師達は避難所の中で息を呑んだ。
アンジェリカも窓から外を見つめる。
アンジェリカ
「……。」
La lune bleue .
「大丈夫にゃ。」
「ここから先には行かせないにゃ。」
大剣を握り直す。
クロフォードから通信が入る。
クロフォード
『こちら司令部。』
『現地反応を確認した。』
『データベース照合中。』
数秒。
沈黙。
そして。
クロフォード
『……識別不能。』
『現在保有しているデータには無い個体だ。』
アイナ
「そんな……。」
マノン
「未確認個体。」
「初観測ね。」
超大型スターレスがゆっくりと顔を上げる。
赤い眼が。
庭園全体を見渡した。
次の瞬間。
咆哮。
衝撃波。
花壇の花が大きく揺れる。
みるく
「うぅ……。」
思わず耳を塞ぐ。
ローシャ
「精神干渉……。」
「皆さん、気を付けてください!」
魔法陣が展開される。
仲間達を包むように淡い光が広がる。
ルクレティア
「ありがとう。」
ローシャ
「これで少しは防げます。」
超大型スターレスが右腕を振り上げた。
次の瞬間。
地面へ叩き付ける。
轟音。
地面が割れる。
石畳が砕ける。
衝撃が庭園全域へ走る。
ティラミス
「……っ!」
踏ん張る。
しかし。
吹き飛ばされる。
Nike
「ティラさん!」
すぐに駆け寄る。
ティラミス
「大丈夫。」
立ち上がる。
肩から血が流れていた。
西側。
通常個体まで再び動き始める。
アオロビ
「雑魚まで動いた!」
ルクレティア
「大型だけ見ない!」
「通常個体も止めるわよ!」
ちょこみんと
「ヴォルファー!」
召喚獣が通常個体へ飛び込む。
チノ
「数が増えたな。」
居合。
返す刀。
敵を切り伏せる。
ぴたぽん
「北側も増えてるぽん!」
高速で駆け抜ける。
超大型スターレスは。
動かない。
ただ。
立っているだけ。
それだけで。
圧倒的だった。
アオロビ
「……。」
「ルクさん。」
ルクレティア
「ええ。」
アオロビ
「隙がない。」
「どこを崩せばいいか。」
「まだ分からない。」
ルクレティア
「なら。」
「まずは観察。」
「全員。」
「不用意に飛び込まない!」
全員
「了解!」
アイナ
「撃ってみる!」
アサルトライフル。
連射。
ウィークバレット。
命中。
しかし。
超大型スターレスは。
微動だにしない。
アイナ
「効いてない!?」
アオロビ
「違う。」
「効いてる。」
「でも。」
「止まらない。」
マノンが静かに呟く。
マノン
「防御能力が異常なのね。」
ルクレティアは静かに大剣へ持ち替えた。
光を帯びた刀身がゆっくりと輝く。
ルクレティア
「全員。」
「焦らなくていい。」
「倒すんじゃない。」
「まず。」
「生き残るわよ。」
その言葉に。
誰もが頷いた。
目の前の敵は。
今まで戦ってきたどのスターレスとも違う。
それでも。
退く場所は無い。
守るべき庭園が。
その背中にあるのだから。
──────────────────────────────
第10話
「最後の防衛線」
──────────────────────────────
超大型スターレスはゆっくりと一歩踏み出した。
その一歩だけで。
庭園全体が震える。
T.E.R.A.S.
「超大型個体、移動開始。」
「進行方向。」
「庭園中央。」
ルクレティア
「全員。」
「防衛線を下げる。」
「中央へ集結。」
全員
「了解!」
アオロビは戦場を見渡す。
「大型は一体。」
「でも。」
「通常個体が護衛してる。」
ルクレティア
「狙いは同じ。」
「私達を近付かせないつもりね。」
アオロビ
「なら。」
「周りから崩そう。」
ルクレティア
「お願い。」
チノは通常個体の群れへ飛び込む。
「邪魔だ。」
居合。
一閃。
二体同時に斬り伏せる。
さらに切り払う。
敵の攻撃を紙一重でかわす。
ぴたぽんが横を駆け抜ける。
「右ぽん!」
投擲ナイフ。
通常個体の注意が逸れる。
チノ
「助かる。」
ぴたぽん
「任せるぽん!」
東側。
ティラミスは休むことなく前線を維持していた。
敵の動きを読み。
最小限の動きだけでかわす。
一撃。
また一撃。
少しずつ敵を削る。
Nikeが二丁拳銃で援護する。
「ティラさん!」
「左!」
ティラミス
「見えてる。」
横へ流れるように回避。
銃撃が敵へ命中した。
西側。
ちょこみんとはヴォルファーを前へ出す。
フレドランが上空から援護。
マルメロは庭園中央で防御を維持する。
ちょこみんと
「少しでも時間を稼ぐよ!」
管理室前。
ローシャとマノンは絶えず魔法を展開する。
ローシャ
「右側をお願いします!」
マノン
「わかったわ。」
氷の術式。
風の術式。
通常個体が近付けない。
T.E.R.A.S.
「管理室、防衛継続。」
後方。
みるくは高台から砲撃を続ける。
「アオさん!」
アオロビ
「大型の右肩!」
みるく
「了解ですぅ!」
ランチャーが火を噴く。
着弾。
超大型スターレスの身体が僅かに揺れる。
アオロビ
「効いてる。」
「少しずつ。」
アイナもすぐに続く。
「ウィークバレット!」
特殊弾が命中する。
アオロビ
「維持できてる!」
「ありがとう!」
アイナ
「まだまだ!」
その時。
超大型スターレスが動いた。
右腕を大きく振り上げる。
アオロビ
「全員!」
「散開!」
巨大な拳が振り下ろされる。
轟音。
石畳が砕ける。
ガゼボの柱へ亀裂が入る。
ちょこみんと
「ガゼボが!」
ルクレティア
「建物より人!」
「巻き込まれないで!」
全員が即座に距離を取る。
アオロビはその一瞬を見逃さなかった。
「ルクさん!」
「左足!」
「今だけ重心が崩れた!」
ルクレティア
「わかったわ!」
光の大剣を構える。
一直線。
地面を蹴る。
超大型の左足へ斬り込む。
重い一撃。
金属が軋むような音。
超大型スターレスが初めて大きく体勢を崩した。
アオロビ
「やっぱり。」
「弱点じゃない。」
「バランスだ。」
ルクレティア
「倒すんじゃない。」
「動きを止める。」
アオロビ
「その方が現実的。」
二人の考えは一致した。
クロフォードから通信が入る。
クロフォード
『現地映像を確認。』
『敵の防御能力が極めて高いことを確認した。』
『撃破ではなく、行動阻害を優先してくれ。』
アオロビ
「同じ考えだ。」
ルクレティア
「なら。」
「全員。」
「目標変更。」
「超大型を倒すことは考えない。」
「庭園中央へ近付けさせない。」
「それだけを考えて。」
全員
「了解!」
超大型スターレスが再び歩き始める。
ゆっくり。
しかし確実に。
庭園中央へ向かって。
その前へ。
十二人が横一列に並ぶ。
誰も退かない。
誰一人として。
この庭園を譲る気は無かった。
──────────────────────────────
第11話
「守る理由」
──────────────────────────────
超大型スターレスは止まらない。
一歩。
また一歩。
確実に庭園中央へ近付いてくる。
ルクレティア
「止め続けて!」
「一歩でも進ませない!」
全員
「了解!」
光の大剣が振り下ろされる。
超大型の脚部へ命中。
しかし。
止まるのは一瞬だけ。
再び歩き出す。
アオロビ
「完全には止められない。」
「でも。」
「確実に遅くなってる。」
ルクレティア
「それで十分よ。」
「時間を稼ぐわ。」
戦闘開始から既に長時間。
誰もが疲労を隠せなくなっていた。
ティラミスは肩で息をする。
ちょこみんとの召喚獣も動きが鈍り始める。
みるくはランチャーを構える腕が震えていた。
Nikeも額の汗を拭う。
ぴたぽん
「まだ終わらないぽん……。」
管理室前。
ローシャは魔法を維持し続けていた。
額から汗が流れる。
マノン
「無理しないで。」
ローシャ
「まだ……。」
「大丈夫です。」
マノンは静かに頷く。
二人は再び術式を展開した。
避難所。
アンジェリカは不安そうに外を見つめていた。
アンジェリカ
「まま……。」
庭師が優しく肩を抱く。
「大丈夫。」
「みんなが守ってくれてる。」
アンジェリカは小さく頷いた。
庭園中央。
超大型スターレスが再び右腕を振り上げる。
アオロビ
「来る!」
ルクレティア
「散開!」
巨大な拳が振り下ろされる。
轟音。
地面が大きく揺れる。
石畳が砕ける。
花壇の一角が崩れた。
ちょこみんと
「花壇が……。」
一瞬だけ視線が向く。
ルクレティア
「ちょこちゃん!」
ちょこみんと
「……!」
すぐに前を向く。
フレドランを前へ飛ばす。
ルクレティア
「今は敵だけ見て!」
「庭園は!」
「後でみんなで直せる!」
その言葉に。
ちょこみんとは力強く頷いた。
「うん!」
アオロビは敵の動きを見続けていた。
攻撃。
歩幅。
重心。
全てを頭の中で組み立てる。
「……。」
「そうか。」
ルクレティア
「何か分かった?」
アオロビ
「完全には止められない。」
「でも。」
「足は止められる。」
ルクレティア
「続けて。」
アオロビ
「右足を止める。」
「すると左足へ体重が乗る。」
「そこをルクさんが押す。」
「反対側をネコさん。」
「ティラさんは足元。」
「ちょこ姉はマルメロで押さえる。」
「ローシャさんとマノンさんは移動阻害。」
「みるさん。」
「ランチャーは左脚。」
「ニケさん。」
「脚部へ射撃。」
「ぴたさん。」
「後ろから攪乱。」
「チノさん。」
「通常個体を近付けない。」
チノ
「ああ。」
短い返事。
アオロビ
「倒す必要はない。」
「転ばせる。」
全員の視線がアオロビへ集まる。
ルクレティアは静かに笑った。
「らしい作戦ね。」
アオロビ
「真正面から勝てる相手じゃない。」
「だったら。」
「倒し方を変える。」
その時。
クロフォードから通信が入る。
クロフォード
『現地映像を確認した。』
『敵の重心制御に乱れが発生してる。』
『その戦術を継続してくれ。』
『司令部も支援解析を続けてる。』
アオロビ
「やっぱり。」
「間違ってない。」
ルクレティア
「全員。」
「作戦変更。」
「敵を倒すことは考えない。」
「転倒させることだけを考えて。」
全員
「了解!」
超大型スターレスが再び歩き始める。
ゆっくり。
しかし確実に。
庭園中央へ向かって。
アオロビはライフルを構え直す。
「ここからが本番だ。」
その一発が。
超大型スターレスの右脚へ吸い込まれていった。
──────────────────────────────
第12話
「反撃」
──────────────────────────────
アオロビの狙撃が超大型スターレスの右脚へ命中する。
乾いた銃声。
敵の歩みがわずかに乱れた。
アオロビ
「右脚。」
「入った。」
ルクレティア
「全員。」
「作戦開始!」
全員
「了解!」
ローシャが魔法陣を展開する。
ローシャ
「風よ。」
「その足を止めてください。」
足元へ吹き荒れる風。
続いて。
マノンが氷の術式を重ねる。
マノン
「拘束するわ。」
超大型スターレスの脚が一瞬だけ止まる。
アオロビ
「今!」
ルクレティア
「行くわよ!」
光の大剣を構え。
左脚へ斬り込む。
鈍い衝撃。
巨体がわずかに傾く。
同時。
La lune bleue .が反対側から飛び込む。
大剣を全身で叩き付ける。
La lune bleue .
「押すにゃ!」
巨体がさらに揺れる。
ティラミスは迷わず足元へ潜り込む。
斬る。
斬る。
斬る。
装甲の継ぎ目だけを狙い続ける。
みるく
「撃ちますぅ!」
ランチャー。
着弾。
左脚へ直撃。
Nikeも二丁拳銃を構える。
Nike
「続きます!」
連射。
脚部へ集中射撃。
ぴたぽんは超大型の背後を高速で駆け抜ける。
ぴたぽん
「こっち見るぽん!」
投擲ナイフ。
敵の視線が一瞬だけ後ろへ向く。
その隙。
ちょこみんと
「マルメロ!」
巨大な障壁が再び展開される。
超大型の右脚へ押し当てる。
ちょこみんと
「押し返せー!」
マルメロも全力で踏ん張る。
チノは通常個体の群れを止め続けていた。
「前来んな。」
居合。
一閃。
敵を斬り伏せる。
さらに一体。
もう一体。
誰一人。
超大型の援護へ向かわせない。
アオロビは戦場全体を見渡す。
「もう少し。」
「あと少し。」
敵の重心。
左。
右。
今。
「ルクさん!」
ルクレティア
「分かってる!」
全身の力を込める。
光の大剣が地面を削る。
La lune bleue .もさらに押し込む。
ティラミスの斬撃。
みるくの砲撃。
Nikeの射撃。
ローシャとマノンの拘束魔法。
ちょこみんとのマルメロ。
ぴたぽんの攪乱。
アオロビの狙撃。
チノの防衛。
全てが噛み合う。
超大型スターレスの身体が。
大きく傾いた。
アオロビ
「今だ!」
ルクレティア
「全員!」
「押し切る!」
十二人が同時に踏み込む。
轟音。
超大型スターレスが。
初めて。
大きく膝をついた。
地面が揺れる。
誰も攻撃の手を止めない。
アオロビ
「まだ終わらない!」
「起き上がらせるな!」
超大型スターレスは。
立ち上がろうと脚へ力を込める。
しかし。
ローシャ
「まだ!」
風が脚へ絡み付く。
マノン
「拘束を維持するわ。」
みるく
「もう一発ですぅ!」
ランチャー。
爆発。
ルクレティア
「あと少し!」
その時。
黒い裂け目が揺れ始めた。
T.E.R.A.S.
「空間反応変化。」
「裂け目のエネルギーが低下しています。」
アオロビ
「そうか!」
「アイツが維持してたんだ!」
ルクレティア
「なら!」
「このまま押し切る!」
超大型スターレスはなおも立ち上がろうともがく。
しかし。
十二人は。
誰一人。
一歩も退かなかった。
──────────────────────────────
第13話
「Gleam Garden」
──────────────────────────────
超大型スターレスは立ち上がろうともがき続ける。
しかし。
十二人は誰一人として攻撃の手を止めない。
アオロビ
「このまま!」
「押さえ込む!」
ローシャ
「拘束を維持します!」
マノン
「絶対に離さない。」
風と氷が巨体を縛り続ける。
みるく
「撃ちますぅ!」
最後の砲撃。
轟音と共に超大型スターレスの身体が大きく揺れる。
Nike
「今です!」
二丁拳銃の連射。
ティラミス
「……終わり。」
装甲の継ぎ目へ最後の斬撃を叩き込む。
La lune bleue .
「これで!」
大剣を振り抜く。
ルクレティア
「全員!」
「離れて!」
全員が一斉に距離を取る。
その瞬間。
超大型スターレスの身体が大きく震えた。
黒い粒子となって崩れ始める。
T.E.R.A.S.
「超大型個体。」
「反応消失。」
静寂。
誰も動かない。
空を見上げる。
黒い裂け目がゆっくりと縮小していく。
そして。
静かに閉じた。
T.E.R.A.S.
「スターレス反応。」
「全域から消失。」
「戦闘終了を確認。」
誰からともなく大きく息を吐く。
ちょこみんと
「……終わった。」
ティラミスはその場へ座り込む。
Nikeも二丁拳銃をしまい、小さく息をつく。
みるく
「もうランチャー持てません……。」
ぴたぽん
「疲れたぽん……。」
チノは静かに刀を納める。
深く息を吐き、周囲を見渡す。
チノ
「皆さん、お疲れ様でした。」
「怪我はありませんか?」
ローシャ
「私は大丈夫です。」
みるく
「わたしも大丈夫ですぅ。」
ちょこみんと
「疲れたけど元気!」
ルクレティア
「全員、無事ね?」
「……よし。」
その時。
避難所の扉が開く。
アンジェリカ
「まま!」
La lune bleue .
「アンジェリカ。」
駆け寄ってきたアンジェリカを優しく抱き上げる。
アンジェリカ
「みんな!」
「けがしてない?」
La lune bleue .
「少し疲れたけど。」
「みんな無事にゃ。」
庭師たちもゆっくりと避難所から姿を見せる。
傷付いた花壇。
ひび割れた石畳。
柱に傷の付いたガゼボ。
それでも。
庭園は残っていた。
庭師
「守ってくださって……。」
「ありがとうございました。」
ルクレティア
「いいえ。」
「皆さんが無事で、本当に良かったです。」
庭師は優しく笑う。
「花はまた植えられます。」
「庭園も直せます。」
「でも、人は替えがききません。」
その言葉に。
ルクレティアも静かに微笑んだ。
「……そうですね。」
その時。
通信が入る。
クロフォード
『こちら司令部。』
『Team Gleam Garden。』
『応答を。』
ルクレティア
「こちらGleam Garden。」
「ルクレティアです。」
クロフォード
『そちらのスターレスの反応消失を確認した。』
『庭園防衛任務の完了を確認したい。』
『被害状況を報告してくれるかい。』
ルクレティアは仲間たちを見回す。
庭師。
スタッフ。
アンジェリカ。
そして。
共に戦い抜いた仲間たち。
全員がそこにいた。
ルクレティア
「人的被害。」
「ゼロ。」
「庭園設備に損傷あり。」
「ですが。」
「Gleam Garden庭園、防衛成功です。」
数秒の沈黙。
そして。
クロフォード
『……報告を確認した。』
『みんなの冷静な判断と連携があったから、その庭園を守り抜けたんだね。』
『本当に、ご苦労様。』
通信が終了する。
アイナ
「みんな、本当に強かった!」
アオロビ
「強かったというより。」
「みんなで守り切ったね。」
マノン
「ええ。」
「見事な連携だったわ。」
ルクレティア
「応援、ありがとうございました。」
アイナ
「また何かあったら呼んで!」
マノン
「その時は、また一緒に戦いましょう。」
二人は転送装置へ向かう。
青白い光に包まれながら、セントラルシティへ帰還していった。
夕日が庭園を優しく照らす。
アオロビ
「帰ろう。」
「今日はゆっくり休もう。」
ちょこみんと
「ご飯食べたーい!」
ぴたぽん
「お腹ぺこぺこぽん!」
みるく
「今日はいっぱい食べますぅ。」
ローシャ
「その前に手当てですね。」
ティラミス
「……賛成。」
チノ
「私もお腹が空きました。」
Nike
「ふふっ。」
ルクレティアは傷付いた庭園を静かに見渡す。
戦いの跡は残った。
それでも。
ここは失われなかった。
仲間がいて。
笑顔があって。
また明日も帰って来られる。
それだけで十分だった。
Gleam Garden。
その名の通り。
今日もまた。
大切な居場所は守られた。
──────────────────────────────
終
──────────────────────────────
149:戦いの後に(全2話)
第一話
「ようこそ、Gleam Gardenへ」
春の柔らかな風が、修繕を終えたGleam Garden庭園を吹き抜ける。
防衛戦で傷付いた石畳や花壇はほとんど元通りになり、色とりどりの花々が静かに揺れていた。
庭園中央のガゼボでは、ちょこみんとが忙しそうにテーブルを飾り付けている。
ちょこみんと
「えへへ〜♪」
「今日は楽しみだなぁ!」
アオロビ
「朝からずっと笑顔だね。」
ちょこみんと
「だってさ!」
「戦い終わったら絶対お礼したいって思ってたんだもん!」
「……それに。」
アオロビ
「それに?」
ちょこみんと
「仲良くなりたい!」
「アイナちゃんもマノンちゃんもいい子だったし!」
アオロビは小さく笑う。
アオロビ
「そっちが本音だね。」
ちょこみんと
「えへへ、ばれた?」
少し離れた場所では、ローシャとLa lune bleue .がティーカップを並べていた。
ローシャ
「今日のお菓子も豪華ですね。」
La lune bleue .
「にゃんころ達らしく、お腹いっぱい食べてもらうにゃん。」
ぴたぽん
「んちゃ!」
「ケーキもいっぱいあるぽん!」
みるく
「焼き菓子も用意しました。」
Nike
「紅茶も何種類かありますよ。」
ティラミス
「選ぶ時間も楽しみ。」
チノ
「皆さん、とても張り切っていますね。」
その頃。
庭園入口。
アイナとマノンがゆっくり歩いてきていた。
アイナ
「ここがGleam Garden……。」
マノン
「資料では見ていたけれど……。」
「実際に見ると、本当に綺麗ね。」
修繕されたばかりとは思えないほど、美しい庭園。
花の香りに包まれながら二人は門をくぐる。
すると。
ちょこみんと
「あっ!!」
「来た来たー!!」
勢いよく駆け寄ってくる。
アイナ
「あはは。」
「こんにちは。」
マノン
「今日は呼んでくれてありがとう。」
ちょこみんと
「来てくれてありがとー!」
そのまま両手を握る。
ちょこみんと
「今日は任務のこと忘れて楽しもうね!」
マノン
「ふふ。」
「ええ。」
アオロビもゆっくり歩いてくる。
アオロビ
「ようこそ、Gleam Gardenへ。」
「今日はゆっくりしていってね。」
アイナ
「ありがとう。」
「こういう休日も悪くないね〜。」
みんなが集まり始めた、その時。
La lune bleue .
「アンジェリカ〜。」
「お客様にゃんよ〜。」
建物の陰から、小さな猫耳がぴょこんと覗く。
アンジェリカ
「……。」
そっと顔だけ出す。
アイナとマノンを見る。
すぐにLa lune bleue .の後ろへ隠れた。
La lune bleue .
「ふふっ。」
「大丈夫にゃん。」
「怖い人じゃないにゃん。」
アンジェリカ
「……。」
まだ少しだけ隠れている。
ちょこみんと
「アンジェちゃん。」
「この二人ね。」
「ままたちを助けてくれた人だよ。」
アンジェリカ
「……しってる。」
「でも……はじめて……。」
アイナはしゃがみ込み、優しく目線を合わせた。
アイナ
「こんにちは。」
「アイナだよ。」
「今日は遊びに来たんだ。」
マノンも微笑む。
マノン
「マノンよ。」
「よろしくね。」
アンジェリカ は少し考えた後、小さく頭を下げる。
アンジェリカ
「……こんにちは。」
その一言だけ言うと、またLa lune bleue .の後ろへ隠れてしまった。
La lune bleue .
「ふふ。」
「人見知り中にゃん。」
ローシャ
「でも、ご挨拶できましたね。」
Nike
「十分ですよ。」
「焦らなくて大丈夫です。」
アイナ
「可愛いね。」
マノン
「ええ。」
「少しずつだけど、仲良くなれそう。」
ちょこみんとが両手を叩く。
ちょこみんと
「じゃあ!」
「みんな揃ったし!」
「アフタヌーンティー会、始めよーー!」
「今日はいっぱい食べて、いっぱいお話しよう!」
庭園に、穏やかな笑い声が広がった。
激しい戦いの後だからこそ訪れた、何気ない平和な午後。
その時間は、ゆっくりと流れ始めていた。
第二話
「また遊びに来ます」
ガゼボのテーブルには、色とりどりの紅茶と焼き菓子、ケーキが並んでいた。
アイナ
「すごい……。」
「全部手作りなの?」
ちょこみんと
「うん!」
「今日は歓迎パーティーだからね!」
マノン
「ここまで準備してくれるなんて……。」
ローシャ
「せっかくのお休みですから。」
「皆さんに楽しんでいただきたかったんです。」
ぴたぽん
「いっぱい食べるぽん!」
みるく
「紅茶のおかわりもありますよ。」
アンジェリカはLa lune bleue .の隣へ座りながら、時々アイナとマノンの方を見ていた。
目が合うと、慌てて視線を逸らす。
アイナは思わず笑う。
アイナ
「まだちょっと恥ずかしいみたい。」
La lune bleue .
「初めてのお客様だからにゃん。」
「少しずつ慣れるにゃん。」
穏やかな時間が流れる。
その時。
庭園中央に淡い光が集まり始めた。
アイナ
「えっ?」
マノン
「これは……?」
光がゆっくり人の姿になる。
穏やかな女性のホログラム。
T.E.R.A.S.
「皆様、こんにちは。」
「本日はお越しいただきありがとうございます。」
アイナ
「ホログラム……?」
マノン
「AIかしら?」
アオロビ
「うん。」
「私達のサポートAI。」
T.E.R.A.S.
「正式名称は
Together Empathy Records Archive Support。」
「皆様からはT.E.R.A.S.と呼ばれています。」
マノン
「……。」
「初めて見たわ。」
アイナ
「アークスでもここまで自然に会話できるAIは珍しいよ。」
アオロビ
「ルクさんを中心に、私達で独自開発してるからね。」
マノン
「独自開発……?」
「これほどのAIを?」
T.E.R.A.S.
「私は皆様を支えるために存在しています。」
「記録し、学び、共に歩むことが役目です。」
アイナ
「すごいなぁ……。」
「戦うだけじゃなくて、こういう所まで作っちゃうんだ。」
アオロビ
「ルクさんは、必要だと思ったら作っちゃう人だから。」
ちょこみんと
「えへへ!」
「るくるくすごいんだよ!」
その頃。
少し離れた庭園では。
ルクレティアが修繕された噴水や照明を一つずつ確認していた。
ルクレティア
「……うん。」
「こちらも問題なし。」
最後の端末へ軽く触れる。
正常表示。
小さく微笑む。
ルクレティア
「これで安心ね。」
そのままガゼボへ向かう。
ちょうど紅茶のおかわりが配られていた。
ちょこみんと
「あっ!」
「るくるく!」
ルクレティア
「ごめんなさいね。」
「少し点検が長引いちゃった。」
アイナ
「設備点検してたの?」
ルクレティア
「ええ。」
「皆が安心して過ごせる場所だから。」
「最後まで確認したかったの。」
マノン
「だからあんなに綺麗なのね。」
ルクレティアは少し照れたように笑う。
ルクレティア
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
気付けば日が少し傾き始めていた。
アイナ
「もうこんな時間かぁ。」
マノン
「楽しい時間はあっという間よ。」
ちょこみんと
「また来てね!」
「今度はもっといっぱい遊ぼ!」
アイナ
「もちろん!」
マノン
「楽しみにしているわ。」
アンジェリカが少しだけ前へ出る。
少し恥ずかしそうに。
アンジェリカ
「……また、きてね。」
アイナは思わず笑顔になる。
「うん。」
「また遊びに来る。」
マノンも優しく頷いた。
「今度はもっとお話しましょう。」
アンジェリカは小さく笑った。
「うん。」
二人を見送るため、
Gleam Gardenの全員が庭園入口まで歩いていく。
アイナ
「戦った時も思ったけど……。」
「みんな、本当に家族みたいだね。」
アオロビ
「そうだね。」
「私達にとっては、帰ってくる場所だから。」
ルクレティア
「だから守りたかったの。」
「庭園も、この時間も。」
マノン
「……その理由が、今日よく分かったわ。」
門の前で振り返る。
アイナ
「また遊びに来るね!」
ちょこみんと
「約束だよー!」
大きく手を振る。
夕暮れの庭園に、
たくさんの笑顔が咲いていた。
戦いが終わったからこそ迎えられた、穏やかな午後。
その思い出は、新しい友人との最初の一ページとして、
Gleam Gardenに静かに刻まれていった。
150:戦いの後に
〜アークス司令室編〜(全2話)
第一話
「解析開始」
セントラルシティ。
アークス司令室。
戦いが終わって数日。
司令室には静かな空気が流れていた。
大型モニターには、Gleam Garden防衛戦の記録映像が映し出されている。
クロフォード
「……始めよう。」
「防衛戦の解析を。」
ラン
「はい!」
「戦闘記録、全て整理できています!」
リューリン
「映像、フォトンログ、戦術記録。
全て照合可能です。」
ロッサ
「スターレス側の行動履歴も抽出済みだ。」
オランジェ
「過去の襲撃記録との比較も終わっています~。」
クロフォードは静かに頷いた。
「ありがとう。」
「今回知りたいのは一つだけだ。」
「……なぜGleam Gardenが襲撃されたのか。」
モニターへ映像が映る。
戦闘開始直後。
スターレスの大群。
ラン
「通常なら都市部やフォトン施設への進行が優先されます。」
「ですが今回は……。」
映像が切り替わる。
敵部隊は一直線。
迷うことなく庭園へ向かっている。
ラン
「進路変更がありません。」
ロッサ
「普通じゃないな。」
「偵察行動もしてねぇ。」
「最初から目的地を知ってた動きだ。」
リューリン
「敵部隊の行動パターンも一致しています。」
「全個体が同一目標へ収束。」
「偶然とは考えにくいでしょう。」
映像がさらに進む。
庭園外周。
敵は施設を無視して突破していく。
ロッサ
「外壁を壊すことにも執着してねぇ。」
「邪魔だから壊しただけだ。」
ラン
「花壇や建物への攻撃も最小限です。」
「進路上にある物だけ。」
クロフォード
「つまり……。」
リューリン
「破壊活動そのものが目的ではありません。」
オランジェが資料を開く。
「過去のスターレス襲撃事例と比較しました~。」
画面には多数の戦闘記録。
都市。
研究施設。
輸送拠点。
フォトン採掘施設。
オランジェ
「全部共通してるんです~。」
「狙う対象は決まっていて~。」
「途中の建物はほとんど無視なんですよ~。」
ロッサ
「一直線か。」
オランジェ
「はい~。」
「今回も同じでした~。」
クロフォードは腕を組む。
「では。」
「庭園そのものが目的だった訳ではない。」
ラン
「はい。」
「その可能性は低いと思われます。」
モニターが切り替わる。
今度は庭園全体の立体図。
リューリン
「庭園内施設一覧です。」
映るのは。
ガゼボ。
花壇。
温室。
住居。
管理棟。
Team Mag。
T.E.R.A.S.
ロッサ
「……。」
「待て。」
「妙だな。」
ラン
「どうしました?」
ロッサ
「施設らしい施設がほとんどねぇ。」
「軍事設備なんざ一つも無い。」
クロフォードも画面を見る。
静かに頷く。
「その通りだ。」
「庭園は生活空間だ。」
「戦略価値は極めて低い。」
リューリン
「ですが。」
「中央部のみ例外があります。」
画面が拡大される。
庭園中央。
Team Mag。
その横。
T.E.R.A.S.
リューリン
「この二つだけです。」
「通常施設とは異なる存在は。」
司令室に静寂が流れる。
クロフォード
「Team Magは……理解できる。」
「だが。」
「T.E.R.A.S.とは何だ。」
ラン
「公式データベースには登録されていません。」
ロッサ
「アークス製でもねぇ。」
オランジェ
「研究部門にも記録がありませんでした~。」
リューリン
「つまり。」
「独自開発です。」
クロフォードは静かにモニターを見つめる。
「独自開発……。」
「アオロビ君が以前、少し話していたな。」
『私達で作ったAIなんです。』
あの時は、
穏やかに微笑みながらそう話していた。
クロフォード
「だが。」
「ここまで解析しても。」
「まだ一つ分からない。」
司令室全員がモニターを見る。
中央に表示される文字。
【T.E.R.A.S.】
クロフォード
「彼女達は。」
「一体、何を作ったんだ。」
静まり返る司令室。
戦いは終わった。
だが、
その答えを探す新たな解析が、
今、始まろうとしていた。
第二話
「T.E.R.A.S.」
セントラルシティ。
アークス司令室。
静かな室内に、キーボードを打つ音だけが響いていた。
リューリン
「T.E.R.A.S.関連データの解析が終了しました。」
クロフォード
「報告を頼む。」
リューリン
「まず結論から申し上げます。」
「このAIは、アークスの技術体系には存在しません。」
ラン
「存在しない……?」
リューリン
「はい。」
「開発思想そのものが異なります。」
大型モニターへ解析結果が映し出される。
『T.E.R.A.S.
Together Empathy Records Archive Support』
ロッサ
「支援AI……なのか?」
リューリン
「その認識だけでは不十分です。」
「記録によれば、このAIは」
『記録』
『学習』
『共感』
『支援』
この四つを中心として設計されています。」
クロフォード
「共感……。」
ラン
「戦闘AIではないんですね。」
リューリン
「はい。」
「戦闘能力は確認されていません。」
「むしろ。」
「人を支えることを最優先に設計されています。」
オランジェが別資料を表示する。
「こちらはTeam Magとの接続解析です~。」
画面には複雑なフォトンネットワーク。
ラン
「すごい……。」
「全部繋がってる。」
オランジェ
「T.E.R.A.S.はTeam Magを通してフォトン情報を受け取っています~。」
「でも。」
「フォトンを兵器として利用している訳ではありません~。」
クロフォード
「情報処理か。」
リューリン
「その通りです。」
「フォトンそのものではなく。」
「フォトンに宿る情報を。」
「記録し。」
「解析し。」
「学習しています。」
司令室が静かになる。
ロッサ
「……待て。」
「それ。」
「前例あるか?」
リューリン
「ありません。」
ラン
「アークスでも?」
リューリン
「ありません。」
「Team Magをここまで発展させた事例は確認できません。」
クロフォードも静かに頷いた。
「つまり。」
「彼女らは。」
「Team Magを一つの知性へ育て上げた。」
リューリン
「解析結果は、その可能性を支持しています。」
再び戦闘映像。
庭園中央。
スターレスの進行ルートが赤く表示される。
ラン
「……やっぱり。」
「一直線。」
ロッサ
「外周は無視。」
「住居も無視。」
オランジェ
「目的地だけ一直線です~。」
赤い線。
終点。
【T.E.R.A.S.】
クロフォード
「ここだったのか。」
リューリン
「スターレスはフォトンへ強く反応します。」
「しかし。」
「今回検出された行動には違いがあります。」
ラン
「違い?」
リューリン
「通常のフォトン施設よりも。」
「T.E.R.A.S.への反応が極めて強い。」
ロッサ
「つまり?」
リューリン
「推測になります。」
「スターレスは。」
「未知のフォトン情報体として。」
「T.E.R.A.S.を認識した可能性があります。」
クロフォード
「未知……。」
リューリン
「学習する。」
「記録する。」
「進化する。」
「共感する。」
「支援する。」
「その全てを備えたAIは。」
「アークスにも存在しません。」
「未知である以上。」
「脅威と認識された可能性があります。」
司令室が静まり返る。
クロフォードはゆっくり椅子へ腰掛けた。
「なるほど……。」
「だから。」
「庭園だったのか。」
誰かを狙った訳でもない。
花を狙った訳でもない。
Gleam Gardenという場所を憎んでいた訳でもない。
狙いは最初から一つ。
T.E.R.A.S.
その存在そのもの。
ラン
「……でも。」
「守れました。」
ロッサ
「ああ。」
「連中の思惑は外れた。」
オランジェ
「今も元気に動いてますね~。」
リューリン
「ええ。」
「今回の防衛成功により。」
「T.E.R.A.S.は健在です。」
クロフォードは窓の外を見る。
遠く。
Gleam Gardenの方角。
穏やかな空を見上げる。
「今日は。」
「アイナ君とマノン君は休暇だったね。」
ラン
「はい。」
「Gleam Gardenへ招待されたそうです。」
クロフォードは小さく微笑んだ。
「なら。」
「今日くらいは仕事を忘れて。」
「ゆっくり過ごしてもらおう。」
「彼女達が守ったものが。」
「今そこにあるのだから。」
同じ頃。
Gleam Gardenでは。
花々が風に揺れ、
穏やかな笑い声が庭園へ響いていた。
戦場には記録が残る。
けれど。
守り抜いた日常は、
笑顔として、
静かに未来へ残っていくのだった。